ポケットに入れていた携帯電話は少し濡れていたが、機能には問題なかった。
そして律は携帯電話を開き、唯の番号に発信する。
プップップップップ
律「頼むっ!唯…繋がってくれっ!!」
びしょ濡れの律は、もはやバイトの時間など忘れていた。
律「繋がってくれっ!!」
プルルルルルルルルルルッ!
律「!?来た!繋がった!!間違ってなかった…雨の日に…」
律「虹はっ!?………見当たらないけど、まあ繋がったからいい!」
プルルルルルルルルルル―。
プルルルッ
唯「もしもし?」
律「唯!!来た!やっと繋がった!!唯なんだな!」
唯「未来のりっちゃん!?りっちゃん!」
律「唯、また電話がいつ切れるかわからない。手短に話すぞ」
唯「うんっ!」
律「メモっておくんだっ!事件はだいぶ先だ。それに、今後いつこうやって電話が繋がるかわからない…」
唯「わかったよりっちゃん」
律「いいか?2011年の2月25日だ。間違えるなよ。2月25日。だ。」
唯「に…がつ……にじゅうご…にち。っとおっけー!!」
律「よし、その日は憂ちゃんと早く下校するんだ!ていうか、そのメモを憂ちゃんに見せろ」
唯「了解ですっ!」フンス
律「よし、これでオッケーだ。唯、その日は絶対に早く下校するんだぞ!」
唯「うん!」
律「そんで、忘れないうちにすぐ!憂ちゃんにそのメモ見せるんだ!あたしが今言ったこともだ。」
唯「わかった…」
律「ん?どした?」
唯「りっちゃん…本当に…ありがとうね…」
律「ばっ…ばか///改まってなんなんだよっ!」
唯「私、昔から誰かの助けがないと何もできない子だったんだ。」
律「・・・」
唯「今もこうやって……今に限っては命を救ってもらってる…っ」
律「ばーか、気にすんなって…あたしら5人は最高の仲間で…最高の親友だっ!」
唯「ううぇっ…りっちゃんっ…」
律「そうだ唯!来年さ、うちの大学で卒業ライブやるんだ!!」
唯「えっ?ライブ!?」
律「あたし、今年で卒業だからさ。だから唯も来いよ!」
唯「えっ…でも…」
律「ほら、あそこのK大学だ。あたし、あそこに進学したんだ~。1年留年だけどな」
唯「そうなんだ~すごいりっちゃん!!」
律「んで……実は…その卒業ライブも2月25日なんだ」
唯「えっ?」
律「だから…絶対来いよっ!唯!!あたしたちのライブは4時から5時までだ。夕方のな。」
唯「待ってっ!!行くっ!私も行って…みんなと演奏したい!!」
律はクスッと笑みを浮かべた。
律「待ってるぞ…唯っ!2月25日、4時からK大学だっ」
唯「わかった!!メモった!!」
律「でもお前…その日の事は忘れるなよ…。いいな。憂ちゃんと早く下校するんだ。それが終わってからだぞ」
唯「わかってるっ……本当にありがとうっっ未来のりっちゃんっ…びえっっううっっ」
律「泣くなって!唯、絶対来てくれっ!みんな…お前の事を待ってるっ!!さ、電話……プッ……ザッ」
唯「もしもし?りっちゃん??」
律「ザッ――――――プッ」
ツーツーツーツー
唯「りっちゃん…本当にありがとうっ」
律「切れたか……伝えることは伝えた」
律「あとは…唯と憂ちゃんを信じるだけだ。」
律「やっべ!!バイト…遅刻だっ!!」
律は、紬と梓にもこのことを伝えて4人で律の卒業ライブに向けての練習をした。
高校を卒業してからは、なかなか4人で集まることも少なかったが、この日から4人で集まってたくさん練習した。
放課後ティータイム再結成ライブに向けて―。
クリスマス、お正月と時を経て、時は2016年になった。
そして月は2月に突入した。
あれから、唯と電話が繋がることはなかった。
雨が降った日は何度もあったが、駄目だった。
4人は各自、雨の日が来ては唯の携帯に電話をかけていたが、呼び出し音ではなく
おかけになった番号は現在使われておりませんというアナウンスが流れるだけだった。
しかし、2月25日の通り魔事件の事についてはきちんと律が唯に伝えた。
問題ない。あとは、本当に2011年の唯と憂を信じるしかなかった。
律たちも、皆の時間が合えば、紬の家に集まって練習していた。
高校を卒業してからほとんどやらなくなった楽器も、練習していくにつれてだんだん感覚を戻してきた。
もう、ライブへの準備はばっちりだった。
あとは、2月25日に…唯と憂を待つだけ…
そして―。
2011年 2月25日
―放課後―
律「あれ?唯は…?」
紬「なんか急いで教室を出て行ったわ。何か用事があったのかしら…」
律「ほーん、んじゃま、帰りますか!」
―2年の教室―
唯「憂っ!!」
憂「お姉ちゃんっ!遅かったね」
唯「ごめんっ!HRが無駄に長くってさぁ」
憂「急ごう!お姉ちゃんっ!!早く帰ろう!!」
唯と憂は、走って学校を出た。
いくら早く下校するとは言っても、5分10分しか変わらない。
5分10分で通り魔に遭わなくて済むのか…それはわからなかったがとにかく早く家に帰宅する。
ましてや家まで走って帰れば通り魔の犯人も見逃してくれるかもしれない。
2人は手をつないで走った。
律「おっ、梓ー」
梓「あ、皆さん。」
律「1人か?憂ちゃんや純ちゃんは?」
梓「憂は先帰っちゃいました。純はなんか用があるみたいで…」
澪「じゃあ唯と憂ちゃんは一緒に帰ったのかな?」
紬「そうみたいね。2人で何か家の用事でもあったのかしら?」
律「まーいーや、一緒に帰ろーぜー」
律たちがこんな事をしている間に、唯と憂たちはもう既に家の近くまで来ていた。
そして―。
憂「はあ……はあ……」
唯「はぁ…はぁ…走ったねぇ…ういー」
憂「お姉ちゃん…よかった…何もなかったよ!!無事家に着いたよ!!」
唯「本当に……本当に……未来のりっちゃんに感謝しないとね…」
憂「そうだね…」
唯「5年後…ちゃんとお礼言わなきゃね!」
憂「でも…お姉ちゃん。5年後にお礼言っても、その律さんは今の律さんだから…」
唯「あっそっか!!なんかややこしいね…」
憂「でも…律さんのおかげで助かったのは事実…っ!本当にありがとう!未来の律さん!」
今日は疲れた…。
唯は、未来の律にお礼の電話をしたかったが、繋がるわけもないのでやめた。
心の中で…心の底から感謝した。
今の唯にはそれしかできない。
私は助かったんだ!!りっちゃんのおかげで…助かったんだっ!!
これから5年後…律の卒業ライブがある。忘れてない。
律はK大学に進学して、2016年の2月25日の4時から…卒業ライブ―!
放課後ティータイム再結成!
私が今、こうやって生きていられるのも、全部…未来のりっちゃんのおかげ…ありがとう。
ありがとう…未来のりっちゃん……助けてもらってばっかりでごめんね…本当にありがとう…
唯は、知らぬ間に眠りについていた。
チュン―チュン―
目を開けると、雀の鳴き声が真っ先に耳に入ってきた。
唯は何か長い夢を見ていたような気分だった。
起き上がると、何か感覚が違う。
―全てを思い出した。
未来の律に救ってもらって…それでっ―
ふと目を枕の横に向けると見慣れない携帯電話があった。
心臓がドクンと1回大きく動いた。
携帯電話を開いて待ち受け画面を見る。
そこにあったのは…
2016年 2月25日(木)12:01
唯は飛び起きて、家を出る支度をした。
唯は、自分の部屋の洋服ダンスから適当な服を出して着替えた。
化粧なんてしない。とにかく急いだ。
唯「みんなが…待ってるっ!」
ベッドの横にある、ギー太ことギブソンのレスポール。
心の中でギー太に声をかけて、ギターを背負った。
6年前の当時唯たちが2年生の文化祭の日、
唯は階段を下りたリビングのところですべって転びそうになった。
しかし、唯は階段を下りて躓くことなくスムーズに玄関に向かった。
勢い良く家を飛び出した唯は、高校生の頃よく走った道を全速力で走った。
律から聞いた…今日、律の卒業ライブがある。
律「唯、絶対来てくれっ!みんな…お前の事を待ってるっ」
律の通うK大学に向けて、唯は走った。
電車に乗って20分。律の学校のあるK大学に到着した。
少し、道に迷ってしまったが、なんとかK大学までたどり着くことができた。
時間は大丈夫。まだ間に合うっ!
最終更新:2010年12月07日 20:48