憂「問題?」

姫子「そう、移動出来るのは一人までなのよ。今空いてるのは私の部屋だけなのよね」

唯「えぇ~…」

憂「…、お姉ちゃんを移してあげてください」

唯「憂!? 何いってるの!」

憂「大丈夫お姉ちゃん。私は一人でも大丈夫だから…ね?」
唯「憂…」
姫子「…(なるほどね)」

唯「なんとかならない姫ちゃん?」

姫子「う~ん…枠が空いたらいけるかもだけどねぇ…どうかしら」

唯「そっかぁ…」
憂「お姉ちゃん、私のことは気にしなくていいから…」

唯「ううん。憂も来ないと行かないよ! 私一人だけ行くなんて出来ないよ…私の為にこんなとこに来ることになったのに…これ以上迷惑かけられないよ」

憂「お姉ちゃん…」

姫子「(いいわぁ、最高。これは脱獄云々なしでも飼っちゃいたいわね)」

姫子「そういうことなら仕方ないわね…。まあ空きが出たらまた連絡するわ」

唯「お願いします」ペコリッ
憂「お願いします」ペコリ



一般収容施設───

姫子「(さ~てと、誰に消えてもらうか…)」

純「姫子さん漫画読みに行きましょうよう!」

姫子「(純か…でもこの子は従順だし作業の班長でもあるし脱獄には何かと使えそうだしな…)」

佐々木「早く行きましょうよ」

姫子「(こいつでいっか)うん、行こうか…」

梓「お掃除するですよ~、トイレペーパーない人は申告してくださいです」

姫子「(何あの子可愛い…掃除バイトかぁ~残念)」

梓「(やっぱり唯先輩達はいないか…憂は何とかこっちに来るって言ってたけど大丈夫かな…)」


純「刑務所の中も案外悪くないですね~ジャンプ読み放題なんて!」

姫子「そう~? 最近じゃジャンプも落ち目じゃない? やっぱり私はヤングワロスが好きだわ」

佐々木「ちょっとトイレ」

純「行ってらっしゃ~い」

姫子「……」

純「姫子さんもトイレですか?」

姫子「ん~? ちょっとお水取りに行くだけよ。純の分もとってきてあげるわね」

純「ありがとうございます」ニコニコッ

姫子「(可愛いわねぇほんと)」


佐々木「…ふぅ」

手を洗い蛇口を閉める。きゅっきゅっと云ういい音がした後、顔を上げ鏡を見ると自分の顔以外にもう一つ映るものがあった。

佐々木「あ、姫(ry」

ぐしゃっ……

──────

おい、誰か呼べ!早くしろ!

梓「何事ですかね?」
掃除係「さあ…なにかねぇ」

看守「どいてどいて!」

看守が焦りながら独房に入る。

看守「これは酷いわね…」

梓も興味を惹かれたのか看守を避けるようにして独房の中を覗き込むと

梓「ひっ…ち、血だらけ…」

血だらけの女性がトイレに突っ伏すように倒れ込んでいた。

純「佐々木さん…!? 佐々木さん! 誰がこんなことを…」
姫子「あらまぁ…んふ」
梓「!?(この人…笑ってる…?)」


夜ご飯

唯「ハンバーグとか出ないのかな?」もぐもぐ

憂「出ないと思うよ」もぐもぐ

唯「姫ちゃん来ないね。というか一般収容施設の人ほとんどいないね。何かあったのかな」

憂「どうしたんだろうね…」

姫子「はあ…」

唯「あっ、姫ちゃん! こっちこっち~」

姫子「あぁ、唯に憂。参ったわ全く」

唯「どうしたの??」

姫子「何か喧嘩があったらしくてね…人が怪我しちゃって…」

憂「そうなんですか…?」

唯「怖いね憂…」

憂「うん…」

姫子「でもそのおかげ…って言い方も悪いわね。空きは出来たわ。ただ二人一緒の部屋って言うのは無理だから…」
唯「う~ん…どうしよっか憂?」
憂「(別々でも当初の予定通り一般収容施設には移れるなら…)」
憂「移動しよ、お姉ちゃん!」

唯「憂がそう言うならいいよ! 姫ちゃんよろしくね!」

姫子「おっけ。ただ今は色々あって禁固刑中だから注意してね。部屋はどうする? 私と一緒の部屋はどっちにする?」

唯「どうしよっか?」

憂「お姉ちゃん行きなよ。姫子さんなら安心してお姉ちゃんを任せられます!」

姫子「嬉しいこと言ってくれるわね」

唯「わかった! じゃあよろしくね姫ちゃん!」

姫子「うん、こちらこそよろしくね」

姫子「明日の朝には移動出来ると思うから、今日は狭いベッドで我慢してね。じゃあまた明日」

唯「またね~ばいば~い」

憂「(刑執行は明日の6時…間に合うかな…いや、間に合わす…必ず)」



一般収容施設

姫子「(来るのは唯ちゃんか~…まあいっか。妹の方が溺愛してるみたいだし問題はないでしょ。佐々木には悪いことしたわね、けどまあ一人やるのも二人やるのも変わらないよね)」

隣の独房
ベッドの上で体育座りをしたまま、俯いて動かない

純「佐々木さん…誰が…。決まってるよねそんなの…でも…」

純「やっぱり…怖いよ…こんなところ…いたくない…お母さん」



特別収容施設───

唯「…憂、起きてる?」

憂「うん…なぁにお姉ちゃん?」

唯「明日から別々になっちゃうね…」

憂「……うん」

唯「本当によかったの?」

憂「お姉ちゃんを出すためだから…」

唯「憂はいっつもお姉ちゃんお姉ちゃんって…嬉しいけど…辛いよ…私にも憂のこと、心配させてよ…頼ってよ…」

憂「お姉ちゃん…ありがとう。(でも…もう私は…)」

それ以上憂は語らず、ただ寄り添い合って眠った。

憂「(いつかまたここではないどこかで、一緒に眠れたらいいな…)」



運命の朝────

看守「平沢唯、憂、出ろ。一般収容施設に移動する。ついてこい」

唯「(やったね憂♪)」
憂「(うん♪)」

頑丈な扉を抜け一般収容施設に入る。
一階、二階に何個もの独房がある。今は自由時間のはずなのに扉は完璧に閉まっていた。

看守「平沢唯、お前はここだ。良かったな、可愛がってもらえよ」

唯「?」

姫子「ふふ、いらっしゃい唯ちゃん…」

看守「平沢憂、お前はこっちだ。仲良くしなよ」

憂「えっと…平沢憂です…これからよろしくね」

純「……鈴木純…よろしく」

憂「じゃあ純ちゃんって呼んでいい?」

純「……好きにして」


特別収容施設の服から一般収容施設の服に着替える唯。

姫子「唯ちゃんって結構着痩せするタイプ~?」ジロジロ

唯「そ、そんなジロジロ見ないでよぅ…恥ずかしいよぉ///」

姫子「うふふ…可愛い」

姫子はゆっくり唯に近づくと胸をまさぐり始めた。

唯「あっ…もぅ…くすぐったいよぅ」

姫子「(この反応…もしかして処女かしら。大当たりねほんと)」

そのままブラの奥にスルリと手を滑り込ませる姫子。

唯「やぁん…」

姫子「ふふ…」

首筋を舐め回す様にキスをしていきながら指で乳首を転がす。
そしてとうとう姫子の手が唯の…

唯「やめっ…」

看守「朝飯だ! 早く出ろ! 禁固中だから並んで行ってもらう! いいな!」


さっと手を引き出ていく姫子。

姫子「な~んてね。早く着替えなよ唯ちゃん」

唯「もう~…」フンス

憂「純ちゃんって私と同い年ぐらいかな?」
純「今年17だからそうだね…」

唯「あっ、う…」
姫子「唯~早く~」
唯「……うん、今いく」

食堂───

姫子「でさ~……おかしいでしょ~?」

唯「あはは…」チラッ

純「…」パクパク
憂「純ちゃんお魚好きなの? 私のもいる?」
純「……もらう」
憂「はい♪」
純「///」

唯「(憂は仲良くしてるみたいだね……良かった)」
姫子「ねぇ唯ってばぁ!」
唯「あ、う~ん聞いてるよぉ」

憂「(刑は午後6時…やっぱり時間が足りない…何とか伸ばせないかな…)

純「憂、憂ってば」

憂「ん? なぁに純ちゃん」

純「この後作業があるから。特別収容施設じゃやらなかったと思うけどこっちじゃやってもらうことになる。私の班に入ってもらうからついてきてね」

憂「うん。わかったよ純ちゃん♪」ニコニコッ

純「(可愛い…)」

隣の独房───

唯「やめてよ姫ちゃ…ぁんっ…」

クチュクチュ…

姫子「何よもうこんなに濡らしてるくせに…唯、キスしよ」

唯「い、いや…」

ぬちゃりと絡み付く濃厚なキスをされる唯。

唯「ん……」ポー…

姫子「んふふ…」



──────

澪「律、準備は?」

律「完璧ぃ。そっちは?」

紬「えぇ。何とか贈り物は憂ちゃんに届けられたわ」

澪「こっちも裏は取れた…。後は…」

三人は高い、高い、桜ヶ丘刑務所の壁を見据える。

律「この壁は…私達全員で突破する」

紬「梓ちゃんは?」

澪「まだ中だよ。一番の功労者は梓だな」

律「何いってんだよ、憂ちゃん…だろ…」

澪「……無事かなみんな」


──────

看守「平沢憂、届けものだ。サインしろ」

憂「はい…」

純「何々?」

憂「そんな大したものじゃないよ」

純「汗ひき様のスプレーに…ガムに…手紙?」

憂は素早く手紙に目を通す

憂「じゃあ作業いこっか、純ちゃん」

純「ん? うん」

純「姫子さ~ん作業行きますよ~」

姫子「あらもうそんな時間? せっかくいいところだったのに、ねぇ唯ちゃん?」

唯「はぁ…はぁ…んっはぁ…」

憂「お姉ちゃん汗いっぱいかいてるよ? 汗ひきようのスプレーあるから使う?」

唯「ん~ん…大丈夫」

看守「さっさとしろ。終わったら定期検診だからな」

純「作業、と言っても簡単です! ここで空き缶のプルたぶをとって分類するだけどね」

憂「(一般収容施設を出て外の小屋にあるんだ…ここは昔…)」

姫子「姫子地味な作業苦手なのよね~…唯ちゃん私の代わりにやってよ」

唯「えっ…」

憂「!?」

姫子「な~んて嘘よ嘘。純~やっといて。私寝てるから」

純「はい…」

憂「純ちゃん…いいの?」

純「私の昔のあだ名じみちゃんだったから…こういうの得意なんだ!」

憂「純ちゃん…」

唯「三人でやればすぐだよ!」
憂「お姉ちゃん…」
純「うんっ」
姫子「~zzz」



診断室───

看守「お前達が最後だ。早く済ませろよ」

姫子「は~い」

和「じゃあ服を脱いで」

憂「」クチャクチャ

唯「憂なに食べてるのー?」

憂「ん~? ガムだよお姉ちゃん」

唯「あっいいないいなぁ! 私にもちょうだい!」

憂「はいお姉ちゃん♪」

唯「えへへやったぁ♪ 」クチャクチャプクー

純「あ~っ!私にもちょうだいよ!」

和「静かにしなさい」

唯「は~い」

和「……」

唯「お願いします!」

和「はい」

唯「……、……、冷ちッ!」

和「あ、ごめんなさいね。はぁ~はぁ~」

和は聴診器を息で温めると再び唯のお腹につける。

和「これでどうかしら?」

唯「冷たくないよ! ありがとう先生!」ニコニコッ

和「……//」

憂「……」

──────

純「あ~恥ずかしい恥ずかしい。早く帰ろっと。じゃあ先行ってるね憂」
憂「うん」

和「最後はあなたね」
憂「あの…先生」

和「真鍋和よ。どうしたの?」
憂「私、和先生が二番目に診察した人の妹なんです」
和「えぇと…平沢憂ちゃんね。さっきのが平沢唯ちゃん」
憂「はい…」

憂「実はお姉ちゃん今日熱があって…だから刑の執行を伸ばしてくれる様言ってくれませんか?」

和「熱? さっきはそんな風に見えなかったけれど…」

憂「和さん…さっきお姉ちゃんを診察した時に熱くありませんでしたか?」

和「熱く…? ん~…確かに何だかこうモヤモヤしたわね…」

憂「お姉ちゃんが熱だからですよ!」

和「う~ん…そうなのかしら」

憂「(やっぱりお姉ちゃんの可愛さは大地を揺るがすだよね! 和さんもお姉ちゃんの魅力やられちゃってるみたい)」

和「確か無期アイス懲役よね? 確かにそれだと熱があると困るわね…暴れるかもしれないし」

憂「はい…」

和「わかったわ。何とか言ってみるわね」

憂「ありがとうございます! じゃあ」クチャクチャ…

バタンッ

憂はガムを包み紙に包み、廊下にポイ捨てする。

ブロロロ…

梓「……(あったこれか)」

梓はその包まれたガム拾いあげる。

梓「こんにちは~、ゴミ回収に来ました~」

和「あらご苦労様」

梓「忙しそうですね」

和「うん、ちょっとね色々あってね」

梓「(順調ってことか…)」
梓「じゃあゴミ回収しますね」

梓はゴミを回収し、診察室を出ていく、時───

梓「(今だッ!)」

さっき憂が噛んでいたガムを包み紙から引き剥がし、ドアの鍵ポケットにそれをねじ込んだ。

それを更にちょうどに収まる厚紙を嵌め込み出ていく。
旧式のドアで鍵をかけると鉄板が木の溝にハマり鍵がかかるというものだがその木の溝に梓はガムと厚紙を入れたのだ。

梓「(上手くいった…!)」

梓「(後は憂の仕事だからね…頑張って)」

─────

律「そろそろ夜6時…もし刑期執行場所に明かりがつけば…」

澪「失敗だ。唯は二度とアイスを食べられなくなり廃人同然で釈放される…」

紬「(……なんでアイスを食べられなくなるのかしら?)」

時刻は間も無く午後6時を迎えようとしていた。


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最終更新:2010年08月14日 20:55