#6
『日曜日!』



憂「……」


久しぶりにDVDをレンタルして観ています。
お姉ちゃんは部活だけど私には休日。


憂「……」


こういう日でもやることは探せばいっぱいあるけど…
今日はなにもしない日にしました。


もうすぐ夏。
外もだんだん暑くなってくる。


憂「……」

憂(…あつい…風もない…)

憂(お姉ちゃん大丈夫かな…)

憂「……」


そろそろお昼の時間だ。


憂「……」


お腹はすいている。
けど動き気が起きない。


憂(あつい…)


一人でいると気が緩んでしまう。
なんとなくやる気が起きてこない。
これが私の自然体なのだろうか。


憂(十二時半になったら作ろう…)

時計の針をボーっと見つめる。

一秒ごとに動く針。
一分ごとに動く長い針。
一時間ごとに動く針。

どれもバラバラなのに同じ方向へと回っている。
追いつき、追い越されながら。


憂「……」


気づくと十二時半が過ぎていた。


憂「……」

憂(…一時になったら作ろう)

結局お昼ご飯を作り始めたのは二時を過ぎてから。
お腹はすいていたが特に凝った料理ではなく、そうめんを食べた。


憂「……」


何もしないと決めたが、正確には何もできない。
何もする気が起きない。


憂「ふぁ…」


外は風も吹いてきた。
ちょうど良い気持ち。


憂「……」


このまま寝てしまおう。


意識がはっきりとしない。
自分は眠っているのだろうか、それとも起きているのだろうか。
別の世界に来たみたいでなんだか不思議な気分だ。


憂「……」


途中でお姉ちゃんの顔を思い出す。
自分の意識ははっきりとしないのに、お姉ちゃんの顔は鮮明に写った。


憂「……」


今はこの顔が見れるだけで幸せだ。

憂「うぅん……」


目が覚めた。
汗を大量にかいている。
喉もカラカラだ。
夢の中を長く旅した気分なのに、時計を見ると一時間ちょっとしか経っていなかった。
針は相変わらずバラバラに動いている。


憂「……」

憂(だるい…)


午後四時。
そろそろお姉ちゃんが帰ってくる時間だ。


憂「……」


急いで頭を働かせ、今日の夕飯のメニューを考える。
何を作ろうか。


憂(そろそろ準備しようかな…)


今日初めてスムーズに動けた気がする。


唯「たっだいま~!」

憂「おかえり、お姉ちゃん」

憂「もうちょっとでご飯ができるから手洗って待っててね」

唯「はいは~い」

憂「ふふっ」

唯「……」ジーッ

憂「……アイスはご飯の後だよ?」

唯「ちぇっ」


唯「ふぅ、ごちそうさまでした」

憂「はいお姉ちゃん、アイス」

唯「やったー!アイス~!」

憂「もう…」


私の料理よりアイスの方がうれしいのかな?
アイスにちょっと嫉妬しちゃう。


唯「はい、憂の分」

憂「!」

憂「…ありがとう」


でもいっか、お姉ちゃんが喜んでるんだし。


唯「最近暑いね~」

憂「うん、もうすぐ夏だからね」

唯「私今日いっぱい汗かいちゃった」

憂「あっ、お湯もう沸いてるよ」

唯「うん」

唯「……」ジーッ

憂「お姉ちゃん?」

唯「じゃ、そういうことなら…」

チャポンッ

唯「はぁ……」

憂「……」

唯「お風呂一緒に入るの久しぶりだねー」

憂「うん、だけど……」

憂「きゅ、急にどうしたの?」

唯「まぁ、たまにはハダカのつきあいも必要かなーって」

唯「…いやだった?」

憂「ううん……うれしいよ」

唯「えへへ、私も」

憂「お湯…あったかいね」

唯「うん、疲れが取れるよぉ」

憂「今日も練習がんばったの?」

唯「今日はねぇ…まずちょっと練習したでしょ」

唯「その後お茶飲んで、お昼ご飯たべて…」

唯「練習して、おやつ食べて、それでね…」

唯「あっ、そういえばりっちゃんがね…」

憂「……」ニコニコ

体が温まってくる。
少し汗も出てきた。
それでも私はお姉ちゃんの話を聞き続けた。

私の知らない事、知らない体験、知らない時間。
全てお姉ちゃんが運んでくれる。

お姉ちゃんも喜々と話してくれた。


唯「あっ…」


かと思うと


憂「お姉ちゃん?」

唯「あつい…」

憂「…ふふっ、そろそろ出よっか」

唯「お風呂上りきもちー…」

憂「入る前は暑かったのに…涼しく感じるね」

唯「うい~…アイス~」

憂「今日はもうダメ」

唯「うぅ…」

憂「うふふっ」


お姉ちゃんは自分ではなにも持ってないと思ってるかもしれない。
でも、彼女に会った人はきっと気づくと思う。


唯「えへへ~」


たぶん、それを見たくてみんなお姉ちゃんと一緒にいるんだと思う。


唯「もう寝よっか?」

憂「うん」


部屋に戻り、時計を見る。
寝るにはいつもより早いかも。


憂「ふぅ…」


ベッドに入り今日お姉ちゃんから聞いた話を思い出した。
私の知らない所で、お姉ちゃんは自分の時間を過ごしているんだ。


憂「……」


もう一度時計に目をやる。
相変わらず針はバラバラに動いていた。


憂「……」


時間の流れは、みんなに一個ずつあって…
それは止まらない。




#6
『日曜日!』 おわり



最終更新:2010年08月18日 01:54