相撲部
部長「よし、かかってこい!」
副部長「どすこい!」
ペタッ
パタン
部長「……よし、もういっちょうだ!」
副部長「どすこい!」
ペタッ
パタン
部長「……」
……。
部長「よし、今日の稽古はこれまでだ」
副部長「ごっつぁんでした!」
部長「……なあ」
副部長「はい?」
部長「どうしてまたいつも通り部員が二人になっているんだろうな」
副部長「あいつら、最近相撲部に全く顔を出さないんですよね」
部長「……奴らの心が相撲から離れてしまったか」
副部長「そ、そんな悲しい事言わないで下さいよ!」
部長「だが、奴らはもうここには来ていない。それが何よりの証拠じゃないのか?」
副部長「部長……」
次の日
副部長「部長はああ言ったが、俺はもう一度奴らと話し合ってみるぞ」
副部長「一度は土俵にあがった仲間だ……同じちゃんこを食った友人だ、俺の言葉が届かないとは思わん」
副部長「……ここが奴らのいる教室か。なんだか中が騒がしいな」
ワイワイ ガヤガヤ
副部長(くっ、この教室はこんなに盛り上がっていると言うのに……それに引き換え我が相撲部は……)
副部長(ええいっ、ままよ!)
ガラガラッ!
副部長「おい、神山! 林田!いるか!」
梓『私とセッションしましょう!』
副部長「……」
ピシャッ
副部長「なんだ今のは……」
副部長「ここ、学校の中だよな。あの変な置物は……」
副部長「……」
ガラガラッ。
梓『私とセッションしましょう!』
副部長「……」
ピシャッ
副部長「奴が門番かのように立ちふさがっているため、教室に入れない……」
副部長「いや、薄そうな生地だったし、手で押し退ければ簡単に倒れるような代物なんだろうが……」
副部長「この、なんだろう。手を出せないもどかしさ……」
副部長「この、胸のドキドキは一体なんだ……?」
副部長「落ち着け……あれは所詮、絵とか紙とか段ボールかそんな物だ」
副部長「そうだっ! なにを勝手にときめいているんだ俺は!」
副部長「……しかし、彼女に手をあげる事はできん。それは俺の本能が否定している」
副部長「……スーハー、スーハー」
副部長「よし、優しくそっと彼女にツッパリしよう」
副部長「うん、それがいい。それなら彼女も怖がるまい」
副部長「……たかが絵にそんな優しさを抱くとは、俺も十分変わり者だ。神山達を笑えないな」
副部長「……よし!」
ガラガラッ!
副部長「す、すまないがここを通してもらえな……」
紬『ふふっ、お茶の時間にしましょう?』
副部長「う、うわあああぁぁぁああ!」バキッ
神山「……あ、副部長がムギちゃんの首を折ってるぞ」
林田「せっかくゴリラがまた集めてきたのによお」
ゴリラ「んゴ」
副部長「……」
ベンチ
副部長「弁償だって……」
そんなにビビることねえだろ。
神山「……で、僕たちに何の用ですか、副部長」
副部長「神山、お前ら最近相撲に顔を出してないようだか、何かあったのか?」
神山「ああ、今は僕たちけいおん部として活動しているんですよ」
副部長「けいおん部だと。あの紙人形もけいおん部とやらに関係があるのか?」
紬『ふふっ
お
茶
の
時
林田「可愛そうに、あんなに首が垂れ下がっちゃって」
副部長「ええい、弁償すると言っているだろうが! そもそもけいおん部とは何なんだ!」
神山「はい、それはですね……」
副部長「……ほう、そんな漫画があるのか」
神山「ええ、大人気御礼。今や社会現象の一つと言っても過言では無いくらいです」
副部長「な、なに! おい、可愛い子が楽器を弾くだけでそんなに人気が出るのか」
神山「まあ、大まかに言えばそうでしょうね」
副部長「……」
副部長「なあ神山。もし可愛い子が相撲をやったら……相撲部の人気が出たり、もっと相撲界が盛り上がるとは思わないか?」
神山「……いえ、僕はそうは思いません。そもそも土俵は女性が立つ場所ではない、と聞きましたが」
副部長「う……まあ、女性力士も全くいないわけではないが……」
神山「でも人気のある作品が世に出るかは別でしょう。相撲人気が復活するとも限りませんし」
副部長「……結局、相撲が人気になるのとけいおんがブームになるのは違うか」
神山「……」
副部長「そうだよな……可愛い女の子が相撲をやる理由なんてないもんな」
神山「……いえ、そうとも限りませんよ」
副部長「む?」
神山「僕にいい提案があります。後は部長さんと少し考えてみて下さい」
副部長「ん……」
相撲部
紬『ふふっ、お茶の時間にしましょう』ブラン ブラン
部長「……で、この首の折れたポップを貰って来たわけか」
副部長「はい……」
部長「不気味だ……」
副部長「今にも首が取れそうですものね」
部長「こいつを一体どうしようと言うんだ」
副部長「う~ん……」
部長「とりあえず、首を補修しよう。ブラブラして見ていられない」
副部長「は、はい。でも、ここにはテープや板なんて何も……」
部長「……」
ガラガラッ
林田「邪魔するぜ」
副部長「ん……林田か。珍しいな」
林田「いえ、ちょっとムギちゃんについて神山から伝言を預かってな」
部長「伝言?」
神山『彼女たちが相撲をすれば、ブームは必ず来る』
林田「……とね」
副部長「彼女? この……けいおんメンバーがか?」
副部長「……」
副部長「この首の折れたポップが……ねえ」
部長「相撲、相撲……相撲といえば……マワシか?」
副部長「マワシ? あっ、もしかしたら」シュル シュル
副部長「……ほら、マワシを首に巻いたら、首がガッチリくっつきましたよ!」
部長「ほー、やるな」
副部長「彼女たちが相撲をとったら……何となくわかる気がしますね! きっと相撲ブームが復活して相撲人口増える事間違い無しだ!」
部長「……」
部長「まあ、細かい事は聞かないけどよ」
副部長「はい?」
部長「この……首の折れたポップは一体どう活かせばいいんだ? 相撲とはあまり関係無いし」
副部長「……」
部長「彼女たちがやってるのは楽器なんだろ?」
副部長「楽器、けいおん、相撲……」
副部長「……そうだ」
次の日
部長「よし、今日も稽古を始めるぞ」
副部長「……」
副部長「あの、すいません。その前にちょっとお話が」
部長「ん?」
……。
部長「トントン相撲?」
副部長「ええ、あの台の上で紙の人形を使ってやる……あのトントン相撲です」
部長「それがどうかしたのか?」
副部長「この、彼女の等身大ポップを使ってそれをするんですよ!」
部長「……」
副部長「……」
部長「なあ、お前のその何とか相撲を人気にしたいっていう気持ちはわかる。けど……彼女たちは楽器をやりたいから楽器をやってるんだろ?」
副部長「え……」
部長「それをよ、いきなり明日から楽器をやめて相撲をやってくれなんて……いくら漫画のキャラとは言え、なんか違う気がしないか?」
副部長「部長……」
部長「お前、明日から音楽をやれって言われて、ハイわかりました、ってできるか?」
副部長「あまり興味は無いですね」
部長「だろ。俺たちは相撲しかできないんだよ……けいおんなんて、無縁の存在だったんだ」
副部長「部長……」
部長「……まあ、この紬ちゃんだっけ? これを返すついでに……今日は神山たちの部活具合でも見学しないか?」
副部長「あいつらのけいおん部をですか?」
部長「ああ、離れているとはいえ部員だ。近況も気になるしな」
副部長「……はい」
教室
ガラガラッ
副部長「よう、お前たち。紬ちゃんを返しにきたついでに、お前らの様子を……」
神山「どすこい。どすこい」
前田「おっ、やるなフレディ」パチン パチン
ゴリラ「ンゴ」がっぷり
子分「うおっ! 押し出し負けだ!」
部長「……」
林田「……お、部長たちじゃねえか。いやあ、なんか急に体を動かしたくなってよ。今日の部活内容は相撲の練習をしている所なんだ」
副部長「もう、けいおんも何も関係ねえじゃねえか!」
……ごもっとも。
……
のなー「ネタがない」
担当「はい」
おわり
最終更新:2010年09月17日 22:21