放課後・軽音部部室

唯「あれ、地震?」 ゆら

律「え、何言ってるんだ?」

唯「だって、ほら。こんなに揺れてるよ」 ゆらゆら

律「全然揺れてなんて・・・。って。揺れてるのは、唯だろっ」 あせあせ

唯「え?」 ゆらゆらゆら

唯「あ、あれ?えーっ?」 ふらー

紬「唯ちゃんっ」 ひしっ

唯「ム、ムギちゃんっ」 はしっ

どんがら、がっしゃーん

澪「椅子が、崩れた?唯、大丈夫か?」 あせあせ

唯「う、うん。ムギちゃん、ありがとう♪」

紬「どういたしまして♪」 ニコッ

律「黒ひげ危機一髪だったな」

澪「なんだそれ。しかしこの椅子って、そんな脆い物だったのか?」 あせあせ

律「私達の友情に比べれば、なんだって脆い物さ」

澪「みんな、他の椅子も確かめた方が良いぞ」

律「まずは、私達の友情を確かめてもらえませんか?」

梓「見た感じ、他の椅子は大丈夫みたいですが」

唯「私が座ってた椅子は、脚の金具が取れたみたいだね」

律「だったら、それを元に戻せば直るって事か」

澪「他の椅子を見ながら作業すれば、多分大丈夫だろ」

律「じゃあ、この椅子を参考してと」


紬「唯ちゃん。これは、何?」

唯「ナットだよ。ワルシャワ条約機構じゃないよ、ナットだよ」

紬「わー。ココム規制♪」 ぱちぱち


梓「楽しそうですね」

律「私も笑いたいけどな」

澪「こっちも元に戻らなくなったしな・・・」 ずーん


律「結局椅子が二つ駄目になったって事か」

澪「ソファーもあるし、それ程困る物では無いけれど。でも、やっぱり困ったな」

梓「椅子はおいおい直すとして、代わりの椅子はどうします?

律「私がドラム用に使ってる椅子は小さいから、休憩用には向いてないんだよな」

梓「生徒会に言えば、パイプ椅子くらいなら貸してもらえると思いますが」

唯「でもその場合、誰がパイプ椅子に座るの?」

梓「それは、その。部室に来た順とか」

律「なんか、地味ないじめみたいだよな」

澪「だったらパイプ椅子は、律に決定」

律「泣くぞ、おい」


梓「良い機会ですし、椅子が直るまでは練習の量を増やしましょうよ」

澪「まあ、それが順当だな。ソファーもあるんだし、なんとかなるだろ」

律「しゃーないな。じゃ、練習すっか」

紬「唯ちゃん。これは、何?」

唯「ボルトだよ。ウサインじゃないよ、ボルトだよ」

紬「うわー、カニッ走り♪」

律「・・・さっきから何言ってんだ、お前ら」


唯「かなり本気よー♪」 じゃーん

律「おーし、一旦休憩。ムギ、お茶頼む」

紬「はーい♪」 ぱたぱた

澪「さて。どうする」

律「椅子の事か。良いよ、私が立ってるから。演奏中はずっと座ってるしな」

澪「無理するなよ」

律「疲れたらすぐに言うさ。ほれ、座った座った」

紬「お待たせー♪今日はロシアンティーにしてみたの」

唯「ジャムが入ってるんだよね。・・・あー、妙なる味だね-」

梓「なんですか、それ。・・・なんて言うんですか。甘いんだけど、風味もあって。砂糖とはまた違う」

律「それで」

梓「・・・妙なる味ですね」 ぽっ

律「なんじゃ、そりゃ。だはは♪」

澪「律、座らなくて良いのか」

律「平気平気。・・・いや、待てよ。名案を思い付いた」

澪「そう。私の膝に律が・・・」


澪(あー、あー、あーっ)


梓「え、どうして私が?」

紬「それ、良いかも。梓ちゃんが一番軽いだろうし」

律「そういう事だ。後輩は先輩の言う事を聞くべしっ」

唯「膝乗りあずにゃん?じゃあ、誰の所に座るの?」

律「取りあえずムギで良いだろ。辛くなったら、順番に回って行けば良いさ」

紬「梓ちゃーん♪」 ぽんぽん

梓「はぁ」 

梓「で、では、失礼します」 おどおど

紬「いらっしゃーい♪」 きゅっ

梓(あ、髪の毛さらさらで気持ち良い♪肌もすべすべで、なんだか夢みたい♪それに、良い匂いがするし♪) くんか、くんか

紬「うふふ♪」 撫で撫で

梓「あー♪」

律「堪能してやがるな、梓の奴」

澪「しかしずっと梓を膝に座らせるのも、限界があるだろ」

律「まーなー」

澪「だったら律が、私の・・・」

律「その時は、私がムギの膝に座ろうっかなー」

澪(デンデコ、デンデコ、デンデコ、デンデコ)


律「じゃ、そろそろ交代すっか。梓、次は澪の上な」

梓「え?」 とろーん

唯「とけちゃってるね、あずにゃん」

紬「私が運んで上げる」 ひょい

梓「え、え、えーっ?」

唯「おお、お姫様だっこっ♪」

律「澪もやってやろうか?」

澪「馬鹿な事言ってないで、新曲のアイディアでも考えてろ」

律「ちぇー、結構本気だったのになー」

澪(時間よ戻れっ)


紬「じゃ、後はお願いね」 ひょい

澪「ああ」

梓「お、お世話になります」

澪「ぷっ。なんだよ、それ。他人行儀だな」

梓「そ、そうですか?」

澪「良いから、じっとしてろ。本当、結構軽いな」 なでなで

唯「なんだかんだと言って、澪ちゃんも嬉しそうだね」

律「そういう奴なんだよ、澪は」 ニコニコ


梓「・・・ここは、ベースをもっと厚くしたらどうですか?澪先輩の負担は増えるですけど」

澪「私は構わないよ。それよりこっちは繰り返すよりも、ここからここへ繋いでも面白いんじゃないのか」

梓「後で試してみましょうか」

澪「楽しみだな♪」

梓(やっぱり優しいし、頼りになるし♪何より、いかにも軽音部って雰囲気なんだよね♪それに、良い匂いがするし♪) くんか、くんか


律「澪ちゃんタイム、しゅーりょーっ」 ピー

梓(えー)

澪「だったら次は、律の所な」

梓(えー)

律「思いっきり顔に出てるぞ、この野郎。良いから、来い来い」 ちょいちょい

梓「はぁ」

梓「では、お世話になります」

律「おう、楽にしろよ」

梓「ぷっ。なんですか、それ」

律「まあ、まあ。澪ー、あの椅子どうする?放っておいたら、絶対部品無くしちゃうぞ」 すー

梓(あ。私のティーセットを、手が届くところに動かしてくれた)

律「そりゃー、唯が悪いよ。だははー♪」

梓(椅子も少し引いてて、私が狭くならないようにしてくれてる。その分律先輩は、テーブルから遠ざかるのに)

律「ムギー。今度はようかん食べたいなー。桜味のようかんー」 

梓(普段も気付かれないように気を配ってくれてるし、みんなの事良く見てるんだよね♪それに、良い匂いがするし♪) くんか、くんか

律「じゃ、そろそろ交代すっか」

梓「え?」

唯「あずにゃん♪あずにゃん♪」 ちょいちょい

律「一人で行けるか?」

梓「当たり前ですっ。律先輩は、すぐそういう事言うんだから」 ぷいっ

律「わりーわりー。椅子はすぐ直すから、それまでの辛抱な」 撫で撫で

梓「あ、はい」 てれてれ

澪(あずさーっ)


唯「お帰りー」

梓「なんですか、それ」

唯「あずにゃんは、いつか戻って来てくれると思ってたよ」

梓「全然意味が分かりません」 ちょこん

唯「あずにゃん♪」 どてー

梓「ゆ、唯先輩、もたれないで下さい」 ぐぐー

唯「良いじゃん、良いじゃん。持ちつ持たれつだよ」

梓「意味が違いますっ」

律「楽しそうだな、あいつら」

澪「だったら律も、私の膝に」

律「とはいえこんな事は続けてられないし、早く椅子を直すとするか」

澪(世界中の椅子など、壊れてしまえ)


唯「あずにゃん太郎」

梓「・・・なんですか、それ」 びくっ

唯「いや。なんとなく。でも、語呂は良いよね。あずにゃん太郎」

梓「また変な事を言うんだから、唯先輩は」 くすっ

唯「まあまあ。でも、どっちで区切ればいいと思う?あず、にゃん太郎?それともあずにゃん、太郎?」

梓「語感を考えるなら・・・。あず、にゃん太郎でしょう」

唯「あー、なるほど」

梓(はっ。いつのまにか、唯先輩のペースに乗ってしまってる) あせあせ

唯「お菓子を食べて座ってると、気が抜けてくるね」

梓「唯先輩は、気を抜きすぎです」

唯「まあまあ。あずにゃんよい子だ♪ねんねしなー♪」 ぽんぽん

梓「もう、止めて下さいよ」

唯「あーずにゃん♪あーずにゃん♪おーはなが長いのねー♪」 ぽんぽん

梓(長くないし、意味分かんないし) うとうと

唯「あずにゃんはねー♪あずにゃんて言うんだ♪ほんとだよー♪」 ぽんぽん

梓(なんだかんだと言ってくつろぐというか、安心出来るというか♪一番落ち着くのはやっぱり・・・♪それに、良い匂いがするんだよね♪) くんか、くんか

梓「くー」 すやすや

律「寝ちゃったな、結局」

紬「ソファーに運んだ方が良いわね」 ひょい

澪「タオルケットが、確か奥に」 ごそごそ

唯「寝てるあずにゃんも可愛いね」 つんつん

梓「唯先輩はやれば出来る子なんだから、もっと頑張って下さいよ・・・」 むにゃむにゃ

唯「たはは。寝てても怒られた」

律「子ってなんだよ、子って。分かるけどさ」

紬「うふふ♪」

律「とはいえ、これで椅子の問題は一時的に解決したな」

澪「ああ」 チッ

唯「でも私、ムギちゃんの膝に座りたかったなー」

紬「唯ちゃんなら、いつでも大歓迎よ♪」

唯「あはっ」 ニコッ

紬「うふっ」 ニコッ

澪(その素直さは、一体どこで売ってるんですか)


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最終更新:2010年09月12日 00:14