よくじつのほうかご!
唯「あーずにゃーん」ダキッ
梓「だから、唯先輩暑いですっ!」
唯「…」チラッ
澪「!」
唯「…あずにゃんお日様のにおいがするねー」ギュー
梓「も、もうっ、離れてくださいっ」テレテレ
紬「あらあら!」
律「ムギー、お茶ちょーだいお茶ー」
紬「はーい、ちょっとまってねー」
澪「…それ飲んだら練習するぞ」
唯「えーそんなぁ」パッ
梓「あっ…じゃなかった、練習、そうですよ、練習しないと!」
唯「うーん…まぁ昨日頑張るって約束したもんねえ」
梓「そうです!」フンス
律「なんだ、二人で何かあったのか?」
梓「昨日私のシールドと唯先輩の弦を買いに行ってですね」
律「ほー。じゃあ私と澪とニアミスしてたかもなぁ」
梓「そうなんですか?」
律「あぁ、私らもちょっと買い物でな」
唯「…」
澪「…」
梓「それで唯先輩ったら弦の種類に全然無頓着で…」キャイキャイ
律「こっちも澪が熱中症なりかかってて…」キャッキャ
紬「わたしも誘ってほしかったわぁ」
澪「…なぁ、唯」
唯「なぁに? 澪ちゃん」クルッ
澪(くるっと回って小首をかしげて…無意識でやってるんだよな…?)ドキドキ
唯「?」
澪「あ、あの、…またどっか遊びに行こっか…って思ったんだけど…」
唯「……うーん、そうだねえ」
澪「い、…嫌か?」
唯「うん」
澪「えっ」ガーン
唯「でもね、」
スッ
唯「デートならいいよ」ポソッ
澪「?!」カアァッ
唯「えへへー、楽しみだなあ、楽しみだねっ!」ニッコリ
澪「あ、あ、あぁ、そ、そうだ、な…」ドキドキドキドキ
律梓「…?」
紬(なんだか今急にこの部屋の空気が輝き始めた気がするわ!)
きゅうじつ!
澪「と言うわけで…どう言うわけだ?
唯と、改めてデっ、デっ、デっ、デートすることに…なったわけだけど…」チラッ
9:30
澪「待ち合わせは11時…」ポツン
澪「今日はどこに行くのかな…お昼なにがいいかな…
服、変じゃないかな…寝癖ちゃんとなおってるかな…
ちゃんと今日って約束だったよな…?
時間も11時であってるよな…?」
澪「…」ソワソワドキドキ
澪「…律も言ってたけど、待つのも楽しいのかもな…」
澪「それにしても、さすがに暑い…
もうそろそろ集合時間なんだけど…」
唯「澪ちゃん、お待たせ」トントン
澪「あ、唯…え、あれ?」
唯「はい、暑かったでしょ? 好きな方選んでね」スッ
澪「じゃ、じゃあレモンティーで…」
唯「はい、どーぞ! 澪ちゃんはそっち選ぶと思ってたよー」プシュッ
澪「ファンタはカロリーとかが…って唯、あの、その、なんて言うか…」
唯「なぁに?」
澪「…ヘアピンは?」
唯「今日はこれで行こっかなーって。…やっぱり変かなぁ…」シュン
澪「い、いや! 変じゃなくて…えと、かっこいい、よ?」
唯「…えへへ、ありがと、澪ちゃん」
澪(なんだなんだなんなんだ?! なんかいきなり唯が大人っぽいぞ?! なんだこれなんだこれ!)ドキドキドキドキ
唯「澪ちゃんって、背も高いし落ち着いてる雰囲気があるから、
並んであるくとますます私が子供っぽく見えると思うんだよねー」
澪「いや、私もそんなに大人っぽくは…」
唯「澪ちゃんはかわいいしかっこいいよー。
だから私もちょっとだけ背伸びしてみよっかなーって、ね?」
澪「う、うん…なんかいきなり唯が大人っぽくなってびっくりしたよ」
唯「ほんと? やったぁ」
澪「なんとなく仕草まで大人びてるような…」
唯「ほめすぎだよぉー」
澪「いや、ほんとに…」ドキドキ
澪「…ん?」
唯「?」ギュッ
澪(あれええええいつの間に手を?!)
唯「あ、ごめんね、嫌だった?」パッ
澪「や、いや、嫌じゃない…よ」
唯「そう…?」
澪「うん…」
唯「…」
澪「…///」ギュッ
唯「えへへー」
唯「そう言えばさ、」
澪「ん?」
唯「澪ちゃん、前買ったストラップ、つけてないよね」
澪「あ…あれは…」
唯「なんか無理やり買わせちゃったみたいでごめんね?
あはは、なんか謝ってばっかりだ」
澪「ち、違うの!
あれは小物入れの方につけてて…」
唯「…そっかー。優しいね、澪ちゃん
澪ちゃんのそう言うところ、私好きだよ」
澪「すっ…?!」カアァッ
唯「うれしいなー」ニコニコ
澪「そ、そう言う唯もあのストラップ、携帯には付けてないよな?」ドキドキ
唯「私はね、ギー太のカバーに付けてあるんだよ」
澪「へ、へぇー…」
唯「1番大事なものだからねー」
澪(大事ってのはストラップじゃなくてギー太が、だよな?!
でもそのギー太のカバーにつけるぐらい大事ってことなのか?!
なんで今日の唯は次から次からこんなドキドキすること言うんだ……っ)ドキドキドキドキ
澪(ヘアピンかっ? ヘアピンを外したから急に唯がかっこよく見えるのかっ?
なんか化粧もいつもとちょっと違うみたいだし…ヘアピン…ヘアピン恐るべし…!)
唯「あ、そうそう澪ちゃん、お昼何か食べたいものある?」
澪「えっ? えーと…特には考えてなかったけど…」
唯「そっか。じゃあね、私ちょっと行ってみたいお店があるんだけど、いい?」
澪「う、うん、そこでいいんじゃないかな」
澪(しかも、今日は唯がリードしてくれるのか…
どんなお店だろ…?)
唯「あ、ここかな」
澪「…この狭い階段を降りるのか?」
唯「そうだよー」
澪(よ、予想外にアングラな雰囲気の場所に来てしまったぞ……!)ビクビク
唯「あはは、澪ちゃん相変わらず怖がり屋さんだねー」
澪「だって…!」
唯「だーいじょぶだってー。ほら、行こ?
足元、気を付けてね」ギュッ
澪「う、うん…(そんな自然に手を引いて…っ)」
カランカラーン
澪(うわ…っ カウンターにお酒の瓶がいっぱい…ってここ何のお店なんだよっ!)
唯「んー、涼しいねー。奥行こっか」グイッ
澪「ゆ、唯ぃ……!」
唯「何がいいかなぁ。澪ちゃん、どうする?」
澪「ちょっ、唯…いいのか? こんなお店入って…!」
唯「え? いいんじゃない? たまにはこう言うところも…あ、気に入らなかったかな…?」
澪「いや、気に入るとか入らないとかじゃなくて、ここ、あれ、お酒…!」
唯「ここ昼間は喫茶店で夜はバーになるんだって。
だからほら、メニュー見て? 軽食とコーヒーでしょ?」
澪「…ほ、ほんとだ…
な、なんだ、喫茶店か…」ホッ
唯「1回来てみたかったんだ、ここ」フンス
澪(……落ち着いてみたら、すごくおしゃれなお店っぽいし…
まさか唯がこんなところを知ってるなんて…)
唯「…ね、澪ちゃん?」
澪「え?」
唯「聞いてなかったの?」
澪「ご、ごめんっ もう1回言って!」
唯「もー、仕方ないなぁ」
澪「ごめんってば…」
唯「『1回澪ちゃんと来てみたかったお店』って言ったんだよ」ニコッ
澪「なっ…えっ?」
唯「あ、私はもう決めたけど、澪ちゃんどれにする?
コーヒーも違うの頼んで飲み比べてみようよー」
澪(ど、どうしよう…
完全に唯のペースだっ…!)ドキドキドキドキ
唯「…」コクン
澪(お酒の瓶がキラキラしてる薄暗いお店で、
コーヒーを飲んでるヘアピンのない唯…ほとんどいつもと別人だ…)
唯「…あー、私全然コーヒーとかわからないけど、これ多分すごくおいしいよ。
お砂糖とかなくても全然平気」
澪「そ、そうか? ん…」コクッ
唯「澪ちゃん、おいしい?」
澪「…うん、おいしいよこれ」
唯「よかったぁ」
澪(ちょっと下から覗きこまれてむせそうになった…)
唯「じゃあ、飲み比べてみようよ。
ひとくちもらっていい?」
澪「あ、あぁ、いいぞ。唯のももらっていい?」
唯「もちろん」カチャリ
澪「どれどれ…」カチャ
澪(…唯が飲んだ跡が…これって…)
唯「…間接キス?」ポソッ
澪「?!」ドキッ
唯「あ、これもおいしいねー
ちゃんと味が違うのわかるよ」
澪(しれっと言われた…!
かかかっ間接キス…って別にそんな女の子同士だし…って言うかいつも律とだって…)
澪(律となら…こんなにドキドキしないのに…)
カランカラーン
唯「はー、いいお店だったね。
ドーナツもおいしかったし」
澪「うん、そうだな」
唯「また来たいなー…」
澪「…また来よう」
唯「ん」
澪「…」ギュッ
唯「えへへー」ギュッ
澪「足元、こけないようにな」
唯「うん!」
唯「さてー」
澪「ん?」
唯「午後は澪ちゃんに任せた!」
澪「ええっ! なにそれっ!」
唯「澪ちゃんの行きたいところに連れてってほしいなーって」
澪(またしれっと…!)カァッ
唯「ね、どこ行こっか?
どこ連れてってくれるの?」ニコニコ
澪「う、うーん…まぁ、じゃあ適当に行くか。
中古レコード屋とかみたいんだけど、それでいい?」
唯「やったぁ」
唯「うわー、すっごい!
こんなところにお店あるんだー」
澪「さっきの喫茶店も大概だっただろ?」
唯「足の踏み場もないくらいのCDが…あ、レコードか」
澪「奥にCDもあるぞ。
この店はレコードの方が多いけど」
唯「すごーい! 澪ちゃん、音楽通だね!」キラキラ
澪「ま、まぁちょっと調べたら店の場所ぐらいはわかるしな」
唯「みたことないバンドがいっぱいあるよー。
これ全部聴くのにどのくらい掛かるのかな?」ゴソゴソ
澪「多分、何日とか何週間とかだろうなー」ゴソゴソ
唯「ね、澪ちゃん」トントン
澪「なんだってうわああああああっ!」
唯「あははっこれすごいねー」
澪「レコードのジャケットで遊ぶなっ!」
唯「きんぐくりむぞん、って人?」
澪「それはすごく有名なやつだよ。どこに行ってもあるし」
唯「へー。どんな音楽?」
澪「…口ではうまく説明できない」
唯「聴いてみたいなー」
澪「だからお面じゃないからそれ!」
唯「うわああああって感じだね。
さっきのびっくりした時の澪ちゃんの顔そっくり…」
澪「ばっ、ばかっ!」
唯「えへへー」
唯「澪ちゃんはこう言うレコード聴くの?」
澪「いや、うちはプレイヤーはないから。
けどそのうち買おうと思ってるよ。
レコードでしかなくてCDで聴けないのもあるし」
唯「そうなんだ!
なんかかっこいいね」
澪「そ、そうか?」
唯「うん!」コクリッ
澪「ま、まぁでも多分、梓のほうが詳しいよ」
唯「あー、そうかもねー」
澪「今度、梓と一緒に…」
唯「ん」ピッ
澪「…な、なんだ?」
唯「デート中にほかの女の子話しちゃだめだめだよ?」
澪「あ、…ごめん…」
唯「…あはは、冗談冗談。今のぐらいべつに平気だよー」ニコッ
澪(唯の人差し指がちょっと唇に当たった…)
澪「三軒も付き合ってもらって、なんか悪いな…」
唯「ううん! すごく楽しかったよー」
澪「唯は行く先々でレコードのジャケットで私を脅かしてばっかりだったからな…」ゲッソリ
唯「だって澪ちゃんが何回脅かしてもびっくりするんだもん。
おもしろくって…ぷふっ」
澪「笑うなっ!」
唯「き、きんぐくりむぞ…ぷふふっ」
澪「もーっ!」カアァッ
唯「はぁー…でも、ほんとにいろいろ勉強になったよー」
澪「そ、そうか。それならよかったよ」
唯「きんにくしょうじょたいって今度探してみるね!」
澪「名前が面白いからってだけの理由で…まぁいいか…」
唯「じゃあ……そろそろ帰るね」
澪「あ、…うん」
唯「今日は楽しかったよ。ありがとう、澪ちゃん」
澪「私も楽しかった。唯のいろんな新しいところが見れてよかったよ」
唯「…」パッ
澪「…手、汗かいちゃったかな」
唯「…ねえ、澪ちゃ…」
澪「あ、唯、あれ見て。夕焼けがすごく綺麗だぞ」
唯「…ほんとだー。写メで撮れるかな…」ピッ
澪「えいっ」ギューッ
唯「うあっ」ビクッ
澪「…こないだのお返し」
唯「後ろからとは卑怯なりよ?」
澪「油断した方が悪いんだ」パッ
唯「…」
澪「…」
唯「…次は負けないよ」
澪「別に勝負じゃないけどな」
唯「ふーん。じゃあ澪ちゃん、ちょっと目、閉じて?」
澪「え…」
唯「いいから、早く」
澪「う、うん…」パチ…
唯「…」
澪「…」
唯「…澪ちゃん」ポソッ
澪「っな、なに…?」
唯「目、開けて?」
澪「…?」スッ
唯「うわああああっ!!」バァーン
澪「うわああああっ?!」ビクゥーン
唯「あはははっ! きんぐくりむぞんの写メ撮っといてよかったあ…
ふふっ…ぷふっ、ぷぷぷ…あははははっ!」
澪「こ、う、うっ、…こらあーっ!」
唯「あははははっ!」キャッキャッ
最終更新:2010年09月14日 23:19