紬「ここは…どこなの?」

気が付くと私は真っ暗闇の中にいた
何が起こったのかさっぱりわからない私は、とりあえず人を探した

紬「だれか~、いませんか~?」

紬「斉藤~?みんな~?」

私の声はただただ闇に吸いこまれていった
私はそのまま闇の中に座り込んだ

しばらくボーっとしていると、遠くに光の粒のようなものが見えた
私がそれに気が付いた瞬間にそれは巨大化し、辺りを真っ白に染めてしまった

紬「きゃ…」

私は眩しさのあまり目を瞑ってしまった

光は段々と弱まっていき、やがて私も目を開く
そこには街らしき風景が広がっていた

崩れたビル、赤い空、砂埃で汚れた空気
景色の全てが破滅的な印象を私に与えようとしていた

紬「ここは…桜ケ丘ではないみたい…」

この辺りを探索してみたが、私の知っている場所はなかった
もしかするとここだけボロボロなだけで
他は大丈夫なのかもしれない、という安心感が少し生まれた

しばらく探索を続ける
どこかで騒がしい音がする

紬「人…?誰か~!いるん…」

しかし気付いてしまった
その音の正体は、銃声、謎の生物の奇声…
私は声を押し殺すことにした

銃声は止んだ
怪物の悲鳴のような声が聞こえたので、恐らく怪物が負けたのだろう

しかし、銃を撃っていたのが人間とも限らない
私は慎重に騒音の場所に近づいた

砂煙の中、人のシルエットが見えた
その瞬間私はホッとした

?「まだ人が生きてたのか!?」

私はその声に驚いてしまった
なぜならその声の主は…

紬「りっちゃん!」

律「ムギ!生きてたのか!」

彼女は田井中律、私の親友
砂煙から現れた彼女は両手に銃を持っていた

律「ムギ…お前…武器は?」

紬「え…私は来たばかりで…」

お互いに事情が呑み込めなかったので、説明しあうことにした

律「ふむふむ…突然ここにいた…か」

紬「宇宙人に世界が侵略されている…」

律「とりあえずここは危ない、ムギは戦いに慣れてないからな、安全な場所に移ろうぜ」

りっちゃんは銃をしまい、私の手を引っ張って歩き出した
しばらく歩くと小さめの廃墟が姿を現した

律「ここが人間の最後の砦だ、文字どおりの意味でな、ははは」

今のは彼女なりのギャグだったようだ
しかし、残念ながら状況を呑み込めていない私には笑うことはできなかった

廃墟の中は意外と広く、銃がたくさん置いてあった
恐らくりっちゃんが集めてきたのだろう

律「ムギはここで待機しててくれ、私はもうちょっと奴らを狩ってくる」

紬「私も…頑張る!」

このまま私は助けられているわけにはいかない
私は大きめの銃を手にした

律「そうか…助かるぜ!」

大きめの銃を手にしたのは、りっちゃんが小さい銃だったからだ
銃には詳しくないが、役割分担をしたほうがいいと思ったのだ

律「んじゃ、行くぜ!紬隊員!」

紬「がってんです!りっちゃん隊長!」

私は一心不乱に銃を撃ち続けた
不思議と銃は初めてとは思えないほど自由に扱うことができた

また、生物を殺すことへの罪悪感は湧いては来なかった
殺さなければ殺されるから、なのだろう

紬「これで最後!」

律「やったな!ムギも初めてにしちゃあよくやるぜ!」

紬「うふふ♪」

律「んじゃ、早速食料集めだな」

りっちゃんの説明によると、この世界の食料は大変長持ちするそうだ

律「うーん…ここはないな」

私達は廃墟の中から食料を見つけようとしているが、なかなか見つからない

律「んじゃあ次はあっちの建物だ!行くぞ!隊員!」

と、りっちゃんの背後に突然宇宙人が現れた

紬「りっちゃん!伏せて!」

私が宇宙人に一発お見舞いする
クリーンヒットしたようで宇宙人は倒れた

律「ありがとうな、ムギ…お前がいなかったら私死んでたぜ」

紬「今度からは気をつけてね、律隊長♪」

律「ここは天国ですか!?」

この廃墟には食料がたくさんあった
私にはとてもおいしそうには見えなかったけど、食べ物というものが貴重なのだろう

律「水もあるぞ~!ムギ、さっそく食べるか!」

紬「うん!」

私達はクッキーのような保存食を手に取った

紬律「いただきまーす」


保存食を口にした瞬間、景色が変わった

ここは私の部屋…
そうか、今のは夢だったのか

紬「夢だとわかると面白かったな~」

なにより、夢とはいえりっちゃんの役に立てて嬉しかった


……

律「…でな~、そこでババババーって~」

澪「なんだよそれ…」

教室にはすでにりっちゃんと澪ちゃんがいた
二人は何かを話していたらしい

紬「何の話してたの~?」

澪「おはようムギ、律が夢で銃撃戦をしたって…」

律「宇宙人に支配された世界でさー、私が生き残りでさー」

律「あ、そういえばムギもいたんだぜ~」


私の今日見た夢みたい

澪「律も子供じゃないんだからそういう夢見るなよ」

律「だって見ちゃうんだもん、しゃーねーじゃん」

紬「私も同じ夢を見たわ」

律「ほらー、私が子供っぽいわけじゃねーんだよー」

私とりっちゃんはお互いの夢のストーリーを話していたが、全く同じだった

澪「さすがにここまで同じだと気持ち悪いな…」

唯「おはよーみんなー、何の話?」

唯ちゃんはいつも通りちょっと遅れてきた

律「私の夢とムギの夢が同じだったって話~」

唯「ふむふむ…」

唯「それはソウシソウアイですな!」

律「…なんだよそれ!」

澪「そ、そんな!違うだろそれは!」

紬「うふふ///」

澪「ムギも頬を染めるな!」

唯「お互いのことを想っていたら、お互いが夢に出るって言うよ」

律「でもそれは夢の内容が同じっていうのとは違うだろ~」

唯「うーん…確かに」

唯「夢と言えば人によっては白黒の夢を見るっていうよね~」

澪「え…白黒じゃないの!?」

律「私はフルカラーだぜ」

紬「私も~」

唯「私もだよ~」

澪「う、嘘だ…そうだ!和は?」

和「え…ごめん、全く聞いてなかったんだけど…」

和「私は白黒よ」

澪「やっぱり和が大好きだ~!」

律「そんなに一人ぼっちが嫌かよ…」

和「でも二人の夢が同じって言うのはおかしな話ね」

澪「きっと同じ映画でも見てたんじゃないか?」

律「確かに私は昨日見た映画のまんまだな…」

紬「…でも私はそういうの見たことないわ」

澪「うーん…」


この話は放課後まで続いた

梓「不思議なこともあるもんですね」

律「そういえば梓の夢ってどんな感じなんだ?」

梓「え…私はー…言えません!」

律「ほうほう…言えないような夢ですか~」

梓「私のは…色々すぎて言葉にできないだけです!」

律「ホントかぁ~?」

梓「…うぐ…」

澪「もうやめてやれ」ポカッ

律「すみませんでした」

唯「私も知りたいな、あずにゃんの夢」

梓「唯先輩でもダメです!」

律「その発言が言いたくないだけってことを現してるよな…」

私も梓ちゃんの夢には興味があったけど、梓ちゃんが嫌そうだったからやめた

紬「そんなことよりお茶淹れたわよ~」

唯「はーい!」


その日はそれ以上夢の話はしなかった

紬「梓ちゃんの夢、興味あるな~」

今日は梓ちゃんと同じ夢が見れれば、梓ちゃんの夢も分かるのに…

紬「おやすみなさい…」

────────
────

気が付くと私は真っ暗闇の中にいた
昨日と全く同じシチュエーション

紬「これも…夢よね」

場面が変わるのを待っていると、昨日と同じように光が現れた
光は大きくなり、やがて辺り一面を包み込む

瞑ってしまった目を開けると、目の前にはみんながいて、遊園地があった

梓「みなさん、あずにゃんランドへようこそ!」

唯「すごいねー!本当に建てちゃったんだ!」

梓「ふふーん!」

律「でもあずにゃんランドはねーよな」

梓「そんなことないです!」

澪「でも何で遊園地なんだ?」

梓「遊園地は楽しいですから!」

私達はどうやら梓ちゃんの作った遊園地に来ているらしい

律「で、もちろんタダにしてくれるんだろーな!」

梓「ダメです!先輩だからといって特別扱いはできません!」

律「ちぇー、ケチー…」

唯「早く入ろうよ~!」

澪「そうだな、中に入ってからでも話はできるし」

とりあえずみんなの動きに合わせたほうが良さそうだ

梓「こっちが鯛焼き屋さんです、オススメはクリーム鯛焼きです!」

唯「鯛焼き~♪」

鯛焼き屋さんがたくさん並んでいる
他の食べ物屋さんはないみたいだ

律「鯛焼きばっかりじゃ飽きそうだな…」

梓「私は飽きませんから!」

澪「となりはネコミミ屋さんか…」

梓「さすが澪先輩、お目が高い!このネコミミは…」

澪「…わかった、後で紹介してくれ…」

梓ちゃんのテンションがおかしい気がするけど、それも面白い

梓「ここがあずにゃんランド最大級のアトラクション、あずにゃんコースターです!」

唯「すごーい!」

澪「いきなり最大級か…」

梓「私は先輩方と違って常に全力ですから!」

律「それってちょっと全力のベクトルが違う気がするぞ…」

梓「ムギ先輩はどうですか?」

紬「私は良いと思うわよ~」

梓「でしょうでしょう!」

梓ちゃんはただ褒められたいだけなのかもしれない

律「じゃあ早速みんなで乗ろうぜ~」

澪「ジェットコースターは…怖い…」

唯「楽しそうだよね~」

紬「さ、乗りましょう、澪ちゃん♪」

梓「じゃあ行ってらっしゃいです」

律「ん?梓は乗らないのか?」

梓「一応オーナーですから!」

私達4人は貸し切り状態のジェットコースターに乗りこんだ

梓「それでは、いってらっしゃーい!」

ジェットコースターがゆっくり動きだす
しかし、何か違和感がある…

唯「あれ…?これ…ペラペラ~ってしてない?…」

律「え?…ってわーーー!これ段ボールじゃねーか!」

澪「あわわ…私達…死ぬの?」

梓「そ、そんなはずないです!ちゃんと頼んで作ってもらったです!」

ジェットコースターはガタガタになってきている
しかし、それは上昇をやめることはなかった

唯「高くてもう降りれないよ~…」

澪「ガタガタ…」

律「おい、梓!助けを呼んでくれ!」

梓「無理です!ここは近くに何もないです!」

みんなが慌てている
私だけはこれが夢だと知っているから余裕がある

でも…せっかく夢なんだからこの事態を解決しちゃおうか

紬「とう!」

私は高さ10mから飛び下りた
私の体はふわっと落下し、安全に着地することができた

律「えええ!ムギ、大丈夫か!?」

紬「うん、みんなもやってみたら?」

律「…このままでもダメそうだし…よし!」

りっちゃんも飛び降りた
夢だと認識しているのは私だけだからダメかも、と思ってたがりっちゃんも無事着地した

律「やればできるもんだな…」

唯「私もいくよ~」

唯ちゃんは着地に失敗したが、お尻をちょっと痛めただけだった
あとは澪ちゃんだけ…

澪「コワイヨー…ムリダヨー…」

律「おい澪!何やってんだ!大丈夫だって!」

澪「トビオリラレルワケガナイ…」

唯「早くしないとジェットコースターバラバラになっちゃうよ~」

澪「ヒィ!…モウダメダー…」

澪ちゃんは全然飛び降りることができない
ここは私が助けてみよう

紬「とう!」

私は高くジャンプした
どこまでも高く飛ぶことができる

澪「ムギ!」

紬「澪ちゃん、掴まって」

澪ちゃんは私の手を握る
私はそのまま澪ちゃんと一緒に飛び降りる

澪「きゃああああああ!」

私達はみんな無事に脱出することができた
私と澪ちゃんが着地した瞬間にジェットコースターはバラバラになった

梓「あ…あの…みなさん…」

律「まぁ梓が悪いわけじゃ…」

梓「うわあああああん!すみませえええええん!」

唯「あ、あずにゃん!よしよ~し…」

梓「うああああああああん!」

唯「どうしよう…泣きやまない…」

澪「」

梓ちゃんは泣きやまず、澪ちゃんは気絶したままで、大変な状態になった

紬「梓ちゃん、大丈夫よ」

梓「ぐすっ、全然大丈夫じゃないです!」

紬「遊園地を作った会社は私がどうにかするわ♪」

梓「!」

紬「改修工事のお金は出してもらえばいいし、まだお客さんも私達しか来てないし…」

紬「あと、改修工事はうちの系列の会社を紹介するわ♪」

梓「むぎせんぱ~い…」ダキッ

紬「あらあら♪」

梓「お礼に…ゴールドパスを差し上げます!」

紬「私は別に…」

梓「これです!」

ゴールドパス…それは黄金のネコミミだった

梓「これをつけて入ると全て無料になります、ムギ先輩には似合うと思いますよ」

紬「じゃあさっそく…」

黄金のネコミミをつけようとした瞬間、目が覚めた

紬「やっぱり夢だったのね」

紬「これは誰の夢だったのかな」

今日も学校へ行くのが楽しみだ


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最終更新:2010年09月03日 22:14