紬「どうして言えないの?」

和「それを言ったらさっきの質問に答えたも同然だから言えないわ」

紬「つまり、唯ちゃんのことを心配してるのね」

和「・・・!?」

紬「わかるわよ。あなたの考えそうなことだもの」

和「ホント、ムギには敵わないわね・・・」アハハ

紬「じゃあ・・・」

和「何?」

紬「唯ちゃんが口を開けば・・・」

和「・・・」

紬「それを邪魔したりはしない?」

和「・・・」

紬「答えて?」

和「えぇ、しないわ。ただ一つだけ言わせてちょうだい」

紬「何?」

和「あまり、強引に聞き出そうとしないであげて」

紬「??え、えぇ、わかったわ」

和「信じるわよ」

紬「どうぞ」

和「本当はね、私も誰かに相談したかったの」

紬「うん」

和「だけど、それが出来ない状況で・・・」

紬「辛かったのね?」

和「辛くなんて、ないわ。唯は大切な友達だもの」


紬「・・・?(何があったかわからないからイマイチ話が見えないわ)」

和「ごめんなさいね、こんなこと言っても今はちんぷんかんぷんよね」

紬「うん」

和「私、ムギにこうして突っ込んで話を聞いてもらってよかったと思ってる」

紬「でもみんなの前では」

和「そうよ。自分勝手よね。でも、半ば強引にでも聞き出してもらってよかった」

紬「そ、そう?」

和「えぇ。自分からは相談持ちかけられる状況じゃなかったから。助かったわ、少し楽になった」

紬「よかった。出過ぎた真似をしたんじゃないかって、ちょっと心配だったの」

和「そんなことないわよ。あ!」

紬「どうしたの?」

和「大変、唯のケータイからかけたって忘れてたわ!」

紬「あ゛。そうね、そろそろ切りましょうか」

和「こっちから電話かけたのに、ごめんね」

紬「いいの。そういえば唯ちゃんは?」

和「今お風呂に入ってるわ」

紬「(お、お風呂・・・)あのメールのことはどうしたらいい?」

和「ありのままを伝えるわ。ムギが気付いてなかったとか間違って消しちゃったみたい
なんて言ったら、この件について聞き出しにくくなるでしょ?」

紬「そうね。ありがとう」

和「いいえ。お礼を言うのはこっちの方よ。何も言えなくて本当にごめん。
唯が口を開いたら、私も全てを話すわ」

紬「そう、楽しみにしてるわ。それじゃ」

和「えぇ、おやすみなさい」

ピッ

紬「どういうことかしら・・・」バフッ




律「だーからそれが難しいって言ってんだろ?」

梓「そんなこと言ってもそこをどうにかするしかないじゃないですか!」

律「じゃあどうやってどうにかするんだよ、言ってみ」

梓「・・・」

律「ほら、やっぱり唯に直接聞くしかないんだよ」

梓「でもそれでいいんですか?」

律「何が?」

梓「もし教えたくないなんて言われたら、二度はないですよ?」

律「確かにそう言われたらもうどうしようもないけど・・・」

梓「まずは周りを固めましょうよ」

律「そういうコソコソしたことはやりたくないんだよ、さっきも言ったろ?」

梓「そんなこと言ったって・・・!」

律「きっと唯だっていい気しないよ」

梓「でも・・・」

律「いいよ、梓から聞きにくいのはわかるから」

梓「そういう問題じゃないですって」

律「私がなんとか聞き出すから。悩んでるなら力にだってなってやるし、和に何か不満があるなら」

梓「唯先輩に限って和先輩に不満なんてあるわけ無いですよ」

律「それは例え話で言ったんであって、私だってそうは思ってないぞ?」

梓「いや、わかってますけど」ピピピ

梓「あ、ちょっと待ってください」

律「んー?」

梓「充電が・・・」

律「おう、了解」


ピーピーピー、ガシャコン


梓「もしもし?」

律「ほいほい」

梓「よかった、切れなかった」

律「おう」

梓「それで、さっきの話の続きですけど」

律「だから、唯に直接私が聞くって話な」

梓「えぇ。失敗したら怒りますよ?」

律「あぁ、わかってるって。それにムギにもさっきのメールしてあるからさ」

梓「知ってますよ。同時送信でしたもん」

律「そそ。ムギなら何か知恵を出してくれるかもしれない」

梓「ですね」

律「ムギが何か他の方法を考えてくれたならそれでいくし、なけりゃ唯に直接聞く。どうだ?」

梓「これ以上話しても埒があかないですしね、もうそれでいいです」

律「おい、投げやりになるなー?」

梓「投げやりじゃないですよ。ただ、こういうときにどうすればいいのかわからないだけです」

律「んー、まぁ。正解があるなら楽なんだけどな・・・」

梓「ないですよ、そんなの」

律「わーかってるって」

梓「それじゃ、そろそろ遅いので」

律「だな。寝るか。寝坊するなよー?」

梓「先輩だけには言われたくないです」

律「ほーう?私には澪がついてるから大丈夫なんだよーだ」

梓「起こしてもらってるんですか?ホント、子供ですね」

律「う゛、た、たまにだ!」

梓「そうですか。それじゃ、本当に寝ますね?」

律「おう。おやすみな」

梓「はい、おやすみなさい」





次の日


唯「りっちゃん!おはよう!」

律「おう!ギリギリセーフだ!」ゼェハァ

澪「お前のせいで私まで・・・」ゼェハァ

紬「朝から走ってきたの?」

律「んー?まぁ、ちょっとな」

澪「家からここまで全力疾走だっただろ!」ガツン!

律「いてぇ!!」

和「全く。律、しっかりしなさいよ」

律「へーい」

澪「もう一発いこうか?」ニコッ

律「いや、もう本当に心を入れ替えます!」

澪「分かればよろしい」

唯「・・・」ガスッ

和「いったぁ!?」

唯「和ちゃん、どうしたの?」

和「どうしたの?じゃないわよ。今、蹴ったでしょう?」

唯「ううん。私、和ちゃんの脛なんて蹴ってないよ」

和「誰も脛なんて言ってないけど?」

唯「あっそう。ごめんねーついね」

和「何がついよ」ガスッ

唯「いったい!!」

和「ごめんなさいね、私も『つい』唯の頭の上に辞書落としちゃったわ」

唯「・・・」イラッ

紬「ほら、二人とも喧嘩しないで?」

唯「う、うん」

律澪「?」

澪「おい、律」ボソッ

律「なんだ?」ボソッ

澪「唯のやつ、今ムギの言ったこと素直に聞き入れたぞ?」

律「だな。どうしたんだろ」

紬「りっちゃん、澪ちゃん」

律澪「はい!?」

紬「先生が呼んでたわよ。放課後、職員室に来なさい、ですって」

律「えー?またかよー」

澪「私、何も悪いことしてないのに・・・」

和「きっと進路のことじゃない?」

澪「だといいんだけど・・・」





放課後


律「で、かれこれ10分くらい待っても誰も来ないんだが?」

澪「てっきりさわ子先生の呼び出しかと思ったんだけどな」

律「知らないって言うんだからしょうがないだろ?」

澪「私達を呼び出した先生、誰なんだろうな」

「おまたせ」

律澪「?」クルッ

紬「ごめんね、待った?」

律澪「ムギ!」

紬「嘘ついてごめんなさい、二人に用事があったのは先生じゃなくて私なの」

律「なんだ、そうだったのか」

澪「それならそんな周りくどいことしなくてもよかったのに」

紬「唯ちゃんには気づかれたくなかったから」

律「唯に?・・・っていうことは、昨日のことだな?」

紬「えぇ。そうよ」

澪「何かいい案が思いついたんだな!?」

紬「うーん・・・」

澪「えっ何その微妙なリアクション」

紬「方法を思いついたわけじゃないんだけど・・・」

律「タンマ。梓も呼ぼうぜ?」

紬「それはまずいわ」

律「なんでだ?」

紬「部室に誰もいなかったら怪しいでしょ?」

律「え、そうかぁ?」

紬「昨日、あんなことがなければそれでもよかったんだけどね・・・」

澪「昨日、何があったんだ?」

紬「とりあえず、場所を変えましょう?ここじゃ誰に聞かれるかわからないわ」

律「だな。屋上でいいか?」

紬「そうね、人も少ないだろうし」

澪「よし、行こう」

律「梓にはちょっと遅れるから唯の相手しといてくれってメールしとくよ」ピッ

澪「ん。頼んだ」






紬「屋上って素敵よね」ンー!

澪「わかる、ちょっと風が強いけど」

律「なぁ、これ登ろうぜ!」

澪「ハシゴ?」

律「おう!屋上の屋上だ!」

紬「りっちゃんったら」クスクス

律「なー、いいだろー?」

澪「全く、しょうがないな」

律「へへーん、一番乗りぃ!」ノボリノボリ

澪「りつー」

律「んー?」

澪「パンツ丸見えー」

律「んな!?///」

紬「りっちゃんったら///」


律「見るな見るなー!///」

澪「わかったから早く登れ」

律「うー・・・///」

澪「じゃ、次はムギd」

紬「澪ちゃんどうぞ」ニコッ

澪「」

紬「ね?」

澪「は、はい・・・ぱ、パンツ見るなよ!?」

紬「それは約束できないわ」ウウフ

澪「お願いだ、頼む・・・」ガタガタ

紬「冗談よ」クスクス

澪「んっしょっと・・・」ノボリノボリ

紬「澪ちゃーん」

澪「どーしたー?」

紬「今日は黒なのねー!」

澪「んな!?///」ズルッ

律「うをぉ!?!?」ガシッ

澪「・・・し、死ぬかと思った・・・」

律「いいから、重い。早く登れよ・・・」ググ

澪「お、重いだと!?あとで覚えてろ!」

律「おほほほーそんなに怒っても怖くありませんわよー」

澪「くっそぉ、この・・・」グッ

律「げっ」

澪「ムギが登り終わる前に何発いけるかな?」ニコッ

律「お、お情けを・・・!」

ガッツン!ゴスッ!

紬「っと。うわー、ここが学校で一番高い場所なのね!」キラキラ

律「いてててて・・・」

紬「えっと」クルッ

紬「大丈夫?」

澪「あぁ、こいつなら大丈夫だよ」

律「全然大丈夫じゃないし・・・」サスサス

澪「さて」

律「・・・だな」

紬「うん」

律「ムギ、昨日のメールは見てくれたんだよな?」

紬「えぇ。そのあと色々あって返事できなかったの。ごめんね」

律「いや、いいって。で、その『色々』っていうのは?」

紬「あのね、昨日・・・唯ちゃんからメールがきたの」

律澪「唯から?」

紬「えぇ。昨日は自室に戻るのが遅かったからメールに気付いたのも遅かったんだけどね」

澪「そうだったのか。それで?」

紬「ケータイが光ってるから誰かからメールかな?と思って手に取ったら、またメールが来て・・・」

律「すごいタイミングだな」

紬「うん。それが唯ちゃんからのメールだったの。唯ちゃんのメール読んだあとにりっちゃんのメール読んだから、
すぐにりっちゃんに連絡しようと思ったわ。・・・でも、出来なかったの」

澪「・・・?」

紬「唯ちゃんのケータイから電話があったから」

律澪「!?」

律「いや、ちょっと待て」

紬「何?」

律「唯のメールにはなんて書いてあったんだ?」

紬「見る?」カチカチ

澪「見ていいのか?」

紬「うん、大丈夫だと思う。普通のメールだし」カチカチ

律「そ、そうか」

紬「はい」スッ

律「・・・」

澪「・・・」

律「おい、無理って、何が無理なんだ?」

澪「それもそうだけど、これ、和宛のメールじゃないのか?」

紬「うん、間違って私に送っちゃったみたい」

律「なんていうか、唯らしいな」

澪「あぁ、でも・・・深刻そうじゃないか?」

律「ムギ、唯から電話が来たんだろ?その内容は?」

紬「りっちゃん、私はさっき『唯ちゃんのケータイから電話があった』って言ったわ」

澪「どっちも変わらないじゃないか」

律「・・・まさか」

紬「そう、唯ちゃんのケータイから和ちゃんがかけてきてたの」

律澪「え゛」


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最終更新:2010年08月21日 03:20