梓「……」
憂「律さんすごいね。1/1枚で轢かれるなんて」
梓「ああ、うん……」
憂「あれだけで100枚くらいやってほしいね!」ワクワク
梓「何が嬉しいのかわかんないよ、憂」
梓「てっきり報われない澪先輩のための救済かと思ってたのに……」
梓「なんか恨みでもあるの? 純……」
梓「……純?」ガタッ
憂「……帰った?」
梓「まさかね。廊下に出てみようよ」スタスタ
梓「……」キョロキョロ
梓「嘘だろあの野郎」ギリッ
憂「梓ちゃん、書き置きがあるよ」ガサッ
憂「執筆に集中したいから先帰るよ。憂のリクエストは明日にでも」
憂「あと、棒引きは1部よけいに印刷しちゃったから、持って帰っちゃってもいいよ。グフ」
梓「グフじゃねーよ」
憂「持って帰ろう、梓ちゃん!」
梓「……いやだよ、後半の展開が個人的にきつい」
憂「私は気にしないけどなあ。お姉ちゃんすごくかわいかったし……」ポヤー
梓「こういうのは誰かが死ぬより嫌だよ」
梓「さてと、じゃあ純もいないわけだし、帰ろっか」
憂「うん」ゴソゴソ
梓「結局持って帰るんだ」
憂「たまには具体的な妄想でしたいじゃん」
梓「用途を言わないで」
憂「言ってないよ?」
梓「え? ごめん」
――――
梓「じゃ、私こっちだから」
憂「じゃーね、梓ちゃん」
憂「……?」
憂(なんか、家の中が騒がしいな)
憂(澪さんたちが来てるのかな?)
憂「ただいまー」ガチャ
ドタドタ
唯「おっかえりー! 憂ー!」ピューン
憂「たっだいまー! 遅くなってごめんね。すぐご飯作るよ」ガチャ
唯「おかえり憂ー、アイス買ってきたー?」
唯「あ、おかえり憂。……ねぇ、そろそろりっちゃんとのこと、なんとかしようよ」
憂「……」バタン
『オギャー! オギャー!』
唯「ああ、ごめん憂! 赤ちゃん泣いてるや。ご飯よろしく!」トトト
憂「……よし、もう一回」ガチャ
唯「憂! りっちゃんだって、考え変えたんだよ? あのときのりっちゃんじゃないんだから!」
唯「あれ……アイス、なし……?」パチクリ
憂「くそっ!」バタン
憂「落ち着け落ち着け……まずは事態を正しく受け止めること……うん、だいたい解ってきた……」
憂「どうやらここにいるのは純ちゃんが書いたお話の中のお姉ちゃんたち。きっと、完結した時点での」
唯「開けてよ! 憂! ちゃんと話しあおう?」ドンドン
憂「……!? 本物のお姉ちゃんはどこ!?」
ガチャ
唯「ふー、いい湯であった」ホカホカ
憂「お姉ちゃん! ……お姉ちゃんだよね?」
唯「う、うん。あ、おかえり憂、おそかっ
憂「ラーメン二郎って知ってる?」
唯「え? うん、なんかすごいラーメンを出すらしいね」
憂「お姉ちゃんは私が好きお姉ちゃんは私が好きお姉ちゃんは私が好き」
唯「な、なにやってるの、憂?」
憂「タイムは? 足跡は?」
唯「えーっと……7時くらいだと思うけど……足跡?」
憂「フタロイドって知ってる?」
唯「蓋? ごめん、わかんないや」
憂「キキーッ! ドン!」
唯「わあー!」
憂「お姉ちゃんだね!」
唯「あ、もしかしてうちの中に私がいっぱいいるから混乱してる?」
憂「それ知ってた上でのんびりお風呂入ってたの!?」
唯「なんか個性豊かでかわいいよー」
憂「お姉ちゃんがかわいいのは分かってるけど! かわいくてもおかしいの、この状況!」
唯「ま、ご飯にしようよ」ヘラヘラ
憂「あう……そうだね」
――――
台所
唯「憂、おねがい、話聞いて……」
憂「律さんのことならもう怒ってないよ。お姉ちゃんをよろしくお願いしますって言っておいて」トントン
唯「う……うい!」ジワッ
唯「ういー、あいすー!」ゴロゴロ
憂「ご飯食べてから! また味しなくなっちゃうよ?」ジャーッ
唯「ひいっ! それはカンベン!」ピタッ
唯「ういー、オムツどこー?」
憂「そこの戸棚に入ってるよー」コトコト
唯「おっ、あったあった。ありがと憂」スッ
唯「大変だね、憂」
憂「これ全部お姉ちゃんなんだね……」
唯「憂、ご飯が終わったら会って欲しい人がいるんだけど」
憂「え……それもお姉ちゃん?」
唯「うん……」
夕食後、唯の部屋
唯「……みんなは元気なのに、この人だけずっと目を覚まさないんだ」
憂「すごく痩せてるね……」
憂(きっと卒業恐怖症のときのお姉ちゃんだ)
憂(でもあの話のオチは確か……)
唯「なんとかできないかな、憂……」
憂(澪さんのケースを思い出すと……もうきっと)
憂(ううん! 諦めちゃだめだ!)
憂「……わかった。なんとかしてみるよ」
唯「憂……ありがとう」ニコ
憂(やっぱり本物のお姉ちゃんが一番かわいい!)
唯「じゃ私、赤ちゃんの面倒みてくるね」ガチャ
憂「……あれ?」
憂「……ニート」チョキチョキ
憂「……」ペタペタ
憂「……ことだま」チョキチョキ
憂「……」ペタペタ
憂「うーん……G・P」チョキチョキ
憂「お姉ちゃんはラヴで!」チョキチョキ
憂「……」ペタペタペタペタ
憂「よーし、できた! お姉ちゃんたちみんな集まってー!」
唯「憂に着せてほしいなぁ……」モジモジ
憂「はい、ことだまだね」キセキセ
唯「りっちゃんが電話に出なくて……」ウルウル
憂「はい、ふたなり」キセキセ
唯「ういー、勉強でわかんないとこあるんだけど」デヘヘ
憂「え? うん、わかった、じゃあ教えてあげるね」
憂「……あっ、ニートか……こりゃ失敗したかな」キセキセ
唯「ういー、プレゼントって?」
憂「はい、お姉ちゃんの部屋着」キセキセ
唯「おー! ラヴだって、かわいいー!」
憂「さてと……」
憂「私は悪いことしてない」
唯「……」キセキセ
憂「よしっ」
憂「おかゆ……ちょっと熱いな」フーフー
憂「……」カミカミ
憂(……私は悪いことしてない。ただお姉ちゃんの代わりに炭水化物をアミラーゼで分解してるだけ)カミカミ
憂(体起こして……口を開けさせて……)カミカミ
唯「……」
憂「ん……」トロトロ
唯「……」
憂「……」チラッ
唯「……」コクン コクン
憂(飲み込んでくれてる……!)
憂「よ、よーし! がんばろっ!」フーフー
――――
プルルルルッ ツッ
梓『なに、憂……』
憂「梓ちゃん、今すぐ私の家に来てくれない?」
梓『こんな時間に……?』
梓『お願い、明日行くから今日は勘弁して……』
憂「そんなこと言わずに、お願い梓ちゃん!」
梓『……すー』
憂「寝ちゃったか」プツッ
ピリリリリッ
憂「あれ? 律さんだ」
憂「こんな時間にどうしたんだろ……」ピッ
律『もしもし憂ちゃん? 起きてた?』
憂「はい。どうしたんですか、律さん?」
律『あ、えーと……今そこに唯はいる?』
憂「いえ、私ひとりですけど」
律『そっか。それじゃあ話なんだが……なんか唯の様子が変なんだよ』
憂「……」ギクッ
律『なんか急に電話してきて……まあそれはいいんだけど、愛してるとかいっぱい言ってきて……』
律『電話口にキスとかしてくるんだよ。怖くて切っちまって……』
律『なあ、憂ちゃんから見て唯の様子はどうだった?』
憂「えーっと……律さんに話していいものか……」
律『なにか知ってるのか? お願い、話してちょーだい憂ちゃん!』
憂「……律さん、たとえば澪さんが妄想の中で律さんのことめちゃくちゃにしてたらどう思います?」
律『な、なんの話だよ!? ってぇ!』ガン
憂「たとえ話ですよ。それでも澪さんに嫌悪感は抱きませんか?」
律『まあ、澪なら……』
憂「お姉ちゃんでしたら?」
律『う……なんていうか、びっくりするな』
憂「梓ちゃんでは?」
律『ギャップがあってすごくイイな』
憂「和さんは?」
律『う、うーん……ちょっとまずいかな』
憂「でしたらこの話はできません」
律『くっ』
憂「まあ、明日の学校でお姉ちゃんに話を聞けば、だいたいの状況はわかると思います」
律『そうだな、そうするよ。遅くに悪かったな、憂ちゃん』
憂「いえ、お役に立てなくてすいませんでした」
プツッ
憂「そういえば学校か……これもまずいかも」
憂「どうか他のお姉ちゃんたちが学校に行きたがりませんように……」
憂「……ありえないか」
憂「説得する手立てを考えないと……」
憂「私もそろそろ寝ないと……」ノビーッ
憂「あ、その前にお風呂か……」
憂「お姉ちゃん衆はもうみんな寝たのかな」ガチャ
唯「……ういー」ムニャムニャ
唯「う……ひっぐ……りっちゃん……」グスグス
唯「……」
憂「……あくまでそこが自分のベッドなんだね」
唯「いっぱい集まってきちゃって。唯ちゃんたち見てるとなんか眠くなるよ」カリカリ
憂「あ、ニートのお姉ちゃん。勉強中だったんだ」
唯「一浪しただけでニート!?」ハウッ
憂「ごめん、便宜上……」
憂「あれ? でも一人足りなくない?」
唯「あー、子連れの唯ちゃん?」
憂「そうそう」
唯「ミルクの時間だって言ってたよ。まだ下にいるんじゃないかな」
憂「そっか。ありがとう」
唯「いえいえー」スチャ カリカリ
憂「あっ、お姉ちゃん眼鏡かけてるの? かわいいね!」
唯「ほんと? 似合わないかなって思ってたから、嬉しいな」ニコ
憂「なんかドジッ子委員長って感じ!」
唯「……はは、そうでしたか……」カリカリ
憂「じゃあ私、下のお姉ちゃんの様子見てくるね」
憂「あんまり無理しすぎないで、早く寝てね? お姉ちゃん」
唯「うん。おやすみ憂」
居間
憂「おねえちゃーん? そろそろ寝たら……」ヒョコ
唯「あっ」ピクン
憂「……」
唯「ち、ちがうよ? 母性本能がはたらいただけだからね?」
憂「……」
唯「ちっちゃいころの憂を思い出しちゃって……」
唯「ほら、憂も子供の時こうしてあげると泣きやんだからさ」
唯「へへ……おかげで小学校入るまでお姉ちゃんのおっぱい欲しがって困っちゃったけどね」デヘヘ
憂「そ、そうだったっけ」
憂(そんな設定はなかったと思うけど……嘘を言ってる目じゃないよね)
憂「そういうことなら、ちょっとくらい……やってあげてもいいと思うよ」
唯「えへへ、そうかな……でも、やっぱあの頃とは違うね」
唯「ちょっとだけ……気持ちよくなっちゃうから。やめとくよ」
憂「お姉ちゃん……」ムラッ
憂「も、もう! 変なこと言わないでよ!」
唯「ご、ごめんなさい……」
唯「……っ」プルプル
憂「お姉ちゃん? どうしたの、大丈夫!?」
唯「な、なんでも、ないから……」ガタガタ
憂「なんでもないわけない……ベッドは……空いてないんだ、じゃあ私の部屋に……」
唯「う、うい……その前に、赤ちゃんをベッドに……」カタカタ
憂「うん……わかった」スッ
最終更新:2010年09月15日 23:44