澪「え?」

唯「中学のときも怖がりだったの?」

澪「中学のときは…」

律「おいーっす!」ガチャッ

唯「あっ!りっちゃ~ん!あのさ、澪ちゃんて」

澪「わー!やめろ唯!」

律「ん?なになに?なんの話~?」

澪「い、いいから!」

紬「こんにちはー」ガチャッ

紬「みんなどうしたの?」

唯「それがさぁ」

澪「も、もういいから~!」

律「なんだよ教えろよー!」

紬「?」

梓「こんにちはぁ」ガチャッ

唯「あずにゃん!」

梓「なっなんですか?唯先輩…」

唯「あずにゃんって、中学のときどんな人だったの?」

梓「えっ…中学のとき…ですか?」

唯「うんそーそー」

梓「どんなって…、…別に普通だと思いますよ?」

唯「え~つまんなーい」

梓「ひ、ひどいです…」

梓「そもそも、なんで急にそんなことを?」

澪「そっそうだぞ!」

唯「えぇ?だってみんなのこと、もっと知りたいんだもぉん…だめぇ?」

澪「だ、だめっていうか」

紬「誰だって、人には知られたくないことがあるのよ、気持ちは分かるけど…ね?そのへんにしよう唯ちゃん」ニコッ

澪「ムギの言う通りだ!」

唯「ちぇ~」

律「まっ澪は予想つくけどな~♪」

澪「なっ」

紬「みんな、お茶にしましょうよ」

律「きょっうのおっやつはなっにかなぁ~♪」

唯「ミルフィーユだぁ!」

澪「美味しそうだな」

梓「ま、またそんなことして…練習はいいんですか!?」

唯「まぁまぁ」スッ

梓「んぐ!?…もぐもぐ」

唯「おいしー?」

梓「おいしいですっ…」


唯「それにしても、中学時代ももう懐かしいよね~」モグモグ

梓「私はつい最近でしたので…」モグモグ

唯「あ、そっかー」モグモグ

澪「まだそんな話して…」


さわ子「んー!いい匂いだわぁ…!」ガチャッ

さわ子「おっ、今日はミルフィーユねぇ」

紬「はい先生、お茶どうぞ」

さわ子「ありがとう!」

律「はー、授業が楽だった中学に戻りたい…」モグモグ

澪「中学のときも私にノート借りにきてただろ?」ニヤニヤ

律「そっそんなことないぞぉ!」


さわ子「あっ!そうそうこれ、みんな知ってる?」

唯「んっ?」

さわ子「これよ」ピラッ

律「なになに?」

澪「…校内新聞?」

律「伝説の不良が再び現れる…?」

唯「伝説の…」

梓「不良?」

律「えっと…『4年前、県内最強と言われた伝説の不良が再びその姿を表した』…だとさ」ピラッ

紬「こわいわねぇ…」

律「そういえば居たな、私たちが中2のときに…そんな不良が」

梓「私も噂は聞いたことあります…なんでも、喧嘩を売った人は男女問わず全員病院送りだとか」

唯「えぇ!?」ガクガク

梓「中には、昏睡状態にまでなった人もいるみたいです…」

律「おっかねー」

澪「そんな危ない人が、また出てきたって?」

紬「なんでまた今更…」

梓「確か、その人って先輩方と同じ年ですよね」

唯「そうなの!?」

律「へぇ…って、梓なんでそんなに詳しいんだ?」

梓「あくまで噂ですよ…」

澪「進路が思い通りにいかなくて、また荒れ始めた…とかか?」

さわ子「とにかく、この辺に出ないとは言いきれないから、みんな気をつけて帰るのよ?」


ジャジャッジャジャ♪ジャーン♪

澪「よし、今日はもう帰るか!」

律「疲れたぁ~」グテッ

紬「もう外が真っ暗ね…」

唯「こわいよぉ…」

梓「…」


澪「じゃあ、私たちはここで…」

律「気をつけろよ~」


唯「二人もね!」

梓「澪先輩、律先輩、さようならです」ペコッ

紬「じゃあね~」


……

律「なぁ、澪…さっきの話だけどさぁ…」

澪「やめろ!」

律「わ、分かってる…分かってるよ…」

澪「…はぁっ…はぁ…」

律「だから…澪も…な?」

澪「分かってる…」


……

梓「唯先輩」

唯「なぁに?あずにゃん」

梓「結局、先輩たちの中学時代って聞けず仕舞いだったんですか?」

唯「うん、澪ちゃんは教えてくれなくて、りっちゃんは聞きそびれて…あ、ムギちゃんも」

紬「あ、ごめんね、私ここで曲がるわ」

唯「え!?危ないよぉ…」

紬「あと数分で斎藤が迎えに来るから大丈夫よ」ニコッ

唯「そ、そっかぁ」ホッ

梓「じゃあ、行きましょうか」

唯「うん、ばいばいムギちゃん!」

紬「ばいば~い」ヒラヒラ

梓「さようならっ」ペコッ


唯「ここまで来れば別れても安全だね」

梓「そうみたいですね」

唯「じゃあバイバイ、あずにゃん!」

梓「はい、失礼します」ペコッ


梓「………」

梓(どうも何かがひっかかる…なんだ?)

梓(どうして先輩たちは…特に澪さんはあそこまで中学時代を隠したがるの…?)

梓(ムギ先輩も、もしかしてさっきのは話を振られないために…?)

梓(それなら律先輩も…)

梓(ううん、それなら人に聞くだけ聞いて、自分は話さない唯先輩も)

梓「!」ハッ

梓「だ、だめだめ…!こんなこと考えちゃ」フルフル


梓「…帰ろう」



翌日

唯「み、みんな大変!」バタバタ

紬「どうしたの?唯ちゃん」

澪「アンプあるんだし気をつけろよ?また転ぶぞ!」

律「そしたら唯の膝は血だらけだなぁ♪」ニヤニヤ

澪「ひっひい…!」

梓「で…何が大変なんですか?唯先輩…」

唯「こっ、これ見て!」バッ

澪「新聞?」

律「どこを…、…あ!」

紬「う、うそ…」

梓「!?」



―○○市で暴力事件発生。


唯「これって…」

紬「伝説の…不良…?」

梓「あっここ!」



梓「通報された時間が、ちょうど私たちが帰宅したあとですよ…!」

シーン…


律「危なかったんだ…私たち…」ガクガク

唯「もっ…もし鉢合わせてたら…」ガクガク


さわ子「みんな、それだけじゃないわ」


梓「きゃっ」ビクッ

唯「さ、さわちゃん先生…」

紬「それだけじゃないって…どういう…」



さわ子「目撃者の中に『桜高の制服を着ていた』という証言をした人がいるのよ」

梓「!?」

唯「そ…それって…」


さわ子「…最悪なことに、あんな時間まで残っていた生徒は…」



さわ子「貴方たち、軽音部だけなのよ」

澪「そ、それって、私たちを疑ってるってことですか!?」

律「澪…」

澪「そんなことする人が、この中にいるわけない!!!!!!!!」


さわ子「…私もそう信じてるわ、でもね」


澪「先生は味方じゃないんですかっ…!?」



梓「いい加減にしてください!!!!!!!!!」

シーン…

澪「あず…さ…?」

梓「澪先輩…そんな演技しないで…ちゃんと言ったらどうなんですか!?」

澪「な、なんのこと…」

梓「しらばっくれないでください!!!!!」

唯「あ、あずにゃん落ち着いて!ね?どうしたの?」

紬「そうよ、あ、ほら…お菓子あるわ…」


梓「みなさんは怪しいと思わないんですか!?」

唯「へ…?」

梓「…澪先輩、自分の中学時代をやたらと隠したいみたいですね…」

澪「そ、それは…!」

梓「よく考えたら…普段から律先輩に暴力ふるうし…」


梓「あの伝説の不良は…澪先輩なんじゃないですか!?」

律「おいやめろ梓!」

唯「そうだよあずにゃん!澪ちゃんがそんなことするはずないよ!」

紬「そうよ、もう少し落ち着いて…」


梓「よく考えれば…皆さん怪しいです…」フルフル

唯「え…?」


梓「こ…この部活にいたら…いつか殺される…!!『あのとき』みたいに…いや…いや…いやあああああああああああああ!!!!!!!」ダッ


唯「あずにゃん!」ダッ


さわ子「無駄よ唯ちゃん」

唯「で、でも…」

さわ子「とにかく今は、怪しまれるような行動をとらない…それが第一よ」

唯「……」

澪「……」

律「……」

紬「……」


翌日

唯「あずにゃん、来ないね……」

紬「…うん」

澪「くそっ…」

律「…私探しに…」


ガチャッ

梓「…こんにちは」

唯「あずにゃん!」

澪「……」

梓「昨日は…取り乱してしまって…すみませんでした」ペコッ

梓「特に澪先輩…本当にごめんなさい…」

澪「いや、いいよ…わかってくれたなら…」

梓「それで…思ったんですけど…」

澪「ん?」


梓「やっぱり、みんな中学のときの自分のこと…包み隠さず話すべきだと思うんです…!!」

梓「やっぱ、こうなってしまった以上…相手を信用するには、まず相手のことを知らなきゃいけないと思うんです!」

澪「それとこれとは」

律「梓の言う通りだ」

澪「律まで!」

唯「そうだよ…ちゃんと話そう!」

紬「みんな…」


梓「…私から話します」

梓「私は中学時代、前に言ったように至って普通でした」


梓「ある1つの事件を除いては……」

唯「ひとつの…」

紬「事件?」


梓「あれは私が中学1年のころ…」

梓「私は、夏休みに友達と夜遅くに家を抜け出す計画を立てたんです」

梓「ただ夜遊びに憧れてただけなんです…でも…その帰り道で…」



梓「会ったんです…伝説の不良に………」

梓「私は怖くなって、すぐに逃げようとしました…けど」

梓「友達は、ふざけてその不良に自ら絡みに行ったんです」

梓「私は恐怖で、それを止めることすらできませんでした…そして」

梓「友達は…友達は、顔が誰だか分からなくなるまで殴られ続けて…」

梓「気づいたときには、私は逃げていました…恐怖だけが体を支配して…私は…」

梓「私はっ…友達を見捨てて逃げてきたんですっ…グスッ…卑怯なんですっ…グスッ…」


澪「梓…」

唯「あずにゃん…」


梓「その友達は、1週間昏睡状態でした…」

梓「私は、裏切り者だと後ろ指をさされることが怖くて」


梓「学校へ行くのを、やめました……」

梓「それからです…ギターだけが私の救いになったのは」

梓「ギターは私を裏切らない…それから、毎日ギターばかりの日々…」


梓「だから…私のギターがある、私の居場所を…軽音部をなくしたくないんですっ…」


律「じゃあ、私も話すよ」

澪「律…」

律「私は中学時代…」



律「腐女子だったんだ」


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最終更新:2010年01月27日 01:48