紬「この、過去の唯ちゃんと連絡が取れて、今が変わってしまった事を憂ちゃんに言ってみる?」
一同「えっ?」
澪「うーん……言っても…」
律「待て、でもその5年前の通り魔の時の記憶はあたしたちには一切ないんだぞっ」
梓「そうですね…どこからも情報が得られなくなりますね…」
澪「かといって、こんな不幸な事件を思い出させて、憂ちゃんに詳しく聞くのも…」
律「くそっ!なんで記憶がないんだ…唯が死んだ時の…っ!」
梓「ん?待って下さい…おかしくないですか?」
律「ん?何がだ?」
梓「律先輩に、この唯先輩から電話がかかってきたことを聞いたのは今日、10月19日の11時くらいですよね?」
律「そうだったな…」
梓「つまり、律先輩にこの話を聞くまで私たちは、唯先輩が10月19日に死んだという記憶はなかったはずですよね?」
梓「今日の朝から、律先輩に話を聞くまでの11時くらいまで、私たちには通り魔事件の記憶があったはずです」
紬「それはわからないわ。唯ちゃんが亡くなったのは10月19日の午前11時過ぎよ」
梓「えっ?」
紬「過去の記憶がなくなるのは、どのタイミングかわからないってことよ」
澪「なるほど、5年前の唯が死んだ時間に変わるのか、事故を回避した瞬間に変わるのか…」
律「つまり、今日この時間帯に皆に会ってれば、お前ら3人には唯が通り魔に遭ったという記憶が残ってたのか」
紬「その可能性はあったかもしれないわね…。でもどこで記憶が入れ替わってるか、それは神のみぞ知るってとこだけどね…」
澪「私たちは今、唯が交通事故に遭った記憶しかない。」
梓「…どっちみち新しい情報を得られそうにないですね…」
律「ん?」
律は、唯の部屋の奥にあったギターに気付いた。
唯のお気に入りで、なによりも愛していたギブソンのレスポールこと『ギー太』
律「あれっ…ギー太だ…懐かしいな…」
澪「本当だ…確か、唯のギターはあの時…」
2010年 10月19日、唯が交通事故に遭った過去―。
後ろから車で跳ねられたせいもあり、唯のギターは大破した。
何せ、後ろに背負っていたのだから…
律「そうか、過去が変わっちまえば壊れたギターも元通りになるってか…」
梓「なんか、本当に不思議ですね…」
この日、結局4人は憂には何も言わないことにした。
そのままお昼をご馳走になった4人はその後すぐに帰った。
律は、紬と梓を家まで送った後、澪を助手席に乗せたまま田井中家に戻った。
澪「お疲れ様、律」
律「ああ、今日はなんだか色んな意味で疲れたよ…」
律「ま、上がってけよ。なんもないけど」
澪「うん」
澪の家は律の家から徒歩でものの数分のところだったので、澪はそのまま律の車に乗って田井中家まで来た。
話したいことも山ほどあった。
律母「あら、澪ちゃんいらっしゃい。久しぶりねー」
澪「あ!おばさん、久しぶりです。」
律母「いや、ちょーっと見ない間に本当に綺麗になっちゃって、彼氏とか出来たのー?」
澪「あっはは、いやあ…」
律母「律なんてもう、大学もろくに行かないし今年やっと卒業できるみたいで、男の気配も全くなくて―」
律「……」
澪「いやあ…ははは」
律母「あらなに?今日はお仕事お休みなの?なら久しぶりに家でご飯食べて行く?聡も澪ちゃんに会うの久しぶりだろうし」
澪「いえっ!そんなご飯まではっ」
律母「聡もすっかり思春期で、最近夜コソコソと誰かと電話してるのよ!まぁ彼女の1人や2人―」
律「だーっ!!うるせぇ!!余計なことまでペラペラしゃべるなよっ!行くぞ澪っ!」
澪「あ、うん………あはは、それじゃぁ失礼しまーす」
律母「はーい、ゆっくりしていってねー」
律「ったく…」
澪「ははは…お母さん、相変わらずだな」
律「しゃべりだすと止まらないからな…」
ようやく2人は律の部屋に辿り着いた。
昼に家を出たときと何も変わっていない。
とりあえず、律は読みかけのマンガを本棚に片付けた。
澪「聡も元気か?今家にいるのか?」
律「ああ、もう帰ってきて、きっと部屋でゲームでも………」
澪「ん?」
律「あっ!!」
澪「わわっ、なんだよ」
律「聡だ!あいつなら何かわかるかもしれないっ!」
そう言うと律は部屋を飛び出して聡の部屋のドアを勢いよく開けた。
バンッ―!
聡「うおっ!?ちょっ、何だよ!ノックしてって言ってるだろっ!」
律「あー?何やってんだよお前…」
聡「べっ…別になんもしてねーよっ」
律「まあいい、あたしの部屋に来い」
聡「え?なんでさ?」
律「いいから早くっ!!」
聡「ちょっ姉ちゃんっ」
聡を連れて澪のいる部屋に戻った。
聡「あっ、澪姉…久しぶり…」
澪「久しぶり聡、背大きくなったなぁ!前は律より全然小さかったのに…今じゃ私より大きいぞ」
聡「へへへ…」
律「まあ座れ、聡」
聡は、2人の前に胡坐をかいて座った。
聡「で?何?」
律「お前、唯はわかるよな?」
聡「…ああ、平沢さん?」
律「そうだ」
聡「がどうしたの?」
律「唯の事についてお前の知ってることを教えてくれ」
聡「え?どういうこと??俺なんかより姉ちゃんたちのが詳しいんじゃないの?」
律「わからないから聞いてるんだよっ」
聡「なになに?記憶喪失にでもなったの??澪姉もわからないの?」
澪「いや、唯さ…私らが高校の時にさ…」
聡「ああ、うん……」
律「そう、その時の事、詳しく教えてくれないか?」
聡「その時の事って…えー?……うーん……お葬式行って……とかそういうことでいいの?」
律「そうだ!そういうことでいい。覚えてる限りで話してくれ!できればその日の事を知りたいんだっ!」
聡「その日の事?…えーっと……たしか、そうだ!姉ちゃんその日家に帰ってこなかったんだ!」
律「うん、それで?」
聡「で、俺が学校行くころに姉ちゃん帰ってきてさ…」
律「ほうほう(全く記憶にないぞ…)」
聡「で、その日の夜お通夜に行って…」
律「ちょっと待て、話がいきなり飛んだぞ」
聡「わかんねーよ俺学校行ってたもん。たしか」
律「まあいい、で?」
聡「それからずっと姉ちゃん元気なくて…しばらく俺も話しかけづらかった…」
律「……」
律「その時のお前の心境なんか誰も聞いてねえよっこのアホンダラ!お前に聞いたあたしが馬鹿だったよ。もう行っていいぞ」
聡「なっ!!いきなり呼び出して人が…っ」
律「あーん?人が…なんだって?」
聡「なんでもないっ!!じゃあ…またね、澪姉///」
澪「うん、ありがとな」
聡はそそくさと律の部屋を出て行った。
そして、聡の部屋の扉が閉まる音がしてから律は口を開いた。
律「夜…か。夜に憂ちゃんと2人でどっか行ってたのか」
澪「いや、放課後2人で帰ってる途中に襲われて、病院で治療、その後私たちに連絡が入った。という可能性もある」
律「確かに、それなら夜でもおかしくないな…もっと詳しく知ってる人いないかな…」
澪「和は今イギリスだしな…」
律「やっぱり憂ちゃんに話した方がいいのかな」
澪「純ちゃんに聞いてみるか…?」
律「おお!そいつはいい!!…あっでも連絡先が…」
澪「梓だ。梓に聞こう」
そう言うと澪は鞄から携帯電話を取りだした。
プルルルルルルルル―。
梓「はい、澪先輩?」
澪「梓、いきなりで悪いけど純ちゃんの電話番号とかわかるか?」
梓「え?純ですか?ちょっと待って下さい…」
梓『純、澪先輩が番号教えてほしいって…』
澪「!?」
澪「梓、今純ちゃんと一緒なのか?」
梓「あ、ハイ、今2人でお茶してます」
澪「ちょうどよかった!聞きたいことがあるんだ。私と律と今から行っていいか?」
梓「え?あ、いいですよ!聞きたいことって…?」
澪「それは後で話す。どこにいるんだ?」
梓「駅前のMAXバーガーです」
澪「わかった、すぐ行く」
律「ラッキーだったな。そんじゃ行くか。」
澪は電話を切るとすぐに立ち上がった。続いて律も立ち上がる。
外は雨が降りそうな天気だった。
―駅前のMAXバーガー―
律「ふぅ、まさか雨降ってくるとはな…あっ、ダブルマックスバーガーのポテトセット…飲み物はコーラで」
澪「おいっ」
律「え?」
澪「食うのかよっ!さっき唯んちで寿司食べただろ」
律「だって、何も頼まないで入るわけにはいかないだろ?」
澪「そりゃそうだけど、飲み物だけでいいだろう」
律「あ、澪は飲み物だけ?じゃ一緒に頼んじゃおーぜー!あ!すいまーせーん、単品でアイスティーも追加で」
澪「やれやれ…」
澪は財布を出し、律に100円玉を渡した。
しばらくすると、ハンバーガーとドリンク2つが乗ったトレイを店員に渡された。ポテトはまだ時間がかかるらしい。
番号札をトレイの上に乗せ、律と澪は梓たちを探した。
澪「あ!いたいた」
梓「あ、澪先輩、律先輩、どうも。どうしたんですか?話って」
律「急に押しかけてごめんね。久しぶり、純ちゃん」
純「お久しぶりです、私に聞きたいことがあるんですか?」
澪「そうなんだ。でもその前に梓、あの事は純ちゃんに話したのか?」
梓「いえ…」
澪「ようし、ならよかった。」
純「あのことって…?」
律「ズバリ聞くけど、唯が死んだのっていつだったっけ?」
澪梓「(ストレートすぎるっ!!)」
純「えっ!!あっ…えーっと…卒業式の前だったので……3月くらいじゃ……」
律「よしきた!」
澪「その時のことを詳しく聞きたいんだ!教えてくれないか?」
純「え…いいですけど…5年も前の話だからなぁ…」
純「でも、どうしてそんなことが知りたいんですか?ていうか、澪先輩たちなら私より詳しいんじゃ…?」
澪「うん…今は事情があって今は話せないんだ…後で話すよ」
純「わかりました…」
純の記憶は正常だった。まだ、過去が変わったことを知らないからだ。唯が死んだ日は2月25日と記憶に残っている。
そして、今純に、唯からの電話があって、過去が変わったことを話してしまうと、2月25日の記憶がなくなってしまう可能性がある。
と、澪と律は考えたのだ。実際はいつ、澪や紬や梓のように記憶が変わってしまうかはわからないが…。
純「あの日の夜、憂のお母さんから電話が来たんです」
律「なんて?」
純「唯先輩が死んじゃったって…」
純「それで憂の携帯に電話かけ直したんですけど繋がらなくて…」
澪「何時頃だったかわかる?」
純「えーっと……確か夜でした」
律「そっか…(聡の証言と一緒だな)」
店員「お待たせいたしましたーセットのポテトになりまーす」
律「あ、どーも……あっゴメンゴメン、続けて?」
純「みなさんとても悲しんでました…特に軽音部の皆さんは…」
澪「…」
純「その、憂が聞いた話によると皆さん―」
ピリリリリリリリリリリリリ―
律「!?」
澪「おいっ!まさか…!」
律「来たっ!!唯からだっ!!」
梓「!!本当ですかっ!!」
純「え?……えっ?」
律「出るぞ!」
澪「ちょ、でもっ純ちゃんの記憶が…っ」
律「いつかかってくるかわからないんだ!こっちが優先だ!!」
梓「ですね!」
純「えっ?……記憶??えっ??」
当然純は混乱した。3人は唯から電話がかかってきたと騒いでいる。
事実を知らない人間から見たらただの危ない人である。
律「出るぞ!……もしもし、唯か!?」
唯「りっちゃん?」
律「唯!!唯っ!!無事だったのか!唯ィィッ!!」
唯「えっ?……未来のりっちゃん…?」
律「そうだ!わかってくれたか!?唯!」
唯「未来のりっちゃん…………ありがとう」
律「いいんだ!!唯が無事でなによりだっ!!」
澪「私もっ!私も唯の声聞きたいっ!」グイグイ
梓「わっ、私もです!」グイグイ
純「・・・」
律「わっ、ばか、やめろ」
唯「ほえ?」
律「あーんや、なんでもないっ」
唯「りっちゃん、本当にごめんなさい。私本当に今日までりっちゃんの言ってたこと信じてなかったよ…」
律「いいんだっ!!唯、それより…落ち着いて聞いてくれ!」
唯「え?なあに??」
律「唯……お前は不幸にも……来年の2月25日に……」
唯「…えっ」
律「また死ぬ…っ!!」
唯「!?」
純「!?」
唯「えっ!?どういうこと!!りっちゃん!!」
律「調べたんだ…5年前の今日の事件の事……」
純「(えー…話が見えないよ……それに…この2人…)」チラッ
澪「りつうう」グイグイ
梓「私もっ……」グイグイ
純「・・・一体なんなの?唯先輩と話してる…??なんで??」
律「今日実は、お前の墓参りに行ったんだ。本来なら唯の命日だからな…」
律「そして、墓石を見たら死んだ日の日付が変わっていたんだ…2011年の、2月25日に…」
唯「そんなっ……私…また死んじゃうの…っ?」
律「大丈夫だ唯っ!!調べた!2月25日、唯と憂ちゃんが下校中に通り魔に遭遇するっ!」
純「えー…」
律「だから早くっ!そのh………ザッ……プッ―…」
唯「え??なに?りっちゃん!」
律「……のひ…………くっ………………るんだっ!プッ」
唯「もしもしりっちゃ……」
プーップーップーップー
唯「切れちゃったよぅ……未来のりっちゃん……ううぅ、私…また死んじゃうのかなぁ…うぅ…」
最終更新:2010年09月04日 23:52