【2/13 19:05 木下しずか】

こんばんは。私の事こと、ご存知ですか?
二期の三話くらいで「鬼太郎子」とか言われてた、木下しずかです。
本名は静香っていうんですよ。
文化祭のときに、私がオカルト研からロゼッタストーンを借りてきたあの名シーン、けいおん好きな皆さんならもちろん覚えていますよね?

??「溶けた」

しずか「うん、じゃあ次はお砂糖をね」

今日、授業が終わって帰ろうとしたら、若王子さんに捕まってしまいました。
あんまり話したことないんだけどな。
チョコレートを作りたいから手伝って欲しい、ってお願いされたんです。

「若王子って誰だよ」って人は、モブキャラの勉強して出直してきて下さいね。
勉強不足のおまえらの為に、3年2組で一番小さくて可愛くて優しいと評判のこの私が特別に説明してあげると、若王子ってのは「若王子いちごさん」のことです。
テストに出ますよ。

しずか「ねぇ、若王子さん」

いちご「名前でいい」

しずか「じゃあ、いちご……ちゃん」

いちご「……」

しずか「いちごちゃんって、好きな人いるの?」

いちご「……うん」

しずか「え、そうなんだ!意外だね」

いちご「意外?」

しずか「いちごちゃんって、そういうのあんまり興味ないのかなぁって」

いちご「そんなことない」

しずか「ねぇねぇ、誰なの、好きな人?」

いちご「教えない」

しずか「あ、教えないってことは私の知ってる人なんだね?」

いちご「!」

照れてるのかな?
いちごちゃんって、意外と可愛いかもっ

しずか「図星だー。いちごちゃんって分かり易いんだね。」

いちご「……砂糖、溶けた」

しずか「ね。だーれ?」

いちご「次は?」

しずか「誰だか教えてくれないと、次に進んであげないっ」

いちご「ひみつ」

しずか「ずるいー。チョコ作り手伝ってあげたじゃん」

いちご「……」

しずか「チョコ、固まっちゃうよ?」

いちご「わかった。言う」

しずか「クラスの人?」

いちご「うん、あのね……」



【2/13 22:48 中野梓】

今月のおこづかいピンチ!
チョコケーキ以外に作る予定なんてなかったからなぁ。
でも唯先輩のためだもん!

そして、いま。試作1号が完成したのです。
あずにゃんトリュフチョコ1号。

梓「味見は、大事だよね」

パクッ

梓「うわっ……まずーい……」

どろどろとしたドブみたいな味。

作り直しかな。
この不味いチョコレートは……日ごろの感謝を込めて、律先輩にでもあげればいっか。



【2/13 23:05 平沢憂】

こんばんは、平沢憂です。
梓ちゃん純ちゃんのチョコケーキの後、自分のケーキを焼いたのでこんな時間になってしまいました。
チョコケーキ2ホール。パウンドケーキ2ホール。
これだけあれば、今週いっぱいくらいはお姉ちゃんのおやつになるなぁ。
あ、宿題やってないや。

唯「う~い~~」

憂「あ、お姉ちゃん。もう11時だよ」

唯「てへへ、試験終わって疲れてたから寝ちゃった」

憂「入試おわったんだもんね。お疲れさま」

寝癖ぼさぼさのお姉ちゃんは犬みたいです。
なでなでしたいなぁ。

唯「あれ?なんかいい匂いがする~」

憂「チョコケーキだよ、食べる?」

唯「そっか、明日はバレンタインだったんだ。軽音部のみんなとそんな話したっけ」

憂「うん。ケーキいっぱい作ったから、バレンタイン過ぎても食べれるよ」

唯「……」

憂「お姉ちゃん?」

唯「うい~。あのね、夜遅くて大変申し訳ないんだけど。お願いがあるの……」

もう、お姉ちゃんも可愛いなぁ。
宿題は、いっか。



【2/13 24:10 真鍋和】

和「やっと出来た……」

いやだわ私ったら、もうこんな時間。
クラスのみんなに知られたら、笑われちゃいそう。

新聞部なんかが喜んで食いつきそうなネタね。
生徒会長真鍋和・恋人に深夜のチョコ作りか!なんてね。

私も夢中になれるもの、あったのね。

明日。

渡せるかしら。



【2/13 25:35 鈴木純】

純「やっと……でき……た」

まさか一人でチョコレートを作るのがこんなに難しいとは。
型に流し込むだけのシンプルなのしか作ったことなかったからなぁ
でも愛情たっぷり。問題ない!

明日。絶対に告白する。
ダメでもともと。

がんばれ、純。



【2/13 28:15 秋山澪】

澪「まだ……できない」



【2/14 08:12 平沢憂】

こんにちは、平沢憂です。
昨日はいつもより夜更かし気味だったので、ちょっと眠いかも。
お姉ちゃんの為なら夜更かしなんてへっちゃら。

今日はバレンタインデー当日です!
梓ちゃん、お姉ちゃんへのチョコレート作ってきてくれたかなぁ。

純「おはよぉ~」
梓「おはよー」

憂「純ちゃん梓ちゃん、おはよー。あれ、純ちゃんなんか眠そうだね」

純「うん。昨日は遅くまで……ゲームしてたからさ!」

梓「え、ゲーム!?」

憂「そうなんだ。ちゃんと寝なきゃだめだよ」

純「いいよ、授業中に寝るから」

憂「梓ちゃん、ちゃんとチョコレート持ってきた?」

梓「うん。黄色い箱が律先輩にあげる不味いチョコ。赤い箱が唯先輩に……あっ!」

純「梓、けっきょく唯先輩に別のチョコ渡すんだ」

憂「ふふ。頑張ってね。応援してる」

可愛いなぁ。もう。



【2/14 08:10 琴吹紬】

唯「おはよーごぜぇます!」

紬「あ、唯ちゃんおはよ~」テカテカ

唯「あれぇ、ムギちゃんなんかいつもよりテカテカしてるねぇ」

紬「そうかしらぁ」テカテカテカテカテカテカテカテカテカテカテカテカ

昨日は平沢家・秋山家・田井中家・中野家・真鍋家・鈴木家にセットしたカメラを10個のモニターを使って華麗にスイッチングしながらチェックしてたから、ちょっと眠いわ。
でも、眠気なんか吹き飛ぶくらいワクワクテカテカ。
なんてったって、今日は最高のおかずDVDが出来るんだから!

唯「澪ちゃん、どうしたの!すっごいクマできてるよ!」

澪「きのう、おそくまで、チョコ……ちょこっと、ベースの練習をしちゃってさ!」

唯「そっかぁ。入試終わったもんね。でもちゃんと寝ないと健康に悪いよー」

澪ちゃんは結局朝の5時半までチョコを作っていたわね。
りっちゃんへの愛……美しいわ!!

律「おーい、ムギ。鼻血でてるぞ。朝からチョコレートでも食べ過ぎたか?」



【2/14 12:55 中野梓】

卒業、か。

純「ほら、梓」

先輩たちが卒業しちゃったら。

純「あの。澪先輩、これ受け取ってください」

澪「え。ど、どうも」

純「あ、先輩たちにも」

律「ありがとう。ってちっさ!」

紬「でも可愛らしいわね」

純「ほら、梓も」

梓「う、うん」

チョコレートを渡す。
ただそれだけなのに。

唯「あずにゃんちょこ!?」

もう会えなくなる。

梓「あ、あの……」

私ひとり。

口を開いたら、溜め込んだ涙が零れそうで、何も言えなくなってしまった。

梓「あの、私。ちょっとトイレに」

澪「ちょ、ちょっと、梓!」

唯「どうしたんだろ?」

さわ子「青春ねぇ!」



【2/14 12:56 山中さわ子】

軽音部3年生の子達に、2年生がチョコレートを渡している。
鈴木さん、だったかしら。

澪「へぇ、梓も持ってきてくれたのか?」

唯「あずにゃんちょこ!?食べたい!」

梓ちゃんは今にも泣きそうな表情で、チョコレートが入っているだろう可愛い包みを抱いて何も言えずにいる。
私にもこんな時代があったっけなぁ。

梓「あの、私。ちょっとトイレに」

梓ちゃんは走り去ってしまった。
目尻に涙が見えた気がしたのは、気のせいだったろうか。

澪「ちょ、ちょっと、梓!」

唯「どうしたんだろ?」

さわ子「青春ねぇ!」

律「ちょ、さわちゃん。なんだよ急に」

さわ子「あら、あなたたち分からなかったの?梓ちゃん、あんなに泣きそうな顔してたじゃない」

唯「え、あずにゃん体調悪かったのかなぁ」

紬「違うわよ、唯ちゃん」

律「女の子の日だったんだろ」

澪「律、もっと違うぞ」

さわ子「私たちが、入試や卒業の話をしてたのを聞いてたんでしょ。卒業の2文字が突きつけられて、感極まっちゃったのね」

澪「梓……」

唯「新入部員見つけてあげれなかったもんね」

紬「放課後は笑顔で迎えてあげましょう」

律「そうだ!ムギが今日はお菓子を持ってきていないってことにして、梓にチョコレートを出しやすいようにしてやるってのはどうだ」

さわ子「ちゃんと私の分、残しておきなさいよ」

律「はいはい。分かってるって」

さわ子「今年は、バレンタインだっていうのに、チョコをあげる男の人もいなくて寂しいんだから」

律「さわちゃ~ん。去年も一昨年もだろ~?」

さわ子「うっさいわね!」

律「うひゃー、さわちゃんがキレたぞ。逃げろ~」


はぁ。
よく考えたら、バレンタインって碌な思い出がないわね。



和「山中先生」

さわ子「へ?あ、真鍋さん。なにかしら」

和「もしお時間ありましたら、放課後生徒会室に来て頂きたいのですが」



【2/14 12:57 中野梓】

純「梓。そんなに恥ずかしがることでもないじゃん。普通に渡せばいいんだよ、はい!って」

そうじゃないよ。

そうじゃなくて。

梓「卒業しちゃうんだなって。みんな、いなくなっちゃうんだなって」

憂「梓ちゃん」

純「よしよし」


先輩たちが卒業しても、一人じゃない。
友達がいる。

寂しくなんかない。
寂しくなんかないもん!

放課後は笑顔で音楽室に行かなきゃ。



【2/14 15:00 若王子いちご】

どきどき。
チョコレート、準備OK

??「今日は学校がカカオの匂いでいっぱいだねー」

いちご「ごめんなさい、呼び出して」

??「気にしないで、それより話ってなに」

いちご「……」

??「あ、分かった。いちご、好きな人がいるんでしょ」

いちご「!」

??「それで、その人に渡すチョコレートの受け渡しを、私にお願いしたいんだ?」

いちご「ちがう」

??「そっか。当たったと思ったんだけどな」

いちご「……甘いもの、好き?」

??「好きだよ。甘いもの好きとか言うと、イメージじゃない!って言われるけどね」

いちご「……」

??「もしかして、私にチョコレートくれるとか?」

いちご「これ……」

??「え、ほんとに?」

いちご「本命」

??「ほん……っ」

いちご「私、あなたのことが――」

いちご「私、あなたのことが好き。姫子」

姫子「うっそ。意外なフラグだったわ」

いちご「女の子を好きなんて、嫌われるかと思って。嫌いにならないでほしい」

姫子「嫌いになるなんて、そんなわけないじゃん」

いちご「本当?ありがとう」

姫子「私も……いちごのこと、好きだったし」

いちご「え」

姫子「いちご、クールだからそういうこと興味ないのかなって諦めてたんだよ」

いちご「昨日も、言われた」

姫子「キスしよっか」

いちご「……っ!」

姫子「両思いだよ。いいでしょ?」

いちご「だって。はずかし――っ!」

いちご「あっ……ん……」


紬「キマシタワー!!」

憂「紬さん。鼻血出てますよ、ティッシュどうぞ」

紬「ありがとう。って憂ちゃんも見学?」
プスッ
アァン、チガタリナイノー

憂「はい。私もフラグ立ってない傍観者ですから」

紬「あらあらあらあらあらあらあらあら。気づいてないのね」

憂「気づいてない……?」

紬「本当に大事なものは、意外と近くにあるものよ」

憂「紬さん?」

紬「ほんとは、気づいてるんじゃないの?」

憂「気づいて――」

紬「がんばってね、憂ちゃん!」グッ


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最終更新:2010年09月16日 23:19