中野梓

和「ねえそこの子、ちょっといい?」

純「あっ、和先輩!」

和「あら……あなた確か憂の友達の」

純「純です! 鈴木純です!」

和「覚えているわ。ライブも一緒に行ったよね鈴木さん」

純「鈴木じゃなくて純で結構ですよ!」

和「憂から聞いてた通りゆかいな子ね。ふふっ」

純「ゆかい? いやー、あはは」(どんな風に伝わってるんだ私)

和「あなた、いいかも知れないわね」

純「あ、ありがとうございま……って何がです?」

和「活発そうなのがギャップでたまらない系?」

純「あのあの、何か憂に用事があったんじゃ~……」

和「あらそうだった。梓ちゃん呼んでもらえる?」

純「梓ですか?」

和「ええ。頼むわ純ちゃん」



 2年1組の教室

純「梓ー、梓ー」

梓「どうしたの純?」

純「和先輩が梓を呼んでる」

梓「和先輩が私を? なんだろう?」

憂「珍しいね~」

純「軽音部の話じゃない? 多分」

梓「そっか。行って来るね」

憂「和さんによろしく」

純「達者でな~」



 廊下

梓「和先輩~!」

和「梓ちゃん突然呼び出したりしてごめんね。大丈夫?」

梓「大丈夫ですけど……なんでしょうか?」

和「まだお昼休み少し時間あるわよね」

梓「はい」

和「ここじゃ何だから生徒会室で話さない?」

梓「いいですけど何の話なんですか?」

和「すぐ終わるから安心して」



 生徒会室

梓「うわぁ~、なんだか緊張します」

和「楽にして。取って食ったりしないから」

梓「アハハ」(大人って感じだな和先輩)

和「軽音部はどう? 楽しい?」

梓「はい! ちょっと怠ける人がいますけど」

和「あらハッキリ言うのね」

梓「あっ、いえ……生意気でした後輩なのに」

和「ふふっ、梓ちゃんみたいに実直な人好きよ」

梓「恐縮です」

和「あなたの加入で唯もすごく成長したし」

梓「そうでしょうか?」

和「今の軽音部は梓ちゃんが引っ張ってるかもね」

梓「と、とんでもないです!」

和「何よりネコミミが似合うのが素晴らしいわ」

梓「そんな……えっ」

和「普通なら違和感があるのに梓ちゃんの場合ナチュラルでしょ?」

梓「あの、和先輩?」

和「今時ツインテールがハマる女の子なんてあなた位のものよ」

梓「話が見えないんですが」

和「かわいいって事よ」

梓「は、はひ!?」(まさかこれって告白!?)

和「かわいいから何でも似合っちゃうのよね」

梓「あの嬉しいですけど……」(和先輩の事よく知らないし)

和「だからお願い……」

梓「ダ、ダメです!」

和「待って。話だけでも聞いて」

梓「だって私、私は!」(やだ、どうして唯先輩の顔が浮かぶの?)

和「ちょっとだけでいいからメガネかけてくれない?」

梓「唯せん……が?」

和「メガネ」

梓「な……なんなんですか?」

和「似合うから。絶対似合うから」

梓「私の胸のときめきを返してください」

和「スチャっといっとこ? スチャっと。ね?」

梓「嫌ですよ。メガネなんて」

和「甘いわ梓ちゃん。今時メガネがハンデキャップという考えは古い」

梓「確かに最近のメガネはオシャレになりましたけど」

和「そうよ! それに私はメガネ萌えなの」

梓「和先輩の趣味に、合わせる義理はないんですが」

和「そんな冷たい事おっしゃらないで」

梓「メガネで呼び出すなんてどうかしてます」

和「気持ちは分かるわ。でも梓ちゃんの為でもあるの」

梓「明らかに和先輩しか得しないと思いますが」

和「梓ちゃんはそのままでもキュート。だけど完全じゃない」

梓「いえ間に合ってますから」

和「完全体になりたくないの?」

梓「和先輩限定の完全体になる理由はありません」

和「唯ともっと親密になりたいんでしょ?」

梓「そんな事ありません」(元から仲いいもん)

和「メガネはいわばチャンスアイテム」

梓「騙されません」

和「唯も実はメガネ好きなのよ」

梓「本当ですか!?」

和「そうよ。だから私と唯はずっと仲良しさんなの」

梓「そんな事情があったとは!」

和「今こそメガネとドッキングする時よ梓ちゃん!」

梓「よしきたです!」

和「合・体!!」

梓「ど……どうでしょうか?」

和「きゃっ、きゃわいいいいいいいっ!!」

梓「マジですか!!」

和「マジっす!!」

梓「これで唯先輩もメロメロという訳ですね!」

和「えっ……いやそれは分からないけど」

梓「何言ってるんですか!? メガネっ娘あずにゃんですよ!」

和「う~んどうかな~」

梓「まさか騙したんですか!?」

和「大切にしてね、そのエンゲージメガネ」

梓「なにがエンゲージメガネですか!」

和「私と梓ちゃんの愛の誓い?」

梓「こ、こんなものー!」

和「ダ~メ」

梓「うっ! 離してください!」

和「梓ちゃんっていい匂いがするのね」

梓(和先輩の目付きがおかしい)

和「どんなリンス使ってるの? うへへ」

梓「も、元に戻ってください和先輩!」

和「大丈夫よ。動かなければすぐ終わるから」

梓(このままでは犯される!?)

和「はいあずにゃん笑って~」

梓「はにゃっ!?」

和「ありがとう。いい画が撮れたわ」

梓「あ、あれ? これだけ?」

和「ええ。ちょっと暴走しちゃってごめんね」

梓「あのメガネ……返します」

和「残念だわ。すごく魅力的なのに」

梓「和先輩ってメガネかけてる人にはいつもこうなんですか?」

和「まさか。そんな事ないわ」

梓「本当ですか?」

和「もしそうだったら日常生活もままならないわよ」

梓「そ、そりゃそうですね」

和「原因はそうね……元々メガネじゃない人にかけさせた達成感とか」

梓「なるほど」(私も唯先輩なら見てみたいかな)

和「後は琴線に触れたというのかしら。元々あなたが好きだってのもあるけど」

梓「好きって……え!?」

和「ふふ、気にしないで。深い意味はないから」

梓「やめてくださいよ~、もう!」


 ……

風子「今日は良く我慢出来たね和ちゃん」

和「正直危なかったわ。軽音部には魔物が棲んでいるのかしら」

風子「……少し悔しいな」

和「なに? 良く聞こえなかったけど」

風子「何でもないですよ~だ」

和「変な子ね……でも風子のお陰かな自制出来たのは」

風子「私の?」

和「あなたが見守ってくれてたから耐えられた。ありがとう」

風子「おっ、お姉様ぁ~!」

和「わっ、どこ触ってるの! 調子に乗らない!」





 平沢唯

唯「たっだいまぁ~!」

和「おかえりなさい唯」

唯「はれ? 何で和ちゃん私ん家いるの?」

和「サプライズよ」

唯「そうなんだぶぅ」

和「なに拗ねてるのよ」

唯「だってそーゆーのは私の専売特許なのに」

和「ごめん連絡すべきだったわね。いくら幼馴染でも」

唯「うーそ。ホントはすごく嬉しいよっ!」

和「分かってるわよ」

唯「和ちゃ~ん!」

和「はいはい」(いつまでこうして私に甘えてくれるのかしらね)

唯「大外刈り! 大外刈り!」

和「……なにやってんの?」

唯「うぇ~ん! 和ちゃん全然倒れてくれない!」

和「やめなさい。生兵法はなんとやらよ」

唯「うい~、うい~、和ちゃん来てるよ!」

憂「知ってるよお姉ちゃん」

唯「あれ……憂なにそれ」

憂「あ、このメガネ? 和さんに貰ったんだ~」

唯「……ふぅん」

和「似合うわよね。パーフェクト憂って感じ」

憂「えへへっ、和さんたらー!」

唯「……メガネなんて飾りですよ」

憂「お姉ちゃん?」

和「妬いてるの唯? ちゃんと唯の分もあるから安心して」

唯「ちっがーうっ!!」

和「急にどうしたの」

唯「憂はメガネかけない方がかわいいもん!」

憂「え……そうかな」

和「それは唯の感覚であって一般的には違うのよ」

唯「違う! 和ちゃんがおかしーの!」

和「ゆ、唯……」

憂「お姉ちゃんそれはあんまりだよ」

和「いいの憂。少し分かっていたから」

唯「そうだよ! 和ちゃんもメガネない方がかわいい!」

和「唯の気持ちは知ってるけど私も譲れないわ」

唯「えー! メガネ取って取って!」

和「ちょ、ちょっと待ってよ唯」

憂「お姉ちゃん和ちゃん困ってるじゃない」

唯「うー! 憂はどっちの味方なの!?」

憂「そ、そんなのどっちでもないよ」

唯「憂だって久し振りに見たいでしょ? メガネなしの和ちゃん」

憂「そりゃ見たいけど……」

唯「ほら! ほらほらほら~!」

和「唯ったらすぐこれなんだから」

唯「だって和ちゃんメガネ似合ってないし!」

憂「お、お姉ちゃん!」

和「唯はまだ今の私を認めてくれないのね」

唯「そうだよ。昔の和ちゃんに戻って欲しい」

憂「ひどいよお姉ちゃん! 和ちゃんに謝って!」

和「いいのよ憂。私達の間で遠慮する事はないから」

唯「じゃあメガネ取っていい?」

和「唯もメガネかけてくれたらいいわ。取引よ」

唯「えー、いやだなそれは」

憂(お姉ちゃん流石にわがまますぎる……)

和「そんなに重く考えないで。これは遊びよ遊び」

唯「ん~、和ちゃんがそれ程までに頼むなら仕方ない」

和「良かった。それじゃ私から取るね」

唯「……あ」

憂「か、かっこいい……」

和「ん……あんまり良く見えないんだけど」

唯「のど……か……ちゃん?」

憂(けだるそうな感じがまた色っぽいというか)

唯「うわあああああっ!! 和ちゃん和ちゃああああんん!!」

和「ちょ、ちょっと唯! 苦しいから!」

憂「あっ、お姉ちゃんずるい! 私もー!」

和「憂まで!?」

唯「会いたかった! 会いたかったよ和ちゃん~!」

和「いつも会ってるでしょ!?」

憂「胸はいいけどおしりは私のだからねお姉ちゃん!」

和「うぅっ……もうどうにでもして……」



 ……

風子「まさか唯さんがメガネアンチだったとは」

和「そうなのよ。でも良く分かったわ」

風子「なにが分かったの?」

和「自分の趣味を他人に押し付けるってやっぱり迷惑よね」

風子「そんな! 和ちゃんはメガネの素晴らしさを広めようとして!」

和「でも当の本人がメガネ似合ってないもん。バカみたいよね」

風子「私は好きだよ! 和ちゃんのメガネ姿!」


和「風子……私も風子のメガネ好きよ」

風子「そ、そうでしょ? 和ちゃんも自信持って!」

和「ふふっ、風子に慰められるなんてね」

風子「慰めじゃない本当です」(初めて会った時から私は)

和「ありがとう。そうよね自信出てきたわ」

風子「それでこそ和ちゃんよ」

和「ねえたまには一緒にお茶しましょうか」

風子「はい! メガネ談義でもバーっとしましょう!」


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最終更新:2010年08月08日 22:55