最初はちょっとした用事があっただけだった。
和「こんばんわ」
憂「あっ…和ちゃん」
和「唯いる?学校に忘れ物があったから届けに来たんだけど」
憂「お姉ちゃんは帰りが遅くなるって…」
和「そう…分かったわ」
そう言われ、私の用件は一瞬で片付く。
肩透かしを食らった感じはあるが…忘れ物を渡してこのまま帰ってしまおうか。
長居しても、憂に悪いだろうし。
憂「あの、和ちゃん」
和「なに?」
憂「よかったら、夕飯…一緒に食べて欲しいなぁって…」
和「え?」
予想外の出来事。
ただ、彼女のちょっと寂しそうな顔を見ると断ることができなかった。
憂「ごめんね和ちゃん、無理に付き合ってもらっちゃって」
和「気にしないで、私も夕飯まだだし」
和「そういえば、唯は今なにしてるの?」
憂「分からないけど…たぶん紬さんと一緒だから遊んでるんだと思う」
和「へぇ…二人で」
憂「待っててね、今そうめん茹でてるから」
和「うん、ありがと」
憂「えへへ」
和「どうしたの?」
憂「ううん、ただ…和ちゃんが来てくれて嬉しいなぁって」
和「え?」ドキッ
憂「やっぱりご飯は、誰かと食べたほうが美味しいもんね」
和「あ…そ、そういう意味ね」
憂「おまたせ~」
和「…けっこうたくさん作ったのね」
憂「張りきっちゃった」
和「張り切りすぎよ」
憂「えへー」
和「ふふっ」
憂「じゃあ食べよっか」
和「そうね」
憂「おいしい?」
和「えぇ、憂の作る料理はなんでも美味しいわよ」
憂「もう、マジメに答えてよ和ちゃん」
和「あら、けっこうマジメだったんだけど」
憂といる時間は悪くなかった。
なんだか妹ができたみたいで…楽しい。
こんな妹がいるなんて、唯のことが羨ましい。
憂「そうだ。昨日お姉ちゃんギターの練習していたんだけどね、なんか新曲が弾けるようになったんだって」
和「唯、ギター頑張ってるのね」
憂「えへ~」
唯を褒めると憂まで喜ぶ。
相変わらずお姉ちゃんのことが大好きみたいだ。
でも、唯のことで喜ぶ憂の顔が…私は好きだ。
満面の笑み、こっちまで癒される。
その顔が見たくて唯のことをまた褒めてしまう。
和「唯…軽音部に入ってから変わったわよね。活気があるっていうか…」
憂「そうなの、お姉ちゃん高校に入ってからすごく変わったの!」
和「ふふっ」
私は憂の笑顔を見たいから、唯のことを話題にする。
一応言っておくと、別に唯ことは嫌いではない。
むしろ、長年付き合っている親友だから大切に想っている。
ただ…ちょっと悔しい。
憂が唯に夢中なことが。
いつのまにか…私は憂のことを唯以上に大切に想ってしまっていたようだ。
この笑顔が目の前にあるだけで、幸せだ。
和「憂はお姉ちゃんのこと、大好きなのね」
憂「うんっ!」
和「…まぁ、唯も憂のこと好きでしょうけど」
憂「えへへ…あの、実はね」
和「なに?」
憂「昨日お姉ちゃんに、私の事どれぐらい好きって聞いたの」
和「またそういうことを姉妹で…」
憂「でも、ちゃんと答えてくれたんだよ」
和「なんて?」
憂「世界で一番大好き!だって」
憂「私も嬉しくて、お姉ちゃんのこと宇宙一好きって言っちゃった」
和「……」
憂「和ちゃん?」
和「…さてと、ノロケ話も聞いたし…食器でも洗いましょうか」
憂「え?私がやるよ。和ちゃんお客さんだし…」
和「いいの、私がやりたいだけだから。憂は休んでて」
憂「そう?じゃあ…」
和「……」
今さら、どうにもならないか…
憂「あっ、そうだ」
和「え?」
憂「私、和ちゃんのことも大好きだよっ」
和「う、憂…」
憂「だって、もう一人のお姉ちゃんみたいなんだもん」
和「っ!」
憂「和ちゃんは…私の事どれぐらい好き?」
和「……」
憂「和ちゃん?」
和「…そうね」
和「このメガネくらいかな」
憂「え?」
和「私にとって…無いと困るもの、ってことよ」
おわり
最終更新:2010年08月23日 22:06