ゆいのいえ!
唯「たっだいまー!」
パタパタパタ
憂「おかえりお姉ちゃん! もうご飯出来て…」
唯「ん? どしたの憂?」
憂「お姉ちゃん、ヘアピンは…?」
唯「あれ? 洗面台のところに置いてなかった?」
憂「いや、そうじゃなくて…つけてかなかったの?」
唯「あ、そっか。家を出る直前に外したから憂は見てなかったんだね。
初めてかなーヘアピン外して出掛けたの」
憂(お姉ちゃんがほんとはすごく大人っぽいって知ってるのは、
私だけの秘密だと思ってたのに……)シュン
憂「それで、軽音部のみなさんと…?」
唯「ううん、澪ちゃんとだよ」
憂「えっ」
唯「おデートだよー!」
憂(なんだとおおおおおおおお
話が、話が違うっ!
中野梓ああああああ)
あずにゃんのいえ!
梓「今度はいつ唯先輩と遊べるかなぁー」ワクワク
憂「お姉ちゃん…」
唯「なぁに?」
憂「楽しかった…?」
唯「うん! すっごく!」パァア
ズキンッ
憂「そっか! よかったね!
さ、手洗いして来て! お腹へったでしょ?」
唯「はぁーい」パタパタ
憂「…デート…澪さんと、お姉ちゃんが…」
唯「それでね、澪ちゃんに大人っぽいってほめてもらったんだよー」
ズキンッ
憂「お姉ちゃんヘアピン外したらかっこいいもんね!」
唯「でも、午後はずっと澪ちゃんにリードしてもらったんだけど、
やっぱり子供っぽいのが唯だなぁって。失礼な!」
ズキンッ
憂「かわいいのもお姉ちゃんだよー」
唯「1日手つないだままっだったから汗かいて右手だけ痩せたかも…」
ズキンッ
憂「じゃあ澪さんは左手だけ痩せたかもしれないね!」
唯「ねー。前に食べきれなかったパフェ食べてもらった分、これでチャラにしてもらおっと」
ズキンッ
憂「左手だけじゃ澪さんが困るよー」
唯「じゃあ抱きついた時にまんべんなく痩せたかな?」
ズキンッズキンッズキンッ
憂「それならきっと大丈夫だね!」
ねるまえ!
憂「…お姉ちゃんだって、誰かを好きになったり、好きになってもらったりして当たり前だよね」
憂「それに、澪さんなら友達でも…恋人でも、きっとお姉ちゃんと楽しくやっていけるよね」
憂「私がいつまでもお姉ちゃんにべったりしてちゃ、お姉ちゃんも困っちゃうよね」
憂「私の大切なお姉ちゃんなんだから、お姉ちゃんが笑ってくれてるのが1番だよね」
憂「私と一緒が1番じゃなくても、お姉ちゃんが笑ってくれてるのが1番なんだよね」
憂「…」
コンコン
唯「…んー?」
憂「お姉ちゃん、入っていい?」
唯「うん、いーよー」
ガチャッ
憂「あのね…一緒に寝ていい?」
唯「おー、久しぶりだねー。
おいでー」ポフポフ
憂「…えへへ。ありがとう、お姉ちゃん」
唯「かわいい妹の頼みだからね!」
憂「…私、お姉ちゃんの妹に生まれてこれてよかった」
唯「大げさだねー。
でも、私も憂のお姉ちゃんでよかったよ」ナデナデ
憂「…うん」
唯「大好きだよ、憂」ギュッ
憂「私も、お姉ちゃん大好き…」ギュウ…
よくじつのほうかご!
梓「…」
律「…」
紬「ねぇ、あの2人どうしたのかしら…」
唯「なんか元気ないねー」
澪「梓はともかく、律までとは…」
唯「あーずにゃん、どしたの?」ギュッ
澪「!」ソワソワ
梓「…ただの夏バテです。
暑いから離れてください」
唯「う、うん」パッ
澪「…」ホッ
律「…」
澪「律も夏バテか?」
律「…まぁそんなとこ。
澪も外で遊びに行く時は気を付けろよ」
澪「う、うん」
律「…」
澪「…」
唯「気を付けないとねー、夏バテも熱中症も」
紬「そうねえ…心配だわ…」
唯「うちは憂が色々考えてご飯作ってくれてるから大丈夫だと思うけどね」
憂『…だから、私はお姉ちゃんを応援しようと思うの』
梓(憂…それでいいの?
私達は、唯先輩と一緒にいちゃいけないの?)
憂『私は…お姉ちゃんが笑ってくれてるのが、1番だから…』
梓(唯先輩が、私達に興味無くなってもいいの?)
憂『…』
梓(私は、嫌だよそんなの…
本当は憂だって唯先輩をひとりじめしたいんでしょ?
ずっと唯先輩と一緒にいたいんでしょ?)
憂『…』
梓(…憂のいくじなし)
憂『…』
梓(…)
…
律(あれ、澪じゃん。
今日は用事があるからって……唯?)
律(…こんな暑いのに、あいつら手、繋いでるのか)
律(唯のやつ、前髪下ろしたらかっこよくなるんだな)
律(…私が前髪下ろしても、変なだけなのに、唯はよく似合ってていいな)
律(やけに澪と馴染んで…)
律(…ずっと、最初から2人で一緒にいたみたいだな)
律(あ、あの喫茶店入るのか)
律(前から…澪と行こうと思ってたのに)
律(…手、繋いで、入ってった)
律(…)
……
唯「ねえ、澪ちゃん。今日は練習お休みにしない?」
澪「そうだな…無理しない方がいい」
紬「2人とも早く帰って休んだ方が…」
律「…わり、そうするわ。ごめんな、澪、唯、ムギ。
練習…したかっただろ?」
唯「ううん、全然いいよ。
それよりりっちゃんとあずにゃんが心配だよ」
澪「みんな元気にやらないと意味ないだろ」
律「…そっか。ありがと」
唯「あずにゃんも、早く帰って休んだ方がいいよ。
送ってくよ、私」
梓「…お願い、してもいいですか?」
唯「もちろんだよ」ニコッ
澪「…律、私も送ってくよ」
律「私は大丈夫だよ。後片付けだけ任せるから…よろしくな」
澪「…わかった。気を付けてな」
唯「ばいばい、りっちゃん」
紬「何かあったらすぐ連絡してね!」
律「…」ヒラヒラ
澪「大丈夫かな…律のやつ」
唯「後でメール送ってあげなよ」
澪「…あぁ、そうする」
唯「ん。じゃあ、あずにゃん、行こっか」
梓「はい…」
唯「片付け、お願いねー」
澪「気を付けてな。唯も、ちゃんと水分取るんだぞ」
唯「うん。じゃあ、また明日」
…バタン
唯「あずにゃん、駅まで歩ける?」
梓「…唯先輩がついて来てくれるなら、大丈夫です」
唯「そっか。無理しないでね? しんどかったらすぐに教えてね」
梓「…はい…」
澪「大丈夫かな…律も、梓も、唯も」ソワソワ
紬「大丈夫よ、きっと」
澪「早く良くなったらいいんだけどな…」
紬「そうね…みんな、元気で笑ってるのが1番ね」
ミーンミンミンミン…ジジジジ…
梓「…あの、唯先輩…」
唯「なぁに? もっとゆっくり歩いた方がいい? どこかで涼んでく?」
梓「いえ、その…」
『澪先輩とデートしたんですか?』『澪先輩のこと、どう思ってるんですか?』『澪先輩と付き合ってるんですか?』
『私のはデートじゃなかったんですか?』『私のこと、どう思ってるんですか?』『私じゃ、唯先輩とお付き合いできないんですか?』
梓「…手、繋いでもらっていいですか?」
唯「私は全然いいけど…暑くない?」
梓「へーきですから…」
唯「…じゃあ、はい」ギュッ
梓「ありがとう…ございます」
唯「もうちょっとだけ頑張ろうね?」
梓(…なんだ、私も、いくじなしだ…)
……
律「…はぁ、暑ぃ…」
律(やっぱちゃんとご飯食べないとダメだなー…)
律(三食きっちりと、ムギのお茶とお菓子…それからドラム)
律(みんなでわいわいやって…たまに澪と…遊びに行く)
律(りっちゃんの健康は、そのサイクルに則って成立してるんですよ、っと)
律(…)
律(ぜーんぶ崩れちゃったよ、ははは)
律「それにしても、暑っちぃなぁ…」
バタッ…
律「ぬぅ…こんなところでへばったら澪にも唯にもかっこがつかん…」ググッ…
律(っつうか地面熱っ、火傷しちまうぞ…)
律(なんとか、コンビニまで…)
律(こんなことなら素直に澪について来てもらえば良かったな…)ヨロヨロ…
律「これがりっちゃんの最後の意地なんですよーだ…」
……
澪「…」ソワソワ
澪「…」ソワソワソワソワ
紬「…ねぇ、やっぱりりっちゃんを追い掛けた方がいいんじゃないかしら」
澪「そう…かもしれないな」
紬「あとはもう私がやっておくから、澪ちゃんは行ってあげて」
澪「…わかった、ありがとうムギ!」
紬「どういたしましてー
でも、澪ちゃんもくれぐれも気を付けてね!」
澪「あぁ!」ダッ
『只今、XX駅に停車中の車両にて、体調不良を訴えたお客さまがおられましたため、ダイヤの運行を一時的に見合わせております。
お客さまには大変ご不便、ご迷惑をおかけしておりますが…』
澪(電車が止まってるのか?!
と言うか、律じゃあ…ないか、駅が逆方向だ。
時間的に考えて、多分律はもう向こうの駅に着いてるだろうし…あっ、電話!)
【…お掛けになった電話は現在】
澪(電源切ってるのか?! バカ律!)ダッ
……
~♪
~♪
紬「あら…」ピッ
唯『もしもし、ムギちゃん?』
紬「うん。どうしたの唯ちゃん?」
唯『いま、あずにゃんを地元の駅まで送って来て、学校の駅まで戻って来たんだけど…
あ、駅まであずにゃんのお母さんに迎えに来てもらったからあずにゃんは大丈夫だよ。
…それで、そこに澪ちゃんいる?』
紬「澪ちゃんはやっぱりりっちゃんを送って行く、って追い掛けて行ったわ。
20分ぐらい前かしら…」
唯『やっぱり? でも、今電車止まってるんだよ。
私が帰って来たすぐ後に、急病の人がいるとかで止まってるんだけど…
りっちゃんは多分帰れたと思うけど、澪ちゃんはここか、途中の駅で止まってるはずなんだよね』
紬「えっ、そうなの?」
唯『探したけど、駅のホームにはいなかったみたい。
電話もつながらないんだよね…気付いてないのかな』
紬「…心配ね…」
唯『まさかとは思うけど、…ひょっとしたら歩いて線路沿いに行ったのかもしれないんだよ。
こんなむちゃくちゃな暑さだと、澪ちゃんまでどこかで倒れちゃうかも…』
紬「大変だわ!
すぐに家から車を回して貰って、線路沿いを探してみる!」
唯『うん、お願い。
私は電車が動き出したら澪ちゃんとりっちゃんちの駅まで行って、
りっちゃんちまでの道で2人を探してみる。
多分もうすぐ…あ、あと5分で動くって』
紬「わかったわ」
唯『それから携帯、誰からでも連絡入ったらすぐ取れるようにしておいてね』
紬「はい!」
ピッ
紬「…唯ちゃん、頼りになるわ…」
ガタンゴトン、ガタンゴトン、……
唯「澪ちゃん…無茶しちゃダメだよ…」
ガタンゴトン、ガタンゴトン、……
最終更新:2010年09月14日 23:21