明日だ
明日、和ちゃんを捕まえよう
もう失敗は許されない
大丈夫だ
きっと上手くいく
唯「…………」
だが、問題がひとつある
それはムギちゃんだ
ムギちゃんが私側なのか、それと和ちゃん側なのか……
それだけはハッキリさせておかないといけない
明日家に来るかどうかは知らないが、もし来たらその時に確認しよう
それを踏まえて実行するかよく考えよう
唯「ふふ…明日が楽しみだね……」
純「ん……」
あ、純ちゃんが目を覚ましたみたい
純「う!? んんっ!??」
ふふ、驚いてる? 焦ってる?
そりゃそうだよね~
目が覚めたら手足は動かせないし、声も出せないんだもん
純「(な、なにコレ!? 私どうなったの!?)」じたばた
あはは、純ちゃんも可愛いなあ……
この子も私のモノにしようっと
純「んん!? (唯先輩!? コレなんなんですか!?)」
唯「うう…全ては悪の生徒会長、和ちゃんの仕業だよ……」
私は目に涙を溜めながら言った
勿論、演技だけど
純「(そう言えば…私も睡眠薬で…!)」
唯「純ちゃんまで捕まえるなんて…相変わらず非道だよ」
純「(憂と梓も会長に……?)」
唯「そうだよ、憂とあずにゃんもここにいるよ」
元々、憂たちのことを調べて純ちゃんは和ちゃんに接触したらしい
じゃあこう答えても何も問題はない
唯「でも大丈夫だよ、私が絶対に助けてあげるから」
純「(唯先輩……)」グスッ
唯「大丈夫……」
ふふ、ちょろいよ
まあ何にしても明日確認しないと……
放課後 桜ケ丘高校
和「ムギ、ちょっといい?」
紬「何かしら?」
和「今日は生徒会の仕事で唯の家に行けないから、代わりに行ってくれるかしら?」
紬「ええ了解よ」
和「頼んだわね それじゃ」
紬「はーい」
唯の家
唯「…………」
純「…………」
純ちゃんは眠っちゃったみたい
そのほうが好都合
唯「澪ちゃん起きてる?」
澪「…………んん」
やっぱ起きてたか……
私はあらかじめ切れやすくしておいた紐を解き、立ち上がった
澪「…………!!」
唯「縛られてるフリも疲れるね~」
一度伸びをして澪ちゃんの隣に行く
唯「今、話せるようにしてあげるね」
私は澪ちゃんの口からガムテープを外してあげた
澪「ぷはっ……」
唯「澪ちゃん大丈夫…なわけないか」
澪「それより…なんだよさっきの三文芝居」
唯「半分本当のことでしょ? 悪の生徒会長」
澪「はは…そうかもな……」
ガチャ
唯「!!」
玄関のドアが開く音がした
来たね……
次に階段を上がる音
唯「これは……和ちゃんじゃないね」
澪「分かるのか?」
唯「幼馴染だもん…澪ちゃんもりっちゃんの足音は分かるんでしょ?」
澪「まあ…な…」
しめた!
どうやら神様は私の味方らしい
澪「いいのか? 戻らなくて」
唯「大丈夫…見ててね」
澪「ムギを襲う気か?」
唯「そんなことはしないよ~」
まあ、いずれムギちゃんも捕まえるつもりなんだけどね……
ガチャ
紬「3人とも元気かしら?」
澪「ムギ……」
唯「待ってたよムギちゃん」
紬「うふふ…やっぱり唯ちゃん解いてたのね」
唯「えへへ……」
紬「ちょうどいいわ、ご飯作るの手伝ってくれる?」
唯「イエス・マム!!」
この反応……
予想通りだ!!
でもまだ確信には至ってない
台所
唯「ねえムギちゃん」
紬「何?」
唯「単刀直入に聞くよ?」
紬「いいわよ」
唯「ムギちゃんはどっちの味方?」
紬「…………」
唯「どっち?」
私の予想通りなら……
紬「私は唯ちゃん、和ちゃん…どっちの味方でもないわ」
唯「…………」
思い通りだ……
これは勝ったかもしれない
唯「そうなんだ~」
紬「ええそうよ、私は傍観者」
唯「じゃあ私が和ちゃんを捕まえるのに協力してほしいって言っても?」
紬「協力はできないわね」
唯「そっか……」
紬「でもちゃんとお世話はしてあげるから心配しないで」
唯「ぶー、私が負けるって思ってるね?」
紬「そんなことないわよ」
唯「まあいいや、私純ちゃんと澪ちゃんのところ行くから」
紬「じゃあ私はりっちゃんたちのところ行くわね」
唯「お願いね~」
唯の部屋
純「へ……!?」
唯「そうです、黒幕は私なのでした~」
純ちゃんにネタばらし
あ、その顔可愛い……
純「み、澪先輩…」
澪「ごめんな巻き込んで……でも、諦めよう」
唯「澪ちゃんは素直でよろしい」
純「やだ…やだやだやだあ!!」
暴れてる暴れてる……
予想通りの反応
私は棚からスタンガンを取り出した
澪「おい唯!!」
澪ちゃんの静止も聞かずに私は純ちゃんにスタンガンを放った
純「うあっ!?」
唯「おやすみ~」
澪「スタンガンって…そんなものまで持ってたのか」
唯「今は簡単に手に入るからね~」
澪「まさか…私も気絶させるのか……?」
澪ちゃんが怯えた顔でこちらを見た
うへへ…かわええ…おっとよだれが……
唯「しないよ~、澪ちゃんは痛いの嫌だもんね」
澪「あ、ありがとう……」
唯「明日、和ちゃんを捕まえる」
澪「和を?」
唯「余計なことは言わないように」
澪「あ、ああ……」
翌日の夕方
紬「ふんふふ~ん♪」
和「随分と楽しそうねムギ」
紬「ええ、これから面白いことが待ってるから」
和「面白いことねえ……」
やがて二人は唯の家に到着した
唯の家
唯「準備は整った…あとは待つだけ」
私は階段の上で和ちゃんを待ち構える
ガチャ
来た……
和「唯……」
唯「来たね…和ちゃん……」
階段を挟んで対面する私たち
和「唯にはまだ分からないようね…教えてあげるわ、唯は私のモノだって」
唯「私は誰のモノでもないよ、でもみんなは私のモノだけどね」
和「手のかかる子ね……」
和ちゃんが階段を上がってくる
唯「ふふ……」
やがて私の目の前に和ちゃんが来た
和「さあ、私のモノになってもらうわよ」
唯「誰が!」タタッ
私は廊下の奥へと走った
和「逃がさないわよ」
和ちゃんは早足で歩きながら追いかけてくる
この家の構造なら知り尽くしてるよね和ちゃんは
この廊下の先には窓がある
別にどこに繋がってるわけでもない
詰まるところ、私の前は行き止まり
和「袋小路ね…」
唯「しまった…追い詰められた……」
私は苦笑いする
無論、演技だけどね
和「昔から唯はどこか抜けてたわね」
唯「えへへ…そうだね」
和「私はそんな唯だから好き」
唯「私も和ちゃんのこと大好きだよ」
でもそれは一番じゃないんだよ
私の一番がもうすぐ……
私のために動いてくれる
和「来なさい」
唯「……ふ…ふふ……」
和「何笑ってるのよ?」
唯「あは…あはははははは!!」
この時の私はいったいどんな顔をしていただろう
たぶん、悪魔みたいな顔をしていたに違いない
和「唯……?」
唯「和ちゃん……チェックメイト~!」
和「え…」
和ちゃんが後ろを振り返る
でも、もう遅すぎるよ
和ちゃんを後ろからある人物が羽交い絞めにした
和「う、憂!?」
憂「ごめん…和ちゃん……」
和「憂……何の真似?」
和ちゃんが憂に押さえられたまま言った
唯「憂は和ちゃんより私のほうが好きってだけの話だよ」
和「唯……!!」
憂「お、お姉ちゃん……やっぱりやめようよ……こんなの」
唯「え、何? 憂は私に口答えするの?」
憂「そ、そんなつもりじゃ……」
唯「だったら私のためにしっかり働いて!」
憂「うう……和ちゃんごめん……ごめんなさい」
和「憂……」
バチッ!!
和「……っ!?」
スタンガンの音が響いたと思ったら、憂が気を失った和ちゃんを支えていた
憂「ごめんなさい……和ちゃん……」
唯「よしよし……いい子だね憂は……」
憂「お姉ちゃん……」
唯「そう、私は憂のお姉ちゃん 妹はお姉ちゃんの言うことは何でも聞かないとね~」
憂「…………」
唯「じゃあ憂も眠ろうか?」
憂「…………え?」
唯「え? じゃないよ」
憂「え……え……?」
唯「憂は知ってる? クロロホルムって吸いすぎると癌になるんだって~」
私はポケットからハンカチを取り出した
憂「いや……いやだよ……」
憂は後ろに向かって後ずさりした
唯「そういえばコレは返してもらうね」
憂「あっ……」
私は憂からスタンガンを奪い取った
唯「あはは……」
唯「言うこと聞かないと癌になっちゃうぞ~」
憂「お姉ちゃ……むっ!?」
憂の口と鼻を薬品付きのハンカチでしっかり覆う
唯「はい1回深呼吸して~」
憂「う……むー……んー……」
唯「よしよしいい子いい子……」
憂「ぐ……」
憂の瞳はすでに焦点が合わずトロンとしている
唯「大丈夫だよ……もう1回深呼吸すれば堕ちれるよ」
憂「う……うう……」
唯「そろそろかな……」
ハンカチ越しに口をモゴモゴさせていた憂だったけど、とうとう気絶したらしい
可愛らしい寝顔で寝息をスースーと立てていた
唯「かわいいなあ……私の憂は」
最終更新:2010年09月15日 03:35