田井中家

律「ただいま~」

聡「お帰り、どこ行ってたの?」

律「ちょっと買い物な」

聡「また澪さん達と?」

律「うんにゃ、今日は誰も相手してくれなくてさあ、ひとりぼっち」

聡「あれ、姉ちゃんもしかしてハブられてんじゃないの?」

律「ばっかたれ、そんなことあるわけないだろ。人気者なんだぜ~あたしは」

聡「ふ~ん」

律「あ、信じてないな、こら」

グィ ギュッ

聡「ぐえっ!」

律「うりうりうり」

聡「チョークチョーク!」

律「うりうり、どうだこら」

ムニュ

聡「ね、姉ちゃん…背中にオッパイあたってる……」

律「えっ!いやんもう!」

律「……とか言うわけ無いだろ!」

聡「ぐえぇ、放すと思ったのにぃ」

律「弟にオッパイ当たろうが関係ねーし」 

聡「しまった、当たるほどオッパイなかった」

律「よし、このまま地獄へ落ちろ」

聡「あぐぅ、許して…ください」

律「あたしだってこれから澪並みになる予定なんだからな」

聡「き、期待してます」

聡「ゴホッゴホッ、ひでぇよ」

律「まあ今日はこれくらいにしといてやる」

聡「もう少し女らしくなれよ……」

律「あん?なんか言った?」

聡「いやなにも」


律「ああそうだ、はいこれおみやげ、この漫画好きだったろ」

聡「あっこの新刊もう出てたんだ !やった!サンキュー姉ちゃん」

律「後であたしにも読ませてくれよな」

聡「うんっ!」


律「ああ~お腹すいたな~」

律「まだ5時じゃん」

律「そうだ部屋にポテチョ残ってたかもー」


♪ピンポーン

律「あれ?




聡『はい』


聡『あ、どうも』


聡『ちょっと待ってください』

聡『ねえちゃーん、友達来てるよー!』

律「あん?誰だろ?」

聡『ねえちゃーん、ともだちー!』

律「聞こえてるってー、いま下りるよー」

 トントン

律「誰だー?……って、あれ?和じゃん!」


和「こんにちは」

律「珍しいなー、わざわざあたしの家までいったい何事だ?」

和「律、今時間ある?」

律「あるある、全然暇だぜ」

和「よかった、じゃあちょっと付き合って欲しいんだけど」

律「いいけど、面倒事はいやだな~」

和「そんなんじゃないわよ、ちょっとドライブ」

律「え?ドライブ?誰か一緒に来てんの?」

和「来てないわよ、私一人だけど」

律「でもドライブって普通は自動車……」

和「ほら見て、私運転免許取ったの」

律「へぇっ!?」

和「えっへぇ」

律「うひゃ、ほんとなんだ!」

和「うん凄いでしょ」

律「そんなの取れんの?」

和「免許は18歳で取れるわよ」

律「いやそうじゃなくてさ、うちの学校そういうの禁止じゃなかったっけ?」

和「まあ原則はそうなんだけど、ちゃんと理由を届け出れば許可もらえるのよ」

律「そんなの聞いたことないぞ」

和「学校側もあまり大っぴらにはしてないから知ってるのは少数なんだけどね」

律「生徒会とか?」

和「まあそんなところかな」

律「ずるっ!」

和「ずるくはないわよ、律だって理由があれば許可されるわよ」

律「なにそれ、理由って?」

和「卒業後就職してすぐ仕事で車に乗らなきゃいけないとか
  家族を病院や介護施設に送り迎えしなきゃいけないとかね」

律「は~ん、それで和はどんな理由?」

和「ええとね、取りたかったから……かな?」

律「それ理由になんの?」

和「まあ生徒会長なら」

律「やっぱりずるっ!」

和「こういう役得もないとね、エヘッ」

和「で、どう?付き合ってくれる?」

律「いともさ、でも和、運転の方は大丈夫なんだろうな」

和「まかしてよ、ちょっと走ってどこかで食事なんてどう?」

律「いいな、よしっ、じゃあ行こうっ!」



玄関先

律「へえ、これが和の車かあ」

和「借り物よ、親戚のおじさんのなんだけど今乗ってないから使っていいって」

律「けっこうイカツイな~ヤンキーが乗ってるやつみたい」

和「車高落としたり太いタイヤに変えたり結構いじってあるからね」

律「さわちゃんの車みたいなのかと思ってた」

和「型は古いけど、スポーツタイプだからね」

和「さあ乗って乗って」

律「はいはい、お邪魔しまーすっと」

ガチャ バドムッ!

律「よいしょっと、うわぁなんか視界が低いな」

和「シートベルトしてよ」

律「はいはい……これだな」 

ズルズル カチッ

律「装着オーケー!」

和「ええっと……エンジンかける時はブレーキ踏んで
  ギアはニュートラル確認してと……」

律「あれ?これって足のペダル3つもあるじゃん
  普通は2つじゃなかったっけ?」

和「え?ああこの車オートマじゃないからね、クラッチペダル付いてるの」

律「へぇ、よく分かんないけどなーんか難しそうだな」

和「左足でクラッチ踏んで、右足でアクセルとブレーキ
  右手でハンドル、左手でこのシフトノブを操作するのよ」

律「手足全部バラバラに使うのか、こりゃあたしにゃ無理っぽいな」

和「慣れたら平気よ、ドラムだってそんな感じじゃない」

律「まあそうなんだけどさ」

和「こういう操作もリズムが大事だから、律だったらうまくできると思うわよ」

律「でも機械ものは苦手だんだよな~」

和「扱い方次第よ、じゃエンジン掛けるね」

和「キーを挿してエンジンを……あれ?キーが回んない」

和「あれ?あれ?」

律「和……」

和「大丈夫、大丈夫よ、そんな顔しないで」

和「んとんと……あっ!そっか」

和「そうそうハンドルロックだわ」


律「なんか不安になってきた……」

和「こうするとロックが外れて……キーが回ると」

カチャ  キュルルルルッ! ドウン!

ブロブロロロロロロロッッッr!!


和「ほら掛かった、ね、掛かったでしょ」

律「そ、そうですね(エンジン掛かっただけでなぜそんな嬉しそうなんだよ)」

和「よしよし、さあ出発よ」

和「ギアをローに」

和「んしょっと、これ特にクラッチ重いのよね」 ゴクッ

和「指示器出して……」カチ

 カッチカッチカッチカッチカッチカッチ

和「後方確認、よし」

律「うはドキドキしてきた」

和「半クラでアクセルを……」

ガッ! ゴゴン! 

律「うきゃわっ!なに? どうなった!?」

和「……エンストしちゃった」

律「故障?もしかしてつぶれちゃった?」

和「そんなことはないと思うんだけど……」

和「あ、サイドブレーキ下ろすの忘れてた」


和「律にいいとこみせなきゃって焦ったのよ」

律「いや普通にしてくれればいいですから、ほんとにほんとに、マジでマジで」

和「じゃ気を取りなおして」

カチャ  キュルルルルッ! ドウン!

ブロブロロロロロロロッッッr!!

和「んしょ」  ゴクン


カッチカッチカッチカッチカッチカッチ

和「後方確認、よし」


和「クラットミート!アクセルオン!」

ガッ!ギュルルッル!

律「うひゃあっ!」


和「ほら、大丈夫、ちょっと急発進気味だったけど」

律「あわわ」




和「んしょ 2速」


和「んしょ 3速」


和「あ、赤信号」

キュ


律「ほっ」

和「どうしたの?黙りこんじゃって」

律「え?あ、ちぃっと緊張がぁ……」

和「すごい汗、エアコン強くしようか」

律「そういうことじゃないんだけどさ、手に汗握るっつーか」



和「この信号曲がったら大通りね」

律「あっ!そこ右行ったらファミレスあるし!そこへ……」

和「何言ってんのよ、まだ走りだしたばっかりじゃない」

律(いやもう降りたいし)

和「それに……」

律「?」

和「大きい交差点で右折はまだちょっと……怖いかな」

律「えっ、怖い?」

和「ほら対向車がどんどん来て怖いじゃない」

律「怖いのかよ」

和「ああ心配しないで、もちろん左折はバッチリよ」

律「じゃ……どうすんのさ?」

和「とりあえずずっと左折を繰り返してれば」

律「してれば?」

和「ぐるっと回って元に戻れるんじゃないかなあ」

律「どこを一周する気だよ!」

和「なーんて、冗談よ」

律「なんだよぉ」

和「半分くらいね」

律「笑えねえって」

和「あ、信号青になった」

ガッ!ギュルルッル!

律「うきゃ!」

律「だから、急発進はやめてぇ」



幹線道路

和「んしょ」 

律「なあ和」

和「なに? んしょ」

律「後ろに渋滞できちゃってるけど、ゆっくり走り過ぎなんじゃ……」

和「これで制限速度よ んしょ」

律「でもほら後ろの運転手さんなんか怖い顔して睨んでるし」

和「じゃあぶっちぎってみようか?この車本気出したらすごく速いのよ。私のマシンガンシフト見てみる?」

律「いや!いいですっ!このままでいいですからっ!」

ブロロロロロロオォォォォ

和「ふふ、調子出てきたわ  んしょ」

律「うんそんな感じだ」


和「なにずっとこっち見てるの? んしょ」

律「いやさあ、親が運転してるのはいつも見てるけど」

律「こうやって自分の友達が運転してるの見てるのって不思議な気分になるよな
   すげえ大人になったような気がするぜ」

和「子供の頃は車運転できるイコール大人ってイメージあったもんね」

律「いや、あたしは今でもそうなんだけど」

和「んしょ よしここで右折してみようっと」

律「なんか複雑な交差点だけどさ」

和「でも右折信号あるから平気よ」

律「そっかそれならいいな

和「あ、矢印出たわ んしょ」

ブルルン

律「おお、発進もスムーズだ」

和「えへへっ……って、あれ?道が二手に分かれてる、どっちだろ?」

律「え、えっと」

和「えい、こっち行っちゃえ」

和「あ、やだこの道って」

律「ないなに?」

和「このまま行くと高速道路入っちゃう」

律「それやばいだろっ」

和「でもここまで入っちゃたらもう引き返せないわ」

律「引き返せないって」


和「もう載るしかないわね、幸いETCも付いてるし」

律「落ち着いてるけど和、高速走ったことあんの?」

和「あるわよ、教習の高速課程でだけど」

律「なんだろ、胃が痛い……」


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最終更新:2010年08月13日 22:51