澪「珍しいな、唯が図書室で読書なんて」

唯「わ、澪ちゃん! 何か借りにきたの?」

澪「ちょっと詩集をな。中原中也の」

唯「ちゅう?」

澪「うん。ところで、唯は何を読んでるんだ?」

唯「これは童話集だよ」

唯(って、もしかして笑われちゃったりして)

澪「ふぅん」

唯「……あ、あはは。ちょっと子供っぽいかな」

澪「そんなことないって。むしろ一周回って大人っぽい」

唯「そうかな」

澪「なんか唯らしいし。ちゃんとお話の教訓を日々に役立てるんだぞ」

唯「子供扱いされてる気がする」

澪「あはは。じゃあな」

唯(……実は澪ちゃんってけっこう意地悪かも)

律「ゆいー、部活終わったことだしカラオケ行こうじゃないか」

唯「おおっ、いいね! みんなどう?」

紬「行きたいけど……今日は久しぶりに父が戻ってくるから、早く帰らないといけないの。ごめんなさいね」

梓「私も今日は、……まあ野暮用が」

唯「野暮用って?」

梓「そういった質問が野暮になるような用事のことですよ」

唯「なるほど、デートかにゃん」

梓「止めてください。色々と」


律「じゃあ三人でカラオケだ!」

澪「私の都合は考えなしか!」

律「あららら、ごめんなさーいね秋山さん! ご多忙の身をカラオケへ御案内しようだなんてワタクシったら……」

澪「いや、まあ。ヒマだけど……」

律「いくかー」

唯「そだねー」

澪「うぅ、なんでシラケるんだよ……」



カラオケ店

澪「ジュースでも頼むか」

律「コーラ!」

唯「コーラフロート!」

律「なにおう!? じゃあ私はやっぱりメロンクリームソーダで……」

唯「珈琲」

律(か、勝て……ない……)

澪「何の勝負だ! 二人ともコーラフロートでいいな?」

唯「うん!」

律「おう」

澪「……あ、すみませんドリンクお願いします。コーラフロート二つに……」

唯(澪ちゃんは面倒見がよろしいね)

律(うむ。テスト前は非常に有り難い)

唯(でも実は意地悪なんだよ)

律(なに? なんかされたのか?)

唯(何て言うか……可愛い意地悪)

律(わかる。よくわかる)


澪「なに二人でコソコソ話してるんだ?」

律「作戦会議です」

唯「重要機密が飛び交う軍事作戦会議です」

澪「カラオケボックスに来てすることではないな」

律「今もその扉の向こうに聞き耳を立てる諜報員がっ!」

唯「なに!? ええい、姿を見せよ!」

店員「ドリンクお持ちいたしましたー」

唯「はーい」

律「どーもでっす!」

澪「お前ら……」


律「おい見ろ! アイスが二つ入ってるコーラが!」

唯「あれ? ホントだ」

澪「ふっふっふ、ようやく気付いたな二人とも。私が頼んだのはそう……コーラツインフロートだったのさ!」

律「よーし、バンバン曲入れちゃうぞー」

唯「ずるいよりっちゃーん、私にもリモコン」

澪「……ちょっとくらい乗ってくれてもいいんじゃないか」

律「えい!」

唯「あはは、このサザンの歌は無理だよー」

澪「……ま、いいさ。この冷たいアイスを二つ分たっぷり堪能できるんだから」

律「カラオケボックスに来てすることではないな」

唯「カラオケボックスに来てすることではないよね」

澪「……ぐすっ」

唯(可愛い)

律(可愛い)

店員(可愛い)

律「いやさっさと出てけよ」


唯「じゃあ私がゴロゴロの素晴らしさを教えてあげよう」

澪「待て。どうしてそうなった」

唯「だって澪ちゃんが『ゴロゴロなんてしてられるかっ』っていうんだもん」

澪「でも……せっかく二人で遊んでるんだぞ」

唯「ゴロゴロは素晴らしいよー。楽しいよー」

澪「唯は私と遊びたいのか? それともただゴロゴロしたいのか?」

唯「澪ちゃんと一緒にゴロゴロしたい」

澪「……ったく、仕方ないな」

唯「やった!」

唯「そうと決まれば、世界ゴロゴロ選手権があったら間違いなく日本代表に選ばれるであろうこの平沢唯が、ゴロゴロの楽しさを説いてしんぜよう」

澪「はいはい」 ごろん

唯「お、澪ちゃんさすが。今のは投げやりゴロゴロだね」

澪「何の技だよ……ふあぁ、眠くなってきちゃった」

唯「でもね、ゴロゴロは本来的に睡眠とは異なるものだから、どんなに心地好くても決して眠っては」

澪「……すー………すー」

唯(ってもう寝ちゃってるー!?)

澪「すー……」

唯(寝顔、初めて見るかも。普段の凜とした感じは消えて、ちょっと幼いなぁ……)

澪「………すー」

唯(これは飽きないね。このままずっと寝顔を眺めてゴロゴロしよっと)つん

澪「ぅん……」



数分後

澪「……すー……」

唯「……………すぴー……」



おやすみ。



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最終更新:2010年08月29日 20:08