唯「あああっ、うううっ」

唯「はあっ、はああっ」ガクガク

憂「お願いお姉ちゃん」

憂「その方が楽になるよっ」

唯「いやだっ!嫌だよっ!!!!」

憂「お姉ちゃんの苦しむ姿、もう見てられないよ…」

唯「嫌だよっ、私っ、悪くないもんっ!!!!」

唯「殺す気なんて、なかったんだもんっ!!!」

憂「お姉ちゃん、よく聞いて…」

憂「ココに来たのは、梓ちゃんを運ぶ為じゃないの…」

憂「ちゃんと向き合うため」

憂「私と、お姉ちゃんが…梓ちゃんに!」

唯「!!?」

憂「私、お姉ちゃんが梓ちゃんを殺したこと、すぐ気付いちゃった」

憂「お姉ちゃん、私にばれないかとすごく辛そうだった…」

憂「だから、私の方から、気付いてる事教えたの…」

唯「これはね、違うんだよっ、事故なのっ、私っ!!!」

唯「悪くっ、全然悪くないもんっ!!!!!」

憂「……」

憂「わかってるよ…」

憂「でもね、望まなくても悲劇は起こるものなんだと思うの…」

唯「そんなっ、なんで私がぁっ!!!嫌だよっ!!!!」

憂「お姉ちゃん…」

憂「梓ちゃんはね、死んじゃったの」

憂「お姉ちゃんが殺したのっ!」

唯「ううっ、ああああっ」ガタガタ

憂「じゃあ、隠し続けてみる?」

憂「お姉ちゃんの為なら、私、親友の梓ちゃんを」

憂「海に捨てに行ってもいいよ」

唯「あああっ、あああああっ!!!!」

憂「こんなやり方、きっとお姉ちゃんは耐えられない…」

憂「事件を隠す事は、逃げてるようで」

憂「実は追い込まれているだけなんだよ…」

唯「はあっ、はあっ」

唯「嫌だーっ、私は自首しないっ、私は悪くないーーーーっ!!!」

憂「お姉ちゃんっ!」

憂「じゃあ、なんで今苦しんでるの?」

唯「はあっ、あああっ!」

憂「心の奥ではお姉ちゃん、悪いと思ってる」

憂「その気持ちから逃げたらだめっ!」

唯「はあっ、はあっ」

憂「本当の事は辛いし、嘘は傷つくし」

憂「どっちもいやな事だけど」

憂「二人で向き合って、背負っていこうよ」

憂「悲しい本当の事実と、嘘をついてしまう自分の心に…」

憂「きっと出きるよ…私達なら…」

唯「ううっ、憂…」

憂「お姉ちゃん…」

憂「もうすぐ澪さんも来るよ」

憂「今から警察に電話するからねっ」

唯「!!!?」

唯(ううっ、でもっ、嫌だよっ、やっぱり逮捕されたくないよっ!!!!)

唯「嫌だよ憂っ!止めてよっ!!!」

憂「お願いお姉ちゃん、言うことを聞いてっ」

唯「やめて、だめっ!!!」

憂「お姉ちゃん、一生苦しむのよ?」

憂「こっちの方がイイに決まってるっ!!!!」

憂「もっと早くに『して』あげればよかったっ!!!」

憂「お姉ちゃん、だから暴れないで、大人しくしてっ」

唯「わーっ!!!」ガバッ

憂「ああっ、くっ、ああっ!!!!」ドッ

ドゴッ!!!!

バタッ…

澪「唯っ!ココにいるのかっ!?」

純「憂ーっ!」

澪純「!!!!!?」

澪「えっ…うっ、そんな…」

純「きゃーーーっ!!!!」


憂「」グッタリ

唯「澪…ちゃん」

唯「私…憂を……」

澪「ああっ、くそっ、もう少し早ければ…」

純「あーん憂ーっ!!!ういーっ!!!!」ガバッ

純「ううっ、えっ?ああっ?」

純「梓?梓なの!?そんなっ、そんなぁっ!!!」

純「わーーーーーーーんっ!!!!!」グシャグシャ

澪「悲劇だっ、最悪…だ」

唯「あ…ううっ……」ペタン

________________________
__________________
___________

唯「これが事件の全貌…」

和「うそっ、そんなっ…」

唯「ごめんね和ちゃん、あずにゃんを殺したもの」

唯「憂を殺したのも私…」

唯「私を最後まで守ってくれようとした憂までも、私は…」

唯「ううっ、うううっ」ポロポロ

和「なんてことなの!?」

和「私達も、世間の人たちも、憂ちゃんが梓ちゃんを殺したと思っているのよっ」

唯「全部私が悪いの…」

唯「その私が生き残ってる」

唯「そんなの、赦されないっ」

和「!?」

和「唯、馬鹿なことは考えないでっ!」

和「唯っ!」ダキッ

唯「和ちゃん…」

和「あなたは、今報いを受けてるわ」

和「自分が壊れるほど、苦しみを味わってる」

唯「和ちゃん、私、人殺しだよ?」

唯「人殺しに優しくされる資格なんて無いよ…」

和「唯…」

和「憂の言葉を思い出して、罪を引き受けて、償っていくのよ…」

和「それでしか、唯は救われないわ…」

唯「私にできるかな?」

和「出来るわっ」

和「私が憂の代わりになってあげる」

和「一緒に償っていきましょう」

和「だから、憂や梓の為にも逃げないで」

唯「和ちゃん…」

ガチャッ

看護士「そろそろいいですか?」

和「ええ」

和「それより、大変なんですっ!」

和「唯の事件の、新事実が分かったんです!」

看護士「!?」

看護士「ふふっ」

看護士「あはははっ」

和「何を笑ってるんですか!」

和「不謹慎ですよっ!?」

和「唯も何か言ってよっ!」

唯「あははっ、えへへっ」

和「!?」

和「ちょっと唯っ?どうしたの!?」

和「さっきまで、しっかりしてたのに…!?」

看護士「すいません、真鍋さん」

和「?」

看護士「これ、よくある事なんですよ」

和「よくあることっ?」

看護士「ええ、平沢さん、急に頭が回りはじめたと思ったら」

看護士「変な事言い出すんですよ」

和「変な事?」

看護士「はい、その事件の事なら」

看護士「実は犯人は地底人だとか」

和「!?」

看護士「アメリカ大統領の陰謀だとか」

和「はぁ?」

看護士「とにかく、そんななんですよ、笑ってすみません」

和「……」

看護士「病人の妄想ですよ、真鍋さん」

和「そ、そんなっ」

看護士「あなたは真面目そうだから、信用しちゃうんですね」

看護士「私達からしたら、いつもの事なもので」

和(ついに真実が明らかになったと思ったのに)

和(これも妄想だったと言うの!?)



喫茶店

カランカラーン

澪「」キョロキョロ

和「こっちよ澪!」

澪「和、久しぶりだなっ」

純「和先輩、ご無沙汰してます!」

和「ふふっ、二人とも、変わりないようね」

澪「大学が一緒じゃないと、やっぱり会わなくなるもんだな」

和「そりゃあ、そうよ」

純「……」

和「」

和「純ちゃんは、どう?」

純「学校は、まだ…ちょっと」

純「来年から行こうと思ってます」

和「あんな事があったんだもの」

和「無理しないでね」

純「はい…」

和(一度に二人の親友を失い)

和(現場でその亡骸を見てしまったんだもの)

和(ショックが残るのも無理が無いわ)

和(むしろ普通に生活している、私達の方が異常なのかも…)

澪「それで和、話っていうのは」

澪「『事件』の事なんだろ?」

和「ええ」

純「」フルフル

和「純ちゃんは、出来るだけでいいわ」

純「いえ、大丈夫です…」

純「いつかは向き合わないといけない事ですから…」

和「最近唯に会った時、唯の口から聞いたんだけど」

和「梓ちゃんを殺したのは、唯なんだって」

澪純「!!!?」

和「もちろん唯は病人だし、正しい事か分からないの」

和「少なくとも、法的証拠にはならないわ」

澪「」

澪「うん…」

澪「それはありえないな」

和「……」

澪「私達も世間も、梓を殺したのは憂ちゃんで」

澪「唯は、憂ちゃんに無理心中を迫られた時」

澪「正当防衛で返り討ちにしたってことで納得している」

澪「状況証拠から見ても」


澪「やっぱり、それが真実にもっとも近いと思うんだ」

和「そうかな?」

和「憂の性格から考えて」

和「唯の犯罪を隠すために」

和「犯人以上の、隠蔽工作をしてしまう」

和「だから犯人でもない憂が、犯人にされてしまった」

和「ありえるとは思わない?」

純「!?」

純「そうかもっ!」

純「だって、憂がそんなことする訳ないっ!」

純「きっとそれが事実なんですよっ!」

澪「……」

澪「決め付けるには早い」

澪「そんなの、可能性でしかないだろ」

純「でも…」

澪「大体、純ちゃんは、憂ちゃんを犯人にしたくないだけなんだろ?」

澪「だから、無理やりに唯に罪を押し付けるっ!」

純「!!!?」

純「ううっ…」

和「」

和「澪は凄いわ」

和「私達が全然気付かない中」

和「いち早く気付き、行動を起こした」

澪「」

澪「間に合わなかったけどな…」

和「それでも凄いわ」

和「なんで私がそれを出来なかったか、悔やまれるくらい」

澪「和…」

和「でもねっ」

和「私、最近思うの」

和「私達は、この世の大体の事を」

和「知ったつもりになってる…」

和「でも、真実はそれとは全然違うって事もあるんじゃない?」

和「天動説を信じていた、昔の人の様に…」

澪「」

澪「今では、宇宙に出れるし」

澪「そうでなくても、地球が回っているって証明もできる」

和「紙の上ではね」

和「私は実際、見た事ないわ」

澪「和、変な事言うようななったな」

和「私達は、自分が何故、何のために生まれたかも知らないくせに」

和「わかっているつもりの事が多すぎない?」

澪「哲学か…宗教でもはじめるつもりか?」

和「ただ思うのよ」

和「私が決め付けている以上に、世界も、人も、広くて大きい」

和「この事件も、憂や梓ちゃんのことも」

和「もっとよく、考えるべきだって」

和「向き合うべきだって」

澪「…」

澪「どうせ、新しい発見なんて出てこないよ」

澪「それに、決め付けているのは和の方だ」

和「!?」

澪「お前は、唯や憂が犯罪を犯した事を、受け止めきれないだけなんだ」

澪「だから、だれも傷つかない、新しい真実を探し続けてるんだ…」

澪「それってさ」

澪「ただ迷ってるだけだ」

和「事件に本当に、向き合っていないのは」

澪「お前の方だっ!」

和「!!!?」

和「そうかもね…」

純「でも、私も、分かります…」

純「最近夢を見るんです」

和「夢?」

純「さわ子先生に、私が梓の居場所を知っていると疑われて」

純「生徒指導室に連れ込まれる夢」

和「……」

純「だけど、その夢では、梓は本当に家出してて」

純「私はそれを匿ってるんです」

純「夢の私の方が、先生に嘘をつく、悪い子なんですけど」

純「そっちの方が、よかった…そんなことばっかり考えちゃう…」

和「純…」

澪「この話はこの辺にしよう…」

澪「辛いのはみんな同じなんだ」

澪「今日はせっかくあったんだ、楽しく過ごそう」

和「うん…」


3
最終更新:2010年08月14日 22:09