澪「お前がそんなの頼んだら、なんか私が子供みたいじゃないか!」

唯「なにキャラメルなんとかって」

澪「美味いんだよ!」

でも…なんか寂しい
あんな未来知ってなきゃ私だって…

澪「……」

澪「受験勉強捗ってるか?」

唯「おかげさまで」
澪「ふーん。でも夏休みに勉強なんて嫌だよな!集中できないし」

唯「あはは…」

唯「で、話って?」
澪「……」

唯「?」

澪「お前本当に未来から来たのか…?」

唯「え…?」

完全に忘れられてると思ってた

唯「あ、あれは本当は夢だったんだよ!」

澪「そうじゃなくても、何か問題抱えてんだろ?」

唯「えー、どうして?」

澪「私にはわかるんだ。なんでかわかんないけど…さ」

澪「それにお前がそんなんだと私の気持ちも晴れないっていうか」

澪「だから話してくれないか?」

唯「澪ちゃん…」

店員「お待たせしました!アイスキャラメルハニーラテとアイスティです。ごゆっくりどうぞ!」



澪「………」

唯「……クスッ」

澪「笑うな、ばか」

唯「あはははは!」

澪「はは…あははは!」

唯「……でもね、澪ちゃん」

澪「あはは……え?」

唯「いいの、もう。これは私の問題で、私が解決しなきゃいけないから」

澪「そんなこと言ったって…そんな話せないことなのか?」
唯「いや…そういう訳じゃないんだけど…」

唯「じゃあ一つ聞いていい?」

澪「いいよ」

唯「私のダメな所ってなに?」

澪「ダメな所…?」

澪「うーん……って言っていいものなのか?」

唯「来なさい!私の大きな器で受け止めよう!」

澪「唯ってさ…誰かに頼る癖があるよな。憂ちゃんとか私たちとかに」

唯「はい…」

澪「だからそういうとこを……ってだからお前…!」

唯「いや…あはは」
澪「お前……!」

澪(そうか…だからこいつ1人で何もかも背負ってるみたいに見えたのか)

澪「お前…それがわかってて変えようと…!」

唯「さーね」


ただそれは紛れもない真実

私は私なりに今を変えようとしていた

澪「にしても偏りすぎなんだよ!なんていうか……その」

唯「私らしさ」

澪「え?」

唯「だよね?」

さわちゃんの言った通り"変わっちゃいけないこと"もあるんだ
それをまた澪ちゃんには教えられちゃったかな

澪「まーでも、本当に困ったらいつでも私に言えよ?」

澪「少なくとも、あんな部長よりは役に立つからさ!」

唯「あはは」

「誰があんな部長だって………?」

澪「へっ!?」

唯「あー!りっちゃん!」

律「ったく、ずっと後ろで聞いてたよ」

紬「唯ちゃんやっほー!」

唯「むぎちゃん!」
梓「別に私は盗み聞きなんてしてないですからね?」

唯「あずにゃん!」
澪「どうしてお前らがここに…」

梓「私もそれ律先輩に聞きたいんですけど!」

紬「あ、そういえばそうね…」

澪「知らなかったのかよ!」

律「いやー、ノリで!」

律「…っていうのは嘘でさ。お前らにどうしても見せたいものがあるんだ」

唯「……!」

梓「なんですか?」

律「ここにはないんだ。悪いがついて来てもらえるか?」

うん、間違いない。やっぱりあれは夢なんかじゃなかった

みんなは不思議な様子で電車に乗っていたけど、私はその電車の窓からの眺めに懐かしさを感じていた

律「ここだよ」

澪「ここ……って何にもないただの丘じゃないか!」

律「まあ待てって」

そうそう

そして暗くなってきたら綺麗な星が…

ポタ…ポタポタ

梓「あ」

ザーッ

澪「……」

律「た、確かに天気予報では晴れだったはずなんだ!」

澪「そうか。本当だったら綺麗な星が辺り一面に…な」

律「お前らにも是非とも見せてやりたかったよ」

紬「でもこれじゃ風邪引いちゃうわ」

梓「また今度来ましょう」

律「うぅ……」

澪「さ、帰ろう帰ろう」

梓「…唯先輩?」

ザーッ


梓「ちょっと風邪引きますよ?」

梓「先輩…?」

唯「……見えるよ」

梓「…?」

唯「私にはちゃんと見える……!」


みんなと見れないのはちょっと残念だったけど

確かに私には見えたんだ


夏の夜空に輝く星が



気がつけば夏休みも終わって、2学期が始まっていた

そこからは、文化祭のクラスの出し物の計画や練習とライブの練習に加え受験勉強と、ハードだったけど楽しかった

そんなある日の放課後、私は憂と帰ろうと教室に立ち寄った

憂まだいるかな…

教室を覗くとあずにゃんが一人で窓から外を眺めていた

唯「……あずにゃん?」

梓「あ……唯先輩」

唯「なにしてるの?」

梓「いえ…なんか綺麗な景色だなー…って」

唯「ふーん」

確かに綺麗な夕暮れだった

そして何より心地よかった

梓「先輩こそこんなとこにいていいんですか?受験もうすぐなのに」

唯「いや…憂と一緒に帰ろうと思ってたんだけど」

梓「憂なら帰りましたよ…」

唯「そっか…」

唯「ねえ、あずにゃん?」

梓「なんですか」

唯「一つ聞いてもいいかな」

梓「何個でもどーぞ」

唯「軽音部……入ってよかった?」

梓「……」

梓「なんですか、急に」

あずにゃんは外を眺めながら答えた

唯「いや…別にどうってことじゃないんだけど……さ、今のうちに聞いておこうと思って」

梓「まあよかったですよ。色々楽しめましたし」

梓「じゃあ逆に唯先輩に聞いていいですか?」

唯「どんと来なさい!」

梓「……」

梓「先輩は幸せでしたか?」

あずにゃんのその問に私はちょっとびっくりした

確かに急に言われると困る

だけど私は満面の笑みで答えた

唯「うん!とっても!」

梓「……」

梓「それは何よりですね…」

唯「あーずにゃーん!」ムギュ

梓「ちょ、唯先輩!」

唯「うぅ……グスン」

梓「泣いてるんですか?」

唯「私、卒業したくない…」

梓「またそんな無茶言って…」

唯「みんなとお別れしたくない…!」

梓「そんなこと言ったってどうにもならないんですよ?」

唯「わかってる!わかってるけど…」

梓「それに大丈夫ですよ、唯先輩」

唯「?」

梓「卒業したって永遠の別れじゃないんですから」

梓「いつでも会えますよ」

永遠の別れ…か

って私またあずにゃんに甘えて…

唯「…ごめん」

梓「今日くらい…いいですよ?」


誰もいない放課後の教室を

オレンジ色に染まった夕焼け空が包む

カーテンがそよ風でゆらゆらと揺れていて

私は抱きしめる

強くてもろいその体を

愛に満ちたその体を

唯「あずにゃーん……!」ポロポロ

梓「私がずっとそばにいてあげますから」ナデナデ

今日だけは甘えさせてもらうことにしよう

そう思って私は強く強く抱きしめた




文化祭も終わって本格的な受験ムード

笑ってられる場合じゃない

記憶は消されるとは言っても大学だけには行こうと思う

そうすればみんなと一緒にいられる気がしてさ

唯「はぁ…」カキカキ

憂「お姉ちゃーん、ちょっと出かけてくるねー?」

唯「うーん!」

そういえば最近憂の外出が増えた気がする

私が勉強ばかりしてるせいかな

まあ私の最後の望みはもう一度あの時と同じ問題が出てくれること

正直これなんだよ、タイムスリップの醍醐味は

って違うか


土日は家で勉強して、平日は部室でみんなと勉強

みんなで一緒の大学って決めたからどこか心はホッとしている

そんな勉強漬けの毎日だったある日のことだった

唯「あーもう、みんな部室いるのかな」

私が急いで音楽室に向かっていると、ある教室であずにゃんとさわちゃん、それに和ちゃんが集まって会話をしていた

当然不思議に思った私は教室に入った

唯「みんな…なにしてるの?」

和「!」

梓「!」

さわ子「……」

梓「先輩部室行ったんじゃ…」

唯「いや忘れ物しちゃって…」

さわ子「別になんか暇だったから喋ってただけよ。あなたたちも勉強で相手してくれないし」

唯「ふーん」

和「みんな待ってるわよ?」

唯「あっ…そうだった!じゃあね!」

タッタッタ

唯「?」

私は音楽室に向かった


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最終更新:2010年09月12日 23:56