――平沢家

律「じゃあまずは……何から決めるの?」

澪「そうだな……和に勝つには、こっちも魅力的な公約を掲げないとな」

唯「でもどうしたらいいんだろ?」

紬「他の候補者のも見たけど……ほとんどはこの学校をよくしたい、みたいなことを掲げてたね」

唯「んじゃあ、そんな感じでいいか」

律「待て待て、そんなんじゃ和に勝てるわけないだろ」

澪「和の他の公約を見てみたけど、とくに魅力的な公約はなかったな」

梓「それならこっちが魅力的な公約ってやつを掲げればいいんですね」

唯「なるほどね~。それじゃあ何がいいのかな」

律「私的には、学校の休みを週3にするとかがいいな!」

澪「小学生だな」

律「それじゃあ澪は何がいいんだよ」

澪「私は………えと、その……」

律「無いのかよ……」

紬「私はもっとみんなが仲良くなれる公約がいいな」

律「ムギらしいな」

梓「具体的にはどういうものなんですか?」

紬「それは……言えない///」

梓「なんで!?」

唯「私だったら、学食のメニューにケーキを加えてほしいな!」

梓「唯先輩らしいですね」

律「なんて言うか、それが一番現実的だな」

澪「うん」

唯「それじゃあこれでけって~い!」

ガチャ

憂「みなさん、お茶ですよ」

律「おー、悪いね憂ちゃん」

憂「いいえ~、ところで何をしているんですか?」

澪「みんなで今度の生徒会長の選挙について話し合ってたんだ」

憂「えっ? どうしてですか?」

唯「今度の生徒会長選挙に私も出ることにしたんです!」

憂「ええっ!!? お姉ちゃんが!?」

唯「そうだけど……」

憂「いったいどうしてそんなことに……?」

律「実は……」


憂「なるほど、そういう事情が……」

唯「和ちゃんに勝つのは難しいけど……それでも私にはやらなきゃいけない戦いってえもんがあるのよ!」

憂「お姉ちゃん……」

澪「ごめんね憂ちゃん……唯のことは私たちに任せて……」

憂「お姉ちゃんかっこいい!! 私、応援するね!」

澪「うわっ、さすがは憂ちゃん」

律「よしっ、強力な味方ができたところで、今日はお開きにしますか」

唯「そうだね!」

憂「……」


――翌日

唯「おーっ!! 私の写真が貼られてる!」

律「どうやら今日が締め切りだったらしいな」

紬「唯ちゃん素敵!」

唯「いやあ、それほどでも~」

クラスメート「ねえねえ、唯ちゃんが生徒会長に立候補したって本当?」

律「ああ、本当だぞ。 ぜひ清き一票を!」

クラスメート「うん! 私唯ちゃんに入れるね!」

唯「ありがとうございます! ありがとうございます!」

紬「順調ね」

律「おう、このまま和にも勝っちゃうんじゃないの?」

紬「そうだといいけど……」


澪(そういえば……私、和と同じクラスだったんだ……)

和「……」

澪(うぅ……めっちゃ気まずい……)

和「……ねえ澪」

澪「ひゃ、ひゃいっ!?」

和「なんて声上げるのよ……」

澪「ベ、別に……。それで何かな?」

和「……いや、何でもないわ」

澪「そ、そうか……」

和「……確かに今は敵同士だけど、同じクラスなんだからそんな気まずそうにしなくてもいいわよ」

澪「そ、そうだな……そうだよね」

和「ふふふっ……」

澪「ヒッ!」ビクッ

澪(ダ、ダメだ……和から何か情報を聞き出そうにも怖くてできないよ……)


――放課後

律「いやあ、なんだか順調だな」

梓「私たちのクラスにも唯先輩に投票するようお願いしてきました」

澪「私のクラスは……無理だよな」

唯「無理しなくていいよ、澪ちゃん」

紬「じゃあ、今のところ二クラス分の票は獲得できたのね」

澪「全校生徒は720人で……3年生は除外されるから……全部で480票だな」

紬「そのうちの80票だから……6分の1は確保できたね」

梓「今回の選挙の立候補者は5人……勝ちあがるにはもっと票を集めなきゃ、ですね」

唯「そういうのは澪ちゃん達に任せたよ……」

律「私らじゃ無理だ……」

澪「まあ、この中間投票で和に負けたとしても、上位二名に入ればいいからな」

紬「でも、決選投票では中間投票で獲得した票も合算するから、ある程度はほしいね」

梓「そうですね……やっぱり、この中間投票で和先輩に勝たなきゃ苦しいと思いますよ」

澪紬梓「う~ん……」

唯「大丈夫だよ! そんなに考え込まなくても」

梓「そうかなあ……」

澪「まあ中間投票までもうすぐだから、そこでの演説を考えなきゃな」

唯「うん!」


――中間投票当日

澪「ワ、ワ、ワタシハハハ、ヒ、ヒ、ヒ……」ガクガク

律「緊張しすぎだぞ澪」

澪「だ、だって……こんな大勢の前に出るなんて……」

紬「大丈夫よ! ライブよりは簡単だから!」

澪「どこにそんな根拠があるんだよ~」

唯「澪ちゃん、大丈夫だって! 私も一緒に行くから!」

澪「唯ぃ……」ギュッ

梓「まったく……唯先輩は緊張しなさすぎですよ……」

律「こんなんで大丈夫かなあ……」

和「あら、みなさんお揃いで」

唯「和ちゃん!」

和「ふ~ん、澪が推薦人なんだ……」

澪「ははは……ははっ……」ガクガク

和「……澪で大丈夫なの?」

律「へっ! 澪の人気っぷりにビビんなよ!」

和「そうね……」ニヤッ

紬「……?」


生徒A「私には建設的な提案なんかひとつも無いっ!」

生徒B「私に逆らうものは腹を切って死ぬべきであるっ!」

生徒C「ぱわーとぅーざぴーぽー!」

律「……こう言っちゃなんだが、こいつら3人には勝てる気がしてきた」

紬「売名行為なのかしら?」

律「何のだよ!」

梓「これだったら、唯先輩と和先輩の一騎打ちになるかもしれませんね」

紬「そうね」

司会「続いては2年2組の平沢唯さんです」

律「おっきたきた」

紬「がんばって、唯ちゃん、澪ちゃん……」

澪「……」スタッ

唯(おねがい澪ちゃん!)

澪「こ、こここんにちは……わわたしはあきやまみみみおです……」ガクガク

唯(だめだったー!)

澪「わわわたしは、ひひひらさわゆゆいさんをせせせいとかいちょうに、り、り、りっこうほします!」

律「何言ってるんだあのアホ!」

梓「まずいですよこれは……」

澪「ひひらさわさんは、ががが学校のことを、よくおもっていたりしたりします!」

澪「でででですので! きよきいっぴゅっ……!」ガリッ

唯(噛んだ)

律(噛んだ)

紬(噛んだ)

梓(噛んだです)

澪「……一票をお願いします……」

パチパチ……

律「やっちまったな……」

会員A「秋山さん、かわいすぎる……」

会員B「噛んだところとか、永久保存ものだよ!」

恵「ああ! 秋山さんかわいいっ!」

紬「あっでも、ファンクラブの会員さんには好評みたい」

梓「これで会員のみなさんの票はゲットですね!」

律「ああでも、この後に出る唯がかわいそうだ」

澪「ゆいぃ……、ごめんなぁ……」ウルウル

唯「ううん、大丈夫だよ! あとは任せて!」

澪「う、うん……」

唯(……よし!)キリッ

唯「みなさん! 私が、生徒会長に立候補した平沢唯です!」

唯「さっきの秋山さんの推薦のとおり、私はこの学校のことをよく思っています!」

唯「ですが、私はあまり仕事はしたくありません!」

律「な、なにーっ!」

唯「なぜなら、この学校を改革する! とか必要ないと思うからです!」

唯「だって、この学校は十分立派じゃないですか!」

唯「こんないい学校に入ることが出来て、私は幸せ者です!」

唯「なので、私的にはこのまま、現状維持という形で生徒会長の職を全うしたいなと思います!」

唯「あっ! でもそれだけじゃなんなんで、学食のメニューにケーキでも加えようかと思います!」

唯「では! みなさん、平沢唯に清き一票を!」

パチパチパチパチ…!

律「おっ! なかなか好感触!」

紬「唯ちゃんのこの学校が好きって気持ちが伝わってくるスピーチだったね!」

梓「まあ、問題発言もありましたが、保守的な感じでいいんじゃないでしょうか」

律「そ、そだな!」

司会「続いては2年1組の真鍋和さんです」

律「来たか、真鍋和!」

紬「推薦人は誰なのかな?」

梓「ん? あっ!」

唯「うそっ!?」

憂「……」スタッ

唯「なんで憂が……!?」

憂「みなさんこんにちは。私は、平沢憂です」

憂「私は、真鍋和さんを生徒会長に推薦します」

澪「ど、どういうことだよ唯!」

唯「わ、私にもわからないよ……」

澪「憂ちゃんがまさか和の推薦人だったなんて……」

唯「一緒に壇上に上がってたのに、全く気付かなかったよ……」

憂「真鍋さんは一年生のころから生徒会をがんばってきました」

憂「なので他の候補者よりも生徒会長の職について詳しいかと思います」

唯「うぐっ……」

憂「ほかにも、学業の面でも常にトップクラスであり、他の生徒からもその人柄の良さから非常に信頼されてます」

憂「そのような人が、生徒会長に向いているのではないかと私は思います」

憂「是非、真鍋和に清き一票をよろしくお願いします」

パチパチパチパチ!

律「か、完璧な演説……!」

紬「とても1年生には見えない……」

梓「ま、まさか憂が……」

律「知ってたのかよ梓」

梓「いえ、全然知りませんでしたよ」

律「で、でもまあ、別に何も問題とかは無いんじゃ……」

梓「そんなことないです! 問題ありまくりです!」

律「な、なんでだよ!?」

紬「どうやら憂ちゃんの人気はこれまたすごいの」

梓「勉強もできるし、運動神経も人並み以上だし、性格もいいし、面倒見もいい、まさに完璧超人なのでクラスだけじゃなくて学校中でも評判があるんです」

律「そいつは知らんかった」

紬「てっきり唯ちゃんに協力すると思っていたのにね……」

梓「こ、このままじゃ私たちのクラスの票が唯先輩にいかなくなってしまいます!」

梓「私じゃ憂の人気には勝てませんから……」

紬「でも、梓ちゃんもクラスのみんなに投票を呼び掛けていたんでしょ? だったら大丈夫よ」

梓「そうだといいんですけど……」

憂「……」

唯「う、ういっ! なんで和ちゃんに協力したの!?」

憂「お姉ちゃんには関係ないよ」

唯「か、関係あるもん!」

憂「別に私が何したって、お姉ちゃんには関係ないって言ってるの!」

唯「で、でも、昨日協力するって……」

憂「それはそれ、これはこれだよ」

唯「そんな~……」

澪「憂ちゃん! いくらなんでもそれはひどいんじゃないか!?」

憂「ひどくないですよ。ただ私が和さんの考えに賛同しただけじゃないですか」

憂「澪さんたちは私に強制でもするつもりなんですか?」

澪「そ、それは……」

憂「ないなら放っといてください。私は今日からみなさんの敵ですから」

唯「うぅ……」

澪(あ、あんまりだ……。これじゃ唯があまりにもかわいそうだよ)

澪(幼馴染に続いて今度は自分の妹だなんて……)

和「私は、このたび生徒会長に立候補した真鍋和です」

和「先ほどの推薦にあったとおり、私は2年間生徒会の仕事をがんばってきました」

和「なので、生徒会長の職に就いても問題ないと私は思います」

和「それに……、さっきの『この学校はこのままでいい』という発言がありましたが……、私はそれでは駄目だと思います」

唯「!」

澪「!」

和「最近の桜高は、どこか情けないとは思いませんか?」

和「学校に平気で遅刻する人や、学業をおろそかにする人」

唯「はうっ!」

和「はては部活中にもかかわらず、ティータイムを始める部活もあります!」

紬「う…」

梓「ム、ムギ先輩……」

和「そんな学校がはたしていい学校と言い切れるのでしょうか?」

和「なので私はこの学校をよくするためにも、改革をしていきたいと思います」

和「そのためにも、勉強や部活に適した環境を生徒会が提供します」

和「あたらしい桜高のためにも、みなさん清き一票をどうかよろしくお願いします」

オー! パチパチパチパチ!

律「あ、圧倒的……!」

梓「さすがは和先輩といったところでしょうか」

紬「……」

律「だ、大丈夫だよムギ! 私たちは和が言うような悪い部活じゃないって!」

紬「うん……」

和「ふう……」

唯「うぅ……」

和「ごめんね唯。あなたの言葉を借りさせてもらったわ」

唯「そ、そんなの別にいいし!」

和「そう」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

澪(女のバトル再びか……)

憂「おつかれさまでした、和さん」

和「うん。憂もごくろうさま」


澪「唯……」


律「おつかれ!」

唯「つかれたよー」

紬「唯ちゃん、かっこよかった!」

唯「でへへ~」

律「それに比べて……あのキョドりようはなんだ! 澪!」

澪「だ、だからあんなに人がいるとダメだって言ったじゃないか!」

唯「まあまあ、澪ちゃんもよくやったよ」

梓「それよりも、まさか憂が裏切るとは思いませんでした」

唯「うん……。なんでこんなことになったんだろうね……」

紬「そうね……」

律「……ま、まあ、落ち込んでも仕方ないぞ! 結果はもうちょいで出るから、な?」

澪「そうだな」

唯「うん!」


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最終更新:2010年08月11日 22:25