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平沢さんちのお嬢さんは昔からどこか変わっていました

あれはあの子が幼稚園生の頃だったでしょうか
擦りむいた膝から流れる血を見ながら1人でケタケタ笑っていたんです

そんなことを何度か繰り返していたのですから
あの子が自分の血を見ておかしくなってしまうんだと気付くのにそう時間はかかりませんでした

最初は精神科医に連れて行こうかと親戚一同で話し合っていたようですが

幸か不幸かあの子は天才でした

皆さんもあの子のギターの上達の速さを見たでしょう
血を見て狂う異常者である以上にあの子は天才だったのです

そういうわけで
あの子は病院に入れられることもなく普通に育てられることになりました

ただひとつ
あの子に血を見せない、それだけ守る約束で


ザアアアアアアアアアアアアア

男「来るなああ!……はぁっ……」タッタッタッタッ

「……」スタスタ

男「はぁっ……はぁ……! い、行き止まり……!」

「……」スタスタ

男「……あ……ああ……」

男「……な、何だよ!! 俺が何したってんだよ!!」

「……」スッ

男「ナ、ナイフなんて構えてどうすんだ……」

男「……や、やめろ。許してくれ! 許してくれ!!」

「……やだ♪」

グサッ!

男「うわあああああああああああああ!!」

「あははははははははははははははは!!」

グサッ! グサッ! グサッ!

ガラッ

律「おはよー」

澪「おはよ」

律「なあ澪。今朝ニュース見たか?」

澪「ニュース?」

律「なんだ見てないのかよー。朝から余裕ないなぁ」

澪「女の子の朝は時間が足りないんだよ」

律「……私も一応女の子なんだけど?」

澪「これは失敬」

律「まあいいや。それでニュースの話なんだけどな」

澪「うん」

律「また出たんだってよ、あの通り魔」

澪「……え?」

澪「……ホ、ホントにあいつなのか! ただの模倣犯じゃないのか!?」

律「いいや、間違いなくあいつだ」

律「現に今回もあいつは嵐の晩に現れてる」

澪「そ、それはテレビで散々煽ってたじゃないか! 嵐の夜の殺人鬼って!」

澪「や、やっぱり模倣h

律「……今回も被害者は例の不良グループのメンバーだったよ」

律「それに殺し方もほとんど一緒。ナイフを使って全身ズタズタに切り裂かれてた」

律「テレビではそんな話してないはずだろ?」

澪「そんな……」

律「ついでに今回あいつはメッセージを残してったらしいよ」

澪「メッセージ……?」

律「ほら、この写真」

澪「……ち、血文字じゃないか!」

律「ダメだった?」

澪「……いや、我慢する」

律「うん」

澪「うえっ……」

澪「……これは"Noman"? いや、"o"と"m"の間にまだ文字があるな……」

澪「かすれてるけどこれは……"r"? いや"t"か?」

律「"t"ならそのメッセージは"Not man"だな」

澪「……"人間じゃない"、か」

澪「でもこれ犯人が残したメッセージなんだよな?」

律「被害者は即死だったそうだからな」

澪「だったらなんだってあいつこんなものを……」

律「そんなの本人に直接聞くのが一番早いだろ」

澪「それはそうだけどさ」

律「天気予報では明後日の夜中はまた雨だってさ」

澪「じゃあその日にまた……」

律「ああ、現れるだろうな」

澪「……行かなきゃダメかな?」

律「私たちの他に誰があいつを止めるんだ?」

澪「……」

律「ムギと梓には私から言っとくから」

澪「ああ、うん……」


澪「……」

澪「どうしてこんなことになっちゃったんだよ、唯……」


2日後

ザアアアアアアアアアアアアア

梓「本当に雨降りましたね」

紬「最近の天気予報はすごいから」

澪「よーし、全員揃ったな。律以外は」

梓「集合掛けた本人が遅刻って……」

紬「まあまあ」

澪「ったく、律のやつ……」

オーイ!

梓「?」

律「おーい!」

紬「りっちゃん!」

澪「何やってたんだよ、まったく」

律「いやー、ごめんごめん。雨だから道が混んでてさー」

梓「雨の日に集合って言ったのは自分じゃないですか……」


澪「それで? 今夜はどう動くんだ?」

律「うん」

律「例の不良グループが通り魔に狙われたせいで残り少なくなっちゃったらしくてな」

律「今夜あそこのボロ倉庫で集会をやるんだと」

紬「なるほど」

律「だから今日はあの倉庫に入り込んで待ち伏せる」

律「その後の行動は中で何があるのかしだいだな」



倉庫


ザワザワ

   ゴソゴソ

ワー ワー ギャー ギャー


梓「いたいた。あいつらですね」

澪「ガラ悪いなぁ……」

律「ガラのいい不良なんているもんか」

紬「しっ、静かに。集会が始まったみたいよ」



「……」

リーダー「……お前ら、この間言ったよなぁ?」

「……」

リ「今度、仲間を殺られたら許さねえって」

A「で、でもリーダー。ヤツは人間じゃない。……化け物だ。俺たちじゃ太刀打ちできねえよ」

リ「……」ツカツカ

A「……?」

リ「……ふっざけんな!!!!」

ドカッ!!

A「がっ……!!」




澪「な、仲間を!」

律「いかれてる……」

紬「リーダーも焦っているのよ。次は自分が狙われるかもわからないから」

梓「なるほど……」



リ「……お前ら、ナイフ持ち歩け」

リ「今度あの通り魔の女が現れたら、ぶっ殺すんだ!!!」

「お、おう!!」




澪「お、おい不良たちが解散しちゃったぞ!」

律「うん、後をつけよう。私と澪はこっち。ムギと梓はあっちを」

梓「はい」

紬「わかったわ」



憂「お姉ちゃん、今日の晩ご飯おいしい?」


憂「今日はお姉ちゃんのためにオムライスにしてみたんだけど」

唯「……」

憂「えへへ。今日は自信作なんだ」

唯「……」

憂「いっぱい作ったからたくさんおかわりしてね、お姉ちゃん」

……ザアアアアアアアアアアアア

憂「あ、雨……」

唯「……」スクッ

憂「!」

憂「……お姉ちゃん! 行っちゃダメ!」

唯「……」スタスタ

憂「お姉ちゃん!」

ガチャッ バタン!



ズカズカ

B「ちっ、なんだって俺たちが狙われるんだよ」

C「いいじゃねえか。どんなに恐ろしい通り魔っつったって所詮はただの女。2人がかりでいきゃ楽勝さ」

B「それもそうか」


コソコソ

律「……尾行って案外めんどくさいな」

澪「……うん」

律「はぁ……」

澪「……うん?」

律「どした?」

澪「り、律! あれ!!」

律「……!」



ザアアアアアアアアアアアアア 

スタスタ

「……」


B「……ん?」

C「なんだお前!!」

「……」

B「返事くらいしろよ、クソが!」

C「おい、ねえちゃん。俺たちは忙しいんだ。さっさと帰れ」

「……」

スッ

B「……ナ、ナイフだぁ!?」

C「お、おい。こいつもしかして……」

「……」

スタスタ

BC「……例の通り魔か!」

「……」

スタスタ

B「お、おい。どうすんだ!?」

C「決まってんだろ。ぶっ殺すだけだ!!」チャキ

B「そ、そうか!」

「……」

スタスタ

C「死ね、このアマアアアアアア!!」

ブンッ

「……やだ♪」

B「よ、避けた!?」

「……あははははははははははは!!!」

グサッ!

C「ぎゃあああああああ!!!」バタリ

B「C! うわ……ああ……うわああああああ!!」



律「1人やられた! 早く止めなくちゃ!」

律「澪! おい澪、行くぞ!」

澪「……」ブルブル

律「……澪?」

澪「……血が、血が。人が死んで、血がぁ」ガタガタ

律「……」

律「……澪は、ここで待ってろ!」

ダッ

律「やめろおおおおおお!!」

「……!」

「……チッ」

ダッ


律「お、おい。待てよ!」

律「……って、待てと言われて待つやつなんているわけないか」

B「……?……!?」ガタガタ

律「おい、お前!」

B「うわあああ!!」

律「しっかりしろ! どうしてお前たちはあの通り魔に狙われるんだ!」

B「し、知らない! 知らねえよ!」

律「知らないぃ?」

B「ホ、ホントに知らねえんだ! だ、だから助けてくれよ! 頼むから! 俺を助けて!!」

律「知らない、ねぇ……」


律「で」

律「こっちにあの通り魔が来たわけだけどそっちは大丈夫だった?」

紬「ええ、特に問題なかったわ」

律「そっか」

梓「律先輩!」

律「どした?」

梓「み、澪先輩が見当たりませんけど……」

梓「まさか通り魔に!?」

律「あー、違う違う」

律「あそこで結構スプラッタでショキングなシーンが展開したからな。家で寝込んでるよ」

梓「な、なんだ……」

律「あ。あと、前回あいつが残してった血文字のメッセージがあったろ?」

梓「はい」

律「どうもあれが気になるからムギにはそれを調べてもらうことにした」

梓「そうなんですか?」

紬「そうなんです」

律「そして、明日も雨らしい」

梓「あ……」

律「だから明日は私と梓だけで行くぞ」

梓「は、はい!」


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最終更新:2010年08月15日 22:03