梓母「梓ー。暇ならちょっと買い物いってきてちょうだい」
梓「えー…さっきお夕飯食べたばっかりなのに」
梓母「あら、この間新しいエフェクター買う時にお金足してあげたのは誰だったっけ?」
梓「うぐっ…わかったよー。もぉ…」
梓母「素直でよろしい。余ったお金はあげるからそれで勘弁しなさい」
梓「はーい」
梓(余りで美味しいアイス買ってきて、お母さんの目の前で見せつけるように食べてやるっ)
梓「ふぅ、とりあえずこれで全部かな…うわ、真っ暗…」
梓「これは澪先輩じゃなくてもなんかおっかないなー…ん?」
梓「今のって唯先輩? こんな時間にあんなところで何してるんだろ」
梓「おーい、唯せんぱーい!」
唯「……」
梓「唯先輩、こんなところで何してるんですか? まだ制服だし…こんな時間にウロウロしてたら襲われちゃいますよ」
唯「…誰に?」
梓「誰にって…不審者とか」
唯「…ねぇ、あずにゃん」
梓「?」
唯「…私ね、とっても喉が渇いてるの」
梓「そうなんですか? それじゃあそこの自販機で私ジュースを」
唯「いくら水飲んでもね…喉が潤わないんだー…」
梓「それは困りましたね。大丈夫ですか?」
唯「お腹もいっぱいにならないんだ…アイス食べたのに」
梓「…そ、それじゃあ…私のアイス食べますか…? ちょうど買ってきてたんですよ、どうぞ。…食べたかったけど」ス
唯「!!」バッ
梓「うわっ」
唯「アイス…アイス、アイス、アイス…」ムシャムシャ、パクパク
梓(ああ、グッバイ私のアイス…)
唯「……」
梓「美味しかったですか?」
唯「美味しいけどお腹いっぱいにはならなかったよ。ふしゅるー」
唯「ふしゅるー、ふしゅるー」
梓「唯先輩…? どうかしましたか、なんか…」
梓「ていうかさっきから何で後ろ向いてるんですか。顔くらい見せてくださいよ」
唯「ふしゅるー」
梓「…むっ」ガシッ
梓「ちょっと唯先輩!」
クルッ
梓「!」
唯「アズニャーン…」
梓(制服が…所々真っ赤だ…それに唯先輩の口の周りも…まさか!)
梓「お夕飯は…ミートソースでしたか…!」
唯「アズニャーン…ふしゅるー」
梓「制服にソースが跳ねてますよ? 明日これでどうする気なんですか」
唯「ノドガカワイタヨ、アズニャン…カラカラダヨ…」
梓「アイス甘すぎましたか? やっぱり私そこの自販機でお茶買ってきますよ」
ガシッ
唯「ノドガ…」ジュルリ
梓「だから買ってきますよ。私もなんか話してたら喉渇いてきました」パッ
唯「アウ…」
梓「ここで待ってて下さい。すぐに戻ってきますから」タタタ…
唯「ウウウ…ウン」
梓「せんぱーい! 買ってきましたよー」
梓「はい、どうぞ」
唯「ふしゅるー、ふしゅるー…トマト…ジュース…?」
梓「はい。ほら、今日吸血鬼ごっこしてたじゃないですか。だからほら、トマトジュース」ニコ
唯「ア、アリガトネ…」
梓「これ飲み終わったら帰りましょうね。時間も時間だし、親に怒られちゃいますっ」
唯「ソウダネ……」
唯「ふしゅるー! …モ、モウゲンカイダヨ…!」
梓「え?」
唯「ガマンデキナイヨー!」ギュッ
梓「わあっ!? と、トマトジュースが零れちゃったじゃないですかっ」
唯「ゲンカイ…ナンダヨ…」
梓「唯先輩…? は…! これはまさか…!」
―…禁じられた遊びってところかな―
梓(え…いや…そんな…うそぉ…///)
梓「ゆ、唯先輩…いくら人目がないからって…そんな…」
唯「ふしゅるー…」
梓「まさかそんな…唯先輩が…あふっ///」
梓「で、でも! あなたには和さんがいるじゃないですかっ、私なんかじゃダメですよっ」
唯「ガ…マ…ン…デ…キ…ナ…イ…ヨ…」
梓「ああ! もう! だめですってば! …それに私、心の準備が///」
唯「ふしゅるー! …ンアー」ガァ…
梓(こ、これは…! まさかキッスに!? あわわわ、まだ経験ないのに! わわわ)
梓「いやー!」グイッ
唯「モガァッ!?」
唯「ウッ…ゲエエエアアアア!? ウエエエ!!」パ…ヨロヨロ…
唯「ニン…ニクゥゥゥ!? ヒイイイイ!」
梓「…ダメですよっ。ちゃんと段階踏まなきゃっ…さよなら!」タタタタ…
唯「ウゲェーッ…ウグゥ…ア、アズニャンマッテ……ウゥ…」ヨロヨロ…
……
梓「た、ただいま!」
梓母「遅いっ…ってあんた、何顔真っ赤にして」
梓「…なんでもないもんっ」
梓母「そう? で、頼んでおいたにんにくはちゃんと買ってきた?」
梓「うん。ちゃんと…ってあれ!? ない!」
梓(あ…そういえばあの時唯先輩のキッスを防ぐ時に…!)
梓「落としてきちゃったかも…」
梓母「えー…もうっ!」
梓「ご、ごめんなさいぃっ」
…
梓(昨日はなんか唯先輩に悪いことしちゃったかな…後で謝りにいこっと)
純「お、梓! なんか今日は憂お休みみたいだよ」
梓「え、なにかあったのかな」
純「さぁ? 昨日寝る手前ってとこで憂から明日休むってメールがきてて」
梓「そっか…。それじゃあ放課後お見舞いにいこうよ」
純「そうだねー。きっと憂もよろこぶよ~」
純「お土産は何がいいと思う?」
梓「うーん…無難にお菓子とか」
純「無難すぎるなぁ…そうだ! この前憂と雑貨屋にいったときに欲しがってたネックレス! あれ買っていってあげよ!」
梓「あ、それいいかもね。じゃあそれ買っていってあげよう」
純「きっと歓喜の涙で平沢家水没しちゃうよ~」
…
澪「え、唯休みなの?」
紬「そうみたいなの。体調崩したのかしら」
律「アイスの食い過ぎで腹でも壊したんだろ?」
澪「ありえそうだよな。それ」
和「唯はドジだから…そうね。今日みんなでお見舞いに行ったらどうかしら」
律・紬「さんせー!」
澪「うん、そうだな…そうしよう。それじゃあ梓にも伝えておくか」
律「ああ、きっとあいつのことだから心配するだろうな」
紬「梓ちゃん。唯ちゃんのこと大好きだもんね」
律「ていうか和はいかないのか?」
和「ええ。私はやらなきゃいけない仕事があるから…終わったらいくわ」
律「そっかー」
律「いやーにしても憂ちゃんもダウンしてたとはなー」
梓「まさか唯先輩もだったとは…姉妹揃ってズル休みですっ、きっと」
紬「休んで何をしようってのかしらね!」ワクワク
純「私もこのメンバーと一緒でよかったのかなぁ」
澪「気にしなくていいよ。私たちも気にしてないから。純ちゃんのこと気にしてないから」
純「はぁ………って、ん?」
紬「ところで二人はさっき何を買っていたの?」
梓「あ、ネックレスです。といってもあまり高価なものじゃないですけど…」
純「憂は良い子だよね。質素な物を欲しがるんだから」
律「ちなみにどんなやつ? 見せてー」
梓「あ、ダメですっ。あっちについてから憂に見せてもらってください!」
律「ちぇー! ぶーぶー」
……
律「ごめんくーださい」
「……」
澪「出てこないな。二人とも寝てて気づいてないとか」
純「出かけてたりするんじゃないんですか?」
紬「そうねー…お部屋のカーテンも閉まってるし」
律「えー! ここまで来てあがれないとかやだーいっ」プイッ
梓「子供みたいなこと言わないでくださいよ。だから連絡してからいこうって言ったのに」
律「だってアポなし訪問の方がなんかいいじゃんっ」
紬「あら?」
純「どうかしました?」
紬「玄関の鍵がかかってない…」
律「不用心だなー。入ろうぜ」
梓「はい」
純「いやいやいや!」
純「なんの躊躇いもなしですか!」
律「純ちゃんよ。君はRPGとかで鍵がかかっていない家には入らないってのかい? 入るだろう? タンスとか調べるだろう? 宝箱あけちゃうだろう? ん?」
純「ゲームと現実を一緒にしないでくださいよっ」
澪「でもまぁ…なんか心配だな。一応中に二人がいるか確認だけはしておこうよ」
梓「そうですね。いなかったら私たちがここにいて留守番してればいいだけですし」
紬「留守番するの、夢だったの~」
律「ま、話はこれぐらいにしてお邪魔しちゃおうぜー…お邪魔しまーす…って、真っ暗だぁ」
純「室内に明りがまったくないですね」
紬「やっぱりお出かけなのかしらね?」
澪「おーい、唯ー! 憂ちゃーん! いるかー?」
澪「…返事がない…いなさそうだな」
律「唯の部屋見てきたけどやっぱりいなかったよ」
梓「憂もいませんでした」
紬「それじゃあお留守番決定♪」
純「ほんとにいいのかなぁ…」
律「そうと決まれば、ムギ! お茶の用意を!」
紬「そうくると思って既に用意しておきましたー」
澪「おい! 一応ここは人様の家なんだぞ…もぐもぐ…ん、このクッキー美味しいな…」
純(説得力ねぇ…)
梓「もうっ、皆さん勝手すぎます! あ、ムギ先輩。私は砂糖二つで」
紬「かしこまりました~」
純「こ、こんな神経が図太い人たちとなんか一緒にいられないよ! もうっ」ガチャリ
梓「純っ、待って! どこ行くのっ」
純「帰るんだよ! ふんっ」プイッ、タタタ…
純「まったく! あの人たちどうかしてるよ! 澪先輩まで…失望した!」
純「あ、帰る前にトイレ貸してもらおう…さっきから我慢してたんだよねぇ…」
ガチャッ…ガチャガチャ
純「あれ? 鍵掛ってる。誰か入ってるのかな? もーしもーし」コンコン
「……」
純「…仕方がない。さっさと帰って家でしよ……」
ガチャ、キィー……
純「! 開いた…てか中に誰も入っていませんよ…?」
純「立てつけ悪いのかなぁ。ここのトイレ…まぁ、いいや。お邪魔しまーす」
「ふしゅるー、ふしゅるー」
純「ふぅ…」ジャー
純「よし、今度こそ帰ろう…ってあれ? またドアが、開かないっ、んもうっ!」
「ふしゅるー」
純「ん? なんか変な息づかいが聞こえる…う、後ろ? …いない」
純「やだなぁ…なんか怖いよぉ…誰かー! ここを開けてー!」
「ふしゅるー、ふしゅるー」
純「開けてぇっ! なんか変な声聞こえるのー! おっかないからー!」
「ふしゅるー、ジュンチャンジュンチャン」
純「…この声、まさか憂?」
「ジュンチャン…ノドガカワクノ…オナカガスイタノ…」
純「憂? どこ? どこにいるの…?」
「ココダヨ…ジュンチャン…ふしゅるー」
純「ここって…!? ひゃああ!」
憂「ジュンチャアン…」
純「うわー!! 憂がトイレの天井に張り付いてる!? …は、そうか!」
憂「ジュンチャン…チヲ…チヲ…」
純(憂はああ見えてとっても悪戯好きなんだよねー! だからわざと家の鍵を開けたままにしたり真っ暗にしてたりして、私がトイレに入ることを予測した上でここに隠れて脅かそうとしていたんだ! 違いない!)
憂「チィー…」
純「びっくりしたよぉ、憂。でもあんた凄過ぎ! まさか天井に張り付いちゃうとは…憂は現代のアサシンになれるよ! あ、でもさきにサスケに出場してみようよ! 憂ならゴールまで10秒切るよ~」
憂「ジュンチャアアアン…」ヒュ…ボトッ
純「ああ! 落ちちゃった! だ、大丈夫憂!? 怪我はない? もうっ、あんな変な所に隠れるからだよっ」
ギュッ
純「って、いきなり抱きついて…どうした? ずっと待ってて寂しかったかい? おーよちよち」ナデナデ
憂「ウガー…」ガァ…
純「ていうかこんなところで甘えてないでみんなのところに連れていった方がいっかー。一応軽音部の皆さんも来てるんだよ。でも勝手にお茶会とか始めちゃって…ほんと無神経だよね。あ、そういえば憂にプレゼント持ってきたんだよ。ほら」ス
憂「ガー…ウ?」
純「開けてごらん? 憂が前から欲しがってたやつ」
憂「ングゥ…ゲェェッ!!!?」ガサゴソ…バッッ
純「あれ!? 欲しがってたやつそれだよね? 十字架ついたネックレスだよね?」
憂「キャアアアアアア!!」ゴロンゴロン
純「おお、よかった。転げまわるほど嬉しいんだね! でも憂には十字架が似合うねーまるで聖母さんだよ。あははっ」
憂「ヤメテェー!! アアアアアアア!!」
純「恥ずかしがんなって~。ほら、私がつけてあげるよ。後ろ向いて、動かないで~」ガシッ
憂「ヤーーーーッッ!!?」
……
律「あれ? 純ちゃんいない」
梓「気がつかなかったんですか? さっき帰っちゃいましたよ」
律「えー、なんでさぁ」
梓「面倒になったんじゃないですか?」
律「薄情なやつだなー」
澪「それにしてもまだ帰ってこないな…もう一回電話かけてみるか」ピッ
prrr
紬「あら? 電話の音?」
律「誰のだ?」
梓「私のじゃありません」
紬「向こうの部屋から聞こえてくるわ。私見てくる」
律「ああ」
紬「どこかしらぁ…あ、これね」
紬「って、これ。唯ちゃんの携帯じゃない!」
紬「お出かけするときに忘れて行っちゃったのかな?」
紬「……」
紬(私、人の携帯を黙って盗み見するのが夢だったのー)ピ、カチカチ
「ふしゅるー」
紬「あっらまぁー! 唯ちゃんったらこんな画像を…しかもフォルダにジャンル分けしてあるわ…! あらあらまぁ…ふむふむ…」
「ふしゅるー、ふしゅるー」
紬「やだっ、ムービーまであるわ…なんてゴーゴーマニアックなの…うふふ…やだぁ…♪」
「ふ、ふしゅるー…ふしゅるー」
紬「メールの方は…男の気配は……あ! 電話帳にお父さん以外の男の人の名前が! 中学の同級生かなにかかしら…やだわぁ…ノーセンキューよっ」
紬「…こんなところかな。さて、みんなのところに戻りましょ」スタスタ…
唯「ウグゥ…」グスン…
最終更新:2010年09月18日 19:57