#7
『理想!』


澪「純、今帰りか?」

純「み、澪先輩!」

澪「よかったら…一緒に帰らないか?」

純「いいんですか…?」

澪「あぁ、もちろん」

純「でも…澪先輩とは帰る方向は逆なのに……」

澪「それは……純と長く一緒にいたいから」

純「え?」

澪「純ともっと仲良くなりたいんだ……迷惑かな?」

純「いえ、そんな…私も同じ気持ちです」

澪「純…///」

純「澪先輩///」

ダキッ





純「っていう感じで澪先輩と仲良くなりたいな~」

梓「……」

純「……」

梓「……」

純「なんか言ってよぉ~」

梓「呆れてなにも言えないんだって」

純「なんで!?」

梓「少なくともドーナッツを一口だけかじって全部残すような人には、澪先輩は振り向かないと思うけど」

純「だって、全部一口食べたら満足しちゃって…」

純「ていうかなんでドーナッツ食べてるんだっけ?」

梓「純が食べたいって言うから学校帰りに寄ったんでしょ」

純「そっか……梓残り食べていいよ」

梓「全部は無理だって」

純「まぁ話は戻すけどさ、澪先輩と仲良くなりたいんだよね」

梓「軽音部に入れば?」

純「いや、まぁそれは置いといて……」

純「あっ、澪先輩がジャズ研に来るってのはありかも」

梓「だ、ダメに決まってるじゃん!」

純「でも真面目に練習しない軽音部に不満溜まってるかもしれないよ~?」

梓「そんなことないもん」

梓「純は知らないと思うけど、澪先輩だって軽音部のこと大切に想ってるんだから」

純「ふーん……でもやっぱり羨ましいなぁ、澪先輩がいるって」

梓「澪先輩はいいけど、他がね…」

純「他?」

梓「唯先輩や律先輩」

純「なんで?」

梓「真面目じゃないっていうか…適当って言うか…」

梓「とにかく変な先輩なんだよ」

純「…変って言ってもさ、梓も十分変になったよね」

梓「え?」

純「軽音部に感化されちゃってるよね」

梓「されてないよ!」

純「自分ではそう思ってるだけだって」

梓「うぅ……そういう純だって変だよ」

純「だから、人それぞれみんな自分の価値観持って自分のこと普通だと思ってるの」

純「私から見れば梓はそうとう変になったよ?」

梓「うぐっ…」

梓「むぅ…純なんかにそこまで言われるとは」

純「なんかってなに、なんかって」

梓「でも、今の発言はなんか大人っぽかったね」

純「梓がお子様なだけだよぉ」ニヤニヤ

梓「にゃにをー!」

純「あはは」

梓「はぁ、変わっていく自分がいやになっちゃうよ」

純「変わらないものなんてないんだよ?梓」

梓「その『ちょっと今良いこと言ったでしょ?』的な顔がいや」

純「まぁ、自分が理想してる自分になるのなんて無理に等しいしね」

純「さっき澪先輩の妄想しててそう思ったよ」

梓「それでも…軽音部に芯まで染まりたくない」

純「別にそれは悪いことじゃないんだしいいじゃん」

梓「……」

純「梓の場合は強がってるだけだって」

純「ていうかすでに染まってると思うし」

梓「むぅ…」

純「それに比べて私は…どうしよっかな~」

梓「なにが?」

純「…将来ドーナッツ屋さんでもやろっかな」

梓「は?」

純「なんかさ、このまま目標との壁を感じると…どうしようもないじゃん?」

純「容姿端麗、ベースも上手い!そして何より癖毛じゃない!」

純「…自分に持ってないものいっぱい持ってる人に憧れちゃうけど、今の自分は何も変わらないし」

純「それにベースやってるけどこのまま続けるかどうか分かんないし」

梓「……」

純「結局、何がしたいのかも自分に何ができるのかも分かんないまま…」

純「このまま普通の人生歩んで普通の人間なのかなぁって思うと……」

梓「……なんか、純らしくないね」

純「…きっと梓に感化されたんだと思う」

梓「私のせい?」

純「あ~、考えるだけで鬱になる」

梓「…そんな自分を非難する必要ないじゃん」

純「うん?」

梓「純が自分のことをどう思ってようとも、私は純のこと尊敬してるよ」

梓「…一応だけど」

純「お?」

梓「だから…普段は部活とかちゃんとやってるみたいだし、切り替えができてるっていうか…」

梓「あぁもう、こういう事は一回か言わないからね!」

純「梓…」

梓「元気だしなよ、純らしくないって」

純「…まさか梓なんかに励まされるとは」

梓「なんかってなに、なんかって」


純「まぁ、一応ありがとう」

純「梓のこと好きになったよ、ちょっとだけだけど」

梓「どういたしまして」

純「私らしくかぁ……」

純「とりあえずドーナッツをもう一度全部一かじりしよう」

梓「それ…ただ食べたくなっただけでしょ」


#7
『理想!』 おわり



最終更新:2010年08月18日 01:55