梓「うふふ」ポワー

憂「いろんな意味で酔いしれる作品だったね」

梓「この唯先輩だったら欲しい……」

憂「ざんねん。お姉ちゃんは全て私のものです」

梓「くっ……」

 ガラッ

律「おい梓、おせーぞ?」

梓「あっ、律。迎えに来てくれたの?」

律「えっ」

憂「ごめんなさい。一過性の厨二病ですからほっといてあげてください」

梓「面白い事言うね。まあ、待たせちゃってごめんね? 私も今から行くから」スタスタ

律「あ、ああ……ねえ憂ちゃん、どうしたのあの子」

憂「変な電波を受信しただけですよ。えっと、これです」バサッ

律「なるほど、純ちゃんのお話か」ペラッ

律「なにっ!? 憂ちゃんマジかよ……」ペラッ

憂「あの、律さん?」

律「ん? あー」ペラッ

憂「なんでしたら、私の持ってるこれも貸しましょうか?」

憂「腹立たしいけどお姉ちゃんが律さんにぞっこんになる作品です」

律「腹立たしいんだ」

憂「でも、あのお姉ちゃんとの付き合い方を模索するなら、読んでおいた方がいいと思います」

律「む、確かに……。唯の言ってることが時々わからないからな……これを読めばいいのか」

律「って、何これ。すごいボロボロだけど……」

憂「あ、たぶんお姉ちゃんが使いすぎちゃったんだと思います」

律(何に……?)

憂「あ、さいだって言っておきますけど、律さんにおちんぽ生えるんで気を付けてくださいね」

律「ブフゥッ!?」

憂「大丈夫です、サイズは普通ですから」

律「そ、そうか……良かった。何もよかあないけど……」

 ガラッ

梓「律、何してるの? 早くおいでよ」

律「おう……じゃあ憂ちゃん、これとこれ借りてくよ」

憂「私もまだしてなくて、疼いてしょうがないんで明日には返して下さいね?」

律「……努力する」

 バタン

憂「さてと、私も帰らないと」



 平沢家

唯「ああ、おかえり憂」

憂「」ポワー

唯「あれ、ギターはどうしたの?」

憂「こ、こんなに背高かったんだ……かっこよすぎり」

唯「?」

 かくかくしかじか。

唯「へぇー、私が物語の中の存在?」

憂「はい……この世界にいる平沢憂はギターはやってませんし、母親を殺したりしていません」

憂(単純に邪魔するものの一切ない唯憂イチャラブが読みたかったのに、どうしてあんなことになってたんだろ)

唯「それじゃあ、この家にひしめいてる子供の頃の私みたいなのも同じような存在なの?」

憂「はい……いちおう、全員唯さんより年上ですが……私も同い年ですし」

唯「えっ」

憂「まあ、その……きびしいご環境で育たれたわけですから、うんと大人びているんであって」

唯「いやあ……環境次第でこんなにも変わるのね」

唯「アイスー」ゴロゴロ

唯「勉強ー」カリカリ

唯「あかんぼー」キャッキャッ

唯「あのゴロゴロしてる私がオリジナル?」

憂「そうですね。もともと居たお姉ちゃんです。オリジナルっていうんですか?」

唯「そんなのは知らないけど……」

憂「でも、どうして分かったんですか?」

唯「うーん。あの子がいちばん、子供の頃の私に近い気がしたから、かな」

憂「確かに。いちばん自由ですからね」

唯「あの勉強してる子、かわいいわね」

憂「いちばん年上ですよ」

唯「えっ」

憂(メガネ好きなのかな?)

憂「よしっ……」スック

 ヒョイ

唯「あっ、ういー何するのー」

憂「ごめんね、ちょっと貸して」スチャ

憂「唯さん、どうかな?」クルリン

唯「xは24、yは14、zは3分の25ね」

唯「すっ、すごい! たった10秒で……」

唯「ん? 憂、どうしたの?」

憂「……なんでもないです」コトリ

唯「むー」ゴロゴロ



 憂の部屋

憂(もー何してるんだろ私……)

憂(こんなことで舞い上がって! 梓ちゃんじゃないんだから!)パシン

憂(お姉ちゃんという人がありながら、唯さんを誘惑するだなんて!)

憂「よしっ、ご飯作るぞ!」

唯「憂、ご飯作ったよ」ガチャ

憂「……い、いただきます」

唯「どうしたの? なんか落ち込んでるわね」

憂「なんでもないんです、なんでも」

唯「……」パタン

唯「なんでもないわけ、ないわね?」

憂(だめだこの人。出来すぎる)

憂「えーっと……」

憂「その、些細なことなんですけど。この家のことは、私の仕事なんで……任せてもらえないでしょうか」

唯「……」フー

憂「唯さん?」

唯「ごめんなさい。余計な事をしたみたい……」

憂「いえ、いいんですよ! 私がぼーっとしてたからいけないんです!」アタフタ

唯「……やっぱり、あなたはあの憂とは違うのね」

憂「う……それは、そうなんですが……」

憂(……そんな風に言われると、ちょっと苦しい……)

唯「明日からは、家事は任せるわ。……とにかく、もう降りないとお姉ちゃんたちにみんな食べられちゃうわよ?」

憂「あ、はい……」

憂(……そしたらやっぱり、あの人たちも、私のお姉ちゃんじゃないってことになるのかなぁ)

唯「はい、唯ちゃんあーん」

唯「あーん」

唯「……どうしてあの子たちの精神は崩壊しないんだろう」

憂「まあ、お姉ちゃんですから」

唯「なんかその一言だけで納得できるようになってきた」

憂「唯さんもお姉ちゃんになってきたってことですよ」

唯「ぞっとしない」

憂「私はお姉ちゃんみたいにかわいくなりたいですけど!」プンプン

唯「あら、そんなにかわいいのに? 方向音痴な努力家ね」

憂「私はいいです。でもお姉ちゃんを貶したら刺しますよ」

唯「刺っ……」


憂「?」

唯「ごめんなさい言いすぎました」プルプル

憂「ふふ、やっぱりお姉ちゃんに似てますね?」

唯「はい……そっくりです」プルプル

憂(面白っ)

唯「ニートのお姉ちゃんかわい~!」ダキッ

唯「ニートっていうなー!」ムキーッ

唯「……いや、やっぱりそんなことはないわ」

憂(くっ、自動修復された……)

 サアアア……

唯「打たせ湯きもちいー」ホワァ

 カララ

唯「あ、失礼するよー」

唯「え? ああ、うん……」

唯「唯ちゃんスタイルいいねぇー」ザブ

唯「え、私? そんなことないと思うけど」

唯「背が高いからカッコよく見えるよ。私もそんな風になりたかったなー」

唯「こんな体に生まれたかった?」

唯「うん。もっとカッコいいお姉ちゃんになれたら、憂だって……」

 グイッ

唯「っ!!」シャアアッ

唯「わぶぶぶ、なにするの唯ちゃん!」

 キュッ

唯「……いいこと教えてあげるよ」ザブ

唯「唯ちゃん……?」

唯「指貸して。ほら」ギュ

唯「わ、なに……」

唯「……」グイッ

唯「ちょ、ちょちょっ……そ、そんなところ……」カアッ

唯「ゆゆ、唯ちゃん、私の指が、はいって……!?」

唯「……わかる?」

唯「なに、このトゲトゲした感じ……」

唯「わたし、子供のころ……剃刀でここを切っちゃって、手術してるんだ」

唯「どう、この体? こんな体になりたい?」

唯「どうっていわれても……」

唯「私もおんなじだから、別にいやじゃないよ」

唯「それよりもその背丈が欲しい!」ムフン

唯「……お、おなじ……?」

唯「そうだよ。さ、さわってみます……?」モジモジ

唯「うん……ちょっと、確かめさせて」

 サワッ

唯「ちょっ、触り方えっちぃ……」

唯「ごめんなさい……」ツプ

唯「……あっ」チク

唯「……へへ。一緒でしょ?」

唯「そうだね……」スッ

唯「ごめん、同じなのに、あんなふうに言って」シュン

唯「ううん。つらいのはしょうがないよ」

唯「……あなたは、なんで」

唯「ん?」

唯「あなたはなんで平気なの? ……私たち女の子なのに、こんな風になってて」

唯「うーん……」ムー

唯「わからん……」プシュウ

唯「わからない?」

唯「考えたことないんだ。自分の体のいやなところなんて、挙げたらきりないじゃん」

唯「背だってもっと高くなりたいし、美人になりたいし」

唯「おっぱいだってもっと大きいほうがいいし、髪だって澪ちゃんみたいなつやつやがいい」

唯「目だって鼻だって唇だって、手だって脚だって。もっときれいなのがいい」

唯「けどさー。それってどうしようもないことだもん。そんな手に負えないことで悩んじゃうくらいだったら、今の私がいい」

唯「唯ちゃんは、自分じゃいや?」

唯「私、か……」

唯「そ、自分自身」チャプ

唯「……どうだろう。そういうふうにすっぱり諦められたらいいんだけど」

唯「私の、この体は嫌……」

唯「そっか。そうだよね」

唯「……唯みたいになれたらいいのに」

唯「ぶー。ちっちゃくてかわいいーとか言っちゃうタチですか!」バシャ

唯「ふふ。そういうとこ、見習いたいな」



 憂の部屋

 ピリリリリッ

憂「あれっ、梓ちゃんからだ」ピッ

憂「もしもし?」

梓『ああ、憂? 遅くに悪いね』

憂(まだ続けてる……)

憂「どうしたの?」

梓『昨日、家に来てほしいって言ってたから』

梓『まあ、ちょっと忘れてたけど……今から行っていいかな』

梓『遅い時間だけど、どうせ明日は休みだしさ』

憂「ほんと? ありがとう、じゃあ待ってるね」

梓『うん、すぐ行く』プツッ

憂「さてと、それじゃあその前に……ご飯の時間だね」スック



 唯の部屋

 ガチャ

唯「おお、憂」

唯「ほら、集中……」

唯「はいっ」カリカリ

憂「唯さんに勉強教えてもらってるんだ?」

唯「うん。すっごくはかどるよ」

憂「……そうなんだ」

唯「ふふ」

憂「……」ムッ

唯「それって、そこで寝てる唯ちゃんのご飯?」

憂「そうです。……このお姉ちゃんは、目を覚まさないので」

憂「私がご飯をあげなきゃいけませんから」カチャ

唯「へぇー……」

憂(こればっかりは、私にしかできないもん)ハク

憂「……」モグモグ

憂(何はりあってるんだろ、私)モグモグ

憂(あほくさ)ンベ

唯「ん……」コクコク

唯「……なんで、口移しなの?」

憂「どうしてか、こうしないと吐きだしちゃうんです」

唯「そう」

唯「栄養のバランスとかすごく心配なんだけど、大丈夫なの?」

憂「はっきりいって最悪ですよ」

唯「でしょうね」

憂「早くなんとかしないといけません。……そのための人物を呼んでいるんですが」

憂「正直言って、それで解決するとは……」

唯「難しい問題みたいだね」

憂「うん。……このままじゃ、お姉ちゃんが……」

 ピンポーン

憂「……とにかく、やるしかないけど」

 ガチャ

憂「いらっしゃい、梓ちゃん」

梓「こんばんは。それで、私を家に呼んだのはなんで?」

憂「それ、もうやめてくれないかな」

梓「え? わ、わかった……」

憂「それじゃついて来て。見ればたぶん分かると思うから」

梓「うん。おじゃまします」

 トン トン トン


 廊下

梓「えっと……」

梓「こ、こんばんは。初めまして」

唯「梓。武道館ライブで会ったきりね」

梓「あ、えっと、そうなんですけど」ポワポワ

唯「なんてね。事情は聞いてるわ。からかってごめんなさい」

梓「いえ、そんな」

憂「梓ちゃん? そっちじゃなくて、こっち」

梓「あっ、うん。……失礼します」ペコ

 ガチャ

唯「あれっ、あずにゃん!」

憂「ごめんお姉ちゃん、ちょっとだけ外出てて」ポイッ

唯「あーれー」

 バタン


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最終更新:2010年09月15日 23:58