クロマティ高校
林田「おい、ゴリラがいつまで経っても戻ってこねえぞ!」
神山「彼一人はまずかったかなあ……」
バンチョーちゃん「……」
保健所へゴーゴーマニアック。
保健所トラック『ブロロロロォ』
律「……ふう」
澪「……」
紬「……」
梓「……」
律「なんだったんだろうな、アレは」
澪「ゴリラ……だろうな」
唯「こ、怖かったね~」
紬「そうかしら? 何だか優しい目をしていたように見えたけど」
梓「なんか、可愛らしかったですよね」
唯(……マジで?)
律「……今日はもう帰るか。ロッカーの中も打ち止めみたいだしな~」
澪「じゃあみんな、また明日」
梓「さよなら~」
……。
唯「た、ただいまぁ~」
憂「おかえりなさい、お姉ちゃん。どうしたの? 何だかすごい疲れているみたいだけど……」
唯「今日の出来事もそうだけど、説明するのも疲れるよ~」
憂「そう……よっぽどの出来事があったんだね?」
唯「でも、これ聞いたら憂びっくりして腰抜かしちゃうよ~」
憂「え、なになに? 逆に楽しみだよ~」
唯「えへへ~、実はね……今日学校にゴリラさんがいたんだよ!」
憂「……」
唯「びっくりした~?」
憂「あのさ、違ったらごめんね、お姉ちゃん」
唯「んっ?」
憂「もしかして、今日学校にいたゴリラさんって……この人?」
ゴリラ「ンゴ」
唯「……」
ソファー
唯「なんであたしんちにいるのよ……」
ゴリラ「ンゴ」
これでもゴリラ、喜んでいます。
唯「……」
憂「あ、机拭いてね~」
ゴリラ「ンゴ」フキフキ
唯「……」
ゴリラ「ンゴ」カチャッ カチャッ
憂「はい、食器並べてくれてありがとう~」
ゴリラ「ンゴ」
唯「あの、ちょっといいかな?」
憂「ん、どうかした、お姉ちゃん?
唯「あのさ、なんで彼……いえ、ゴリラさんはここにいるの?」
憂「この人帰る場所が無いんだって。もう学校にも入れないから……」
唯「いやいや、なんでここなのさ!」
憂「だって……道をさ迷っていたから可愛そうで……」ウルウル
唯「憂が拾ったんかい!」
ゴリラ「……」
憂「でもお家の手伝いもしてくれるし……いい人なんだよ」
ゴリラ「ンゴ」
唯「……あのさ、ちょっといいかな?」
憂「ん?」
唯「憂には、この人が……どんな姿に見えるの?」
憂「ゴリラさんでしょ?」
唯(……一応ゴリラには見えてるんだ)
唯「あのさ、おかしくない?」
憂「なにが?」
唯「ゴリラだよ?」
憂「ゴリラさんだね~」
唯(憂は優しすぎるよぉ……)
唯「保健所に連絡しようよ」
憂「……それは可愛そうだよ」ウルウル
唯「うぅ……」
ゴリラ「……」ガチャリ
憂「あっ、待ってゴリラさん!」
唯「あ……」
憂「ど、どうしよう、出ていっちゃったよ!」
唯「だ、大丈夫だよ、野生だからきっと生きていけるよ!」
憂「だって……野ざらしなんて可愛そうだよ……」ウルウル
唯「……」
憂「わ、私探して来る!」ガチャッ
唯「う、憂~、ご飯は~!」
唯「……行っちゃった」
……。
唯「もう……みんな何か変だよぉ」
唯「……お腹すいたぁ~」
唯「テレビでも見よう、あ……」
唯「リモコンがきっちり整理されている。机も床もピカピカ」
唯「これ、憂だけじゃなくてゴリラさんが?」
唯「……」
唯「確かに、いい人なのかもしれない。そうだよね、ゴリラさんは何も悪い事はしてないもんね」
唯「帰ってきたら……謝ろうかな」
ガチャッ
憂「ただいまぁ~」
ゴリラ「ンゴ」
唯「お、おかえり!」
憂「ゴリラさん、お買い物してくれてたんだって~。お姉ちゃんの分もちゃんと……」
唯「あ、あの。ごめんねゴリラさん」
憂「お姉ちゃん?」
唯「色々とお家の事手伝ってくれて……ありがとうね」
ゴリラ「……」コクッ
憂「これで仲直りかな? ふふっ」
唯「うん! お腹すいたよ憂!」
憂「すぐご飯にするね。今日はゴリラさんがお寿司を握ってくれるんだって!」
ゴリラ「ンゴ」
唯「ゴリラが……寿司?」
……。
憂「あははっ、中とろ美味しい~」
ゴリラ「ンゴ」
憂「あ、あと玉子お願いね」
ゴリラ「ンゴ」
憂「おいしい~♪」
唯「……」
ソファー
唯「憂、馴染みすぎだよぉ……」
できた妹、憂ちゃん。
唯の部屋
唯「……うん、美味しかった」
唯「やっぱり、悪いゴリラさんじゃないみたい……」
唯「よ~し! 景気付けにギターでも弾こっ!」
ギュイーン
唯「うん、ギー太絶好調!」
コン コン
唯「んっ、憂? どうぞ~」
ゴリラ「ンゴ」ガチャリ
唯「あ、ゴリラさん。どうかしたの?」
ゴリラ「……」スッ
唯「え、ギター? あ、私のギー太とおんなじ! ゴリラさんの?」
ゴリラ「……」コクッ
唯「もしかして、一緒に弾きたいの?」
ゴリラ「……」コクッ
唯(すごい、このゴリラさん……指さばきも、音の感じも!)
ゴリラ「……」
唯「えへへっ、何だか楽しくなってきたよ!」
ゴリラ「……」コクッ
憂「お姉ちゃん、宿題やった~?」ガチャリ
唯「……え、宿題?」ピタリ
憂「うん、明日は小テストもあるんだから勉強するんでしょ?」
唯「わ、忘れてたよ~! うわ~、早く勉強しないと。ごめんねゴリラさん、ギターはまた今度ね!」
ゴリラ「……」コクッ
唯「ええっと、この問題が……む~っ……」
唯「だ、ダメだぁ! わかんないよ~。こんなんじゃ明日のテストも、うう……」
ゴリラ「……」スッ
唯「ん、な~に? え、ここの公式を……あ、本当だ」
ゴリラ「……」
唯「そっか、ここはさっきの問題と同じだね!」
ゴリラ「……」コクッ
唯「こ、これなら何とか勉強できるよ、ありがとうゴリラさん!」
ゴリラ「……」
次の朝
唯「くぅ~……くぅ~……はっ!」
唯「し、しまった! つい机で寝ちゃっ……あれ?」
唯「毛布なんてしてたっけ? まさか、ゴリラさんが……?」
コンコン
憂「お姉ちゃん、起きてる~?」
唯「あ、うん。今行くよ憂~」
唯「……えへへっ」
憂「あ、おはようお姉ちゃん」
唯「おはよう。あれ、ゴリラさんは?」
憂「うん、学校が開いたら早めに帰るんだってさ。みんなに見つかると迷惑になるからって」
唯「そう……なんだ」
憂「昨日宿題一緒にやってたよね?」
唯「うん、これでテストもバッチリだよ! ギターだって一緒に弾いたし!」
憂「ふふっ、お姉ちゃんもすっかりゴリラさんと仲良しだね」
唯「うん……何だか帰っちゃうのが少し寂しいなあ」
憂「お姉ちゃん……」
通学中
憂「でもさ、そのロッカーからまた来られるんでしょ?」
唯「みたいだけどね~。でも次はいつ会えるかな~?」
憂「信じていれば、きっと会えるよ……だって、あんなに素敵な人なんだもの」
唯「……確かに、色々気を遣ってくれた、いいゴリラさんだったね」
憂「うん。学校でもきっとみんなの人気者になれるよ!」
唯「見た目はゴリラだけどね~」
憂「あははっ、それはそうかもね。でも、本当は心優しいから……ね」
唯「うん! ……あ、あれ? 学校の周りが何か騒がしいよ?」
憂「どうしたのかな? 生徒いっぱい……」
さわちゃん「……あ! ゆ、唯ちゃん! 今学校に近づいちゃだめよ!」
唯「な、何かあったの、さわちゃん?」
さわちゃん「なんかね、学校の中にゴリラが逃げ込んだらしいの! 警察の人まで呼んで大騒ぎよ!」
さわちゃん「もう、桜ヶ丘高校始まって以来の大事件よ!」
さわちゃん「噂ではゴリラの皮を被った変質者とか……ああ、想像しただけで恐ろしいわ!」
警察『おい、自衛隊はまだか!』
警察『麻酔銃で眠らせるんだ!』
警察『早く学校を包囲しろ! 相手は怪しいゴリラだ、気を付けろ!』
唯 憂「……」
ベンチ
唯「やっぱり、普通の反応はこうだよね……」
憂「本当は心優しいのにね~」
とりあえず、小テストは無くなった。
律「ん、あれは……おい~唯~、こっちこっち~」
唯「あ、りっちゃんにみんな~」
澪「おはよう。大変な事になってるな……」
梓「学校は大騒ぎですよ~……」
憂「み、皆さんの知り合いさんだったんですか?」
律「知り合いと言うか、ロッカー仲間というかあ……」
紬「ふふっ。でも、こんな事警察の方には言えないわよね」
唯「ゴリラさん、捕まっちゃうのかなあ?」
梓「だ、大丈夫ですよ! 今頃、ロッカーに入って元の世界に……」
憂「そうだといいね。ちょっと心配、かな」
唯「うん、心配……」
梓「あれ、唯先輩。心配してるんですか?」
唯「昨日一緒にギター弾いたりしてね~。えへへっ、ちょっと仲良し!」
唯「もしゴリラさんが出てきたらさ、お話してみようと思うの。その人は悪くないって!」
律「そうだな……」
澪「うん、私も協力するぞ」
紬「事情を話せばきっと大丈夫よ。何も悪い事はしていないんだし、ね」
梓「そうですよ! 彼は優しい目をしていますから!」
憂「みなさん……」ウルウル
警察『……確保ぉぉ!』
澪「ピクッ!」
警察『ほら、道を開けて! ほら、歩け歩け!』
律「く、来るぞ!」
唯「ま、待って下さい! その人は、悪い人なんかじゃあ……」
神山「ち、ちょっと。いきなり何をするんですか!」
警察『うるさい、さっさと歩け。変態ゴリラ野郎が』
神山「いや、あの……意味がわかりません。僕はただゴリラと入れ替わりに……」
警察『続きは署で聞くから、ほら、歩いて』
神山「あの、ですから……」
バタン。
全員『……』
ベンチ
律「あれ、誰だろうなあ……」
澪「今までで一番まともそうな人だったのにな……」
神山、桜ヶ丘高校の歴史に名を刻む。(大事件で)
最終更新:2010年09月17日 22:24