#10
『お宝!』


純「頭が痛い…」

梓「きっと幽霊に殴られたんだよ」

純「えー?」

憂「昨日はごめんね、二人とも」

梓「いいっていいって、全部純が悪いんだから」

純「なにー!」

憂「だ、大丈夫だよ純ちゃん!」

憂「そんな風に思ってないから」

純「…まぁ、金さえ見つければ梓も生意気なこと言わなくなるよ」

梓「本当に見つかるの?」

純「見つかる!そんな気がする」

梓「だめだこりゃ…」

憂「どこ行けば見つかるのかな?」

純「山の中とかじゃん?」

梓「そんな適当じゃ見つからないって」

梓「もっと情報を集めて、計画を練らないと…」

純「…ノリノリじゃん梓」

梓「や、やるからにはちゃんとやりたいの!」

純「でも調べるって言ってもね~…」

憂「女将さんに地図もらってきたよ」

梓「う~ん…手がかりになりそうな場所は……」

純「山しかないじゃん、やっぱ山だよ」

梓「だからもっとよく見て…」

憂「ケンカしないで二人とも」

梓「……」

純「むぅ…」

憂「えへへ、大丈夫大丈夫」

憂「きっと見つかるから力を合わせて頑張ろうよ」

梓「まぁ憂が言うなら…」

純「そだね」

憂「ここなら何かあるんじゃないかな?」

純「ここ…お寺?」

梓「古い…誰もいないみたい」

純「ふむ……ん?」

梓「あっ、勝手に中に入っちゃだめだよ」

純「みてみて、何か箱がある」

憂「え?」

カパッ

梓「開けちゃっていいの…?」

純「…いいみたい、ほら」

梓「!」

憂「これ…絵図?」

純「なんか宝の地図っぽくない?」

梓「これ…なんの絵だろう…」

憂「なんだろう…山みたい…」

憂「!」ガサゴソ

純「どうしたの?」

憂「見て、この絵と地図のここを照らし合わせると…」

純「あっ…ぴったり!」

梓「じゃ、じゃあこの山に行けば…」

憂「金、みつかるかも」

純「やっぱり山にあったんだね!」

梓「まぁこれだけ山に囲まれてたら当然だよ」

純「素直に認めればいいのに」

梓「べつに」

憂「それにしても、この山道厳しいね」

梓「これで何も見つからなかったら、ただ山登りしに来ただけになっちゃうよ」

純「しんどい~…もうちょっとゆっくり歩こうよ~」

梓「私たちも疲れてるよ」

純「早くお宝見つけて帰りたい~」

梓「そんな簡単に見つかったらお宝じゃないって」

憂「あっ…」

梓「どうしたの?」

憂「行き止まり……」

純「えぇっ!ここまで来て!?」

憂「うーん…」

梓「他の道はないの?」

憂「……あっ」

憂「見て、ここから下りれば川に沿って進めるかも」

純「…けっこう険しい道だよ?」

憂「行こっか」

梓「う、うん」

純「マジ…?」

純(なんか旅行じゃなくて冒険になってきたような…)

梓「ふぅ、なんとか下りれた」

純「冷たっ!?川気持ちいい!」

憂「ちょっと休憩しよっか」

純「ひゃ~…冷たい」バシャバシャ

梓「あんまりはしゃいだら危ないよ?」

純「梓も遊ぼうよ」

梓「遊ぶ元気はあるんだ…」

憂「ふふっ」

純「それにしても、どこまで進めば金にたどり着けるんだろうね~」バシャバシャ

憂「簡単には見つからないと思ってたけど…ここまで来ると流石に疲れるね」

梓「今日中に見つかるのかな…」

純「まぁ見つかんないなら諦めて帰るってのもありじゃない?」バシャバシャ

梓「言いだしっぺがなに言ってるの……」

梓「ていうか危ないからそろそろ川から出てきなよ」

純「浅いから大丈夫だっ…」ツルッ、バシャーン

純「……」

梓「はぁ、言ったこっちゃない…」

憂「じゅ、純ちゃん大丈夫!?びしょびしょだよ!」

純「あぁん……下着まで濡れてる」

憂「はい、タオル」

憂「風邪ひいちゃうから服脱いで行こっか?」

純「えぇっ!下着のまま歩くの!?」

梓「誰も見てないから大丈夫だよ……ぷっ」

純「笑うなぁ!!」

憂「乾くまで我慢だよ、純ちゃん」

純「うぅ……」

純「どこまで歩けばいいの~?」

梓「金が見つかるまで」

純「それっていつなのよ~…」

グゥ~

憂「お腹すいた?純ちゃん」

純「え?私じゃないけど」

梓「……」

純「ぷっ」

梓「笑うなぁ!!」

憂「しょうがないよ、けっこう歩いたし」

梓「うぅ///」

純「あっ、チョコあるから食べる?」

純「はい」


梓「あ、ありがと…」

純「それにしてもさぁ…」

憂「なに?」

純「服脱いだから全身蚊に刺されまくってかなり痒いんだけど…」

憂「た、大変!」

純「うわ~ん!!痒い痒いぃ!!」

梓「…はい、塗り薬」

純「ナイス梓!」

梓「困ってる時はお互い様だよ」

純「ついでに塗ってくれない?背中とか」

梓「しょうがないなぁ…」ピタッ

純「ひやっ!?冷たっ///」

梓「ちょっ、変な声出さないでよ!?」

純「だって…気持ち良いんだもん」

梓「もう、自分で塗って!」

純「あぁん、梓のいじわる~」

憂「うふふっ」

梓「もうかなり歩いたね…」

憂「そろそろ着くといいんだけど…」

純「やっぱ簡単には見つからないもんだね~…」

憂「そろそろ引き返したほうが…」ガッ

憂「あっ…」ドサッ

梓「憂!」

憂「いたた…転んじゃった」

梓「ヒザ擦りむいちゃってる…」

梓「待ってて、バンソウコあるはずだから」

憂「ごめんね…」

純「歩ける?」

憂「たぶん…いたっ」

梓「しばらく動かさないほうがいいよ」

憂「でも…」

純「よし、私が肩貸してあげる」

憂「そんな…悪いよ」

梓「そうだね…純一人じゃ無理だよ」

純「なんだとぉ?」

梓「私も貸してあげる」

憂「梓ちゃん…」

純「別に私一人でも大丈夫だよ?」

梓「純だけには任せられないよ」

純「むむっ…」

憂「ごめんね、二人とも…」

純「憂は気にしないの、一番頑張ってくれたんだから」

梓「そうだよ、憂がいなかったらここまで来れなかったと思うよ?」

憂「純ちゃん…梓ちゃん…」

純「あっ…」

梓「どうしたの?」

純「今度は分かれ道だ…」

憂「本当だ…どっちに進む?」

純「う~ん……そうだ!」

純「棒を使って、倒れた方向に進もう」

梓「そんな適当でいいの?」

純「しょうがないじゃん、こうなったら神頼みだよ」

純「よっと…」ソッ…ポトリ

純「よし、右だ!」


カァー、カァー


純「……」

梓「……」

憂「……」

純「…ごめん、外したかも」

憂「しょ、しょうがないよ」

憂「そろそろ陽が暮れるし…戻ろっか?」

梓「……まだ」

憂「え?」

梓「もうちょっと進もうよ」

純「でも…」

梓「私は、純が決めた道を信じてるから」

純「い、いきなり嬉しいこと言ってくれるじゃん…」

梓「べ、別にまだ諦めたくなかっただけだもん」

梓「深い意味はないの!」

憂「ふふっ…じゃあもうちょっとだけ進もっか」

純「・・・そうだね!」

純「私も梓の選択を信じるよ!」

憂「私も」

梓「そ、そう言われると恥ずかしいんだけど…」


カァー、カァー


純「はぁ…はぁ…」

梓「もうちょっと…」

憂「!」

憂「見て、あれ…」

純「花…?」

梓「花畑…かな?」

憂「うわ~…綺麗…」

純「色んな花があるね…」

梓「すごい…」

憂「写真持ってくればよかった…」

純「……」

梓「……」

憂「……」

純「…もしかして、ここがゴール?」

梓「今私もそう思った」

純「はぁ~…結局金はないのね…」

梓「なんか…いっきに力が抜けた」

憂「でも…金より綺麗かも」

純「……」

梓「……」

純「…そうかもね」

梓「だね」

憂「もうちょっとここにいよっか?」

純「うん!」


―――――
―――


ガタンゴトン、ガタンゴトン


憂「……」パラッ

純「何読んでるの?」

憂「途中で暇つぶしに買った本」

純「ふぅん……」

純「結局、見つからなかったね金」

梓「だから、そう簡単には見つからないんだって」

梓「花畑が見れただけでもよかったじゃん」

純「まぁそうだけどさ…」

憂「美しいものを見つける為に私たちは世界中を旅行するが、自らも美しいものを携えて行かねば、それは見つからないだろう」

純「へ?」

憂「えへへ、本に書いてあったのを読んだだけ」

憂「これってどういう意味だろう?」

梓「美しいもの…一応私たちも見つけたよね」

憂「うん、でも自らも美しいものを携えてってなんだろう?」

純「決まってるじゃん、私たちの友情が美しいってことだよ」

純「三人で一緒に行かなかったら見つけられなかったしね」

憂「……」

梓「……」

純(…あれ?すべった?)

憂「純ちゃん…素敵!」

純「や、やっぱそうだよねー!」

梓「ちょっと寒いよ、今の台詞」

純「なんだとぉ!」

憂「そう言って梓ちゃん、顔赤いよ」

憂「照れてるんでしょ?」

梓「ち、違うもん!」

純「素直じゃないなぁ、梓は」

梓「むぅ…」

憂「うふふっ」

純「はぁ…帰り道が一番長く感じる」



「あの子たちは金をみつけたんですか?」

「いいえ、どうやら今回も外したみたいです」

「いつになったら見つけてくれるんだろうねぇ」

「そうだねぇ…みつけてくれれば土地の権利で私たちのものになるのに」

「…いい加減自分たちで探さない?」

「面倒だからいいや」



#10
『お宝!』 おわり



最終更新:2010年08月18日 02:04