律「」ボー
唯「」ボー
律「平和だな~」
唯「そうだね~」
律「なぁ唯~」
唯「なぁに~?」
律「膝枕してくれない?」
唯「ひ、膝枕っ!?」
律「駄目?」
唯「べ、つにいいけど…」
律「よ~しっじゃあ失礼して」
スカートを直し、照れながら「ど、どうぞ」と唯
律「せやっ」
唯「はうっ」
律「これが膝枕か……!」
唯「ど、どうかな…?」
律「唯の太もも暖かくて柔らかいな……」ふぃ~
唯「恥ずかしいよ律ぅ」
律「よいではないか~よいではないかぁ~」唯「お止めくだされお代官様ぁ~」
律「なぁ、唯」
唯「下から見上げないでよぉ/// なぁに?」
律「唯の好きなタイプとかってどんなの?」
唯「好きなタイプ? う~ん…よくわからないけど……優しい人がいいかなぁ」
律「ほうほう」
唯「私ちょっとどんくさいからさ……そういうのふぉろーしてくれる人がいいかな」
律「(あ、自覚あったんだ……ちょっとは)」
唯「ものを溢したりしても怒らないで一緒に片付けてくれたり~」
律「ふむふむ」
唯「一緒にいて楽しくて、話があって~」
律「なるほどね~」
唯「優しくて可愛くてカッコよくて私に合わせてくれて……」
律「へぇ~」
唯「りつみたいな人がいい」
律「って俺かいっ」
唯「私ね、りっちゃんのことすごく好きになっちゃった……んだ!」
律「……えっ」
唯「りっちゃん……」
律「ちょ、唯、顔が…近っ…」
─────────
唯「りっちゃん……」
トロンとした目付きで私を見下ろす唯、唇に残る暖かい体温。
私はしばしその余韻に浸りながら……どうしていいか考えを叩き出していた。
律「……唯、」
それ以上言葉が出ず、私達は二回目のキスをした───────
唯「結局5回も……しちゃったね///」
律「唯がしつこくちゅっちゅっしてくるからだろ」
唯「やだった…?」
律「嫌って言うか…ほら、私達女同士だし。変じゃん?」
唯「……そう…だよね」
律「……まあしたもんはしゃあないっ! 私も何だかんだで拒否らなかったしさ! まあ同性はカウントしないからな!」
唯「そうなんだ……りっちゃんに初めてあげれたと思ったのにぃ」
律「あっ、唯! あっちにボートあるぞ! 乗ろうぜ!」
唯「えっ! どこどこ!? 乗ろう乗ろう!」
律「あっちあっち!」
唯「うんっ!」
唯が自然に私の手を握る、私はそれを……
唯「えっ…」
払いのけてしまった────
律「あ、あ~もうデートゴッコは終わりにしようぜ? 唯も一々手を繋いだりめんどくさいだろ?」
唯「……りっちゃんがそういうなら…」
律「こ、こっからは普段通りのりっちゃん隊員でありますっ! さあ唯隊員いざ行かん脱出ボートへー!」
唯「……うん」
私は怖くなったのだ。これ以上唯が近づくのが、そして……澪が遠くに行くのが。
このモヤモヤする気持ちはなんだろう……その時の私には全くわからなかった。
それが、恋であることに。
───────
律「う~み~は~広いな~大きいな~」
律「って海じゃないし湖だしっ!」ビシッ
唯「…そだね」
律「唯……さっきのまだ怒ってるのか?」
唯「……」
律「……はあ…(咄嗟とは言え悪いことしたかな…)」
湖の上に浮かぶボートに二人だけ。
本当のカップルなら最高のシチュエーションなんだろうけど今の私達にはただの息苦しい箱庭だ。
唯「ごめんね…りっちゃん」
律「な、何が?」
唯「やだったんだよね? その…私がいきなりちゅーとかしたから…」
律「えっ、と…嫌って言うか……びっくりした?って言うか……」
唯「私もね…そんなことするつもりじゃなかったんだ。でもりっちゃんの顔見てたら…なんか…ちゅーしたいって…思っちゃって…変なだよね…?」
律「(変だ! 変態だ! と言いたいとこだが…ここは上手くごまかすか)唯~私の唇がたらこにでも見えたのか~? いくら美味しいだからって食べたら…」
唯「ヒック……」
律「(やっちまったァッ!)」ガガーン
律「ゆ、ゆいっ! 泣くなよ! ほらっ! 角っ!」
前髪を掴みあげ必死に小鬼アピール
唯「りっちゃん……ほんと優しいよね…だから…余計に辛いの…わかんない…わかんないよ…」
律「ま、まあとりあえず泣き止めよ? な?(私の方がわかんないよ~……)」
──────
ボートを降り、私達はただひたすら公園の中を歩いた。
律「…」
唯「……」
律「(気まずい……どうしたらいいんだ…。)」
泣かせたのは自分の責任なのだから謝るべきか、しかし何を謝ればいいのか。
律「(謝るってことはその……女同士でいいってことを認めるってことになるんだよな…)」
律「(そりゃ唯のことは好きだよ!? でも女の子同士だぞ!? それってちょっと…って言うかかなり普通じゃないよな~…。)」
律「(もし聡がクラスメートの男子連れてきて、彼氏、とか言い出したらおええええないないない!)」ブンブンッ
唯「りっちゃん」
律「ん、あっ、なんだ唯!?」
唯「もう6時だしそろそろ帰るね」
律「そ、そうか? そうか…」
唯「じゃあね。今日はとっても楽しかったよ! 色々迷惑かけてごめんね」エヘヘ
律「唯……」
唯「明日からは元通りりっちゃん隊員と、唯隊員でっ!」ビシッ
なんでそんな強がるんだよ……
唯「じゃあね……りっちゃん」
そう言い、踵を返し去る唯。
律「ゆ……」
引き留めるか迷った、だけど
唯の目に涙が溜まってたのを見て、私は迷わず駆け出していた。
律「ゆいっ!!!」
唯「りっ……ちゃ…」
唯を後ろから強く抱きしめる。
律「辛いんなら…言えよ……っぉ!」
唯「でっ…も…りっち…ゃんに迷惑かけたくないから……ウッ…ヒック…」
律「私が原因なら……何でもするから! そんな悲しい顔するなよ…。唯が辛そうな顔するの見るの…嫌なんだ…っ」ぎゅっ
唯「でも私…変だよぉ…?」
律「……変だっていい!」
唯「……りっちゃんは女の子なのに…好きなんだよ?」
律「うっ……それでも……唯がいいなら……いい。」
唯「りっちゃん……じゃあ…キスして……?」
律「……(私は…)」
正しいことをしたんだよな?
澪──────
─────
澪ママ「あら? 澪ちゃん遅かったわね」
澪「うん…ちょっとよそ見してて…玉子割っちゃってさ。玉子のお金は私が払っとくから。ごめんね、ママ」
澪ママ「澪ちゃん…何かあったの? 顔が真っ青よ?」
澪「な、なんでもないから! 大丈夫だよ。じゃあ部屋に行ってるから…」
澪ママ「澪ちゃん…」
バタンッ
澪「いっぱい泣いたら…ちょっとは出なくなったかな…涙」
何でだろう。唯だって、私の大事な大事な友達だ。その二人が仲良くしてたって別に……
澪「……ッ」ズキズキ
痛い……唯と律が一緒にいるところを思い出すたび……どこかが痛くなる……
澪「ウウッ……」
涙はまだ、枯れてなかったみたいだ
─────
そうして、私達はみんなに黙って付き合う?ことになった。
付き合うって言っても一緒に買い物したり、ご飯食べたり映画見たり、たまに…その、キスしたり。
まあそれぐらいだった。唯もそれで満足みたいだ。ただ二人きりの時はやたら甘えて来るようになった。
撫でてやると目を細めて喜んだりするのを見ると、私も悪い気はしなかった。
そんな日が何日か続き、新学期が始まり、部活が始まってしばらくした時だった。
放課後 音楽室───
律「ういーす」
唯「あっ、りっちゃん!」
律「なんだ唯だけか?」
唯「なんだって…酷いなぁ…」
律「ごめんごめん言い直す。うわぁっ! 唯だけなのかぁっ! ラッキー! ヒュッウ!」
唯「それは喜びすぎだよぉ///」テレテレ
律「なんだよ~せっかくやり直したのに」
唯「えへへごめんねりっちゃん」ニコリ
律「てかここじゃ内緒だからな唯? わかってるよな?」
唯「わかってるよぉ。心配性だねりっちゃんは」
律「(最近唯の甘え方が半端じゃないからな…釘打っとかないと澪に…澪に…バレたら困るのか? 私…なんで)」
ガチャ
澪「~、ってあれ? 唯と律だけか?」
律「なんだよ澪っ! 私達だけじゃ役不足だってのか!?」
唯「しょ~だしょ~だ~!」
澪「別にそう言うつもりで言ったわけじゃないよ。じゃあ先に練習しよっか」
律「真面目ですなぁ」
唯「いやはや、全くですなぁ」
律「わたくしとしてはムギのお茶が来るまでのんびり待ちたいとこなんですけどなぁ」
唯「いやいや、同意見ですなっ!」
律「はっはっは、これは奇遇ですな唯しゃん」
唯「さすが律しゃん隊員!」
澪「……ッ! なら座ってればいいだろっ! 私一人でやるよッ!」
唯「澪ちゃん…?」
澪「あ、ご、ごめん。ちょっと進路のことでさ…色々あって」
唯「大変だね…澪ちゃん…」
澪「他人事みたいに言ってるけど唯だって受験生だろ? 進路のことはちゃんと決めないと後で困ることになるぞ」
唯「うぅ~…頭がぁ~」
澪「…ッふぅ、練習するぞ、二人とも」
唯「は~い」
律「……」
澪「律?」
律「あっ、うん! 練習な! するする」
律「(バレて……ないよな? でも澪があんなに大声出すなんて…。いくら進路のことだって澪が他人に当たり散らすなんてことするだろうか…? でも私と唯はいつも通りだし…)」
~♪
唯「なかなか上手に出来たね!」
澪「…どうした? 律。今日はえらく元気がないなドラムに」
律「ん? えっ…あ~そうそうちょっと最近ダイエットしててさ! 力が出な…へなへな…」クタリ
唯「りっちゃんが倒れたっ!?」
澪「ダイエットって、律は十分痩せてるじゃないか。私なんて…」
律「何いってんだよ! 澪は胸が重いから(ry」
澪「ふんっ!」ゴチンッ
律「あいたぁっ」
紬「ごめんね~掃除当番だったの 」
律「ムギ~! 助けに船とはまさにこのこと! さあエネルギー補充だっ!」
澪「……」 ←唯「……」
──────
律「ケーキうまぁっ!」
澪「全く、ダイエット中じゃなかったのか?」
律「ふふんっケーキは別腹って言うだろ?」
梓「先輩それ意味違います」
澪「ケーキ食べたら練習だからな~」
律「わかってるわかってる~」
唯「りっちゃんお腹空いてるなら私の分けてあげる~」
澪「!」
紬「!」
梓「!?」
律「えっ…? い、いいのか? 唯」
唯「うんいいよぉ。私今日は何かお腹いっぱいだし」
梓「唯先輩熱があるんじゃっ」ササッ
おでこに手を当て熱を計る梓
紬「救急車って何番だっけ…?!」アワアワ
唯「みんな私がケーキあげただけで驚き過ぎだよぉ」
律「(唯のやつ~!!!)」
唯「(いっぱい食べてねりっちゃん)」パチッ
律「(今はあのウインクが痛いっ! 悟られない為に取った行動がまさか裏目に出るとは…。唯がこういう雰囲気読めないとこを計算に入れとくの忘れてたぁ…! ここで無理に拒否るのも逆に怪しいし…)」
律「じゃあ遠慮なく…」
律「」ゾワワッ
律「(寒気がっ)」
寒気の正体を突き止める為に辺りを見回すと、それはすぐに見つかった。
澪「よかったなぁ律。お腹減ってたんだろ? 唯に感謝しろよ~?」ニコニコ
律「(な、なんか怖いっ!)」
律「…澪いる(ry」
澪「いらない」
それ以外は特に変わったこともなく、私達は部活を終え帰路についた。
帰り道────
律「……」
澪「……」
律「(気まずいでごわす……。いかんいかん思わず関取に…)」
澪「律、」
律「っんっ? 何っ?」
澪「ダイエットもいいけどあんまり無理しないようにな? 学園祭の前に倒れたら困るだろ?」
律「そ、そうだなっ! 今日からほどほどにしとくよ…」
澪「……」
律「……」
律「(…変に勘ぐるのやめよう。澪に悪いし…それに私と唯はそんな悪いことしてるわけじゃないし…)」
律「澪、今日どうしたんだ? 急に怒鳴ったりして」
澪「それは…お前達が真面目に練習しようとしないからだろ?」
律「それはいつものことじゃんか~」
澪「いつもだから…色々重なったりして我慢出来なくて…」
律「…そっか。ごめんな、わかってやれてなくて」
澪「ううん。私も悪かったよ。当たり散らすなんて最低だよな…」
律「誰だってどうしようもなくなったり…することはあるさ」
誰に言ってるんだろうな、この言葉。
澪「明日唯にも謝らないとな」
律「唯は気にしてないだろ別に。あの性格だし」ニシシッ
澪「だといいな…」
律「絶対そうだって。ムギのケーキ賭けてもいい、なんちゃって」
澪「……律は、優しいな」
律「なんだよ急に?」
澪「昔からさ…。ずっと思ってたんだ。律ってふざけてるふりして実は一番周りのこと見てて…」
律「やめろよ~こそばゆい。てか今頃気づいたのか~? 遅いっての」
澪「律は優しいから…こんな嫌な私のことも…気を遣ってくれて……」
律「は、はぁっ? いきなり何言い出すんだよ澪。自虐ネタに目覚めたのか~?」
澪「私……私……ね…」
律「なんだよ、泣いてちゃわかんないぞ?」
澪「見たんだ…二人が……一緒にいるところ」
律「えっ…」
心臓を鈍器か何かで殴られたようにバクついた。
目眩がする、一番知られたくなった人に知られてたなんて…。
澪「最低だよな…私。ただ二人がデートみたいなことしてただけで嫉妬して……っ! 二人が仲良くしてるのを見ると…痛いんだ…胸が」
律「澪……」
違う……。
澪「私は…律のことが好きだって。その時ようやく気づいたんだ。唯にとられたくないって…ほんと最低で…嫌になる。でも…!」
澪は律に向き直る。涙を拭いながら、
澪「律が大好きだから…一緒にいたいんだ。ずっと…」
最低なのは、
律「澪……」
私だ……。
最終更新:2010年08月19日 21:37