【部活終了 帰り道】
紬「それじゃまたね」
唯「じゃね~。いこっ、あずにゃん」
梓「はいです!」
律「うちらも行くか」
澪「そうだな」
prrrr prrrr
ガチャ
憂『はい、もしもし』
澪「あぁ、憂ちゃんか?いま終わったよ」
憂『わかりました。どこに行けばいいですか?』
澪「ん~、とりあえず律の家の前に来てくれ」
憂『はーい』
【りつの家の前】
律「おっす憂ちゃん」
憂「こんばんわ」
澪「それじゃ、行こうか」
憂「はい。お世話になります」
律「澪ー。憂ちゃんに手ぇ出すなよー?」
澪「ば、馬鹿!そんなことするわけないだろ!」
憂「ふふっ」
澪「憂ちゃんも笑ってないで否定してくれ!」
【みおの家】
憂「おじゃましまーす」
憂「へぇ…」
澪さんの部屋はとてもシンプルだった。
シンプルというより大人っぽいといった方がいいだろうか。
澪さんらしいといえば澪さんらしい部屋だった。
澪「お茶もってくるね」
憂「あっ、すいません」
澪「・・・・・・」ズズズ
憂「・・・・・・」ズズズ
憂(気まずい…)
いざ澪さんと2人きりになってみると話す話題があまりなかった。
律さんや紬さんの時とちがい、しばしの沈黙が流れた。
澪「な、なぁ…。憂ちゃん」
憂「は、はい?!」
澪「あの、その…。り、料理教えてくれないかな?」
憂「料理…ですか?」
澪「う、うん。もうちょっとしたら18だし、料理のひとつやふたつ出来ないと恥ずかしいというか…」
澪「それにな。律のやつ、ああ見えて結構料理上手なんだよ」
憂(確かに、律先輩の料理はおいしかったな)
澪「なんか律にそういうとこ負けてるの悔しくてさ。見返してやりたいんだ」
憂「いいですよ、私なんかでよければ」
澪「本当か?ありがとう!はぁ~、断られたらどうしようかと…」
憂「…ふふっ」
澪「あっ、今笑ったな?ほ、本当に不安だったんだからな!」
澪さんらしい、かわいげのある心配だった。
そういうわけで私と澪さんはキッチンに向かった。
冷蔵庫に玉子がたくさんあったのでそれを使ってオムレツを作ることにした。
慣れない手つきで料理している澪さんは見ていて微笑ましかった。
今までは少し近寄りがたかったけど、こうして見るとどこにでもいる普通の女の人なんだなぁと思った。
澪「いただきます」
憂「いただきます」
澪「うぅ…やっぱり憂ちゃんはすごいな」
憂「そんなことないですよ。澪さんも練習すればきっと上手く作れますって」
澪「そ、そうかなぁ…。が、頑張るよ!」
食事を終え、お風呂に入ったあと私と澪さんは
部屋で他愛もない雑談に花を咲かせていた。
澪「でな、そのときの唯がさ…」
憂「そんなことがあったんですか?お姉ちゃんったら…」
憂「あ…そういえば、今日お姉ちゃん部活に来てました?」
澪「あぁ、めずらしく私や律よりも早くに来てたよ」
憂「そうなんですか…」
特に変わった様子はなかったらしい。
寝坊せずに学校に行ったことには驚きだった。
私がいなくなってしっかりするようになったのかな?
だとしたら予想以上の効果だ。
少し安心した私は、前々から気になっていたことを聞いた。
憂「そういえば、澪さんって彼氏とかっているんですか?」
澪「え、えぇっ?!かかか、かっ、彼氏?!」
澪「い、いないよ!いるわけないだろ!」
憂「えっ、いないんですか?意外です」
憂「澪さんってかわいいし、スタイルもいいし、人気もあるから絶対いると思ってました」
澪「む、むむ無理無理無理無理!!!男の人怖いし…」
憂「じゃあ好きな人とか気になる人とかは?」
澪「う、憂ちゃん…。あまり私をいじめないでくれ…」
澪「あ、あぁそうだ!軽音部のみんなは大好きだぞっ!!」
憂(そういう好きじゃないんだけどなぁ…)
憂「でも確かに澪さんって律さんとすごく仲良しですよね」
澪「う、うん…。でも最近律のやつムギのことばっかでさ…」
澪「い、いや!別にやきもちとかそういうんじゃないんだけど、いきなり私に構わなくなってさ。ほんの少し寂しいというか…」
澪「ああああああ何を言っているんだ私は///なんか話してるこっちが恥ずかしくなってきた////」
憂(澪さん、律さんのことが好きなんだ…)
澪「そ、そういう憂ちゃんはどうなんだ?!」
憂「私ですか?」
澪「ああ。好きな人とかいないのか?」
憂「お姉ちゃんです」
澪「えっ…と、ごめん。もう一回言ってもらってもいいかな?」
憂「お姉ちゃんです」
澪「」
憂「私、お姉ちゃんが大好きなんです」
憂「甘えんぼなところも、だらしないところも、全部好き」
憂「今回の家出だって、お姉ちゃんにもっと私のこと好きになってほしくてやったことなんです」
澪(憂ちゃんを変だとは言えないな。私だって律のことが…)
澪「そっか、憂ちゃんは本当に唯のことが好きなんだな」
澪「こんな話をしたのは初めてだよ。ありがとう」
憂「いえ、こちらこそ。澪さんの色んな話が聞けてよかったです」
澪「寝ようか」
憂「はい!」
こうして私たちは眠りについた。
紬さん、律さん、澪さんの家に泊まってきたけど、
一番距離が縮まったのは澪さんだった。
私と似たような感じがしたからかも知れない。
澪さんの布団は、今まで泊まった誰の布団よりも寝心地がよかった。
【家出5日目】
憂「お世話になりました」
澪「ああ、気をつけて。唯によろしくな」
憂「はい。失礼します」
さぁ、まっすぐ帰ろう。
お姉ちゃんが待ってる。
そうだ、買い物をしていこう。
きっとお姉ちゃんはお腹を空かしているだろうから。
お姉ちゃんの大好きな料理を食べさせてあげよう。
そう思って駅の近くを通りかかった時、
?「た、助けて…」
憂「……へ?」
さわ子「あ、憂ちゃん…?」
さわ子先生だった。
真っ青な顔をして、今にも倒れそうだった。
憂「ど、どうしたんですか?!」
憂(うっ、お酒くさい…)
さわ子「じ、実は昨日友達と飲みすぎちゃって…」
さわ子「駅までは何とかこれたんだけど、もうダメ限界…」
このまま放置しておくわけにもいかないので、
タクシーを拾い、先生の家まで付き添うことにした。
【さわ子の家】
ガチャ
憂「着きましたよ、先生」
さわ子「うぅ…」どさっ
先生は家に着くなり床に倒れこんだ。
私は倒れた先生を布団まで運んだ。
憂「先生、大丈夫ですか?」
さわ子「…Zzz」
寝てしまったようだ。
一応桶を用意しておいた。
さわ子「……うぐっ」
げえええええ
憂「」
用意しておいてよかった。
【夕方】
さわ子「…ん」
憂「あ、起きました?いま軽く食べられるもの作ってるんで、待っててください」
さわ子「憂ちゃん、あなたまさかずっと?」
憂「そのままにしておくわけにもいかなかったんで。あ、別に平気ですよ?」
憂「はい、どうぞ」
さわ子「ありがとう。あ、おいしい…」
憂「よかったぁ」
さわ子「久々に集まったもんだからつい飲みすぎちゃってね…。でもみんな次の日仕事だって言ってそそくさと帰っちゃって」
さわ子「憂ちゃんがたまたま通りがかってくれて助かったわ。本当にありがとう」
さわ子「それで、どうして憂ちゃんはそんな大きな荷物を持って駅の近くにいたのかしら?」
憂「実は…」
さわ子「あっははははは!それで家出か、若いわねぇ」
憂「わ、笑いごとじゃないです先生!」
さわ子「いいじゃない、青春ね。うらやましいわぁ」
憂「むぅ…」ぷくっ
さわ子「あぁ、ごめんね。こんなに愛されて、唯ちゃんは幸せ者ね」
さわ子「今日はありがとう。家まで送るわ、乗ってきなさい」
憂「本当ですか?ありがとうございます」
【ゆいとういの家】
あたりはすっかり暗くなっていた。
お昼には帰るはずがだいぶ予定より遅くなってしまった。
憂「ありがとうございました」
さわ子「それじゃ、姉妹共々仲良くするのよ~」
ブゥゥゥン…
憂「…さて」
お姉ちゃんはどうしているだろう?
きっと帰ったら「ういぃ~!」って
泣きついてくるに違いない。
そしたらぎゅうってして、一緒にご飯食べて、一緒に寝るんだ。
期待に胸膨らませ私は玄関のドアを開けた。
ガチャ
憂「ただいま~」
しーん…
憂「あ…あれ?」
おかしいな。聞こえなかったのかな。
私はもう一回大きな声で帰宅を告げた。
憂「ただいま~!お姉ちゃーん、帰ったよー!」
しーん…
またもや反応がない。どうして?
そっか、疲れてまた寝てるんだ。
起こしてあげよう。そう思って靴を脱ごうとした時だった。
憂「えっ…?」
憂「なに…これ…?」
最終更新:2010年08月26日 20:53