和「ねえ唯」
唯「なあに和ちゃん」
和「私たちももう三年生よね」
唯「そうだけど……どしたの?」
和「新学期になる前に……生徒会も衣替えをするの」
唯「へえ、じゃあ和ちゃんも生徒会を引退するの?」
和「私はまだ残るつもりよ」
唯「おお! それなら生徒会長になってよ!」
和「うふふ、私もそのつもりよ。今度の生徒会長を決める選挙に出るつもりだから」
唯「さっすが和ちゃん! がんばってね! 私も和ちゃんに投票するから!」
和「そうなると……いいわね」
唯「? うん」
…
――翌日 軽音部 部室
ふわふわタ~イム♪ ふわふわタ~イム♪
澪「うん、結構よく録れてるな」
紬「ちょっと雑音も入ってるけど、いいね」
梓「昨日の演奏、とてもよかったです!」
唯「そう? でへへ~」
梓「あっ、唯先輩は違います」
唯「あずにゃんしどい!」
ガチャ!
律「た、た、大変だー!」
澪「なんだよ騒がしい」
律「とにかく大変なんだよ!」
紬「なにが?」
律「いいから私のあとについてこい!」ピュー
梓「あ、足早っ」
唯「どうしたんだろうね、りっちゃん」
澪「しょうがない…行こうか」
紬「うん」
…
――1階 廊下
唯「あっりっちゃん、いた」
律「ここだ! ほら早く!」
澪「なんだよ……なにがあるんだ?」
紬「あら、これはポスター?」
梓「どうやら、次の生徒会長を決める選挙のポスターですね」
唯「あっ和ちゃんもいるよ!」
紬「ほんとだ!」
澪「…で、なにが大変なんだ? 律」
律「和のポスターの公約のところをよく見てくれ」
澪「なになに……私が生徒会長に選ばれたならば、今後部活でのお茶会を禁じます…だと!?」
紬「ええっ!?」
唯「どゆこと?」
梓「つまり、和先輩が生徒会長になったら、私たちのティータイムがなくなるってことですよ」
唯「ええっ!? それは困る!」
律「だろ!」
澪「でも……なんでこんな軽音部をピンポイントで狙った公約を…?」
紬「もしや、軽音部が気に入らなかった…とか?」
律「それはないだろ。和だって私たちにいろいろ協力してくれたもの」
唯「だよね……」
梓「こうなったら、和先輩のところに行きましょう!」
律「ああ!」
唯(和ちゃん……いったい何を…?)
…
――生徒会室
律「たのもーっ!」バタン
和「あら、律……と、軽音部のみんな」
律「おい和! お前の生徒会長になった時の公約、どうなってんだよ!」
和「見たのね……」
唯「ひどいよ和ちゃん! あんなことしたら私たちのティータイムが無くなっちゃうよ!」
和「そりゃそうよ。それが狙いだもの」
澪「なんでそんなことするんだ?」
和「あんたたちのティータイム……結構先生方や生徒から苦情が来てるのよ」
紬「えっ、そうだったの……?」
和「私も今までは黙認してたけどね。生徒会長になるからにはこういうこともきっちりしないと……」
梓「そ、そんな……」
和「残念だけど、私はあなたたちの味方になるわけにはいかないの。ごく一部の声を尊重するんじゃなくて、多数の声を尊重しなきゃね」
澪(和……もう生徒会長っぽい……)
唯「そんな~……和ちゃん、そこを何とか……」
和「ダメなものはダメ! あきらめて頂戴」
唯「じゃあ、あきらめる」
梓「あきらめ早っ!?」
澪「待った! 和、なんで私たちだけ目の敵にするんだ?」
和「じゃあ言うけど……私、あんたたちのような部活は許せないの」
唯「へっ!?」
律「な、なんだとっ!」
和「あんたたちみたいにお茶ばっかり飲んでて、ろくに練習もしない部活なんてあっても意味がないもの」
律「な、なあにぃ!?」
唯「ひどいよ和ちゃん! そんなこと言うなんて!」
和「あら、本当のことを言っちゃダメなの?」
律「くっ……わかった、もういい!」
澪「り、律」
律「和がそんな薄情者だとは思わなかったよ……じゃあな!」
澪「ちょ、待ってよ律!」
紬「りっちゃん!」
梓「失礼しました……」
和「行かないの? みんな行ったわよ?」
唯「和ちゃんの……バカ!」
バタン!
和「……バカ、か……」
…
――軽音部 部室
律「あーあ、どうしよっか」
澪「どうするも何も……な」
紬「私、このティータイムがそんなに嫌われてるとは思わなかった……」
梓「ムギ先輩……」
律「気にすんなよ。あんなの和がついた嘘だ!」
唯「……」
澪「唯……」
澪(一番つらいだろうな……親友があんなことやるのは……)
さわ子「ちょりーっす」
律「なんだ、さわちゃんか」
さわ子「なんだとは何よ! 私が来て悪い!?」
澪「そ、そういうわけじゃ……」
さわ子「ん? どうしたの? なんか暗いけど」
梓「実は……」
…
さわ子「な、な、なんですって!?」
律「和は本気だよ……あいつが生徒会長になったら本当にティータイムが無くなっちゃうんだ」
さわ子「そんなこと許せるわけないでしょ!」
澪「でも……それを防ぐにはどうしたら……?」
紬「やっぱり和ちゃんにお願いするしか……」
律「そんなのダメだ! これは和との戦争なんだよ!」
梓「じゃあ、どうしようもないじゃないですか」
律「うっ……」
紬「じゃ、じゃあ和ちゃん以外の立候補者に生徒会長になってもらえばいいんじゃないかな?」
律「そっか! そうすれば和の公約も意味がなくなるもんな!」
梓「えっと……そのことなんですけど……」
澪「どうやら和の人気はすさまじいらしい」
律「なにっ! どういうことだ!」
梓「和先輩はその堅実さで生徒から人気があって、この選挙では間違いなく当選すると言われているんです」
律「なんだとー!」
澪「うちのクラスでも和は人気あるからな」
紬「それじゃあ私たちが他の人にいれても無駄なのね……」
律「打つ手なしかよ……」
澪「しょうがない。ここは和に従って……」
さわ子「いいえ! まだ手段はあるわ!」
律「手段?」
さわ子「そう! これはとっておきの手段よ!」
律「もったいぶらずに早く言えよ」
さわ子「それは……あんたたちの誰かが生徒会長になればいいのよ!」
一同「えーっ!?」
律「そんなの無理に決まってるじゃないか!」
さわ子「まだ無理とは決まってないじゃない」
梓「さすがに和先輩を打ち負かして生徒会長になるのは……」
紬「厳しいよね……」
一同「はあ……」
さわ子「うっ……そんなため息つかないでよ!」
唯「……やる」
梓「へっ? 唯先輩?」
唯「私、やるよ! 生徒会長になってみせるよ!」
律「ゆ、唯! そんなの無理に決まってるじゃないか! あいては和だぞ!」
唯「さわちゃん先生も無理とは決まったわけじゃないって言ってるじゃん! あきらめるのはまだ早いよ!」
澪「で、でもさすがにいろいろと問題が……」
唯「そんなの関係ないよ! 和ちゃんの公約を防ぐにはこれしか方法がないの!」
梓「唯先輩、落ち着いて……」
唯「うぅ……」
澪(唯がこんなに怒ってるの、初めて見た)
律「……唯の気持ちはわかった。でもな、私たちだって軽音部の活動があるんだ。これをないがしろにするのは……」
さわ子「別に生徒会長って言っても、部活と両立できるぐらいの忙しさよ?」
澪「でも……唯が今立候補しても、和に太刀打ちできるとは……」
唯「大丈夫! 要は和ちゃんに勝てばいいんでしょ?」
律「それが難しいんだよ……」
唯「私、ずっとみんなとこのティータイム続けていきたいもん! そのためには私、何だってするよ!」
紬「唯ちゃん……」
唯「ねえみんなお願い! 一緒に生徒会長になろう!」
梓「そうは言っても……」
さわ子「私は手伝うわよ!」
澪「教師が手助けしていいんですか……?」
さわ子「さりげな~く援助するわ」
紬「私も……手伝う!」
澪「ム、ムギ!?」
紬「このティータイムは私の生きがいだもん。たとえみんなに嫌われても続けたい!」
唯「ムギちゃん……!」
さわ子「……ん? 嫌われてるってどういうこと?」
澪「このティータイム、生徒や先生方からあまりよく思われてないらしいんです……」
さわ子「そんなことないわよ? 私が他の先生たちにムギちゃんのお菓子あげたりしてるけど、先生たちも喜んでくれてるわ」
紬「ほ、ほんとですか?」
律「ほら言っただろ? あんなの和の嘘だって」
紬「うん、よかった……」
律「……よし! 私も手伝う!」
唯「りっちゃん!」
律「ムギをこんなに悲しませてさ……」
律「それに、私たちがそんなんで黙ってられるかよ! 和の根性を叩きなおそうぜ!」
紬「りっちゃん……!」
律「澪と梓はどうする?」
澪「私は……」
梓「私もやります!」
唯「あずにゃん!」
梓「私だってティータイムは……その……好きだから……」
唯「もう、あずにゃんったらかわいい!」ダキッ
梓「うっ……とにかく、私も手伝いますよ」
律「よーし、あとは……」チラッ
澪「うぅ……やればいいんだろ!」
律「よし! これで全員だな!」
唯「うん!」
律「みんな! この道は険しいかもしれないが……絶対にやりぬくぞ!」
一同「おーっ!」
さわ子「じゃあ、みんながんばってね」
律「えっ? さわちゃん手伝ってくれないの?」
さわ子「あくまでサポートだから。必要になったら呼んで頂戴! じゃっ」
バタン
律「冷たいな……」
唯「とりあえず、みんなで申し込みにいこうよ!」
澪「まてまて、まずは誰が生徒会長になるか決めないと」
唯「それは私がなる!」
律「本当に大丈夫かな……」
唯「大丈夫だよー」
梓「その自信はどこから来るんですか……」
澪「じゃあ唯が生徒会長に立候補するとして……推薦人は誰がするの?」
律「それは私がやる!」
唯「えっ? りっちゃんが?」
律「なんだよ、わたしじゃ不満か?」
唯「いや、そういうわけじゃないけど」
紬「私もやりたい!」
律「ムギも?」
紬「私なら唯ちゃんのいいところをいっぱい知ってるわ! 推薦人としてぴったりよ!」
唯「ムギちゃん……///」
梓「そ、それなら私も!」
律「梓も!?」
梓「私だって……唯先輩のすばらしいところいっぱい知ってます! ムギ先輩には負けません!」
唯「あずにゃんまで……///」
律「おいおいそんなんじゃ決まんないぞ? ここは唯に決めさせようぜ」
唯「私? 私は……」
紬「……ゴクリ」
梓「……ゴクリ」
唯「澪ちゃんがいい!」
澪「わたしっ!?」
唯「だって、澪ちゃんはファンクラブもあるぐらい人気じゃん! 推薦人としてぴったりだと思う!」
律「唯は現実的だな」
澪「わ、わたしは……そんな人前に出るなんて……」
紬「唯ちゃんが言うなら……」
梓「仕方ないですね……」
澪「ちょっと……私じゃ無理だって……」
律「がんばれよ、澪」
唯「澪ちゃん、よろしくね!」
澪「うっ……やればいいんでしょ! やれば!」
律「そいじゃ申し込みに行くか」
唯「うん!」
…
――生徒会室
役員「はい、確かに受理しました」
唯「よろしくお願いします!」
役員「中間投票はこれから一週間後ですので、準備はしといてください」
唯「中間投票?」
澪「生徒会長を決めるにはまず中間投票をして、上位の二名で決選投票をやるんだよ」
唯「そうなんだ」
澪「前にやっただろ…」
唯「でへへ、あんまり覚えてない…」
和「あら? 唯じゃない」
唯「! 和ちゃん……」
和「唯も生徒会長に立候補したの?」
唯「そうだよ。和ちゃんには負けないんだから!」
和「そこまでしてお茶会を存続したいわけね……。わかった、受けて立つわ」
律「おうよ! てめえには負けないぜ!」
紬「私も負けない!」
梓「私もです!」
澪「和……」
和「澪もなの?」
澪「スマン! でも、私もティータイムが好きなんだ! これだけは譲れない!」
和「そう。それじゃ一週間後にまた」
唯「……うん」
律「よし! まずは作戦会議するぞ!」
澪「もう帰る時間だな」
唯「じゃあ私のお家に来なよ!」
紬「そうしようか」
最終更新:2010年08月11日 22:24