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まあ無理もない。澪の怖がりは相変わらずだ。2人は階段を下りて、一緒に玄関に行き、ドアを開けた。

ガチャ―

紬「こんにちわー」

梓「お久しぶりです律先輩!澪先輩も先来てたんですね!お久しぶりです」

律「おー2人一緒だったか、あがってあがって」

澪「久しぶり。むぎも」

紬「うん。そうそう、ちょうどそこで梓ちゃんと会ったの。ね」

梓「はい、とびっきりの美人がいたのでむぎ先輩ってすぐわかりました。」

紬「あら///」

律「はは、梓も言うようになったなぁ」

4人はわらわらと律の部屋に入った。

律「まあ、適当に座ってくれ。」

梓「散らかってますね…それになんでこう読みかけの漫画がいくつもry」

律「あーはいはい、今度からは読み終わってから別の読みますよ」

梓「え」

澪「さっき私が同じこと言ったんだ」

梓「そうだったんですか…」

澪「むぎ、花買ってきてくれたのか。」

紬「うん。通り道だったから」

律「サンキューなむぎ」

律「本題に入るぞ。」

澪「そうだ!!みんな聞いてくれ!律の携帯に唯から電話がっ!」

律「そう、そのことは昨日言ったよな?」

紬「本当なのね?りっちゃん」

梓「その…唯先輩から電話がかかってきたっていう」

律「証拠か、これだっ」

そう言うと紬と梓にも先ほど澪に見せた着信履歴を見せた。

紬「…2015年…10月17日、15時46分………えっ…これって…」

梓「これっ本当に唯先輩の電話番号なんですかっ!?」

律「唯の番号まだ残ってるなら確かめてみ?本当だから…」

2人は携帯を取りだした。どうやらここの4人は皆、唯の電話番号を電話帳から削除していなかった。
確認は梓より紬の方が早かった。

紬「こっ……本当だわ…確かに唯ちゃんの…」

梓「そんな…こんなことって…」

紬「かけ直してみた?」

律「ああ、繋がらないっ…現在使われておりませんって…」

紬「こんなこと…あるのかしら…」

律「それで、これが録音した唯の声だっ!聞いてくれ…」

3人は全身に鳥肌が立った。
怖いというのもあったが、唯の声が聞けるという期待もあった。

律はスピーカーに切り替え、再生ボタンを押した。

律『唯、とりあえず、落ち着いて話を聞いてくれ。』
唯『なあに?』
律『5年前の2010年、10月19日にお前は死んだ。朝、通学途中、交通事故で。』
唯『えっ?』
律『こっちの世界ではそうだった。今この世に唯はいない…。』
唯『そんな…そんなの嘘だよ…』
律『本当なんだっ!それで、お前は昨日、今日は17日だと言った。つまり今日は10月の18日だな!?2010年の。』
唯『うん…今日は18日…明日は文化祭だもん…』
律『間違いないっ!!唯!!明日の朝は時間通りに来るな!遅刻して来い!憂ちゃんもだっ!』
唯『えっ?ちょっと待ってよりっちゃん、そんなこと急に言われても…』
律『頼む唯っ!お前を―』

ピー。

録音はここで終わっていた。

紬「唯ちゃん…」

梓「唯先輩だ…」

澪「おい、これ…本当に…っ」

律「そうだっ!間違いなく唯だ!」

紬「そっ…それで…その、5年前の今日よね…?」

律「そうなんだ…伝えることは伝えたんだ…で、これを見てくれっ!」

律はパソコンを開き、スリープモードを解除すると、さっきまで見ていたニュース記事を皆に見せた。

律「これを見てくれ、5年前の今日の事故の記事だ」

3人はパソコンを見た。
記事を頭から読んでいき、問題の記事までたどり着いた。

紬「えっ…」

澪「唯の事は…?唯の事が書いてない…っ」

梓「そっそれじゃあ、唯先輩が事故を回避したってことですかっ!?」

律「そうであってほしい…っ」

澪「もし、5年前の今日に唯が事故に会わなかったとすると…どうなるんだ…っ?」

律「そこなんだ…」

紬「唯ちゃんにもう1度電話をかけてみたら?」

律「さっきかけたけど…繋がらなかった…」

紬「もう1度かけてみましょう!」


律「駄目だ…繋がらない……っ!クソッ!!」

律「せっかくのチャンスだったのにっ……唯を……っ!うう…」

澪「律……」

梓「今から唯先輩の家に行ってみませんか?」

紬「だめよ…」

梓「えっ?」

紬「もし、なにも変わっていなかったら…」

律「でも実際、過去は変わった……あの日、唯は事故にあわなかったんだっ」

澪「確かに…ニュース記事には被害者は男の人1人…」

紬「もしかして…」

一同「えっ?」

紬「もしかして…過去が変わってしまったせいで…また過去に何かあったのかも…」

律「どういうことだ?」

澪「つまり…また唯の身に何かあったってことか…?」

紬「ええ、本来なら唯ちゃんは5年前の10月19日に事故で亡くなる筈だった…」

紬「それが、その日、唯ちゃんは死ななかった。」

澪「その後、何かあったってことか…!」

律「あたしたちの…知らない過去…」

梓「そんな…なんで…唯先輩がまた…」

紬「考えられるのは…私たちの知らない過去で…」

律「また…唯が死んだのか…?」

紬「その可能性は十分にあり得るわね…」

澪「そうなると…唯の家には行きにくいな…」

律「憂ちゃんは…?憂ちゃんはどうなってる…?」

紬「今このままここにいたんじゃ唯ちゃんの事も憂ちゃんの事もわからないわ…」

澪「とりあえず…」

紬「唯ちゃんのお墓に行ってみましょう。なにかわかるかもしれないわ…それに、今日はその予定だったし…」

澪「で、いつも通り帰りは憂ちゃんの病院に行ってみるか…」

律「そうだな…車出すよ…」

いつも4人は唯の墓参りに行った後、憂の入院している病院にお見まいに行くのが恒例となっていた。
平沢家の墓は桜が丘にはなく、電車だと1時間以上かかる少し離れたところにある。

高校を卒業してからの次の年は皆で電車に乗って墓参りに行ったが、その次の年からは律が車の免許を取得したため、
いつも律の親の車を借り、律の運転で墓参りに行っていた。今日もその予定だった。

律は玄関を出ると、ガレージの車に乗り込み、キーを挿し、エンジンをかけた。

律「なんか天気悪くなってきたな…」

澪「雨降らなきゃいいけど…」

助手席に澪、後部座席に紬と梓が乗る形となった。これも毎年恒例の席だった。

紬「りっちゃん、飲み物あるから欲しくなったら言ってね?」

律「おう、ありがとうむぎ」

律と澪がほぼ同時にシートベルトを締めた。




そして、4人を乗せた車はゆっくりと発進した。




2010年10月19日
12:00

―部室―

律「唯、また昨日夜更かししたのか?」

唯「いや~ちょっとね…えへへ」

澪「まあ、練習普通にできたし、よかったよ」

梓「もうすぐですよ先輩、機材運ばないと」

律「そうか…そろそろか…あたしたちの最後の文化祭…」

澪「なんだかんだ3年間、長いようで短かったな…」

紬「みんなと演奏できて本当良かったわ」

律「おいおい、まだ卒業式じゃないぞっ」

梓「そうですね…」

律「梓は、今年あたしら卒業しちゃうけど…軽音部頼んだぞ!今年新入部員確保できなくて悪かったな…」

梓「律先輩までもう卒業みたいなこと言わないで下さいよっ」

律「っはは、わりーわりー」

唯「みんな…頑張って演奏しよう!頑張ろう!!」

一同「おー!!」

律「なんだ?唯、珍しく気合い入ってるな!まぁ最後の学際ライブだしな…」

唯「うん…!」

しかし、唯のこの気合いは
高校生活最後の学園祭ライブをさせてくれた未来の律への感謝からだった。

本当に人生最後にろくな演奏もできずに死んでしまうところだったのだから。

唯「りっちゃん…本当にありがとうね」

律「へ?なにが?」

唯「ううん、なんでもない」

律「ふふっ、変な唯」

澪「私らキーボード運ぶから、唯と梓アンプ頼んだぞー」

唯「ほほーい」

梓「ドラムセットどうします?」

律「あたし運ぶから、終わった人から手伝ってくれっ」

一同「はーい」



2015年 10月19日

紬「運転ごくろう様」

梓「お疲れ様です律先輩、休憩できなかったから疲れたでしょう」

澪「ちょっとそこの喫茶店で休むか?」

律「へーきへーき、行こうぜ」

4人はお墓に着いた。平沢家の墓は階段を結構登ったところにある。
紬が水桶に水を汲み、澪が花と持ってきたお菓子を持ち、平沢家の墓までの階段を上った。

この急な階段を上るのも4人は1年ぶりだった。

律「ん?意外と綺麗だな」

澪「最近誰か来たのかな…」

紬「それより、唯ちゃんは…っ!」

律「あっ!そうだった!」

律は墓石の脇を見た。死んだ人の名前が彫ってあるところだ。

紬「なんて?なんて彫ってあるの!?」

律「…書いてある……唯の名前……」

一同「えっ?」

墓石に書いてあったのは、過去に亡くなった平沢家の人物。
そして、最後に平沢唯の名前があった。

澪「そんな…」

律「なんだっ!どういうことなんだ!?意味がわからないぞっ!」

梓「唯先輩、結局死んじゃったってことですか!?」


律「また唯の身になにかあったのかっ!?」

紬「待って…っ!没年月日はなんて書いてある!?」

律「そうかっ!」

律はまた墓石を覗き込む。
そこに書いてあった没年月日を見た律は言葉を失った。

律「えっ…なんで…?」

澪「なんだ!?」

律「日付が変わってる…10月19日じゃない…っ」

一同「え!?」

律「2011年………2月25日…」

紬「そんなっ!」

澪「次の年かっ!」

律「なんでだよ…何があったっていうんだよ!」

梓「皆さん、調べましょう!その2月25日の事をっ」

紬「そうね…とりあえず何があったかわからないことにはどうしようもないわ…」

澪「今この2015年と5年前の2010年は比例して時間が進んでるんだろ?」

律「おそらくな…」

紬「りっちゃんの録音した唯ちゃんとの会話を聞いてもそう取れるわね…」

梓「なら…まだ時間はありますね…」

律「唯の事をまた助けられるかもしれない…っ」

澪「ここに来る途中に、図書館があったろ?」

律「ああ、すぐそこの…」

澪「行って調べてみよう」

紬「そうね、パソコンもあるし…」

律「よし、行くか…」

4人は、唯の墓に買って来た花を添えて、お菓子を置いた。
そんなに汚れていなかったが、軽く墓石と墓周りの掃除もした。
最後に、線香をあげて黙祷した。

このとき4人はおそらく同じことを願っただろう。
唯が、助かりますように。と。


そして4人は律の車に乗って、墓からすぐの図書館に足を運んだ。

律「よし、さっそく2月25日について調べるぞ!」

2人がけの席の前に一昔前の古いパソコンがあった。
結構小さな図書館ということもあってか、パソコンを使える席は、空いてる席ではここしかなかった。
そこに律と梓が座った。

律「なんだよ、このパソコン。古いなあ…使い方がよくわかんねぇ。どこでインターネット見るんだ?」

梓「ちょっと貸して下さい」

律は梓にモニターの前の席を譲った。

律「おお!スゲーな梓、お前オタクだったのか?」

梓「冗談言ってる場合ですか…ちょっと古いせいか重たいですね…このパソコン」

澪「そういや梓は昔からパソコンいじってたもんな…」

梓「澪先輩まで…っ」

梓は律が使っていたものとは違う検索サイトを呼び出した。
そこに「2011年 2月25日 桜が丘 事故」と検索をかけた。

律「うはー、タイピング早っ!」

梓「少し黙っててください」

律「はい…」

澪「どうだ?梓…」

梓「鉄道の人身事故ばっかりですね…」

澪「唯って電車あんまり使わないよな…」

梓「ましてや高校時代でしたからね…」

梓はそう言うと「-鉄道」「-電車」と追加入力してもう1度検索をかけた。

律「なにやってんだ?それ」

梓「これで、鉄道と電車というワードを省いて検索できるんです」

3人「へ…へぇ~…」

梓「駄目ですね…それらしき記事は見当たらないです」

澪「事故じゃないのか…?」

律「事故じゃないとなると…」

紬「自殺か、他殺……」

3人「えっ…」


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最終更新:2010年09月04日 23:50