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放課後・軽音部部室

唯「ムギちゃん。そろそろお茶にしない?」

紬「・・・」


紬「・・・」 しーん

唯「・・・うう、無視された。ムギちゃんに嫌われちゃったよー」

紬「・・・」 チラッ。ニコッ

唯「あ、あれ?え、えと。あの、私、何か悪い事したかな?その、えと。ごめんなさい」 あたふた

紬「え?唯ちゃん、何言ってるの?唯ちゃんはいつも良い子で、私は大好きよ♪」 ニコニコッ

唯「あ、あはは。そうなんだ。じゃあムギちゃん、お茶ちょうだい」

紬「・・・」 しーん


唯「う、ううっ。憂ー」

律「いないよ。しかしおかしいな。怒ってないなら、何が原因だ?」

梓「簡単な話ですよ」

律「本当か?」

梓「私自身の経験からして、間違いありません」

律「吹くねー、この子は」

澪「梓は何が原因だと考えてるんだ」

梓「今からそれを実証してみせます。・・・紬先輩、そろそろお茶にしましょうか」

紬「はーい♪今日はブレンドしたハーブティにしてみようと思ってるのっ♪」 ルンラン

梓「とういう事です」

律「全然分からん・・・いや、待てよ」

澪「呼び方、か」

梓「間違いありませんね」

紬「ふふふーん♪ふふふふーん♪」 

梓「ムギ先輩の本当の名前は、紬。つまりは、そう呼ばれたかったんですよ」

唯「えー?だって、ムギちゃんはムギちゃんだよ。ムギちゃんをムギちゃんって呼ばなかったら、誰をムギちゃんって呼ぶの?」

律「いや、呼ばなくて良いし。でも、どうして急に?」

澪「常日頃のストレスがたまってるんじゃないのか。ムギは踏まれて強くなるって言うし。……ごめん、今のは忘れてくれ」

律「メモメモ」

澪「そのデコ、タオルで磨くぞ」

澪「でも梓は、良く分かったな。・・・ああ、梓もそうだからか」

梓「ええ。私の場合は、あ、あず。あず、あず」

律「皆まで言うな、皆まで。確かに冷静に考えると、結構こっ恥ずかしいあだ名だよな」

唯「えー?だってあずにゃんはあずにゃんだよ。あずにゃんをあずにゃんって呼ばなかったら、誰をあずにゃんって呼ぶの?」

律「呼ばなくて良いから。とはいえ、私は結構疑問なんだよな」

澪「何が」

律「まあ、見てなって。ムギー、私のハーブティは薄めにお願いー」

紬「はーい♪あ・・・」 あたふた

律「な?」

澪「なるほど。結局本人も、そう呼ばれるのが当たり前になってるのか」

唯「だから言ったでしょ、ムギちゃんはムギちゃんだって。紬ちゃんでも良いんだけど、やっぱりムギちゃんはムギちゃんなんだよ」

澪「唯の言う事も、分からなくはないが。とはいえ本人がそれを改めたいと思ってるのなら、私達も呼び方は変えるべきじゃないのか」

律「しゃーないな。じゃあ今からムギは、紬と呼ぶ事」

唯「りっちゃん、ちょっと待って。それだけでは、問題は何も解決してないよ」

律「何が?」

唯「だったら他のみんなの呼び方はどうするの?あずにゃんやりっちゃんは」

梓「私は梓で良いですよ。というかあずにゃんって呼んでるのは、唯先輩だけです」

唯「でも私、呼び方は大切だと思うんだよ。あずにゃんはあずにゃん、りっちゃんはりっちゃん。ムギちゃんはムギちゃんなんだよ」

澪「・・・もしかして私だけ、名前のままか」

律「嫌な所に食いついたな」

紬「みんなー、お茶の準備が出来たわよー♪」ニコニコッ

唯「ありがと、ムギちゃ・・・。む、麦茶が飲みたかったな-、紬ちゃん」

紬「あらあら。じゃあ明日は、麦茶を持ってくるわね」 ニコニコッ

唯「あ、ありがとー、紬ちゃん」 たらたらー

律「なんか、痛々しいな」

澪「慣れるまでの辛抱だ。それに良いじゃないか、あだ名で呼ばれるなんて。ふっ」

律「うわー、めんどくさい奴」

澪「デコ磨くぞ」



夜・平沢家リビング

唯「・・・って事が、今日あったんだよ」

憂「へー。でも呼び方は、本人にとっては結構大切な事だと思うよ」

唯「私もそれは分かるんだけど。だからこそ、ムギちゃんはムギちゃんだと思うんだよね」

憂「うーん。でも本人が嫌がってるなら、難しいのかな。だって私がお姉ちゃんの事を、姉貴。なんて呼んだら困るでしょ」

唯「ぐっ。そ、それは確かに。だったら、紬ちゃんって呼ぶしかないのかな」

憂「今はそうした方が良いと思うよ。それで梓ちゃん達も、普通に呼ぶの?」

唯「事ここに至っては仕方ないよね。悪平等って気もするけれど」

憂「ど、どうしたの、お姉ちゃん?」 あたふた

唯「いや。和ちゃんがそう言ってたから」

憂「そ、そうなんだ」 ほっ

唯「なんて具合に私が難しい事を言い出したら、みんな困るだろうしね。そういう印象って、難しいな」

憂「でもお姉ちゃんはお姉ちゃんだよ。私にとってお姉ちゃんは、何があってもお姉ちゃんなんだから」 ニコッ

唯「憂は、私と同じ事を言うね」

憂「だって、姉妹なんだもん♪」

唯「ういー♪」

唯「お姉ちゃん♪」



翌朝・教室

唯「という訳で昨日は、憂と一緒に寝ました」 

和「相変わらず、のんき姉妹ね。それで、呼び方はどうするの?」

唯「ムギちゃんが嫌がってるのなら、紬ちゃんって呼ぶしかないよ」

和「もう、ムギちゃんって呼んでるじゃない」

唯「だって、ムギちゃんはムギちゃんなんだもん。紬ちゃんって呼ぶようになっても、ムギちゃんはムギちゃんに変わりは無いんだから」

和「そういう所、唯らしいわね」 ニコッ

唯「良く分かんないけど、ありがとう」 てへっ

紬「おはよう♪唯ちゃん、和ちゃん」

和「おはよう、紬」

唯「おはよう。むつぎちゃん」

紬「・・・」 ニ、ニコッ

和(こればかりは、唯を責められないか。取りあえず、笑うのは我慢しましょ)


律「おーす」

和「おはよう、律」

唯「おはよう、律ちゃん」

紬「おはよう、りっ、つちゃん」 ニ、ニコッ

和(我慢、我慢)

澪「みんな、おはよう」 キラキラッ

和「おはよう、澪」

唯「おはよう、澪ちゃん」

律「おーす、澪」

紬「おはよう、澪ちゃん」

澪「う、うん」 どよーん

和(ある意味、哀れね) プッ

澪「デコ出せよ、デコ」

律「なにゆえ、私」


律「いやー、難しいわ。これじゃ、話しかけるのも一苦労だぞ」

澪「すぐに慣れる。それに良いじゃないか、間違えてもらえるだけ」

律「歪みだしたな、おい」

唯「みんな、早く部室に行こうよ。つむぎっちゃんも」

紬「は、はい♪」 ニコニコ、ダラダラ

和「あなた達、本当に大丈夫?」 プルプル

唯「大丈夫だよ、のどかっちゃん」

和「それ、わざとでしょ」 ニヤッ

唯「てへへ」 ニヘッ

澪「羨ましい」

律「デコ磨くか?デコ」



放課後・軽音部部室

梓「済みません、遅れました」

澪「梓、来たな」

律「よう、梓」

紬「梓ちゃん、こんにちは」

唯「梓ちゃん♪」

梓「どうしたんですか?唯先輩」

唯「え、何が?」

梓「だって私の事を梓って・・・。呼ぶのは当たり前過ぎませんか?」 だらだら

律「デコー、デコはいらんかえー」


……

唯「ライス、たぁぷりっ♪」 じゃーん

律「よーし、ちょっと休憩するか。ムギ、お茶頼む」

紬「はーい♪」 ルンルン

澪「普通にスルーしたな」

梓「単に、忘れただけでしょう。ムギ先輩、今日のお菓子は何ですか?」

紬「今日はブランデーケーキ・・・。みんな喜んでくれるかなーっ」 だらだらー

律「力尽くで一人言に持って行きやがった」

唯「むつぎちゃん、今日のお茶は?」

紬「唯ちゃんのリクエスト通り、麦茶を持って来たわよ。砂糖を入れると、結構ケーキに合うの♪」

唯「ありがとー、むつぎちゃん♪」 ニコッ

紬「どう致しまして♪」 ニコッ

律「そこは、是が非でも抵抗しろよ」

さわ子「お、やってるわね」

律「・・・この場合、どうするんだ?」

澪「普通に名前で良いだろ」

律「でも、さわ子ちゃんって呼ぶのも変だろ。年齢的に考えて」

澪「だったら、さわ子さんは?」

律「一気に老けるな、それ」

さわ子「お前のデコも、拭かせろや」


さわ子「全く。可愛らしい事やってるわね、あなた達は」

唯「キャサリンもそう思う?」

梓「し、失礼ですよ。唯先輩。大人をからかう物ではありません」 プルプルッ

律「地味に追い打ちを掛けるな、梓。確かにキャサリンと比べれば、あずにゃんなんて可愛いもんだ」

さわ子「あなた達ね-。大体、どうしてこんな事になった訳?」

唯「負の感情を表現する事が日頃無いから、その憧れがおかしな形で昇華したんだよ」

澪「和の受け入りか。でも結局慣れない事をしてるんだから、いつか破綻する気もするけど」

さわ子「何にしろ、程々にしなさいよ。初めは些細な事でも仲がこじれるなんて、若い時は結構あるんだから」

律「その点さわ子さんは、もう大丈夫だよな」

さわ子「このデコか、このデコが喋るんか」


律「あー、ひどい目にあった」

澪「お前が悪いんだろ。もう少し練習して、今日は帰るか」

紬「ごめんなさい。私、ちょっと用事があるの」

律「そうか。だったら、これで解散。紬、気を付けて帰れよ」

紬「ありがとう♪みんな、また明日」 ぱたぱた

唯「ムギちゃん帰っちゃったね」

梓「普通に呼びますね」

唯「当たり前だよ。ムギちゃんはムギちゃんだもん」

梓「・・・だったら、私はなんなんですか」

梓「梓ちゃんは、あずにゃんだよ。誰が何と言っても、私の中では絶対にね」

梓「な、何ですかそれ。全然意味が分かりません」 てれてれっ

澪「あはは、あはは。あははははは。はぁー・・・」

律「こっちはこっちで、何一つ解決してないな」



夕方・商店街内、ハンバーガーチェン店

律「でもムギの性格からして、ムギって呼ばれるのはむしろ嬉しいと思ってたんだけどな」 パクパク

澪「私のポテトだぞ、それ」 パクパク

律「それは、私のナゲットじゃん」 パクパク

梓「親密さの度合いって事ですか」

律「まあな。こういうじゃれ合いみたいなの、ムギって結構好きだろ」 パクパク

澪「私は別に、その、えと」 ぐいぐい

律「あー。ポテトうめー」 ぐいぐい

澪「ナゲット、美味しいな」 ぽつり

唯(さりげなく仲良いな、この人達) じー

唯「あずにゃん、ポテト食べたいの?」

梓「い、いえ。そういう事ではなく。というか、あずにゃんって呼んでるじゃないですか」

唯「あ、ごめん。本当、ついうっかり。ごめんなさい」 しゅん

梓「な、何もそんなに謝らなくても。ムギ先輩がいない時なら、別にまあ」 あたふた

唯「本当?あずにゃんは、優しいね♪」 ニコッ

梓「もう良いですから」 てれてれ

律「やっぱ、今更呼び方を変えるのは無理があるか」

澪「変わってない私には、関係無い話だけどな」

律「デコか、デコが欲しいんか」



 商店街、ペットショップ前

唯「あ、ペットショップ。ちょっと見ていこうよ」

梓「トンちゃんのご飯も買わないとですしね。いつまでも、ムギ先輩のお世話になりっぱなしも良くないですし」

唯「お茶とかお菓子とか、トンちゃんの事とか。あずにゃんの言う通り、私達ムギちゃんのお世話になりっぱなしだね」

律「まあ、な。正直、ちょっと甘えすぎてたのかな」

澪「そういう不満が出たって事か?まさか」

律「私もそうは思わないけどさ。私達も、もう少しムギの負担を減らすようにしていかないと」

澪「ただお茶を淹れるのは、むしろムギが好きな事だぞ」

律「難しいな。本人に聞くって性質の話でも無いし」

唯「あ、ムギちゃん」

律「え?」

律「猫じゃん」

梓「スコティッシュホールドですね」 ほわー

澪「確かにほんわかした雰囲気は、ある意味ムギっぽいのか?」

唯「名前もムギちゃんだよ。ほら、ここ見て」

澪「このプラカードか。・・・って、iqumになってるぞ」

梓「猫ちゃんが入ってるゲージの品番みたいですね」

澪「逆さから読むと、mugiか。・・・もしかしてムギ本人も、この猫を見たとか」

律「この猫と自分を重ね合わせたって?でも可愛い猫だし、別に悪い気はしないだろ」

澪「だけど猫だぞ。こんな丸っこい顔の、デコッパチの」

律「悪かったな、おい」

梓「デコッパチはともかく、猫と同じ名前なのは確かに気になるかも知れません」

唯「あずにゃん2号は?」

梓「あ、あれはあれで仕方ないですけど」 てれてれ

律「どっちなんだよ。ムギもこの辺は帰り道だし、この猫を気にしてるのなら呼び方は確かに変えた方が良いかもな」

唯「可愛いのにね」 ちょいちょい

澪「本当だよ。可愛い猫と被るのなら、むしろ歓迎すべきだろ」

律「こっちの九官鳥、羽根の色が真っ黒だぞ」

九官鳥「オハヨー、オハヨー」

律「夕方だよ、夕方。馬鹿だなー、澪は」

澪「デコッパチ、外に出ろ」


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最終更新:2010年08月31日 23:30