イガちゃん『えー、では今日の会議を始める。何か提案のある者は挙手をしてくれ』カタカタ
タミー『リーダー』カタカタ
イガちゃん『……』
タミー『なあ、リーダー』カタカタ
イガちゃん『……』
タミー「……」スッ
イガちゃん『どうした、タミー』カタカタ
タミー『こうやって、ゲームのチャット上だけで話すのは止めにしないか?』カタカタ
イガちゃん『ゲームと言うのは止めろと言ったはずだ。俺はこの世界では戦士なんだぞ』カタカタ
トミー『でもよ、同じ部屋にいるのにパソコン内だけで会話っていうのもよ……』カタカタ
イガちゃん『その方が雰囲気がでるだらう』カタカタ
イガちゃん『すまん、誤字』カタカタ
イガちゃん『とにかく……いいか。レバ剣を一刻も早く見つけるために、作戦会議だ。何か意見は無いのか!』
トミー『まあ、俺たち全員レベル1なんだが……まずどうすればいいんだ?』
イガちゃん『提案がある時は手を上げろ!』
トミー「……」スッ
イガちゃん『はい、トミー』カタカタ
トミー(……やりづらい)
……。
イガちゃん『……とにかく、レバ剣は超レアなアイテムらしい。生半可な覚悟では手に入れられまい』カタカタ
イガちゃん『だか、俺たち四天王が力を合わせればすぐに見つかるだろう、みんなの活躍を期待する』カタカタ
ユリー『あ、リーダー! 狼に襲われてるよ!』カタカタ
イガちゃん『あrkuさenらhなxx』カタカタ カタカタ!
タミー(キーボードうるせえ……)
トミー(リアルで無言なのが余計不気味だ……)
イガちゃん『おい、誰か復活の薬は持ってないのか!』カタカタ
トミー『俺たちまだそんな物持ってないよ』カタカタ
タミー『薬が随分高額だしなあ。かといって復活の魔法も無いし』カタカタ
イガちゃん『くっ……このままではレバ剣どころではない! なんとかしろ!』カタカタ
トミー「……」
トミー「なあ、リーダ……」
イガちゃん『手を挙げてから喋れ!』カタカタ
トミー「……」スッ
イガちゃん『はい、トミー』カタカタ
トミー(だんだん、殺意が沸いてきた……)
イガちゃん(戦士、レベル1)は死んでいる。
タミー『……俺たちだけじゃあ冒険はまだ厳しいよ』カタカタ
ユリー『そうだよ。レバ剣はとりあえず後回しにして、地道にレベルを上げようよ』カタカタ
イガちゃん『ちまちまとレベルなんか上げてられるか。敵が強いエリアにレアアイテムがあるのは当然……早く探せお前ら!』カタカタ
トミー『俺たちのレベルじゃあ、この辺りの敵には勝てないよ』カタカタ
タミー『一回街まで戻ろうよ、ね?』
イガちゃん『むう……もう貴様らなど知らん。勝手にどこへでも行け!』カタカタ
イガちゃん「……」
全員「……」
タミー(いや、本体がいる時点で気まずいんだって……)
能智(こんな空気の中ゲームしても楽しくない……)
ユリー『あ……ま、待て。俺たち囲まれているぞ』カタカタ
狼の群れ『ウゥゥ!』
トミー『こ、この数はヤバいよ』カタカタ
能智『で、でも逃げ場所も無いぜ!』カタカタ
イガちゃん『俺には関係の無い事だ』カタカタ
トミー(死んでるからって呑気な……)
狼の群れ『ガウッ!』
タミー『き、来た! もう終わりだ!』カタカタ
ユリー『だ、誰か……助けてくれえ!』カタカタ
スッ
全員(あ……だ、誰かが!)
ズワァァアア!
タミー『ぜ、全体魔法……すげえ……』カタカタ
トミー『すげえ、一瞬で狼が灰になった』カタカタ
イレブンPM『……大丈夫ですか、危ない所でしたね』
ユリー『あ、あなたは……?』カタカタ
イレブンPM『名乗る程の者ではありません……って、名前が出ちゃってますね(笑)』
タミー『た、助けてくれてありがとうございます』カタカタ
イレブンPM『いえいえ。あ、そちらの方は死亡していますね、えい☆』
イガちゃん『む……』カタカタ
イレブンPM『全回復と、強化の魔法をかけておきました。これでしばらくは安全なはずですよ!』
藤本宅
藤本「……たく、レベル1の素人がなんでこんな危険なエリアに」
藤本「まあ、レベルMAXな俺のキャラならばこんな場所の敵は雑魚以下だが……」
付き人「……」
藤本「初心者がこんな所にいてはまた死体が増える。それとなく注意してやるか」
藤本「ええ、この辺りは低レベルの方には危険なエリアです。街までテレポートで送りますので、もっと簡単なエリアでレベルをあげましょう、と」カタカタ
藤本「……フフッ、上級者面をするつもりは無いが、こうやってビギナーに指導する瞬間は何より気持ちいい」
藤本「こいつら、泣いて喜ぶに違いない」
付き人「……」
トミー『おい、いい人だぜ』
タミー『あ、ありがとうございます!』
藤本「フフッ、そうだろうそうだろう、もっと感謝するがいい」
イガちゃん『……おい、イレブンPMとやら。この辺りで一番レアなアイテムが落ちているのは何処だ!』
藤本「む、なんだこいつぁ……まるで言葉遣い、ネチケットがなっちゃいねえ。仕方ないな」
イレブンPM『イガちゃんさん。もしかしたら、キャラ作りのためにそんな口調なのかもしれませんが……初心者さんは基本敬語の方がいいですよ!』
藤本「まあ、こんなもんだろう。キャラを作るあまり言葉が乱暴になる……初心者にはよくあるミスだ」
イガちゃん『うるさい、俺はリーダーだぞ。さっさとレアアイテムの場所を教えろ』
藤本「こ、こいつ……」ギリッ
付き人「……」
会議室
タミー『リ、リーダー。そんな乱暴な言葉は悪いよ』カタカタ
ユリー『そうだよ、せっかく助けてくれたのに』カタカタ
トミー『イレブンPMさん、すいません』カタカタ
イレブンPM『……いえ、いいんです。僕はいらなかったみたいですね。皆さんの前から立ち去ります』
イガちゃん『おい待て。それならせめてレアアイテムの場所を吐いてから去れ』カタカタ
イレブンPM『……』
イレブンPM『一番レアなアイテムは「闇魔王の城」エリアに落ちています。まあ、皆さんが辿り着くにはレベルが足りなすぎますが……』
イガちゃん『ふん、それだけわかればよい。行くぞお前ら! ご苦労だったな、貴様』カタカタ
イレブンPM『……』
イガちゃん『よし、目指すは魔王の城だ!』カタカタ
イレブンPM『待って下さい。最期にとっておきの魔法をかけてあげますよ☆』
タミー『わあ、やっぱりいい人だ』カタカタ
ユリー『ありがとうございます』
イレブンPM『はい、皆さん頑張って魔王城まで辿り着いて……とでも言うと思ったか! バカ野郎が!』
ザシュッ
タミー『あ、リーダーが斬られた』カタカタ
能智『生き返してくれたり、殺したり、わからない人だな……』カタカタ
イガちゃん『……』
トイレ
イガちゃん「やっぱり楽器の方にしておけばよかったかな……」
一応、選択肢にはあったんだ。
会議室
イガちゃん『みんなログインしているな。よし、今日も早速冒険だ』
タミー『わかったぜリーダー』
トミー『早くレバ剣を手に入れないとな』
イガちゃん『……待てトミー。お前だけなんでレベルが20になっているんだ』
能智『本当だ。俺たちみんな横並びだったのによ』
トミー『いやあ、実は攻略サイトを見て効率のいいレベル上げ方法を試してみたんだよ』
ユリー『今日、一人早めに来ていたのはそのためかー』
トミー『ああ、アイテム情報や豆知識も仕入れたし……ちょっと成長した感じだぜ』
イガちゃん『……』
タミー『ところでよ、何でリーダーだけレベルが一桁なんだ?』カタカタ
トミー『ああ、前にPKされたからレベルが下がったんだな』カタカタ
能智『PK?』カタカタ
トミー『プレイヤーキルって言って、ゲームに参加している者同士で殺せるシステムだ』カタカタ
トミー『主に対戦なんかに使われるが……このゲームのPKはプレイヤー狩りをして、装備品を奪えるシステムだから注意がいるな』カタカタ
ユリー『なるほど、それでリーダーのレベルが下がったんだ』カタカタ
トミー『ああ、ペナルティで経験値が下がるシステムらしい。だから死にそうになったら無理はしない事だな』カタカタ
タミー『まあ、前のイレブン何とかは一撃でリーダーを倒してたからな』カタカタ
能智『注意のしようがないよな、ハハッ』カタカタ
イガちゃん『……』
ユリー『でもトミーは物知りになったよな』カタカタ
タミー『本当だぜ、頼れる存在って感じだよな。なんかリーダーっぽいぜ!』カタカタ
トミー『そ、そんな事はないぜ、ヘヘッ』カタカタ
イガちゃん『フッ、貴様はいつもそうだ』カタカタ
トミー『え?』
イガちゃん『攻略情報を見てゲームを極めたつもりか? お前は手のひらの上で踊らされているようなものだぞ?』カタカタ
イガちゃん『大体、そんな知識など冒険している間に自然と身に付くんだ。その方が……本当の経験値となる』
トミー『経験値……』
イガちゃん『俺はあのイレブン野郎に殺されたからわかる。PKの恐ろしさや緊張感……それが攻略情報に書いてあったか、トミーよ』
トミー『い、いや。ただ……情報だけが淡々と書かれていただけだ』
イガちゃん『そうだろう、文字を読むだけでは伝わらない……実戦の恐ろしさ。俺の背中にはその傷痕が残っている』
全員『……』
イガちゃん『みんなにもう一度問う。そんなに攻略情報は必要で、そこまでしてこの世界で生きたいのか?』
ユリー『……リーダーはレバ剣欲しくないの?』
イガちゃん『ユリー、最初に言っただろう。俺はこの四天王としてやりたい事がある、と』
イガちゃん『レバ剣を拾う時は、お前らと一緒だ』
タミー『リーダー……』
トミー『リーダー、俺が間違っていたよ』
イガちゃん『む……』
トミー『なまじ、攻略情報なんか見ちゃうとさ、全員で冒険していても……なんだか俺だけズルしているみたいになるよな』
タミー『トミー……』
トミー『リーダーに早くレバ剣を見つけて欲しかったんだけどよ、ちょっとお節介だったかな、ハハッ』
イガちゃん『……』
イガちゃん『トミー、他には何か豆知識や攻略情報は無いのか』
トミー『えっ、だって……』
イガちゃん『早く教えろ。俺がレバ剣を見つけるためにはどうすればいいのか……お前なら分かるだろう』
タミー『リーダー……』
能智『トミーの気持ちを汲んで……ヘヘッ、少し感動したぜ』
トミー『そうだな、レアな武器だから……まずは戦力を強化しないと。レベルも上げないとな』
イガちゃん『うむ』
トミー『で、一番のレアアイテムは闇魔王の城にあるって言ってたから……とにかくそこまで辿り着けるくらいにならないと』
イガちゃん『……よし。今後の目標が見えたな』
ユリー『リーダー……』
イガちゃん『俺たちは闇魔王の城を目指しつつレベルをあげるぞ! みんな俺についてこい!』
全員『おおー!』
一ヶ月後
イガちゃん『……ついにレベルMAXか』
タミー『長かったな、ここまで』
能智『寝る間も惜しんでキャラを育てた甲斐があったってもんだぜ』
イガちゃん『違う、キャラではない。俺たち自身がこの世界を通して成長したんだ……』
イガちゃん『今画面に映っているこのキャラは俺たちの心そのものの姿だ……』
タミー『ヘヘッ』
トミー『おう』
イガちゃん『よし、いよいよ魔王のいる城に突入だ。準備はいいか!』
全員『おおー!』
イガちゃん『いよいよレバ剣が手に入る時が来たのか……』
最終更新:2010年09月17日 22:19