律「おーい!澪ー!起きろー!」

澪「!?」ビクッ

律「澪ってばー!」

澪「わっわっ!え、え?ええぇぇ?」ワタワタ

律「お前、何してんの?」

澪「律!?って、何してんのはこっちの台詞だ!」

律「あ、そう。じゃあ、はい。言っていいよ?」

澪「(イラッ)・・・こんなところで何をしている」

律「可愛い澪しゃんのご尊顔を」

澪「黙れ」ゴスッ

律「っつ~・・・!」

澪「何時だと思ってる」

律「夜中の2時!」

澪「・・・そもそも、なんで私の部屋にいる」

律「なんでって、いつものことじゃん」

澪「(なっ・・・!こっちの世界では、それが日常なのか?)・・・そっか、そうだな」

律「え!?つっこみなし!?」

澪「やっぱりつっこみどころだったんかいっ」ガスッ

律「いた!」

澪「なあ、本当に何しにきたんだよ」

律「んー・・・なんとなく、かな」

澪「・・・」

律「・・・」


澪「(やっぱり黙ってられない・・・!)なあ、律」

律「ん?」

澪「ごめん、その・・・今日の、見てた」

律「んー・・・あぁ。なんとなく気付いてた」

澪「ごめん」

律「いいよ」

澪「ごめん」

律「いいって」

澪「女と付き合うなとは言わないけどさ・・・ちゃんと、好きになってやれよ」

律「・・・」

澪「私が律の恋愛に口出しするなって感じかもしれないけど、でも・・・やっぱり我慢できないよ」


律「ごめんな、こんなヤツで」

澪「それもそうだけど・・・!律だって・・・こんなこと繰り返すの、辛いだろ?」

律「うーん、わかんない」

澪「私は・・・見てて辛そうだよ」

律「・・・」

澪「なあ」

律「私だって辛いよ・・・。でも、どうしても本気になれなかったんだ」

澪「・・・ほら、やっぱり律だって傷ついてる」

律「分ってても、止められないんだよ。」

澪「律・・・」

律「私は弱いから・・・その場しのぎでもいいから誰かと一緒にいたかったんだ・・・」

澪「なんで、一人がそんなに不安なんだ?」


律「・・・」

澪「(この世界からどうやって戻ればいいのかなんてわからない)」

澪「(一刻も早く状況を打開すべきなのもわかっている)」

澪「(だけど、こんなダメダメな律をほっとくことなんて・・・やっぱり私にはできない)」

澪「・・・教えてくれよ、力になりたい」

律「・・・」

澪「律・・・!」

律「好きな人が・・・いるんだ」

澪「!?(まさかの展開だ)」

律「でも、それは・・・叶わないから」

律「だからだよ」

澪「なんで・・・」

律「その人のこと忘れようって思って・・・でも一人でいるとその人のことばかり考えちゃって・・・」


律「いっそ他に好きな子がいたらなぁって・・・そう思って。
そのとき丁度告白してきた子と付き合ったのが最初だった」

律「でもどうしてもその人のこと、忘れられなくてさ」

律「その子と別れた直後、また別の子に告白された。そんなことを繰り返していくうちにこの有様だよ」

律「私は・・・何をやってるんだろうな」

澪「律・・・」

律「はぁ・・・」

澪「こんなこと言うの、酷かもしれないけど、友達じゃダメなのか?」

律「その好きな人とってこと?」

澪「ううん、両方。律の本命とも、その他の女の子とも。友達だと、いけないのか?」

律「お前、友達とセックスするか?」

澪「///」

澪「(そこまでいってたとは・・・この世界を甘く見てたな)」



澪「って、そろそろ寝たいんだけど・・・」

律「はい、おやすみ」

澪「いや、帰れよ」

律「えーあー。後でな」

澪「っていうかそもそもどうやって入ってきたんだ?」

律「え、合鍵で普通に入ってきたけど?」

澪「いや、普通じゃないだろ、それ」

律「」

澪「(あれ、もしかして・・・。親友の家の合鍵を作るって、当たり前なのか・・・?)」

律「ですよねー♪」

澪「ですよねー♪」ゴスッ

澪「全くお前ってヤツは・・・」

律「・・・ごめんな」

澪「いや、わかってくれたならいいけど」

律「そうじゃなくて」

澪「うん?」

律「澪のこと、なかなか諦められなくて・・・ごめん」

澪「」

澪「え・・・(ちょっと待て。話が見えない)」

律「今日の件だって、私が悪いのに、勝手に落ち込んじゃって・・・」

澪「自分が悪くたって苦しくなるときはあるよ」

律「落ち込んだときには、やっぱり澪の顔が見たくなるんだ」

澪「律・・・(話は見えてきたけど、見えなかったことにしたい・・・)」

律「だー!」

澪「!?頭抱えてどうした!?」

律「私って、すげー嫌な女だなー思って」

澪「そんな」

律「結構前、私が澪に告白したときの話だけどさ」

澪「うん(っていうか告白されたのか!?律に!?」

律「澪にフラれて、その後で私『このことは忘れてくれ』って言っただろ?」

澪「あ、ああ(そうなのか・・・)」

律「でもさっきの澪、忘れたって言うか、全く覚えてない感じで喋るじゃん?」

澪「そうだな(本当は全く覚えてないっていうか、全く知らないんだけどな)」

律「それで、確かに忘れてくれって言ったのは私だけど・・・『律の本命の子』だなんて言い方するし」

澪「・・・(そりゃ確かに不謹慎だったな)」

律「それで、『何もそんな言い方することないじゃん』なんて、少し澪にムカついたんだ」

澪「・・・いや、確かに私の言い方が悪かった。ごめん」

律「あ、謝らないでくれ。私が我が侭なんだから。ホント、ごめんな」

澪「いいって」

律「・・・うん、最後にもう一回だけ」

澪「何?」

律「ごめん」

澪「もうこの話は終わりにしよう。どっちも悪いし、どっちも悪くない」

律「澪・・・」

澪「今の『ごめん』、聞かなかったことにするからな。いいな?」

律「・・・オッケー。わかったよ」

澪「もう遅いから。いくら家が近いったってそろそろ帰った方がいいんじゃないか?」

律「そうだな、じゃないとまた聡に『姉ちゃんが夜這いに行った!』って騒がれるし」

澪「・・・『また』って、前科持ちかっ」ゴンッ

律「いったーっ!」

律「・・・それじゃ、そろそろ帰るかな」


澪「うん」

律「よいしょっと。・・・私、まだしばらくこんな調子だろうけど」

澪「わかってる。嫌いになったりしないよ」

律「・・・くっそー、『嫌いじゃないけど付き合えない』っての、すげー堪えるんだからな?」

澪「ふふふ、ごめんごめん」

律「全く、澪にいじられるなんてなー」クスクス

澪「あはは」クスクス

律「んじゃ、おやすみ」バタン

澪「うん、おやすみ・・・」


澪「律も帰ったことだし・・・」

澪「(・・・さあ、どうする。自分)」




澪「(結局、あまり寝れなかったな)」シャコシャコ

澪「(まさか、律が好きな人を忘れるためにあんな風になってたとは・・・)」シャコシャコ

澪「(そしてその相手が自分だとは・・・)」ガラガラペッ

澪「(そういえば、和言ってたな。この世界は私達の世界と平行にあるものだって)」ヌギヌギ

澪「(何かが欠けたり、余分だったり。元は私達の世界と一緒で、途中から枝分かれしたようなものってことだよな?)」パッパッ

澪「(この世界には、何が余分なんだろう?それとも足りなかったのか?)」カチャカチャ

澪「(わからないな。わからないことだらけだ)」モグモグ

澪「(ただ一つわかることは・・・律は私のことが好き、か)」モグモグ

澪「(やばい、考えが一周した)」カチャカチャ

澪「はぁ・・・」パタパタ

澪「いってきまーす」バタン

……

澪「(とりあえず、元の世界に戻るのは後回しだな・・・!)」

和「おはよう」

澪「わ!?」

和「なにそれ、どっちの意味で?」

澪「あ、ああごめん、おはよう。突然だったからビックリしたんだ、悪意はないぞ?」

和「・・・まあいいわ。あれから何か収穫はあった?」

澪「ない、かな」

和「そう・・・」

澪「ただ・・・一つ気になることがある」

和「なに?」

澪「この世界には、何が余分なんだ?何が欠けているんだ?」

和「それは・・・わからないわ」

澪「昨日、和との電話の後なんだけど、律が家に来たんだ」

和「え、あの後って、深夜じゃない・・・」

澪「まあそれは私とあいつの仲だからさ」

和「それもそうね、それで何かあったの?」

澪「私達の世界にいる律と、何もかわらなかった」

和「でも、こっちの律はかなり女泣かせだって聞いてるわよ?」

澪「うっ・・・まあそれはそうなんだけど。それ以外は、いつもの律だった」

和「そうなの?」

澪「この世界のみんながいっそのこと、もっと変だったら『変な世界だ』で受け入れられるかもしれないけど」

澪「この世界のみんなも、私達の世界のみんなも・・・変わりなさ過ぎて逆に戸惑うよ」

和「澪・・・」

澪「問題はこの世界の私だ!」

和「ど、どうしたのよ?」

澪「理由はわからないけど、律のことをフッたらしい」

和「え!?告白されたってこと!?」

澪「律の話だとそうなるな。・・・そこで頼みがあるんだ」

和「うーん、なんとなくわかっちゃったかも」

澪「あれ?・・・和には敵わないな」

和「この世界のこと、もっと知りたいんでしょ?」

澪「あぁ!・・・知って、この世界の律をなんとかしてやりたいんだ」

和「やっぱり、そう言うと思ったわよ」

澪「でも何からしたらいいんだろう?」

和「そうね。まずは、情報収集じゃないかしら」

澪「情報収集って?」

和「確かに私達は軽音部のみんなのこと、学校のこと、ちゃんと知ってるわ」

和「そもそも私達がいた世界と、基本的には何も変わらないんだから」

澪「そうだな」

和「でも、この世界の自分のことは?」

澪「・・・!?」

和「そう、この世界の『自分』のことは確かめないと何もわからないままだわ」

澪「確かに、そうだな」

和「私は今のところ、元の世界と同じような生活をしてきたのかなって思うんだけど・・・」

和「こっちの世界の澪は律をフってるんでしょ?それってちょっと不自然だわ」

澪「な、なんで?」

和「元の世界ですら、付き合っているのか疑わしいくらい仲のいいあなた達だもの」

澪「///」

和「この世界の二人に限って相思相愛じゃないなんて・・・きっと何か理由があるはずよ」

澪「そうかな?」

和「そうじゃないかもしれないけど、確かめる価値はあると思うわ」

澪「よし、それじゃ作戦開始!だな!」

和「作戦って・・・」クスクス

澪「///」



教室

澪「(確かめるって言ったけど・・・クラスが一緒な和は私と同じ世界の人間だし・・・)」

澪「(よく考えたら、他に気軽に話が出来る子なんていないじゃないか・・・)」

澪「」ポツーン

和「そういえば、澪って友達少なかったわよね・・・これじゃ情報収集も何も」

澪「い、言うな。確かにクラスの友達は少ないけど」

澪「部活にいけば何か進展があるさ!」ウルウル

和「よし、わかった。私は澪の友達だからね。だからその涙目やめて?」ポンッ

澪「ど、同情された・・・」ガーン

クラスメート「・・・律さん・・・また・・・女・・・」

澪「ん?」

和「どうかした?」

澪「あそこのグループ、今『律』って言わなかったか?」

和「あら、聞いてなかったわ」

澪「うぅー気になる・・・」

和「他愛のない会話をしてるフリして聞き耳を立てましょう」

澪「さらっと凄いこと言ったな」

和「難しくてもやるしかないわ。近くに行きましょう」トテトテ

澪「私は難易度の話をしてるんじゃない、人間性の話をだな・・・よし、やろう」トテトテ



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最終更新:2010年01月07日 05:03