アットウィキロゴ
紬「それしかないわ…事故じゃないとすると…病気で、とは考えにくいし…」

澪「名前で検索かけてみたらどうだ?」

梓「やってみましょう」

梓は、いったん検索ワードを全て消し、「平沢唯」と検索した。

律「おい、『もしかして 平沢進?』って言われてるぞ…」

澪「P-MODELのメンバーの人だ…」

梓「検索省いてみましょう」

しかし

紬「駄目ね…名前占いばっかり…同姓同名らしき人はいるけど、唯ちゃんは見当たらないわ…」

梓「さすがに本名は出てないんじゃないですかね…」

律「…………………」

紬「でも、事故でそれらしき記事が見当たらなかったってことは…やっぱり…」

澪「そんなっ!!」

紬「しっ…澪ちゃん、ここは図書館よ」

澪「ごめん…」

律「あっ!!」

紬「りっちゃん!!」

律「あっ…ごめん…」

梓「いま注意したばっかりなのに…」

紬「で、どうしたの?」

律「思い出したんだ…っ!5年前の事件…」

紬「事件…?」

律「桜が丘の…ほら…」

紬「あっ!!!」

梓「むぎ先輩っっ!!」

紬「あっ、ごめんなさい…」

澪「なんだよ…?5年前の事件って…」

律「忘れたか?あの桜が丘で起きた…通り魔事件だっ!」

梓「ああっ!!」

3人「しーーっ!!!」

梓「ごっ…ごめんなさいです…」

澪「通り魔事件って……あの…そうか!確かに5年前だっ!」

紬「卒業式前で、かなり話題になったわよね…」

梓「ありましたね…そんなの…たしか1人で帰るのはなるべく避けてって…」

澪「おい、まさかそれに巻き込まれてって……」

律「十分にありえるだろ…」

梓はまた急いで検索をかけた。

梓「ありましたっ!!2011年2月25日の桜が丘の通り魔事件…っ!」

律「どれ!!」

律「なになに…女子高生ばかりを狙った悪質通り魔事件………被害者は…っと……」

澪「被害者は近くの聖南学校に通う18歳の高校生3人と、桜が丘女子高校に通う……18歳の高校生と17歳の高校生っ!!」

律「何っ!?」

澪「そうだ!あの時たしか聖南の生徒が被害にあってて…こっちには来ないでほしいなって話してた記憶があるっ!」

紬「待ってこれって…もしかして…唯ちゃんと憂ちゃん!?」

澪「そんなっ!!」

律「待て待て、墓石には憂ちゃんの名前はなかったぞ!?」

梓「待って下さいっ!続きがありますっ!」

律「なに!?」

梓「聖南高校の女子生徒3人は、顔や足をナイフで切られ重傷。桜が丘女子高の女子生徒1人も重傷…」

梓「もう1人は…腹をナイフで切られ、すぐに病院に搬送されたが大量の出血のため、死亡した…」

律「おいっ!!なんで!これ、唯の事かよ!!」

澪「桜高の重症の子って…もしかして憂ちゃん!?」

紬「あり得るわ…!というか間違いないっ!私たちの同級生で、被害にあった子は絶対に居なかったはずよ!!」

梓「そんなっ!なんでこんなことになるんですかっ!!」

役員「あのー…お客様、他の方のご迷惑になるので、もう少し静かにして頂けますか?」

一同「あっ…はい、ごめんなさい…」

澪「注意されちゃっただろっ!」

律「なんであたしに言うんだよ…!」

紬「りっちゃんちでも言ったけど…過去が変わったせいで、また私たちの知らないところで過去が変わった…」

梓「なるほど…」

紬「そう考えるのが正しいわ…」

澪「私たちの記憶にも残っててもいいもんだけどな…」

梓「でも、私たちは経験してない過去ですからね…」

律「つまり、唯は5年前の今日死んだから、あの通り魔の被害には合わなかったのか…」

梓「まあ、死んでいるわけですし、そうなりますね…」

律「で、その日助かったがために、2月の通り魔事件に遭遇してしまった…」

澪「なんて不運なんだ…」

律「もうここまで来ると不運ってレベルじゃないけどな…」

紬「これ…犯人もまだ逮捕されてないみたいね。不快だわ」

律「なに?」

紬「どこにも書いてないもの…」

律「えっ…」

澪「もう5年も経ってるのに…」

梓「通り魔ですからね……犯人を特定できる情報が少なすぎるんですよ…」

律「これは殺人だぞっ!何やってんだよ警察は…」

紬「それより…このことを唯ちゃんに伝えないと…っ!」

律「伝えるって言っても…どうやって…」

紬「ひたすら唯ちゃんに電話をかけてみましょう。みんなで」

澪「そうだな…それしかない…」

4人は申し訳なさそうな表情で役員がいるカウンターの前を通り過ぎ、図書館を後にした。
少し歩いて、駐車場にある自分たちの車の前に着いた。

律「さあ、この後は憂ちゃんのとこだな…」

澪「律っ、運転、大丈夫か……?かっ……変わろうか…??」

律は一瞬固まった。澪からそんな言葉が出るとは思わなかった。
澪も高校を卒業してから車の免許を取ったが、ペーパーだった。

律「危なっかしくて乗ってらんねーよっ。大丈夫、ありがとな澪」

ちょっと笑みを浮かべ、優しく言った。




2010年 10月19日

梓「皆さん、お疲れ様ですっ!」

律「大成功だったな!」

澪「唯もよく頑張ったな!ふでぺんのソロのところ、ちょっと心配だったんだけど、いつの間に練習したんだ?」

紬「梓ちゃんとの絡みも完璧だったしね」

唯「でへへへ~」

律「でも…これで本当に最後なんだな…」

唯「うん…」

律「1年の時、唯が喉からして、澪が歌うことになってさ…」

律「んで最後、澪の奴―」

澪「やっ、やめろおおおお!!」

紬「あの時はまだ皆、演奏がぎこちなくて…」

律「2年の時は梓が入ってきて…」

澪「あの時も唯が風邪引いて…」

梓「さわ子先生が最初演奏してくれたんですよね」

律「懐かしいな~、もう卒業だもんな…長いようで短かったな…」

澪「そうだな…これからは部活もほとんど休みになるし、うちら4人は受験勉強だな」

律「はあ~……嫌だな」

澪「嫌なんて言ってられないだろ?人生を決める大事な進路なんだ」

律「そーだけどさー」

澪「梓も、1人になっちゃうけど…」

梓「私は大丈夫です!皆さん受験勉強頑張ってください!来年は必ず新入部員獲得しますから」

律「梓、軽音部のこと頼んだぞっ」

梓「はいっ!」

唯「本当にありがとう皆!!本当に!みんなと演奏できて本当に楽しかったよ!!」

律「あたしもだっ!」

澪「私も」

紬「私もよ」

梓「もちろんっ!私もです!」

桜高最後の文化祭は大成功に終わった。
そう、未来の律のおかげで―




2015年 10月19日

―聖南病院―

憂の入院している病院に着いた4人は、受付のすぐ向かいにあるエレベーターに乗った。


律「憂ちゃんの病室は確か3階だったな」

澪「ああ」

紬「303号室よ」

4人は3階に着くと、憂の病室を探す。
何度も来たことはあったので、憂の病室があった場所をだんだん思い出してきた。

律「ここだここだ」

紬「あれ?」

律「ん?」

梓「ちょっ!憂の名前がないっ!!」

律「えっ!?」

澪「そんな…病室変わったのかな…」

本来ある筈の憂の病室に憂の名前がなかった。
4人は、3階にある病室をぐるりと1周回ってみたが名札に憂の名前が書いてある病室はなかった。

澪「受付の人に聞いてみよう」

4人はまた、エレベーターを降り、1階に向かった。

律「あのー、すみません…」

受付「はい?」

律「平沢憂さんの病室ってどこですか…?」

受付「少々お待ち下さい」

受付の年配のナースがパソコンで調べ始めた。

受付「えーと、ごめんなさい…平沢……何さんですか?」

律「憂です。憂鬱の『ゆう』って書いて『うい』です」

受付「…………平沢憂さんはこの病院に入院されてないですね…」

一同「えっ?」

紬「え、あの、退院されたとかは…?」

受付「入院されてた記録がございません…ね」

一同「えっ?」

4人は耳を疑った。
確かにこの病院に憂は入院していた。
また過去が変わったせいで今も変わってしまっているのか?

仕方なく4人は病院を出て、駐車場に止めてある車に戻った。

律「どういうことだ…?」

澪「また過去が変わったせいで今も変わってしまったと考えるのが妥当だな」

梓「もう八方ふさがりですね…唯先輩には連絡付かないし…憂も…」

紬「唯ちゃんの家に行ってみましょう」

一同「えっ?」

紬「それしかないわ。もしかしたら新しい情報が得られるかもしれないわ」

澪「…そうだな。唯の両親には墓参りに言って来たと言って挨拶しに行こう」

律「ひょっとしたら憂ちゃんが退院して家にいるかもしれないしな…それで行こう」

梓「…ですね」

4人は早速、唯の家に向かい車を出した。

15分くらいだろうか、平沢家に到着した。
車を家の前に止めて、4人は車を降りた。

梓「なっ、なんか緊張しますね…」

律「行くぞ」

梓の言葉を無視し、律はなんのためらいもなくインターホンを押した。

ピーンポーン

唯母「はーい」

律「あっ、どうも。ご無沙汰してます」

唯の母親が普通に出てきた。

澪「あの、唯ちゃんのお墓参りに行ってきました」

唯母「あら、わざわざ遠いのに、ありがとうね…唯もきっと喜んでるわ」

唯母「どうぞ、上がって。お茶でも飲んで行ってください」

律「どうも、すみません。じゃあ、おじゃましまーす」

家に入ると4人は、まず1階の和室に行き、仏壇の前に腰を下ろした。
1人1本ずつ、順番に線香をあげて、4人は唯の母親に案内され、階段を上り2階のリビングに到着した。
平沢家は相変わらずだった。高校時代によく行った唯の家そのままだった。

唯母「でも、なんでこの時期に?」

律「えっ?いや、今日は唯の―」

ここで紬が割り込んだ。

紬「久しぶりに4人集まったので、お墓のお掃除も兼ねて…ね!」

澪「そっ、そうそう」

律はしまったという表情を見せた。
そう、今はもう変わっている。唯の命日は今日の10月19日ではない。来年の2月25日だ。

唯母「そうだったの。ありがとうね、私たちもそろそろ行こうとは思っていたんだけど―」

唯母「ついこの間、山中先生がお墓参りに行ってくれたみたいで…」

梓「さわ子先生がですか」

ここで4人はようやく把握した。どうりでお墓があまり汚れていなかったわけだ。
次に、律が恐る恐る聞いてみた。

律「あ…あのー……憂…ちゃんは…?」

唯母「ああ!あの子、お客さん来たのになにやってるのかしら。ちょっと待ってね」

一同「えっ?」

憂がいる!?憂が平沢家にいるだと?
今が変わる前まで、憂は病院に入院していたはず。この家には唯の両親しかいない筈だった。

こんな体験をしたことのない4人は、だんだん胸が熱くなってきた…こんな事が本当にあるのか…?

憂「あっ!皆さんだったんですか!梓ちゃんも久しぶりー」

律「おっ、おう、憂ちゃん久しぶり…」

なんだかぎこちない感じで律は答えた。他の3人は唖然とした表情で憂を見つめていた。
黙っていた梓に律が何か言うよう促す。

梓「うっ、憂!ひ、久しぶりだね……元気そうで良かった」

思った以上に憂は普通だった。
5年前のあのころを見てきた4人は不思議な感じがした。

憂「お姉ちゃんのお墓参り行って来てくれたみたいで、ありがとうございます」

紬「いえいえ、憂ちゃんは最近どう?忙しいの?」

ここで紬が上手く探りを入れた。

憂「最近はアルバイトばっかりで…でも特に忙しくはないです」

紬「そう…あ!そうだわ。久しぶりに唯ちゃんのお部屋見せてもらってもいいかしら?」

憂「え?」

律「おう!いいなむぎ!あたしも久しぶりに見たい」

憂「なにも変わってないですよ?」

律「変わってないからいいんじゃん!せっかくみんな集まったんだしさ!」

5人は憂の案内のもと、3階にある唯の部屋に向かった。

律「おじゃましまーっす」

澪「本当に何も変わってないな…高校の頃来た時と」

紬「なんか懐かしいわね」

憂「みなさん、どうぞ座ってください」

憂がテーブルのまわりに座布団を敷く。
4人は、その上に高校時代いつも座っていた席順で腰を下ろした。

憂「そういえば皆さん、なにか食べましたか?」

律「あっ…そういや何も…」

憂「よかったらお寿司でも取るので食べて行って下さい」

律「本当に!?」

憂「ええ」

澪「こら!」

澪は軽く律に突っ込みを入れた。

澪「でっでも、少し寄っただけだし、悪いよ…」

憂「いえいえ、気にしないでください」

そう言うと、憂は小走りで唯の部屋を出て行った。

律「おい、どういうことだよ!」

小声で強く律は言った。

紬「わからないわ…唯ちゃんが亡くなったことには変わりないのに。憂ちゃんは入院してないわ…」

澪「しかも、ましてや事故じゃなくて、通り魔で…」

梓「あんまりショックじゃなかったんですかね…?」

紬「そんな…憂ちゃんに限ってそんなこと…」

律「憂ちゃんさ、5年前、私のせいだってずーっと言ってたよな…」

澪「そういえば…私のせいで唯がって…」

紬「今回の通り魔の場合は2人とも同じ被害に遭って、奇跡的に憂ちゃんだけ助かった…とすると…」

澪「なるほど」

梓「どういうことですか?」

紬「精神的ダメージが全く違うのよ」

律「つまり、事故で唯が死んだ場合は、憂ちゃんが逆側を歩いていれば唯は助かった=私のせい。とも取れるけど…」

澪「通り魔の場合、2人同じようにナイフで切りつけられて重症、運悪く唯は死んだ…=私のせい。とはなりにくい…ってことか」

紬「まあ、そう考えるのが1番納得できるわね…」

律「でも今憂ちゃんぴんぴんしてるぞ」

澪「そりゃ5年もたてば、傷も癒えるだろ…」

紬「どうする…?」

律「へ?何が?」


8
最終更新:2010年09月04日 23:51