春休み!

梓「はぁ…」

憂「どうしたの?」

梓「受験勉強が進まない…」

純「何言ってるの?受験は夏からでしょ?」

梓「そんなこと言ってると落ちるよ」

純「うっ。じゅ、受験生にそれは禁句なんだよぉ!」

梓「純は夏から受験生だもん。まだ言ってもいいよね?」

純「…あずさぁ~」

憂「あはは」

純「おっと…そろそろ行かなくちゃ」

憂「ジャズ研?」

純「うん。じゃまた明日ね」

梓「遅刻しないでよ?」

純「分かってるってー。ばいばい」

憂「明日から3年生だね」

梓「最上級生かー。全然実感わかない」

憂「くすくす」

梓「どうしたの?」

憂「私も昨日同じ事言ったんだよ。そしたらお姉ちゃんが」

梓「唯先輩が?」

憂「私は今日から一年生だよー。全然実感わかないって」

梓「あー分かる。中学生から高校生になったときとかも思ったもん」

憂「それでね、アドバイスしてくれたの」

梓「何?」

憂「楽しめばいいんじゃないのかなーだって。ふふっ」

梓「お気楽ねー…でも、唯先輩らしい」



始業式!

梓「またこの3人?」

憂「嬉しいねー」

純「ここまで来ると腐れ縁だよね」

梓「3年2組か」

憂「お姉ちゃんたちと一緒だね」

純「澪先輩の席を確保しなきゃ!」ダッ

憂「あ、純ちゃん!」ダッ

梓「もう!3年生になったんだから落ち着こうよー!」ダッ

純「どれが澪先輩の席か分からない…」

梓「そりゃそうでしょうよ…」

憂「あ、私の席、お姉ちゃんの席だー」

梓「何で分かるの!?姉妹愛!?」

純「は!?まさか匂いとか!?」

憂「ううん。中にプリント入ってたの」ピラ

梓「テスト?持って帰りなさいよ…」

純「唯先輩は相変わらずだねー…もう大学始まってるの?」

憂「うん!毎日忙しそうだよ」

純「軽音部の先輩は皆同じ大学なんだよね?」

憂「でも学部は違うから会う機会も少ないみたい」

梓「部活は?軽音部に皆で入ったんじゃないの?」

憂「お姉ちゃんはけいきん部だよ」

純「何それ」

憂「中国の楽器かな?楽しんでるよ」

梓「何で?唯先輩は軽音部に入るのかと思った」

憂「お姉ちゃんもそのつもりだったんだけど間違えちゃったんだって」

純「んな馬鹿な!そんなことなんてある!?」

憂「あったよ」

純「う…まぁあったけど…」

梓「唯先輩だからね…」

憂「他の皆さんも軽音部には入って無いみたいだよ」

純「そっかー。じゃぁもうバンドしないの?」

憂「ううん。時間作ってスタジオ行ったり、バンドは続けるって」

梓「そうなんだ。よかった」

憂「でも今はレポートに追われてて時間ないみたいだけどね」

純「大学って忙しいんだー」

憂「律さんは同じ学部だから、この前家来て二人で必死になって勉強してたよ」

梓「その二人で集まって勉強する日が来るとは…」

憂「パソコンでコピーとかペーストとか頑張ってるよ」

梓「あ、変わってなかった」



数日後!

純「そう言えばこの前紬先輩と会ったよ」

憂「そうなんだー。どこで?」

純「マックスバーガー。バイトしてた」

憂「まだ続けてたんだね」

純「すっごいてきぱき動いてた」

憂「もう長いもんね。すごいなぁ」

純「新人っぽい子に教育までしてたよ」

憂「ふふっ。アルバイトにも新入生がいるんだね」

梓「あ、私ビラ配り行かなきゃ」

純「お、頑張れー」

梓「うん。じゃぁね」



部室!

梓「今日のビラ配り終わり!」

梓「…」

梓「これからだよね!」

梓「頑張るって言ったもんね!」

梓「ね、先輩!」

梓「…」

梓「…」グー

梓「お腹すいたなぁ」

梓「…」

梓「帰ろうっと」

梓「あ、マックスバーガー」

梓「今日ムギ先輩居るかな?」

梓「覗いてみよう」

梓「…居ない、か」

梓「毎日バイトしてるわけじゃないし」

梓「律先輩と唯先輩はレポートやってるかな?」

梓「澪先輩はちゃんと友達作れてるかな?」

梓「…」

梓「憂に聞いてみようかな」

梓「去年までは私のほうが詳しかったのに…」

梓「そうだよね、姉妹だもんね」

梓「…」

梓「卒業しちゃったんだよね」

梓「…」

梓「居ないんだよね」

梓「…」



また数日後!

梓「ビラ配り最近してない…」

梓「…」

梓「廃部になっちゃうのかなー」

梓「約束したのに…」

梓「この場所で…」

梓「…」

梓「…眠くなってきちゃった」コテン

梓「最近暖かくなってきたから…」ウトウト

梓「…」

梓「…」

梓「…」パチ

梓「ちょっと眠っちゃってた…」

梓「…」

梓「…」

梓「一人なんだなぁ…」

梓「…」

梓「…」

「こんにちはー」ガチャ

梓「せんぱ…」

さわ子「梓ちゃん」

梓「あ、さわ子先生…」

さわ子「んー?私じゃない人期待しちゃった?」

梓「い、いえ…」

さわ子「ちょっとお邪魔するわね」

梓「もうティーセットないですよ」

梓「おいしいお茶を入れられる人も居ないです」

さわ子「お茶を飲みに来たわけじゃないわよ」

梓「冗談言って笑わしてくれる人も居ないですよ」

さわ子「梓ちゃんも十分面白いけどね」

梓「メイド服が似合う人も居ませんし」

さわ子「今はまだ新作の衣装で着てないわ」

梓「演奏も聞かせてあげられません」

さわ子「…うん」

梓「先輩はもういないんです」

さわ子「そうね」

梓「一人じゃ…何も出来ないです」

さわ子「それなら、仲間を集めればいいじゃない」

梓「新歓ライブも出来ないのにどうしたら入部してくれるんですか」

梓「先輩がいなきゃ何も出来ない…何したらいいのかも…」

さわ子「梓ちゃんが先輩なのよ?」

梓「でも私には…どうしたらいいのか分からないです」

さわ子「まったく…相変わらず真面目ね」

梓「え?」

さわ子「楽しめばいいのよ」

梓「あ…」

さわ子「高校生活最後の年なんだから。思い出に捉われるよりも、今を楽しみなさい」

梓「…はい」

さわ子「そういう先輩の背中を梓ちゃんはずっと見てきたから、もう知ってたかしら?」

梓「はい!」

さわ子「いつものがまだ物置きにはいってるはずよ」ガサゴソ

梓「またあの着ぐるみですか?あれ、不評…」

さわ子「文句言わない!」

梓「は、はい!」

さわ子「さっさとビラ配り行く!」

梓「でもビラ配り何かで…」

さわ子「…軽音部が廃部寸前だったって知ってる?」

梓「はい。聞きました」

さわ子「やりたいって強く思っていたら、人は集まるものなのよ」

梓「…」

さわ子「唯ちゃんなんて軽音部のけの字も知らずに入部したんだから」

梓「あ!さわ子先生と話してる場合じゃない!」

さわ子「酷い言い方ね。泣いちゃうわよ」

梓「行ってきます!!」ダッ



次の日!

純「今年の一回生は経験者が多いから助かるよ」

梓「抜かされないように頑張ってね」

純「これでも3年目なんだぞー。それにパートリーダーなんだから!」

憂「そうなの?すごいね純ちゃん」

純「へっへーん」

憂「梓ちゃんは軽音部どう?」

梓「う…それが一年生がなかなか来てくれなくて…」

純「あの着ぐるみがいけないんじゃない?」

梓「あ、やっぱり?」

憂「ライブするとかは?」

梓「ギター一人じゃ盛り上がらないんだよね。リズム隊がいると良いんだけど」

憂「先輩方に頼んでみるのは?」

梓「先輩にはもう頼らないの。私が部長だもん」

憂「ふふっ。梓ちゃんかっこいい」

梓「リズム隊がいるといいんだけど」

純「そうだねー」

梓「リズム隊入れてバンドしたいんだけど」

純「そう…」

梓「純!お願い!」

純「ま、梓さんの頼みなら仕方ないな」

梓「純ー!ありがとう!」ギュー

純「うわっ。梓が抱きつくなんて!?」

憂「私も何かしたい!」

梓「憂!ありがとう!でもギターはないし…音楽室にあるもので憂に出来そうなのは…」

憂「タンバリンがいいな」

梓「…うん、憂は唯先輩の妹だね」

憂「えへへー」

純「憂。多分それ誉めてない」



昼休み!

憂「一年生の教室久しぶりだね」

純「この廊下なら見てくれるでしょ」

梓「うぅ…緊張する…」

純「緊張するな!部長だろ!」

梓「だってゲリラライブでしかもボーカルまで…」

純「そんな事言ったら、突然ライブするって決まった私たちはどうなのー」

梓「うん、そうだよね、頑張ろう」

憂「うん!」シャカシャカ

純「まるで緊張してない…さすがだ…」

梓「純はベース平気?」

純「私を舐めるなよ。それにこの曲好きだから練習してたんだ」

梓「あ、そうなんだ。私この曲聞いて、軽音部って決めたんだよ」

純「梓かわったよね」

梓「え?」

純「先輩が卒業してから心配してたけど、もう大丈夫だね」

梓「…ご心配をおかけしました」

純「いいっていいって」

梓「一緒の写真もお揃いのキーホルダーも、先輩方と過ごした時間も全部たからもの」

純「たからもの、か」

梓「全部胸の中にしまってあるから、先に進めるんだよ」

梓「それでね、卒業するときになって楽しかったって笑って、先輩方みたいに卒業できたらいいな」

純「そっかー。梓も大人になったな」

梓「純に言われたくない」

純「はいはーい」

梓「ねぇ…届くよね?」

憂「きっと届くよ」

純「先輩に…新しい軽音部の仲間にもね」

梓「うん。それじゃ…行くよ!」


梓「一年生の皆さんこんにちはー!」

一年生「え?何か始まるの?」ザワザワ

一年生「ギターとベースと…タンバリン」

一年生「あ、軽音部かな?」

梓「軽音部です!」

梓「先輩方が卒業してしまって、今、軽音部には一人しか部員が居ません!」

梓「一人で部室は広すぎます。一人での演奏は物足りません。一人での曲作りは進みません」

梓「私には仲間が必要です」

梓「一緒に演奏してお茶して、楽しめる仲間が必要です」

梓「新入生の皆さん、軽音部の仲間になってくれませんか!?」

梓「今日は友達に協力してもらってなんですけど…軽音部の曲を披露したいと思います!」

梓「聞いてください!」

梓「ふでぺん~ボールペン~!」


ふでペン FU FU
ふるえる FU FU
はじめてキミへの GREETING CARD
ときめき PASSION
あふれて ACTION
はみだしちゃうかもね

キミの笑顔想像して
いいとこ見せたくなるよ
情熱をにぎりしめ
振り向かせなきゃ!

愛をこめて スラスラとね さあ書き出そう
受け取ったキミに しあわせが つながるように
夢を見せて クルクルとね 字が舞い躍る
がんばれふでペン ここまできたから
かなり本気よ☆


梓「はぁ…聞いてくれてありがとうございます!」

梓「軽音部は楽しいです!」

梓「何かしたいけど、何をしていいのか分からない」

梓「3年間夢中になれる場所が欲しい」

梓「軽音部は」

先生「こらーっ!お前ら何してる!」

梓「きゃっ。先生!?」

純「うわ、梓!逃げるぞ!」ダッ

憂「梓ちゃん早く!」ダッ

梓「にゅ、入部待ってるからー!!」ダッ

先生「逃げるなー!」



放課後!

梓「はぁ…一年生来ないなぁ…」

さわ子「こんにちはー。梓ちゃんいる?」ガチャ

梓「さわ子先生!昼休みはすみませんでした!」

さわ子「職員室までバッチリ聞こえてたわよ。思い切ったことしたわね」

梓「すみません!だから廃部とか部活停止は…」

さわ子「そんなこと無いから安心して…それより一年生が」

梓「あ、すみません…すぐにビラを…」

さわ子「違う違う。とにかく落ち着きなさい」

梓「はい…」

さわ子「梓ちゃんは頑張ってるわよ」

梓「でもこのままじゃ…」

さわ子「頑張ってるから、伝わったのね」

梓「え?」

さわ子「入っておいで」

一年生「失礼します…」

梓「ええ!?」

さわ子「私は部室案内しただけだから、もう行くわね」

一年生「あの、ありがとうございました」

さわ子「どういたしまして。頑張ってね」

一年生「はい」

梓「あ、あの…」

一年生「えっと…入部希望なんですけど…」


梓「お名前は何て言うの?」

一年生「あ…けい」

梓「パートはどこ?」

一年生「まだ…」

梓「誕生日は?」

梓「血液型は?」

一年生「えっと…あの…」

梓「好きな食べ物は?」

一年生「あ、あの!」

梓「あ…ごめんね。つい…」

一年生「これからよろしくお願いします!」

梓「…ようこそ軽音部へ!」ニコッ



おわり



最終更新:2010年09月22日 03:10