ゆうしょく!
唯「あれ、あずにゃんもうおなかいっぱいなの?」
律「だから小さいまんまなんだぞー」
澪「体調でも悪いのか?」
梓「いえ、ちょっと疲れてしまいまして」
唯「あずにゃんは体力無いね! 私はお夕飯を食べて絶好調だよ!」
紬「それじゃあ唯ちゃんは徹夜でお勉強ね」
唯「うう……持病のしゃくが……」
律「しゃくって何か知ってるか?」
唯「……持病の……持病が!」
澪「いいかげんにしろ」
澪「今年は部屋がみんな別々なのか」
律「寂しいからって夜這いするなよー」
唯「よばいって何?」
律「え!? え、えーっと、その……な、なんでもないんだよ!」
唯「ムギちゃんはどういう意味なのか知ってる?」
紬「夜にねお部屋の中に入る事よ」
唯「澪ちゃん、私に夜這いして良いよ!」
澪「するか!」
梓「それじゃあ部屋で」
唯「うん、それじゃあおやすみー」
紬「ふふふ、唯ちゃんはお勉強ね」
唯「ごまかせなかった!?」
唯「はー、仕方ないからお勉強するかー」
紬「ふふ」
唯「ムギちゃん、大丈夫だよ、お勉強するよ」
紬「だいじょうぶよ」
唯「ううん、ムギちゃん目が怖いんだよ?」
紬「そう?」
唯「うん、なんか、肉食動物さんみたい」
紬「ふふ、夜中に女の子と二人っきりってどきどきしちゃうわね」
唯「ふわふわ時間!?」
紬「うふふ」
…
梓「……」
梓「誰もいない……ですね?」
梓「はぁー」
梓「だいぶ遅くなっちゃいましたけど、お薬飲まないと」
梓「でも、お薬飲まなくても平気そうだな……」
梓「急に倒れちゃったりしたら困るから飲んどこうかな」
梓「相変わらず量が多い……」
梓「うえ、変な味ぃ……」
よくあさ!
澪「唯、クマがすごいぞ」
唯「結局三時間しか眠れなかった」
律「勉強してたのか?」
唯「うん、ギターも練習してた」
紬「うふふ」
澪「ムギは元気そうだな……」
律「梓はまだ起きてこないのか?」
澪「張り切って練習してしな、疲れたんだろ」
唯「私がこんなに眠い中起きてるんだから起こしに行こう!」
紬「唯ちゃんは私と一緒に朝ご飯の準備ね、りっちゃんお願い」
律「あ、うん」
梓の部屋
律「梓ー? 寝てるのか?」
律「ノックしても出ない、それはずばり寝起きドッキリオーケーってことか」
律「うふふー、りっちゃんのラブラブモーニングコールの時間だよー、えへへへ、おっきする時間ですよー」
律「梓ちゃーん、えへへへ、おっきした?」
律「……熟睡してやがる」
律「たく、お……ん? なんだこれ、薬か?」
律「ずいぶん量を飲んでるなー、それにしてもしまい忘れるとか」
律「調子もあんまりよくなさそうだし寝かせておくか」
律「なんて優しい律さん、感謝しろよ梓」
澪「梓は?」
律「よく寝てるみたいだから寝かせておいた」
澪「そうか、まあ、疲れたんだろ」
律「ところでさ澪、薬ってさ、普通どれくらい飲む?」
澪「ん? そりゃ三粒とかそんなもんでしょ」
律「なんか梓がえれー量飲んでるんだよ」
澪「律は大げさだからな」
律「どれくらいかわかんないけど、十粒くらいはあったと思う」
澪「……それは確かに多いな? 見間違いじゃないのか?」
律「でもさー、一回に二十粒くらい飲むおなかの薬もあるし、何とも言えないんだよな」
澪「あー、そういう薬なのかもしれないな、あんまり梓には無理させないようにしよう」
唯「えー、あずにゃんまだ寝てるの?」
紬「……」
澪「まあ、四人で食べるか」
律「だな」
唯「こうなったらあずにゃんの分まで食べる!」
紬「いただきましょうか」
澪「梓もそのうち起きてくる……よな?」
律「……」
唯「何か二人とも暗いよー?」
紬「そうよ、お寝坊さんの事なんてりっちゃんにも澪ちゃんにもあるでしょう?」
律「だな?」
澪「ああ」
おひる!
梓「うわ! 寝坊してしまいました!」
唯「もう、練習開始してるんだよ! しっかりあずにゃん!」
律「寝癖がついてるぞ梓、本当に猫みたいになってるぞー」
紬「ふふ、じゃあ、私が……」
澪「ムギはここにいてくれ、私が梓と一緒にいるから」
紬「う、うん、わ、わかったわ」
澪「ほら、顔を洗いに行こう梓」
梓「え、あ、はい」
廊下
澪「梓が私たちに知らないで欲しいって言うなら、私たちは知らないで良いことだよな」
梓「え?」
澪「いいや、梓にもプライベートはあるよなって話だ、他意はない」
梓「あ、は、はい、そうですね」
澪「疲れたり、きつかったりしたらいつでも言ってくれ」
梓「律先輩や唯先輩に練習してくださいって言って欲しいです」
澪「あはは、そうだったな」
梓「文化祭まであんまり時間無いですから……」
澪「……文化祭まで……なのか?」
梓「え? 何がですか?」
澪「ううん、なんでも」
唯「あ、あずにゃんと澪ちゃん戻ってきた!」
澪「ごめん、ちょっと遅くなったな」
律「ご不浄で何してたんでしゅかー?」
澪「顔を洗いに行ってたって言ってるだろ!」
梓「さ、練習しましょう!」
唯「うえー、昨日から練習してばっかりだよー」
紬「ばっつげーむ♪ ばっつげーむ♪」
唯「あーん、あずにゃんのばかー!」
梓「どうして私が怒られてるんですか!?」
……
澪「ふう、まともに練習できたな、音がだんだんと揃ってた気がするよ」
律「集中できた気がするな、うん」
唯「魂が……抜けちゃう……」
紬「すーぅ、すーぅ!」
紬「唯ちゃんの魂を吸い込んであげようと思って」
梓「それでどうするんですか」
紬「口移しで……」
唯「元気いっぱい絶好調だよ!」
紬「ふふ、それじゃあお夕飯の準備にしましょうか」
夜
律「そういえば、花火があったな」
澪「ああ、何かたくさんあったな、あれここにあったやつなのか?」
紬「ううん、今日用意したのよ」
律「(いつの間に!?)」
唯「じゃあ、これを食べ終わったら花火大会だね!」
梓「ん、じゃあ私は一度部屋に戻りますね」
唯「いいじゃんいいじゃん、花火しようよ!」
梓「一度戻るだけですって」
澪「そうだぞ唯、少しの間だけじゃないか」
唯「ぶーぶー、あずにゃんが戻ってくるまでに先に始めちゃうからね」
紬「唯ちゃんはお片付けが先ね」
律「頼んだぞー」
唯「罰ゲームが本当に罰になってる!?」
夜・外
唯「結局私が最後に到着しちゃった……」
梓「唯先輩遅いですよ、もう、花火しちゃってますから」
唯「あーん、私も混ぜてよー」
澪「ほら、唯の分だよ」
唯「ありがと澪ちゃーん!」
律「私に感謝の言葉がないな!」
唯「えーい、りっちゃんには花火ーム!」
律「くぉー! やったなー!」
澪「花火を人に向けちゃいけません!」
律「最後の締めは線香花火だな」
澪「ああ」
唯「ねえねえ知ってる? 線香花火が落ちるまでに願い事を三回言うと願いが叶うんだって」
澪「え? そんなのだっけ?」
律「ようし、じゃあやってみようぜ!」
梓「そうですね」
唯「あずにゃんは何をお願いするの?」
梓「……唯先輩がまともに演奏できるようになりますようにって」
唯「酷いよ! 私だって少しは上手になったでしょ!」
梓「少しだけですね、まだまだです」
唯「うえーん、りっちゃーん」
律「唯が上手にならないと困っちゃうー」
唯「りっちゃんは仲間だと信じてたのに!?」
梓「綺麗ですね、線香花火」
澪「……」
唯「澪ちゃん、泣いてる?」
澪「え!?」
律「どうしたー? 怖いのかー?」
澪「いや、な、なんていうかさ、線香花火って儚いだろ、か、感情移入しちゃってさ」
律「分かる分かる」
唯「そうかなー?」
律「唯にもそういう日本人の情緒が早く分かると良いのにな」
唯「さっきからりっちゃんが私に辛辣だよ……」
紬「ふふ、そうね」
梓「でも、受験生で線香花火って縁起悪いですね」
唯「……落ちるの!?」
二学期
唯「ふぁー、ムギちゃんのお菓子が恋しいよー」
紬「唯ちゃんちゃんと練習はしてた?」
唯「どぼじて、ムギちゃんは憂に私を練習させるように言ったのぉ!」
紬「ふふ、唯ちゃんもしっかりしないとね」
律「そうだぞー、ほら見ろ唯!」
唯「わ、りっちゃん手がぼろぼろ!」
律「ドラムの練習しすぎてシャーペンを持つことすらままならない!」
澪「受験勉強もしろ!」
紬「そういう澪ちゃんも目にクマができてるし、ペンだこみたいなのできてるよ」
澪「ああ、実は歌詞をたくさん書いてきてな」
唯「そうだねー、文化祭では最後のライブだもんね、気合いも入るよ!」
唯「そういえば今日あずにゃんはお休みなんだって」
澪「そ、そうか、せっかく部活開始なのにな」
律「あ、そう、だな」
唯「うー、みんなあずにゃんに甘いよー、ここは練習するように言わないと」
律「え? あ、うん、ま、そう、かもな?」
澪「ああ! うん、梓もきっとわ、分かってるって」
紬「合宿の疲れが出たのよ」
唯「せっかく上手になった私を見せられると思ったのに!」
一週間後!
平沢家夕食。
唯「あずにゃんまだお休みなの?」
憂「うん、心配だよ」
唯「人にあんなに練習練習って言ってるのに、もう、怒っちゃうよ!」
憂「身体の調子が悪いんだから仕方ないよ」
唯「よし、じゃあ明日襲撃しちゃう!」
憂「お、お見舞い?」
唯「しゅうげき!」
憂「そ、そう、明日はお休みだからね……」
翌日
日曜日、午前。
唯「じゃあ、行ってくるよ!」
憂「うん、お姉ちゃんだいじょうぶ?」
唯「あずにゃんの家に行ってまず、練習してくださいって言います!」
憂「梓ちゃんによろしくね」
唯「憂のケーキを食べてから帰ります!」
憂「(素直じゃないなあ……)」
唯「ふっふっふ、私の受けた苦しみを倍返しするんだ!」
梓の家
唯「あれ? あずにゃん? どこに行くんだろ?」
唯「あ、タクシーに乗っちゃう!」
唯「……むー」
唯「でもなんだか元気ないっぽい……って事は……」
唯「……わかんないや、帰ろうかなあ……」
唯「その前にムギちゃんに電話してみよう」
唯「……もしもしムギちゃん、緊急事態なんだよ!」
紬『え?』
唯「あずにゃんが大変なの!」
紬『それ、詳しく教えて、唯ちゃん今どこにいるの?』
唯「あずにゃんの家の前!」
紬『わかった、すぐに行くわね!』
唯「……あ、切れちゃった」
唯「わっ!」
紬「唯ちゃん! 梓ちゃんが、梓ちゃんが大変って?」
唯「そ、そうなの! タクシーに乗ってどこかに行っちゃったの!」
紬「……え?」
唯「せっかく私があずにゃんの家に行って、練習しなきゃダメって言おうとしたのに、どこかに行っちゃうなんてずるいよ!」
紬「あ、そ、そう……はぁー」
唯「ムギちゃん?」
紬「今日のところは帰りましょう? 送るわね」
唯「わーい!」
紬「(ん……憂ちゃんにも伝えるべきかしら……でも……)」
最終更新:2010年09月08日 21:19