唯「あじゅいよ~!」

律「こんな暑いのにドラムなんて叩いてられるかー!」

澪「ったく、もっと気合いれろよな。ちょっと暑いくらいでなんだ」

律「ちゃっかり冷房直撃コースに陣取ってるやつに言われたくねー!」

澪「う……ま、まぁ、そうだな! 毎日こんなに暑いと仕方ないよな」

紬「冷房強くしすぎると唯ちゃんが体壊しちゃうものね」

梓「でも、ちゃんと練習しないと学園祭なんてすぐですよ」

唯「固いことお言いでないよこの子は~。ねー、今日は特に暑いからさぁ、皆でプール行こうよ!」

律「おー、唯にしては気の利いたアイディアだな!」

澪「おいおい、そんなこと言って昨日も練習しなかっただろ」

律「こんな日に根詰めてやっても意味ないって。じゃあ多数決な! プールがいい人~!」

唯律『はーい!』

澪「まさか」チラッ

梓「このパターンは」チラッ

紬「私も行きたいで~す」

澪梓『やっぱり……』ズーン

律「じゃあ決定だなー! 水着取りに帰って市民プールに集合なー」

唯紬『りょうかーい!』

澪「はぁ……結局こうなるのか。ん? どうした梓、行かないのか?」

梓「……え!? あ、いえ! もうホントに仕方ないですよね!」スタスタ

澪「……うん?」



澪「ふぅ、今日の授業も終了、と。さぁ部室行くぞ」

律「あ、今日は部長会議だから遅くなるわー。先にやっててくれい」

澪「律が会議を覚えてるなんて……明日は雨かもしれないな」

律「うっさいやい。じゃあ行ってくらー」

澪「唯は……いないな。ムギは行けるのか?」

紬「私、日直だから少し遅れちゃうの。あ、唯ちゃんは課題が終わってないから、って図書室に行ったみたい」

澪「ふーん。じゃあ先に行って準備してるかな」

澪「(お、あの後姿は)」

澪「梓、部室に行く所か――って、誰?」

梓「中野梓です……日焼けしたら全員それ言うんですね。澪先輩、お一人ですか?」

澪「あ、ごめん。昨日のプールで日焼けしたのか。皆はかくかくしかじかってわけで遅れるみたいだよ」

梓「……そうなんですか。また練習時間が少なくなりますね」

澪「う……ま、まぁ練習時間より内容の濃さで勝負だよ。先に準備しておこうか」

梓「はい!」

梓「…………誰も来ませんね」

澪「そうだな。もう1時間くらい経ってるか」

紬「ごめんなさい、遅くなっちゃった」ガチャ

澪「おお、遅かったな」

紬「ちょっと先生に用事を頼まれちゃってて。すぐにお茶淹れるわね」

梓「それよりも練習しましょうよ。時間がもったいないです!」

唯「澪ちゃん、助けてえぇぇぇ!!」ガチャ

澪「ど、どうしたんだ唯!?」

唯「課題が終わらないんだよぉ~。期限も今日中だから絶望だよ~」

澪「結構前から言われてただろ。後どれくらいなんだ?」

唯「全く進んでおりません!」

澪「自信たっぷりに言うな! 全く仕方が無い奴だな。悪いな、ムギ、梓。ちょっと行ってくるよ」

唯「澪ちゃん!? 今日は澪ちゃんが神様に見えるよ~」ガチャバタン

紬「行ってらっしゃ~い」

梓「……」ギリギリ

紬「どうしたの、梓ちゃん?」

梓「どうしたもこうしたもないですよ! もう何日練習してないと思ってるんですか! 昨日もプールに行っちゃいましたし」

紬「うーん、でも課題ができなかったら練習どころじゃないし……りっちゃんがきたら3人でも始めましょう? ねっ」

梓「あ、すみません……ムギ先輩にあたってしまって」

紬「いいのよ、気にしてないわ。それに梓ちゃんも真っ黒だから、結構楽しんでたのかと思っちゃった」

梓「それを言われると何も言えないです……」

律「ムギいぃぃぃぃ、助けてくれぇ!!」ガチャ

紬「ど、どうしたのりっちゃん!? 会議で何かあったの?」

律「その会議で問題が発生したんだよ!」

紬「まさか……」

律「また講堂使用許可書の提出忘れちゃった。テヘッ☆」ペロッ

紬「あらあら」

律「今から和に平謝りに行くんだ。悪いけどムギも一緒に謝ってくれないか?」

紬「え、私も?」

律「もう私が謝っただけじゃ許してくれないんだよー。頼む、この通り!」

紬「それじゃ仕方ないわ。ごめんね、梓ちゃん。ちょっと行ってくるわ」ガチャバタン

梓「え……そ、そんな」

梓「結局今日も練習できそうにない……今までは何とかなってきたけど、このままじゃいつか痛い目に遭うよ」

梓「皆さん本当に何もやってないのかな」

梓「調べたくなってきた」

梓「そうと決まったら早速身辺調査開始だ!」

梓「誰からにしようかな……」ガチャバタン

律「あー、やっとお許しも得たし、申請書も書き終えた。私は自由だー!」

律「っとと、早く戻らねーと、また澪と梓に怒られちゃうな」

梓「律先輩」

律「梓? こんなとこで何やってんだ?」

梓「律先輩を待ってたんです。部活は、まだ皆さん用事あるみたいなんで、今日は解散になりましたよ」

律「部長がまだなのに勝手に決めんなよなー。といっても時間も時間か。じゃあ帰るかー」

梓「はい。それで律先輩にお願いなんですけど」

律「ん、何だよ」

梓「あ、ここではちょっと。重要な相談なんで、今日律先輩の家に泊めさせてもらってもいいですか?」

律「ふーん。まぁ別にいいけど?」

梓「ありがとうございます! それじゃあ早速行きましょうか」ニッ


律「ただいまー」

聡「お帰り姉ちゃん、って」ガチャ

梓「あ、律先輩の弟の聡くんですね。お邪魔します」ペコリ

聡「あ、ご、ごゆっくり」パタン

律「なんでいつもトイレに戻っていくんだ……?」

律「まぁゆっくりしてくれよ。ちょっと飲み物でも持ってくるからさ」

梓「はい。お構いなく」

梓「……よし、まずは部屋調査かな」

梓「色々散らかってるなぁ。律先輩らしいや」

梓「あ、ボロボロの雑誌……前に来た時から気になってたんだよね」

梓「やっぱりスティックで叩いたからだろうなぁ。律先輩なりにちゃんとやってるのかな」

梓「いや、確証を得るまでは信用できないね」

梓「もっと探ってみよう」ゴソゴソ

律「お待たせー」ガチャ

梓「ほおおおぅううぅぅぅっ!」

律「……何やってんだ?」

梓「いいいえいえ、何でもないです! 部屋なんか漁ってませんよ!」

律「? まぁ、いいや。で、なんか相談だっけ?」

梓「あ、それは自己解決しました。私の事は空気と思ってくれて結構ですから、普段通りの律先輩をお願いします」

律「何か訳わかんねーなぁ。そだ、折角梓がいるんだから、聞きたいんだけど」

梓「はい?」

律「今度の学園祭ライブの曲順どうしようかなって。梓の意見も聞いとこうと思ってさ」

梓「あ、そうですね! 最初はやっぱりですね――」

梓「律先輩、いいお湯でした。晩御飯からお風呂までお世話になっちゃって……何見てるんですか?」

律「ん、おう、ライブのDVDをな。やっぱプロの演奏は参考になるし、テンション上がるよな」

梓「そうですね。私達もこれくらい上手くなりたいですね」

梓「(ん、律先輩がスティックを持って……雑誌を叩き出した!)」

梓「あ、あの! 律先輩!」

律「あ、うるさかったか? こういうの見てると叩いちゃうんだよな。その度、聡にうるさいって怒鳴られるんだけど」

梓「……私、律先輩の事勘違いしてました!」

律「な、なんだよ急に。私だって真面目にやる時くらいあるんだぞ」

梓「そうですね! さすが部長って感じです!」

律「妙におだてるなぁ。何にも出ねーぞ?」

梓「いえいえ、これでも感心してるんですよ? いつもはサボってばっかりでダラダラしてますけど」

梓「意外にも料理が上手かったり、人知れず努力してたり、みんなのこと気に掛けてたり。見直しました!」

律「……色々言いたい事はあるけど、何で梓が上から意見なんだよ!」グリグリ

梓「はあっ、ついぃぃ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

聡「(いったい壁の向こうでは何が……ハァハァ)」


……

梓「律先輩は普段はアレだけど、結構アレなりに考えてるのか……」

憂「何してるの、梓ちゃん?」

梓「律先輩に強く当たるのは控えよう。次は誰にしようかな」

憂「梓ちゃーん、おーい」



澪「昨日は唯のお陰で大変だったなぁ。結局下校時間までかかったし」

澪「今日は絶対練習しないとな」

梓「澪先輩」

澪「梓。部室に行く所か?」

梓「いえ、澪先輩を待ってたんです。部活は皆さん用事あるみたいなんで、今日は解散になりました」

澪「えっ、そうなのか? 何も聞いてないけど……ちょっと律に電話してみるかな」ピッピッ

梓「おっと手が滑りましたアァァァァッ!」ガツップチッ

澪「あ、梓!? 何を……」ツーツーツー

梓「えーっと……うっ、急に体調が……! お願いなんですけど、澪先輩の家に泊めさせてもらっていいでしょうか?」

澪「えぇ!? 別に構わないけど……保健室じゃダメなのか?」

梓「私、全国の高校生に5人いるかどうか、っていう保健室アレルギーの持ち主なんでそれはちょっと。さぁ、早く行きましょう」グイグイ

澪「結構元気だな……」


澪「ただいま」

梓「お邪魔しまーす。澪先輩の家は初めて来た気がします」

澪「そうだっけ? それより体調はどうなんだ?」

梓「あ、澪先輩の部屋に入ったら劇的に回復しました! でも大事をとってゆっくりさせてもらいます」

澪「そ、そうか。何か今日の梓はよくわからないな。とりあえず飲み物でも持ってくるよ」

梓「はい。お構いなく」

梓「……よし、調査開始。澪先輩なら心配ないと思うけど、公平に調査しないとね」

梓「音楽系の雑誌が一杯。あ、コレって作詞用のノートかな。どれどれ」パラパラ

梓「……オゥ、スウィーツ」

澪「待たせたな」ガチャ

梓「はわわわわわわ!」

澪「どうした? 何かあったのか」

梓「い、いえ! 何でも! お部屋綺麗にしてあるなぁ、と思って」

澪「普通だよ。で、どうしようか」

梓「お構いなく。空気だと思って、普段通りの澪先輩をさらけ出して下さい」

澪「そう言われてもなぁ……トランプでもする?」

梓「やりますやります! 負けませんよ~」

澪「結構いい時間になったな」

梓「そうですね。時間が経つのは早いものです」

澪「折角梓が来てるんだからさ、ちょっと意見を聞きたいんだけど」

梓「はい。何でしょうか」

澪「新曲の歌詞なんだけど。何個か考えてるんだけど、どうかな?」

梓「さっきのノート……わっ、わ~、どれも可愛い感じの歌詞ですね! いいと思いますよ」

澪「そ、そうか? 実は今まで書き溜めものがまだあるんだ。これもお願いできるかな」

梓「(机の下からダンボールが! まさかそれ全部……!!)す、凄い量ですね」

澪「自分じゃ客観的に見れないからさ。律は茶化してまともに見てくれないし」

梓「そうですね……やっぱり澪先輩は思った通りの方でした」

梓「恥ずかしがり屋さんだけど、真面目で途中で投げ出したりしないで。何だかんだいって素敵な歌詞を作って」

梓「全然練習しない事を危惧して、率先して皆さんを促してもくださるし。理想の先輩ですよ」

澪「あ、梓……恥ずかしい」カアァ

梓「あっ、つい語っちゃいました。って澪先輩、湯気! 湯気! 何か冷やすものは~」


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最終更新:2010年08月23日 04:52