唯「あーずにゃん!」ギュッ
梓「! …こ、こんなことでいつまでも動揺する私じゃないですよ。唯先輩…って」
唯「んあー…」
梓「ちょっ!? なに噛みつこうとしてるんですかっ」ドン
唯「あいたぁっ…もぉー、見て分かんないかなぁ」
唯「私は吸血鬼なのです!」
梓「あぁ! よく見たら歯が! って、これただのおもちゃの着け歯じゃないですか」
唯「ちがーうもんっ」
唯「吸血鬼です!」キラーン
梓「はいはい」
律「おーす」
唯「あ、りっちゃん! よーし…」ギュッ
律「うおっ、なんだよ急に抱きついてきて」
唯「んあー…」
律「へ?」
ガブッ
律「あ痛ぁっ!?」
梓「律せんぱーい!」
唯「はい! これでりっちゃんは私に吸血されました!」
律「なんですと」
梓「唯先輩は今吸血鬼ってことらしいですよ」
唯「がおー!」
律「ほほう…やっぱりこんなことになると思ってたぜ」
梓「?」
律「唯ー! このにんにくが目に入らぬかー!」ババン!
唯・梓「!」
律「吸血鬼はにんにくが苦手なんだぞー、うりうり」グリグリ
唯「や、やめてよりっちゃーん…にんにくをほっぺに摺りつけないでよぉ」
律「うりうり~」グリグリ
唯「やめてぇ」
梓「なんでそんなものを学校に…」
律「今日唯がこういうことしてくるだろうと思って用意してたんだー♪」グリグリ
唯「ま、まいったよぉ」
梓「へ、へー…」
グリグリ
唯「きゅう…」
梓「ああ、唯先輩がダウンしたっ」
律「ふっ、大した吸血鬼じゃないな」
唯「…と見せかけてとりゃー!」ガブッ
律「ぐばっ!?」
梓「律せんぱーい!」
唯「はい! りっちゃんは二回吸血されました! 死にました!」
律「あーれー…ばたり」パタッ
梓「律先輩が死にましたっ」
唯「1、2、3、4、5、6、7…」
律「……」ムクッ
梓「律先輩が立ちあがりましたっ」
律「うおー! あーずさぁっ!」ギュッ
梓「そして…私に抱きつきました!?」
唯「むむっ!」
律「吸血鬼に血を吸われた人間はなぁ…梓。吸血鬼になっちゃうんだぜ!」
梓「そんなのアリですか!?」
唯「おお! 仲間が増えた!」
律「ふっふっふっ…まだまだ、これからもう一人増えるぞ。唯」ニヤリ
梓「ま、まさか」
律「んあー…」
梓「うきゃー!?」
律「…という遊びなんだけど」ス
梓「…え?」
唯「えー、もう終わりー!?」
律「いやいや、まだまだこれからだぞ。もっといい反応する奴が控えてるしなぁ」
梓「また澪先輩が…かわいそうですよ。ていうかこの唐突な遊びは何なんですかっ」
律「実は昨日唯に吸血鬼モノのホラー映画貸してさぁ」
律「もしもし、唯?」
唯『りっちゃん! 私吸血鬼になるよ!』
律「それは進路のことかい?」
唯『それは違うよ』
律「でーすわよねぇ。OK、OK、それじゃあ唯吸血鬼よ。明日…」
律「ということだよ。中野隊員」
梓「いい迷惑です」
唯「でもあずにゃん何気にノリノリだったじゃーん」
梓「哀れな先輩方に気を使ったんですよ」
唯・律「かっわいくねー」
梓「結構です!」
唯「また噛みつくよー全身至るところまで噛みついちゃうよー」ワナワナ…
梓「そ、それは勘弁願いたいです…」
律「ちなみに奥様。至るところとはあーんなとこや、こーんなとこまでですかぁん?」
唯「ビーチクまでかなぁ」
梓「やめてくださいっ、セクハラで訴えますよっ」
紬「わー!」ドン
唯・律・梓「わー!?」
紬「やった、大成功♪」
律「し、心臓止まるかと思ったぞ!! たちの悪いことしやがってー」
唯「もー、ムギちゃんのイジワルっ」
梓「…あなたたちも人のこと言えませんからね」
紬「えへへ、ごめんね。ところで何か面白そうなことしてるように見えたんだけど…」
唯「がぶりんちょ!」ガブッ
紬「あんっ」
梓「唯先輩、不意打ちだー!」
律「という遊びだ」
紬「人に噛みつく遊び? 変わってるけど今までにない感じね!」
梓「いや、ちょっと違いますよ…これは吸け…」
ギュッ…ガブッ
梓「ぎゃあああああ!?」
紬「ほひはへふあふふぁひゃふにかふぃふぅいてみふぁひふぁ!(訳:とりあえず梓ちゃんに噛みついてみました!」
唯・律(ガチ噛みだ…)
梓「あうう…首元に歯型ががっちり…」
紬「ご、ごめんね。梓ちゃん…」
律「気にするなよ。失敗は誰にでもあるもんさ」ポンポン
紬「りっちゃあん」パァァ…
梓「いや、失敗とかそんな…はぁ」
唯「もう噛みついちゃったし、ムギちゃんは最初から吸血鬼でいっかー」
律「そうだなー。ってかムギが吸血鬼は何か様になるよな!」
紬「今宵は月が赤いわ…ああ、私の体が新鮮な生き血を欲している…」キラーン
唯「おおうっ」
紬「澪ちゃんを吸血するぞー! おー!」
唯・律「おー!」
梓(ターゲットは既に決められていらっしゃった…!)
澪「……」
唯「獲物はただいま読書中のようです」ヒソ
律「部室にこないでこんなところで…けしからんっ」ヒソ
紬「一気に押し倒して噛みついちゃいましょ!! 唯ちゃんは右腕!! りっちゃんは左腕!! わ、わ、私は太ももっ!!」ヒソ
梓「ヒソじゃありませんよっ、十分声大きいですっ」
紬「失敗、失敗~。てへ♪」
梓(わぉ)
律「ていうか梓もしっかり参加してるのな」
梓「…いや、えっと…まぁ…私は澪先輩がどんな反応するかなーって…いや、そんなやましい考えから生まれた行動じゃないですからね。勘違いしないでくださいね。ね? 別に私も澪先輩に噛みつきたいとか…」
唯「はい、あずにゃん。これ」ス
梓「これは…」
唯「着け歯だよ。同士あずにゃん」
梓「装着すーるーでーす」カチャ
澪「……!」
和「……」
唯「こいつは予想外! 和ちゃんが現れましたっ」ヒソ
梓「厄介ですね…」ヒソ
律「大丈夫だ。獲物が二匹になっただけ…和もやっちまおうぜ」ヒソ
紬「ううん。ここは放置して一人になったところを襲いましょ?」ヒソ
律「なぜだ?」
紬「個人個人で襲った方が反応がいいはずっ」
唯・梓「なるほどなー」
律「…よし、それじゃあ……唯! 和をどこかに誘導しろー!」
唯「えー! 何で私ー? めんどっちーよぉ」
律「お前は私たちの中でも優れた吸血鬼なんだ。これはお前にしかできないミッションなんだぞ! 唯!」
唯「任されたー!」
梓(それでいいのか、唯先輩隊員よ)
唯「和ちゃーん」
澪「あ、唯」
和「ん? 唯、何か用?」
唯「ちょーっとこっちおいでー」クイクイ
和「誘ってるの? そそるじゃない」
唯「わ~」トコトコ…
和「ああ、唯が…ごめん、澪。私はこれで」ス
澪「あ、ああ…うん」
唯「私を捕まえてごらんなさ~い」フワフワ
和「ふふっ、止まらないと生徒会に行くわよ~」フワフワ
ウフフーアハハー
澪「…変なの」
梓「上手くいきましたっ」ヒソ
紬「うん。それじゃあ作戦通り…」ヒソ
律「突撃じゃあっ…と、その前に」ヒソ
澪「…ん、もうこんな時間か。そろそろ部室に…」
澪(うわ、ここ私以外誰もいないよ…なんか怖いなぁ…)
ガタッ
澪「ひっ! 椅子が…」
ヒラヒラ
澪「ひぃっ! カーテンが…」
ドボン
澪「ひゃあっ! 外の水溜まりにとんちゃんが…」
キャー……
澪「ひゃんっ! どこからか悲鳴が…」
律「よし、煽りはこんなもんでいいだろ」ヒソ
梓(…あれ、最後の悲鳴、唯先輩の声だったような)
澪「は、早く部室に!!」
カチッ
澪「ひぃー!? 教室の電気が消えたー!」
律「澪ー」
澪「り、律! ああ、律!! よかったぁ…」
澪「電気消したのお前だな! 驚かせるなよっ、もう…」
律「澪、見てみてー…んが」
澪「…? なんだよ口なんか開けて…何? 歯?」
律「んがー」
澪「ああ、真っ白で綺麗な歯だよ。クリアクリーンで毎日丁寧に歯磨きしてた賜物だな。歯並びも申し分ない。それに随分と犬歯が鋭くて立派…ん?」
律「んがー」
澪「お、お前…なんでそんなに歯が…え、え、え?」
律「むふふのふ」キラーン
紬「澪ちゃん」
梓「澪先輩」
澪「ムギ! 梓! お、おかしいんだ…律の歯が鋭く…」
紬・梓「んがー」
澪「お前らもかチクショウ! ど、どうせ私を驚かせようとかしてるんだろ? な?」
律「澪、実は私たち。澪には内緒にしてたけど」
梓「吸血鬼だったんです。だから澪先輩を吸血しに来ました」
紬「も、もう我慢の限界なの…はぁ、はぁ…今まで襲わなかった自分を褒めてあげたいわ」
澪「あ…あわわわ…ふ、ふざけるなよ…」ガクガク
律「澪。いただきます」
梓・紬「いただきます」ジュルリ
澪「う、う、うわあああ…いやあああ…」ブルブル
紬(まるで生まれたての子羊ちゃんの様なガクブルっぷりだわ)
律「今だー! 喰らいつけー!」
梓・紬「あいあいさー!」
ガブッ、ガブッ、ガブッ
律「ふっふっふ…吸血しちゃったぞー澪」
澪「 」
紬「澪ちゃん…?」
澪「 」
梓「み、澪先輩?」
澪「 」
律・紬・梓「……」
律「…死んでる」
梓「生きてますよっ! 泡吹いて気絶してるだけです! シャレにならないこと言わないでくださいっ」
澪「ブクブク…」
澪「ん…」
紬「あ、目が覚めたわ!」
澪「ここはー…ていうか私…何が…」
梓「あー、澪先輩! よかったぁー…無事でなによりです。廊下で倒れてたんですよ」
澪「…そうだっけ」
梓「はい!」
律「何ともないか? 澪」
澪「うん、まぁ…ていうかさっきお前ら三人が…」
律「嫌だなぁ、澪。そいつは夢だよ」
澪「夢?」
紬「澪ちゃんきっと疲れてたんだわ」
梓「澪先輩、真面目ですしね」
澪「夢だったのか…」
律「ああ、違いない」
澪「ところで唯は?」
律「さぁ…和と一緒に帰っちゃったかな」
澪「え、何で?」
律「…澪は鈍いなぁ。ねぇ?」
紬・梓「ええ、ええ」
澪「ちょ…まさか…」
澪「……」
澪「……///」ボンッ
澪(いや、ここは女子高だし、それに唯と和は幼馴染だし…ありえなくも…)
澪「なんだか…良い歌詞が浮かびそうだよ…」ドキドキ
紬「ぜひ作ってもらいたいなぁ。澪ちゃん」
澪「タイトルは…禁じられた遊びってところかな」
梓「初心者がギターの課題曲に出されるやつですか」
律「ふわふわ時間、カレーのちライス、ごはんはおかず、禁じられた遊び、私の恋はホッチキス…あれ、そんなに浮いた感じしなくね?」
スタスタスタ…
紬「唯ちゃんと連絡がつかないわ」
律「私もだ。メールも返ってこないぞ」
澪「困ったな…」
梓「憂に連絡してみたら、まだ帰ってないみたいですよ。唯先輩」
律「うーん…和には連絡してみた? 澪」
澪「待って、今電話かけてみる」
和「あら、みんな揃って…帰りの途中?」
澪「ああ、和! よかった、電話代が浮いたよ」ホッ
和「唯? いるわよ。そこに」
一同「え?」
唯「ふしゅるー、ふしゅるー」
梓「唯先輩! もー、心配したんですよ!」
紬「とりあえず見つかってよかったわぁ」
律「ずっと二人でいたのか?」
和「ええ」
唯「ふしゅるー」
和「あら、唯ったらお腹空いたみたいね」
澪「見ただけでわかるの?」
和「何年幼馴染してると思ってるのよ、ふふ」
律「おお…私もそのうち見ただけで澪があの日かどうか判別できるようになるのかな」
和「多分ね」
梓(具合の悪さとかで大抵わかると思うけど)
ゴツン
律「いたーい…うぐぅ…」
澪「お前が馬鹿なこと言ってるからだ!」
和「血の匂いで分かるようになるわ。律」
律「は? 血?」
和「ふふ、さぁ、私たちはそろそろ帰るわ。行きましょう、唯」
唯「ふしゅるー」
スタスタスタ…
紬「それじゃあ私たちもそろそろ帰りましょ」
澪「そうだな。いくぞ、律」
律「はいさー」
梓(私も今日はまっすぐ帰ろっと)
最終更新:2010年09月18日 19:56