先生「熱も少しあるわね。今日は一旦帰って、受診しに行った方がいいわ」
憂「はい」
先生「流行ってるのよね~。吐き気を伴う熱風邪が」
憂「そ、そうなんだぁ」
先生「うん。お大事にね」
憂「失礼しました」ペコ
ほんとはうそ。
少し心が痛いけどたまにはこれくらい嘘ついても許してくれるよね。
神様ありがとう。37.5℃。
全然体調は悪くないのに、熱があったからおうちに帰れそう。
純「次の時間テストだから!?憂ずるい~」
憂「そ、そんなじゃないよ」
梓「純じゃ無いんだから……憂、お大事にね」
憂「うん、ありがとぉ」
早く帰らなきゃ。お姉ちゃんが心配。
授業中も先生の声は全く頭に入らなかった。
お姉ちゃんが心配で心配で、授業どころじゃ無かった。
こんなことになるなら私も学校休んじゃえばよかった、なんて。
お姉ちゃんの様子がおかしかったのは昨日の夜からだった。
憂『お姉ちゃん?』
唯『ああ…ごめんごめん』
お姉ちゃんは私の作ったお夕飯に箸をつけず、ぼーっと眺めていた。
憂『大丈夫?』
唯『大丈夫だよ!!今日も憂のご飯おいしいね~』
お姉ちゃんは笑顔で私の作った料理を食べてくれる。
そんなお姉ちゃんを見るのが私は大好きで幸せで、
ついつい作りすぎちゃうこともある。
唯『う~…食った食ったぁ』
憂『お姉ちゃ~ん』
唯『えへへ~』
お姉ちゃんは満腹のそぶりを見せても食後のアイスは欠かさない。別腹だ。
お姉ちゃんと一緒に、のんびりアイスを食べる食後の時間も、私は大好き。
唯『ふぇ~……お部屋に戻ろ』
憂『お姉ちゃん、アイスあるよ?』
唯『ん~。今日はいいやぁ』
だけど昨日の夜は違った。お姉ちゃんは自分の部屋に戻っていった。
その時のお姉ちゃんの背中はなんだか元気が無さそうに見えた。
そして今日の朝。
憂『お姉ちゃーん、そろそろ起きないと』
唯『はぁ……はぁ……』
憂『お姉ちゃん!?』
私がお姉ちゃんを起こしに行くと、お姉ちゃんは汗をかいて
とても苦しそうな表情をして横になっていた。
唯『はぁ……』
憂『大丈夫…?』
唯『……へへ、だいじょー…ヘックシ!』
憂『お姉ちゃん……』
憂『風邪、かなぁ』
唯『う~ん……あっ』
憂『?』
唯『ごめん憂、吐きそう……』
憂『じゃあここに』
唯『うん…おっ……っ……』
憂『お姉ちゃん…』
苦しそうに嘔吐するお姉ちゃんを見るのは辛かった。
唯『大丈夫だよぉ……っ……ごほっ…』
憂『全部吐いちゃえば楽になるから……』
私は苦しそうなお姉ちゃんの背中を一生懸命さすった。
私の料理のせいでお姉ちゃんが苦しんでいるのだとしたら、
全部吐きだして早く楽になって欲しかった。
唯『ふ~……大分楽になったかも』
憂『横になっててね』
唯『ありがと、憂』
憂『今日は学校お休みしないと』
唯『憂は行っていいよ、私は大丈夫だから』
憂『うん……』
唯『大丈夫だよぉ、行っておいで、ごほっ』
憂『……やっぱり私』
唯『だめ』
憂『えっ?』
唯『私のことは私が分かるから。大丈夫だから』
お姉ちゃんは優しいから私を気遣って学校に行けって言う。
お姉ちゃんは心配だけど、お姉ちゃんがそう言うので、
私は学校に行く事にした。
唯『憂~大丈夫~?』
憂『?』
唯『時間だよ。遅刻しない?』
憂『走っていけば間に合うよ』
唯『そんなに気を遣わなくてもいいのに~』
お父さんは海外へ出張に行ってて、お母さんはその付き添い。
だから今はお姉ちゃんと2人で暮らしてる。
何かあったら隣のおばあちゃんも来てくれるし、そんなに心配は無い。
寂しくなるとは思ってたけど、お姉ちゃんのお陰でへっちゃらだし、
むしろお姉ちゃんと2人でいれる日がずっと続けばいいなあ、
なんて思うこともある。
だからお姉ちゃんが風邪をひいたりすると余計に心配になってしまう。
~~~~~~~~~
そんなわけで、結局私は学校を早退して帰ってきてしまいました。
憂「ただいま~」
お姉ちゃん、寝てるのかな?
階段を上がって、真っ先にお姉ちゃんのお部屋に入ります。
憂「お姉ちゃ~ん…」
唯「……zz…」
お姉ちゃんは汗をかきながら、すやすやと寝ています。
お姉ちゃんの寝顔かわいいなぁ…
なんとも幸せな気分……だけどお姉ちゃんは苦しいんだろうなぁ…
憂「お姉ちゃん…」ぺろ
唯「…ん……」
お姉ちゃんの汗、少ししょっぱい。
…みんながテスト受けてる時間に、私なにしてんだろ。
憂「汗ふくよ~」
唯「ん~……zz…」
お姉ちゃん、寝てるけど返事はしてくれる。
お姉ちゃんの腕、足。私より細くて、華奢。慎重に拭いていく。
お姉ちゃん結構汗かいてる。明日にはよくなるかなぁ。
憂「お姉ちゃん、着替える?」
唯「…zzz……」
起こすのもなんだか悪いかな。
11時30分。もうすぐご飯の時間。
お腹すいたらお姉ちゃん起きてくれるよね。
お粥作ってこよう。
私が前に風邪ひいたとき、お姉ちゃんは私のためにお粥を作ってくれた。
目玉焼きが乗っかっててお姉ちゃんらしい独創的なお粥だった。
でも、とってもおいしかった。
だから今日は私がお姉ちゃんのために、おいしいお粥を作る!
唯「う~い~おかえり~」
憂「お姉ちゃん!?」
唯「えへへ、起きちゃった」
憂「大丈夫?辛くない?」
唯「ん~、ちょっとだるいかも」
憂「いまお粥作って持っていくから、お部屋に戻ってて」
唯「ほーい」
お姉ちゃん、ふらふらしてる。
やっぱりまだ治ってないんだね…
憂「できたよ~お姉ちゃん」
唯「待ってましたっ!」
憂「お腹すいたよねー」
ぐ~
唯「憂もね~」
憂「えへへ…///」
ずっとお姉ちゃんの部屋にいたから、朝ご飯結局食べなかったんだ。
お姉ちゃんにお粥を食べさせてあげよう。
憂「お姉ちゃん、あ~ん」
唯「自分で食べれるよう」
憂「そ、そうだよね…」
唯「でもいいや、あ~ん」
憂「ふふ、はい」
唯「もぐもぐ…」
憂「どうかなぁ?」
唯「ん~…でりしゃす!」
憂「よかった~。どんどん食べてね、無理しない程度に」
唯「うん!」
唯「ねえねえ、憂」
憂「ん?」
唯「着替えてきていいよ。私食べてるから」
憂「あっ…」
そういえば帰ってきて制服のままだったんだ。
憂「ごめんね、お姉ちゃん、着替えてくる」
唯「うぃ~」
唯「おかゆうま」
憂「おまたせ~」
唯「はい」
憂「えっ?」
唯「あ~ん」
憂「ふふ♪お姉ちゃんったらぁ」
唯「憂に食べさせてもらう方がおいしいもん」
憂「ありがと♪……はい、あ~ん」
唯「あ~ん……もぐもぐ」
唯「うま」
憂「良かったぁ」
唯「憂はいいお母さんになれるね~」
憂「えっ…」
唯「優しいし~お料理上手だし~」
憂「…///お姉ちゃんもね」
唯「そう?あ~ん」
憂「あっ、はい」
唯「ん~…おいしいねぇ」
憂「もういいよぉ、お姉ちゃん」
唯「いやいや、おいしいものは何度でもおいしいって」
唯「もういいや~」
憂「そう?」
唯「うん。ごちそうさま」
憂「は~い」
唯「憂、そこの漫画とって~」
憂「えっと……これでいい?」
唯「いいよ~。ありがと」
憂「でもお姉ちゃん、寝てた方がいいよ」
唯「は~い」
唯「あっ」
唯「憂食べてないじゃん。私が食べさせてあげよっか!?」
憂「えっと……私のは別に用意してあるから大丈夫。お姉ちゃんは横になってて」
唯「ちぇぇ」
憂「ごめんね……でも、お姉ちゃんに早く治って欲しいから…」
唯「うんうん」
憂「…じゃあすぐに戻るね」
私は朝作ったお弁当食べないとね。
お姉ちゃんの気持ちだけ受け取ることにしました。
憂「いただきまーす」
唯「~♪」
お姉ちゃんの鼻歌聞きながら、
マンガ読むお姉ちゃんを見ながらお弁当。
お姉ちゃんに見惚れちゃって箸がなかなか進まない…
唯「なんだかおいしそうな匂いが」
憂「朝作ったんだぁ。お姉ちゃんの分もあるんだけど…」
唯「食べる!」
憂「いや、私が食べるから大丈夫だよ」
唯「私が食べたい!」
大丈夫かなぁ…
唯「だめ!?」
憂「う、うん……いいけど、無理しないでね」
唯「もちろん!!……いやぁ今日のもおいしそうだねぇ」
憂「本当に無理しなくていいからね」
唯「大丈夫だよぉ!これ見たらまたお腹すいてきちゃった」
憂「それならいいんだけど…」
唯「折角憂が作ってくれたんだしね」
憂「そんな」
唯「平気平気!」
お姉ちゃんが嘘つくことは滅多に無いから、本当に平気なんだろうけど…
お粥もあんなにたくさん食べさせてあげたから、ちょっと心配。
もう気持ち悪くならなければいいんだけど。
唯「おいしいね~!」
憂「ありがとう♪お姉ちゃん」
それにしてもお姉ちゃんと2人でお弁当を食べることになるとは…
唯「ねえねえ、お弁当作るのって大変でしょ」
憂「う~ん…それほど大変!ってわけでもないよ」
唯「またまた憂は~。毎朝早く起きてお弁当作るのは大変だよ、絶対」
お姉ちゃん、意外によく見てるんだよね。
お姉ちゃんの言う通り、毎朝早く起きるのはちょっと辛い。
でももうだいぶ慣れたけどね。
唯「あ~。おいしかった!」
憂「全部食べちゃったね……」
唯「当たり前だよっ!」
憂「ほんとに大丈夫?」
唯「んも~、憂は心配性なんだからぁ」
憂「そうかなぁ」
唯「大丈夫!それにね、だいぶ気分も良くなってきたよ」
憂「ほんとに?…じゃあ熱測ってみよっか」
唯「ほーい」
お姉ちゃん、何だかすっごく元気だし、もう大丈夫かな。
ピピピ
憂「どう?」
唯「37.0!」
憂「わぁ!だいぶ下がったね!」
唯「憂のおかげだよぉ~ありがと~」
憂「お姉ちゃんがちゃんと寝てたからだよ♪」
唯「えへへ~、じゃあ学校に」
憂「えぇ!?」
唯「嘘だよ~!今日はゆっくりしてるね」
憂「う、うん。その方がいいよ~」
唯「お?そういや憂、なんでこんな早かったの?帰ってくるの」
ぎく。どうしよう…
憂「えっと…」
唯「憂、もしかして……」
憂「な、なぁに…?」
唯「今日学校終わるの早いんだっけ?」
憂「え、えーっと…」
唯「違うっけ」
なかなか良い案が浮かばないなぁ…
お姉ちゃん携帯持ってるから、変なのはバレちゃうし。
この際ほんとのこと言っちゃおうかな。
憂「ちょっと熱があって、早退してきちゃった」
唯「えぇ!?」
憂「あ、でも、全然大丈夫だよ、辛くないし」
唯「早退しちゃったの!?」
憂「う、うん……」
唯「うい~……」
憂「大丈夫だよ、お姉ちゃん」
お姉ちゃんが悲しそうな顔してる…
ちょっと失敗したかなぁ……
唯「どれどれ」ごっつんこ
お姉ちゃんがおでこをくっつけてきました。
お姉ちゃんの顔がすごく近くて……
唯「憂、なんか熱いよ、やっぱり」
憂「そ、そう?///」
唯「うん。それに顔も何か赤いし」
憂「き、気のせいじゃないかなぁ」
唯「いーや。憂、熱測ってみなよ」
なんだか今になってくらくらしてきたかも…
でもこれは多分熱じゃなくて、その、お姉ちゃんのせいで…
ピピピ
唯「何度~?」
38.5℃!?
嘘でしょお……
憂「ええっと、36.5℃、かな」
唯「あれ~…普通だねぇ。気のせいだったか」
憂「うん。じゃあお姉ちゃん、ゆっくりしててね」
唯「はーい!」
唯「…あ、憂、これの次の巻とって」
憂「は~い」
こんなに熱が上がってたとなんて…
確かになんとなく頭がくらくらする気がする。
でもこれくらい一晩寝ればなんとか……
憂「お姉ちゃん、何かあったら呼んでね」
唯「うんっ」
憂「私自分の部屋にいるから」
唯「おっけー」
お姉ちゃん、もう元気そうだし大丈夫だよね。
私もちょっと休憩しよう。
憂「ふ~…」
お姉ちゃん元気になって良かったぁ…
明日は2人で学校行けるかなぁ。
早く熱下げないと。
「うーいー!!」
憂「今行きまーす!」
お姉ちゃんが呼んでる。どうしたのかな?
憂「あぁっ!」
どーん!
唯「憂!?」
憂「あ…お姉ちゃん」
唯「大丈夫!?」
こけちゃった。
なんかおかしいなぁ……
憂「うん、大丈夫。どうしたのお姉ちゃん」
唯「ポカリ入れてきてほしいなぁ…」
憂「あ、もう無くなっちゃったんだね」
唯「うん」
あんなに汗かいてたから、喉乾くよね。お姉ちゃん。
入れ替えてこよう。
憂「ちょっと待っててね」
唯「うい?」
憂「?」
唯「なんかふらふらしてるよ?大丈夫?」
憂「えっ……そうかな」
唯「うん。やっぱり私自分で入れてくる。憂は休んでて」
憂「大丈夫だよお姉ちゃん。お姉ちゃんは横になってないと」
唯「ううん。ずっと寝てると、かえってだるくなっちゃうし」
憂「…そう?」
唯「うん!だから憂は戻ってて。呼び出しちゃってごめんね」
憂「あ…」
行っちゃった。
病人のお姉ちゃんに気を遣わせちゃったみたい…
憂「ふ~……」
なんだか意識し始めたら余計にだるくなってきちゃった…
お姉ちゃんに移しちゃいけないし、自分の部屋で寝ていよう。
うそついたバチなのかなぁ…
でもお姉ちゃんはよくなってきてるし、このくらいは平気。
憂「おやすみなさい…」
はやく治りますように…
最終更新:2010年09月16日 01:18