紬「はい梓ちゃん 約束の惚れ薬と忘れ薬よ
でもなんで忘れ薬も?
りっちゃんに惚れ薬を飲ませればいいだけじゃないの?」


梓「こうするためですよ」バッ


紬「ゴクン あれ私なにを梓ちゃんとしていたのかしら? 思い出せないわ」


梓「なんでもないですよ」
(これで私の計画を知っている者は誰もいない)



ティータイム
梓「律先輩のお茶に薬を混ぜれば・・・」


カポン
梓(よし!!)


梓(惚れ薬は飲んでから一番最初に見た人物のことを好きになる
律先輩の向かい側に座れば完璧だ)


律「でさー」


唯「ははは」


律「モグモグ」カチャ


梓(ティーカップを手にとった これで・・・)


律「ゴクゴク」


梓(あとは顔をあげて私のほうを向くだけ)


梓「律せんぱ~い」


律「ん なんだ?」ドキッ


律「な なんだ あっあずさ///」カーッ


梓(成功したみたいだ)


梓「練習のあと部室に残っててくれませんか?
二人だけで話したいことが」


律「あ ああ わかった」モジモジ


唯「えーっ りっちゃんだけー?
私も混ぜてよぅ」


梓「これは大事なお話なので唯先輩はちょっと」


唯「意地悪ー」



屋上

律「それで、私に話ってなに?」(ちょっと待てよ。屋上ってことはまさか……///)

梓「律先輩。私、ずっと前から悩んでることがあったんです」

律「う、うん、なんだ?私でいいなら相談に乗るよ」ドキドキ

梓「ありがとうございます」

律「…………」

梓「…………」

律「は、早く言えよ」

梓「その……やっぱりここじゃ恥ずかしいです」

律「へ?」

梓「律先輩のお家に邪魔してはいけませんか?」

律「う、うん……いいよ」

梓「ありがとうございます、律先輩」

律(ヤバい、マジ梓が可愛いすぎて直視できねえ///)

梓「じゃあ今から行きましょう」

律「え? 今から?」

梓「はい!」

律「……まあいっか」



律の家

梓「お邪魔します」クルリ

律(梓はえらいなあ。きちんと靴をそろえて)ジーッ

梓「どうしました?」

律「へ? いやなんでもないっ! ホントになんでもないから///」

梓「顔赤いですけどね」

律「と、とにかく私の部屋に行こう!」



律の部屋

梓(よし、あとは私が告白すれば律先輩は私のものになる)

梓「律先輩の部屋って綺麗ですね」

律「当たり前だろ? 澪の部屋とは違うぞ」

梓(……って部屋褒めてる場合じゃない)

梓「律先輩……」

律「な、なに……?」

梓(さあ言うんだ……私!)

梓「わ、私、律先輩に相談したいことがあるって言いましたよね?」

梓(お、落ち着け……落ち着け)ドキドキ

律「う、うん……」

梓「あ、あれはですね」

律(や、ヤバい……緊張しすぎて頭がおかしくなってきた///)ドキドキドキドキ

梓「わ、私……好きな人がいるんです///」ドキドキ
律「だ、だ、だ、だ……誰なんだ?」

律(ああああ緊張のあまり頭がおかしくなってる)ドキドキ

梓「そ、その人はいつも明るくて……///」ドキドキ
律「う、うん」ドキドキ

梓「ちょっと抜けてるところもあるけど……」ドキドキ

律「あ、ああ」ドキドキ

梓「いつもみんなのことをきちんと考えていて……///」ドキドキ

律「ほ、ほほう」ドキドキ

梓「……素敵な先輩なんです///」ドキドキ

律「な、名前はなんて言うんだ?」ドキドキ

律(いやつうか、絶対私のことだろ)ドキドキドキドキ

律(でもヤバい。緊張しすぎて心臓の音がうるせー!)ドキドキドキドキ

ぷるるるるるるるる♪

律(早く言えよ、梓ああああああ!)ドキドキ

梓「唯先輩……」

律「へ?」

梓「……唯先輩」

梓(……からメールが来た)

梓(タイミング悪すぎですよ、先輩! まあいいや。あとで返事しとこ)

梓「そ、それで、その人の名前は…………」ドキドキ


律「」

梓「り、律先輩……?」


梓「……唯先輩」


律(な、なに? 今梓はなんて言った!?)

律(ゆ、唯先輩!?)

律(私じゃなくて、唯!?)


梓『そ、その人はいつも明るくて……///』

律(確かに唯はいつも明るい)

梓『ちょっと抜けてるところもあるけど……』

律(ちょっとどころじゃないけど)

梓『いつもみんなのことをきちんと考えていて……///』

律(そうだな。唯は意外と思いやりのあるやつなんだよ!)

梓『……素敵な先輩なんです///』

律(唯はたしかに素敵だあああああああああああああああああ)プシュー

梓「あ、あの律先輩?」

律「」プシュー

梓「律先輩!」

律「…………………………………あ、ああすまないすまない」ハッ

律「いささささか動揺してしまったよあはははは」

梓(え? なんか誤解してない?)

律「安心しろ梓。理解は事情した」

梓「日本語が狂ってますよ!?」

律「私はたとえ梓が唯に恋心を抱こうとも、否定しないさ。あははははは」

梓「え? ちょ、ちょっと先輩!?」

律「あははは、さあさあ梓は帰るんだ」

梓「まだ話は終わってません!」

梓(いけない!絶対に誤解してるよこの人!)

梓「わ、私が好きなのは……」

律「わかっているよ。梓が好きなのは唯だろ?」

律「けれど私は恋愛経験がないから相談には乗れない」

梓「いや、違うんです!違うんですってば!」

律「トンちゃんにでも相談しな」ホイ

バタン


梓「誤解が解けぬまま部屋から追い出された……」

梓「律先輩の馬鹿……」シュン



帰り道

梓(はあ……最悪)トボトボ

梓(惚れ薬が意味なく終わるなんて……)

ぷるるるる♪

梓「はい、もしもし」

唯『あ、もしもし、あずにゃん?』

梓「……なんですか?」

唯『あずにゃん、機嫌悪いの?』

梓「どうしてそう思うんですか?」

唯『声が怒ってるような……』

梓「そうですよ!」

唯『へ?』

梓「唯先輩のせいです!」

唯『え? え? あずにゃん!?』

梓「…………すみません」

プチっ

梓(なにやってんだろ私?)

梓(自分が悪いのに人に八つ当たりして……)

梓「う……うわああああん」



律の部屋

律「……はぁ」

律「……あずさぁ……」

律(なんで私じゃなくて唯なんだよ……)

律「…………ぐすっ……」


律(……ワックスどこに閉まったけ?)


……

紬「私の眉毛はとっても上手いのよ」

唯「あずにゃんも食べなよ」パクッ

紬「梓ちゃんももちろん食べるでしょ?」

梓「じゃあお言葉に甘えて……」

梓「いただきます」パク

梓「うまい……」


紬「私、両方の眉毛がなくなると記憶が全部なくなっちゃうの……」

唯「あわわわ、た、大変だよ、あずにゃん!」

梓「ど、どうしましょう!?」

唯「そうだ!三角定規を使おう!」

梓「そんなもので……」

紬「ありがとう、唯ちゃん、助かったわ」


――――――――
―――――――――――
――――――――――――――

梓「……ん、夢?」

梓「……変な夢だったな」

梓「…………」

梓「そ れ だ 」


梓「学校行ってきまーす」

梓母「今日はずいぶん早いわね」

梓「ちょっと用事があるの!」

梓母「気をつけていきなさいよー」

梓「行ってきます!」



通学路

梓「この時間なら確実にムギ先輩と鉢合わせになる……」テクテク

梓「ムギ先輩のもってる忘れ薬を律先輩に飲ませれば……」

梓「律先輩は昨日のことを忘れる!」

梓「あ、ムギ先輩!」

紬「あら? 梓ちゃん? 今日は早いんだ」

梓「はい、それよりも先輩!」

紬「なに?」

梓「忘れ薬を私にもう一個ください!」

紬「…………」

紬「……わすれくすり?」

梓「はい。忘れ薬です!」

紬「なんのことを言ってるの、梓ちゃん?」

梓「だ、だから忘れ薬です。もってるでしょう?」

紬「……よくわからないわ」

梓「あ」

梓(昨日、ムギ先輩に飲ませた忘れ薬は、忘れ薬の存在自体を忘れさせたんだ……!)

梓(完璧な作成が完璧に裏目に出るなんて……!)



三年二組教室


ザワザワ ザワザワ ザワザワ

ザワザワ ザワザワ ザワザワ

律「…………」


唯「ね、ねえ、澪ちゃん……」

澪「律のことだろ。どうしたんだろうな?」

和「まさか律が……」

紬「髪を下ろしてくるなんて……!」


律(……なんかみんなの視線が気になるな)

澪「なあ、律」

律「なんだよ?」

澪「いや、珍しいなと思って。律が髪を下ろしてくるなんてさ」

律「…………」

紬「どうしたの、りっちゃん?」

唯「これが今流行りの、いめちぇん!?」

和「違うと思うわよ」

律「ただカチューシャがなかっただけだよ!はい、散った散った」


紬(りっちゃんの可愛さが普段の三倍増しになってるわ)ウットリ



二年一組

純「あずさー、元気かー?」

梓「元気じゃない……」

憂「どうしちゃったの、梓ちゃん」

梓「自己嫌悪の最中」

純「部活でなにかあったの?」

梓「……なにもないよ」

憂「昨日お姉ちゃんが梓ちゃんに電話したら、梓ちゃん怒ってたって言ってたけど」

梓「……それは気にしないで」グテー

純「変な梓」

梓「うるさい」



二時間目終了

梓(ダメだ。律先輩のことが気になりすぎて、全然勉強に集中できない)グテー

純「おーい、あーずさー」

梓「……なに?」

純「うわっ、顔怖っ」

梓「今日は気分が悪いの」

純「もしかしてあの日かな~?」

梓「う、る、さ、い!」

純「まあまあ怒らないでよ。なんなら私が梓の悩みに乗ってあげるからさ」

梓「じゃあ、仮に好きな人が私にいるとするよ」

純「うんうん、って誰か好きな人ができたの!?」

梓「あくまで、か、り、に、ね!」

純「怖いなあ、今日の梓」


五分後

純「……つまり、梓の話では」

純「本当は律先輩が好きなのに、ちょっとした誤解から律先輩には、唯先輩が好きだと思われている、と」

梓「うん、そういうこと……って、全部話してた!?」

純「まあまあ、慌てない慌てない。私は梓の恋を応援するよ?」

梓「……ホントに?」

純「うん」

憂「話は聞かせてもらったよ」

純「憂? いつの間に!」

憂「梓ちゃんの話では、律さんは惚れ薬によって確実に梓ちゃんのことが好きなんだよね?」

梓「うん。多分、間違いないと思う」

純「なら、今から告白すればいいじゃん!」

憂「律さんは、梓ちゃんのこと好きなんだから、告白すれば確実に成功するしね」

梓「そっか」ポン

梓「私、今から律先輩に告白してくる!」ピューン


純「足速っ」

憂(……うん? 惚れ薬?)

憂(……まあいっか)


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最終更新:2010年08月30日 21:07