ザアアアアアアアアアアアアア


憂「おかえり、お姉ちゃん」

唯「……」

憂「ご飯おいしい?」

唯「……」

憂「……」

唯「……」

憂「血が、いっぱい付いてるよ?」

唯「……」

憂「……」

唯「……」

憂「……食べ終わったら、シャワー浴びようね」

唯「……」


次の日


ザアアアアアアアアアアアアア


梓「あれ? 不良たちが見当たりませんね」

律「そのうち来るだろ。不良はこういう薄汚い倉庫なんかが大好きだから」

梓「はぁ……」

律「……」

梓「……そういえば」

律「ん?」

梓「……私まだ1ヶ月前の事件について詳しい話を聞いてないんですけど」

律「ああ、そうだっけ」

梓「私にも、教えてください」

律「いいよ、せっかくだから教えとこうか。なんせ嵐の夜の殺人鬼の誕生秘話だからな」

梓「……」

律「1ヶ月前、あの日もちょうどこんな風に大雨だった」

律「そんな雨の中、唯と憂ちゃんはわざわざ買い物に出かけたんだよ」

律「たしか醤油が切れたとかなんとかいってな」

梓「……」

律「夜だし雨だし2人はちゃんと大きな道を選んで歩いてたんだぞ?」

律「わざわざ路地裏通って近道だなんてチープなドラマみたいな真似はしなかった」

梓「……」

律「なのに」

律「憂ちゃんが街のチンピラにぶつかっちゃってな。因縁付けられたんだ」

梓「……それが、例の不良グループのメンバーだったんですね」

律「そ」


……

憂「……」

憂(あの夜……)




リ『へぇー、こいつらがウチのDにぶつかったのか?』

D『はい、それが痛えのなんの。わざとに違いないぜ』

唯『嘘! そっちがぶつかってきたんじゃん!』

憂『お、お姉ちゃん』

リ『……ほぉー、反抗的だこと』

チャキ

唯憂『え?』


グサッ!

唯『いやああああああああ!!』

憂『お、お姉ちゃん! 腕を!』

リ『はははははは! いーい悲鳴だ』

リ『おい、お前ら。後任せたぞ』

『はい!』

スタスタ


D『……へっへっへっ。人を殺すってどんな感じだろうな』

E『やればわかるだろ。さっさとやれよ』

D『わーってるよ』

チャキ



唯『痛いぃ……いたいよお……』

憂『お姉ちゃん……』

唯『うう……うう…………』

憂『しっかりして、お姉ちゃん!』

唯『あ……ああ……あ、あ……』

唯『……あははははははははははははは!!!』

憂『!?』

D『な、なんだぁ!?』

唯『……それ、貸して♪』カシッ

D『こいつ! 俺のナイフを……!』

唯『……あは♪』

グサッ!

D『あ゛』バタリ

唯『あははははははははははははは!!!』

グサッ! グサッ! グサッ!

F『く、狂ってる……! うわああああああ!』ダッ

E『お、おい。待てよ!』ダッ

唯『……♪』ダッ

憂『……ま、待ってよお姉ちゃん!』

唯『……?』

憂『お姉ちゃん……』

唯『……』

憂『お姉ちゃん』

唯『……』

憂『お姉ちゃん!』

唯『……』

憂『……』

唯『……憂?』

憂『お姉ちゃん!』

憂「お姉ちゃんは私を守るために立ち上がってくれた」

憂「だよね? お姉ちゃん?」

唯「……」

憂「……?」

唯「……」

憂「……そっか、怒ってるんだね。邪魔が入って1人殺し損ねたから」

唯「……」


ザアアアアアアアアアアアアア 

唯「……」スクッ

憂「……お姉ちゃん、もう止めようよ」

憂「復讐なんかしたって仕方ないよ」

唯「……」

スタスタ

憂「お姉ちゃん!」

ガチャッ バタン!


……

梓「そんなことが……」

律「和が言ってたよ。血を見せちゃいけなかったんだって」

梓「血……?」

律「そうさ」

律「あいつは昔から血を見るとおかしくなっちゃうんだって」

律「しかもあの時、おかしくなった状態で人を殺すことを覚えちゃった」

律「今のあいつはただの狂った殺人鬼だよ」

梓「……」


ザアアアアアアアアアアアアア


梓「……あ」

律「ん?」

ゾロゾロ

リ「……なんだお前ら」

律「……げ」

リ「まさか、お前らが嵐の殺人鬼か?」

梓「ち、違います!」

リ「だったらさっさと帰れ!!!」


「……あははははははははははははは!!!」


律梓「!」

グサッ!

F「ぎゃっ」バタリ

「……」

スタスタ


リ「こ、こいつが嵐の夜の殺人鬼か……!」

リ「お前らやれ! やれえええ!!」

「お、おう!」


「……あははははははははははは!!」


グサッ! ブシュッ!

       ザクッ! グサッ! 


「……あは♪」

ザクッ!

E「ぐぎっ」

バタリ


梓「あ……」

リ「ぜ、全滅だとぉ……」

「……」ダッ

リ「来る……!」

「……あははははははははは!!」

ブンッ

リ「くっ!」


ガシッ!


「!」


「……」

グググ

律「もう、止めろ! 止めるんだ……っ!」

梓「律先輩!」

律「このっ……!」

グイッ

「……!」

ボカッ!

「……ぐっ!」

ダッ

梓「に、逃げた!」

律「逃がすかっ!」

ダッ

「……」タッタッタッタッ

律「待てーっ!」

梓「はぁっ……」

タッタッタッタッ

「……!」タッタッタ…

律「……よしっ!」

梓「行き止まりだ!」

タッタッタ…

「……」

梓「ようやく追い詰められましたね」

律「観念しろ!!」


憂「ま、待ってください!!」


梓「え?」

律「憂ちゃん?」


律「ど、どうしたんだよ。憂ちゃん」

憂「……これ以上お姉ちゃんに乱暴しないでください!」

憂「お姉ちゃんは悪くない! 悪いのはあいつらなんです!」

梓「憂……?」

憂「1ヶ月前、あいつらは私たちの幸せな時間を奪いました」

憂「平凡でいつも通りだけど、かけがえのない私たちの幸せをあいつらは奪ったんです!」

憂「あいつらは人間じゃない。けだものです」

憂「だからお姉ちゃんのしたことは悪くなんかない!」

梓「憂……」

律「違うよ、憂ちゃん」

憂「律さん?」

律「……今は、今は復讐のためなのかもしれないけどさ」

律「いずれソレは無軌道な殺人に変わっていくよ」

律「それは憂ちゃん、君自身が一番よくわかっているはずだ」

憂「私が……?」

律「……不良たちを手に掛けた時の姿を思い出してみろよ。あんなの、ただの快楽殺人者じゃないか」

憂「……お姉ちゃんは私の命を守るために立ち上がってくれたんです」

憂「お姉ちゃんは、そんな異常者なんかじゃない!」

律「……」

梓「……なら、どうして唯先輩を殺したの?」

憂「……は?」


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最終更新:2010年08月15日 22:04