◇ ◇ ◇
むにっ。
ベッドでゴロゴロしていた律は唐突にテレビを消すと、今度はその手で私にちょっかいを出し始める。
「はぁーっ、やっぱ澪のおっぱいは柔らけー…」
「………」
いつもの悪戯だ。
何かしら反応を返した時点でこっちの負けだから、無視に徹して雑誌を読み耽る。
「みおしゃーん、シカトは寂しいぞ~…うりうり。」
「……」
黙ってページを捲った。さっきから律の手つきが嫌らしい。
胸を触るどころか、いつの間にか起き上がって指先でつついてくる。
「あるぇ~?みおちゃんてば、乳首固くなってるゾ?」
「……っ…」
クリクリと指で捏ね回されてもなんとか無視を貫いたのに、今度は服の下に手を差し入れられて、脇腹に指を這わされる。
「ッひ……!」
くすぐったくて、思わず身を捩った。
それが律の情欲を煽るだけと考えれば分かりそうなものなのに。
「おほぉっ、可愛い声上げちゃってもう…止められませんなぁ~!」
「り、律っ…いい加減にっ…ひゃぅ!」
ぺろりと耳を舐められた。ぴちゃぴちゃとわざとらしい水音が私の鼓膜に纏わりついて、嫌でも思考をそちらへ向けられてしまう。
文句の一つも言ってやろうと振り向いた途端に、ずいと口を耳元へ近付け、囁かれた。
「なぁ澪、しようぜ……」
この声は反則だろ…ッ!
こんな誘い方をされると、抵抗できなくなる。しかも今日の律は前髪を下ろしているだけに、破壊力も倍々だ。
「…ダメ?」
切なそうに囁いて小首を傾げる。わざとと分かりきっているのに、その悲しそうな伏し目をされると心がキュンと締めつけられる。
駄目なわけがないのに、止める気なんてさらさら無いくせに、わざと訊くなんて卑怯だ。
「律はずるい。」
「ずるいってんなら澪もだぞ?そんな顔されたらますます襲いたくなるよ。」
「バカ…んっ、んん……」
「ちゅぅ、はぁっ、澪の唇は柔らかいな…」
「やだぁっ、声に出さないで……」
首を振って律の囁きから気を逸らそうとするも、がしっと頬を捕まえられて舌を差し入れられた。
律の舌、温かくて甘くて、蕩けてしまいそうだ……
「はぁ…はぁ…」
「やっぱ澪は可愛いな、いつか澪の事を誰かが抱くのかと思うと、妬けてくるなぁ…」
それはこっちの台詞だ。せめて、初めては律に貰って欲しい。
そんな欲望が、私の中でぐるぐると渦巻いている。
「なら、奪ってよ。」
「へっ?」
「律が、私の初めてを奪ってよ。」
「おー、澪ちゃんってば大胆☆」
「律!」
冗談で言ったんじゃない。…少なくとも私は、本気だったんだ。
けれど律は、私に応えてはくれない。いけない、そう思うとひとりでに涙が溢れそうになる。
しかしその寸前、律の腕に抱き抱えられた。
「……本当に、いいんだな?」
「……うん。律に、貰ってほしい。」
「先に謝っとく、ごめん。ずっとしてなかったからさ…今日は優しくできないかも。」
「うん……いいよ。来て、律……」
ずぷっ、といきなり横から律の指が入ってくる。
にもかかわらず私の腟は既にはしたないほど濡れていて、ショーツはもう役割を果たしていない。
「可愛い…澪。」
「ん…律ぅ…」
ちゅぅ、と首筋を吸われる。放したかと思えばまた、今度は鎖骨に口づけを落とされる。
着ていたブラウスも瞬く間にボタンを外されて、前をはだけられて。
私もお返しとばかりに律のTシャツを脱がせてブラを外すけれど、そんな事をしているうちに今度は、
申し訳程度に残された引っ掛けのブラウス以外、ブラとショーツも、するりと剥ぎ取られてしまう。
その間にも律の細い指は私の中を乱暴に掻き回してくる。
「は、ぁっ、んッ…いい、よぉ、律ぅっ…!」
「痛くない?無理するなよ。」
「うん、大丈夫だから…ッ!」
焦らさないで……!
嗚呼、脳が蕩けそうだ。
呼吸が荒くなる。
律に抱かれてるんだ、私…
「く、ふぅんッ…!り…つ…」
ビクゥッ!
身体が跳ねる。頭の中が一瞬真っ白になって、一気に快楽の頂点へ導かれてしまった。
「ぁ…もしかして、イった?指がぎゅうぎゅう締めつけられてる…。澪の中、すげーあったかいよ…」
ぐちゅぐちゅとわざとらしい水音を立てながら、律が顔を覗き込んでくる。
律に見られてると思うと、顔がかぁっと熱くなる。けど、目を逸らせない。
「みお…声、聞かせて?」
「やだ…ぁ、恥ずかしい、よぅ…隣に聞こえちゃう…」
「恥ずかしくないよ、逆に聞かせてやろう…ぜっ!」
脳が痺れて、まともに思考回路が働かない。諦めて快楽の余韻に浸っていたそのとき。
ぶちっ、と。何かが裂けたような音がした。
「ひぐぅっ!?ぁがっ……」
「…ごめんな、こんなやり方で。」
律の右手は私のあそこに挿れられたままで、けれど、左手で私の肩をぎゅっと抱いている。
私も必死に律を抱きしめるけれど、痛みのあまり思いっきり爪を立ててしまったことに気付かなかった。
そうして、どれくらいの時間が経ったのだろう。ふと、律の身体を抱きしめていた手が背中に深々と爪を立てていた事を自覚し、
慌てて放した。律は僅かにびくりと身じろぎしたけれど、何も言わなかった。
「律…ごめん、背中……」
「いいって。澪の初めて貰っちゃったわけだし。それより、落ち着いた?」
「まだ少し、ビリビリする…」
「ん、そっか。指、抜かないほうがいい?」
「うん。もうちょっと、このままにしてて。」
律を感じていたいから、もう少しこのままで…
律の胸に顔を埋めて涙を抑えようとするけれど、うまくいかない。
律は黙って、私の頭を優しく撫でてくれていた。
「ごめん。」
「なんで謝るんだよ、らしくないぞ?」
「だって、昔からいつも…律に泣きついてばっかりで、ちっとも変われてない。」
「なぁんだ、そんな事か。気にするなよ、わたしが好きでやってる事だからさ。逆に澪が頼ってくれないとなんか、物寂しい。」
ピシャァァァン! ゴロゴロゴロ……
「ひぃっ!?」
「落ち着けって澪、ただの雷だろ。」
「だって、だってぇ…」
「あー、澪は雷怖いんだっけ。昔っから変わらないよなー、そういうトコ。仕事中とかはどうしてんの?」
「それは…仕方ないから、我慢する…」
あはは、と苦笑しながらくしゃりと頭を撫でられる。
律の体温がやけに温かい。二度目の雷鳴に驚いて、思わず律にしがみついてしまった。
律は驚くでもなく、穏やかな顔を崩さないまま、ぎゅうっと私の肩を抱いてくれていた。
降りしきる雨がベランダを叩く音が、ひっきりなしに辺りを包んでいた。
「澪、そろそろいい?」
ずりゅっ、と律の指が動く。鈍い痛みはあるけど、さっきほどじゃなかった。
「んっ…!だ、いじょう、ぶ…」
ぬぽっ…
引き抜かれた律の中指は私の破瓜の血に染まって愛液が絡み、ぬらぬらと光っていた。
「はむっ…んちゅぅ、みおの味がする…」
中指の血をちゅぽんと舐めとって、律が囁く。
「ば、ばか…言うなってば!」
「だって本当の事だし?それに…澪がわたしの初めてを奪った時も、こうだったじゃん?」
「う…それ、は…」
律と初めてエッチしたとき、律は私に初めてを貰って欲しいと言ってきた。
血が出るのは怖かったし、律が痛い思いをするのは嫌だったから、できればしたくなかったけど…
他ならぬ律の願いだったから、なけなしの勇気を振り絞って律を犯した。そういえば、あの時も――
「――あの時も、律は痛いのを我慢して、笑ってくれてたんだよな。」
「ん、そうだっけ?」
「そうだよ。私が痛いのとかダメだからって、律は私に同じ事を求めたことはなかったし。」
「んー、そうだったかな。あんましはっきり憶えてないや。」
「だと思った。…ねぇ、律。」
「んー?なーに?」
悪戯っぽく笑いかけてくる。いじわるなやつだ。さっきからもぞもぞと、地味に私の中で指を蠢かせている。
「その…んッ…もっと、はぁッ…して……」
「あららら?澪のエッチな声が聞こえるぞーっと。うわ、スゴ…もうぬるぬるだー。」
「は、んぅ…ばかぁ…!」
不意に、律が覆い被さってきた。なすがままに組み伏せられる。
「り、つ…?」
「あーごめん、スイッチ入っちゃった。でも澪が悪いんだぞ、そんな色っぽい声、出すから…」
言うが早いか、ぐいと脚を押し広げられて、律が私のあそこに顔を埋める。
「り、律っ…!ダメ、汚いって…!」
「汚い?何が?こんなに美味しそうなのに、説得力ないよ澪。」
制止の声にも耳を貸さず、ぺろりと割れ目を舐め上げられた。
「っ……!?」
途端に、背筋に電流が走ったように仰け反ってしまう。声にならない声が僅かに漏れて、律は満足気に息を吐く。
「ん~、相変わらず敏感だなぁ澪は。そんな反応されたらもっと虐めたくなるよ。あむっ…」
「ふ、ぁぁ…だめ、そこ、弱いんだよぉ…」
「ひっへふ(しってる)」
クリトリスを舌先でぐりぐりと舐られて、ゾクゾクと全身に甘い痺れが走る。
頭がぼーっとして、顔に血が上って、律のことしか考えられなくなる…!
「ぁ、はぁっ…だめ、イく…ぅッ…!」
ビクッ!
きゅっ、と自分の膣が締まるのが分かる。
ピクッ…ピクッ…
小刻みに続く痙攣と快楽の余波。律の優しい顔に魅入って、無意識に涙が流れる。
「はっ、はっ……」
鼓動が早い。顔が熱い。力が入らない。
律が、私を……。
下ろした律の前髪が額を撫でる。さらりとした感覚が、くすぐったくも心地いい。
「みーお。…気持ちよかった?」
「…うん。」
それだけ答えるのが精一杯だった。なのに、律は笑って「そっか」と頷くと、黙って私の手を握ったままベッドに身を起こしている。
でも…それだけじゃイヤなんだ。律と一緒に笑っていたい。律も、私に素直な気持ちをさらけ出して欲しい。
少しダルさの残る身体を無理矢理起こして、律に寄り掛かった。
「律…ちょっと、四つん這いになって?」
「どうしたんだよ澪、今日はえらく積極的だな。」
そうは言いながらもまんざらでもない様子で、律がベッドの上に四つん這いになる。
私は動物の交尾のような姿勢で律に後ろから覆い被さり、抱きしめて囁いた。
「律……愛してる。」
律の顔は見えない。でも、穏やかに柔らかな声色で返してくれた。
「わたしも、世界中の誰より澪を愛してる。」
少しトーンが震えてるのは、きっとこんな姿勢だからなんだろう。
その言葉を皮切りに、ぺろりと律の背中に刻んでしまった爪痕を舐める。
小柄で綺麗な律の背中、その肩甲骨の辺りにつけられた、鉄の味がする紅い印。
くすぐったいのか、律はぴくぴくと身体を震わせて息を荒くしてる。
「み、みお…ぁ、だめ…そこ、舐められるとっ……!」
「ん…れろ…もしかしてココ、責められるの弱い?」
「う…んッ…!」
偶然だけどまた一つ、律の性感帯を知った。殆ど無意識に左手が律の秘所に伸びて、その温もりを確かめるように触れた。
律のそこは下着の上からでも分かるくらいにじわりと熱をもっていて、快楽がもたらす甘い蜜に溢れていた。
膝までショーツを下ろすと、たっぷりと吟味するように、人差し指と中指の第二関節まで挿し入れてゆっくりと出し入れする。
その度にきゅう、と私の指を咥えこんで放すまいと律のひだが絡みつき、くちゅりと官能的な調べを奏でる。
「律のここ、私の指を放してくれないんだけど。」
「そんなこと、言われてもっ…!」
喘ぎ喘ぎの反論は弱々しくて、律がいつになく小さく見える。
さっきのお返しとばかりに、首筋を舌先で責め立てながら、右手の人差し指を律の口へ滑り込ませた。
「んんっ…」
「はぁっ…律の口、温かくて気持ちいいな。」
律の意思にはお構いなく、くちゅくちゅと口内をまさぐる。柔らかくて生き物のように感じる舌を弄んでいると、
最初は戸惑っていた律も徐々に舌を動かして、私の指に絡めてきた。律の唾液が人差し指から手の甲を伝って零れ落ちる。
こうして律を犯しているうちに、次第に律の腕の力が抜けてきたのが分かる。上半身を支えられなくなって、がくりと
崩れ落ちた。腰の力も抜けてしまったらしくて、膝を折ったままへたりとベッドにダウン。
「ぁ、ふ…んっぁ!」
私が僅かに左手の中指を動かす度に、普段の強気に似つかわしくない可愛い嬌声を漏らしながら、ふるふると全身を震わせている。
ダメだ、可愛過ぎる…!健気に私の指をしゃぶる律の頬は紅く染まって、いつもは幼い顔立ちが色っぽく見えて仕方がない。
ぬるりと律の唾液がたっぷり絡んだ右手を口から引き抜いて、じゅる、とわざと音を立てて舐めとる。
「ん…ふ、律の唾液、甘くておいしい…」
「や、やめろって、ばぁ…ぁ、ぁぁ…!」
律はそれが恥ずかしいのか、喘ぎながら私の手首を押さえようとする。私は返事をする代わりに、律に挿入したままの
指を少し激しく動かす。天井を擦るように触れると、律の身体が面白いように跳ねる。
「み、みおっ、許し、て…そんなに激しくしたらぁッ…!」
「律、可愛いな…イきそうなの?」
律は馬鹿みたいに、こくこくと頷いて懇願する。私もさっき律にイかせてもらったし、お返ししようかな。
ぬぷっ、と指を引き抜いて、ベッドに寝っ転がる。
「ぇ…?な、なんでぇ…」
最終更新:2010年08月13日 21:43