―――夕方、放課後

唯「じゃ~ね~」

梓「はい、また明日」


唯「ふ~…」

唯「そういえば今日はハンバーグだった!」

唯「早く帰ろ~♪」

唯「…お?」

老婆「…」

唯(なんか凄いおばあさん…占い師?)

老婆「…お嬢ちゃん」

唯「へっ?わたし?」

老婆「そうだよ…おいで」


唯「?」

老婆「いきなりで悪いけど、これが何かわかるかい?」

唯「ふろしき…?」

老婆「そうだよ。ふろしき。でも」


サッ


唯「鉛筆が増えた……」

老婆「そう。増えるんだよ」

唯「す、すごいねー!!」

老婆「この2本を覆って…ほら」


サッ


唯「今度は4本になった…」

唯「おばあさん凄いね~手品師?」

老婆「手品じゃないんだよ」

唯「ふぇ?」

老婆「これはね、包んだものを複製できるふろしきなんだよ」

唯「ふくせい?」

老婆「そう、複製。コピー。お嬢ちゃん、髪留め貸してごらん」

唯「?……はい」

老婆「いくよ…」


サッ


唯「おぉ~…」

老婆「すごいでしょう?」

唯「すすごいけど…なんか怖いな」

老婆「あはは、そう怯えなくていいよ」

老婆「お嬢ちゃん」

唯「?」

老婆「このふろしき、お嬢ちゃんに持っていてほしいんだ」

唯「え!?」

老婆「シーッ、これは内緒だよ」

唯「ででもなんて私に?」

老婆「普段から頑張っているご褒美だよ」

唯「頑張って……う~ん」

老婆「そのふろしきを、世のため人のために役立ててくれ」

唯「う、うん」

老婆「ただし、そのふろしきのことは1人にしか言ってはいけない。いいね?」

唯「え……うん」

老婆「2人以上に言ってしまったとき、そのふろしきは消えてしまう…」

老婆「頼んだよ……」

唯「え」

唯(消えちゃった……)

唯(なんか不気味~…帰ったら憂に相談しよう)

唯(あ、1人だけだから…うん、やっぱり憂だよね妹だし)


―――


唯(何を増やそうかなぁ)

唯「ただいまー」

憂「おかえり、お姉ちゃん♪」

憂「今日はハンバーグだよ」

唯「ふおおお待ってました!!」

憂「うん♪早く着替えてきてね!」

唯「了解!」

唯「んあと、憂に見せたいものがあるんだ~」

唯「あとで見せるね」トテトテ

憂(…?)


―――


唯「ゴッツァンデス!!」

憂「お姉ちゃん食後のアイスあるよ~?」

唯「食べる~」

唯「あ!そうだ!うい~見てみて~」

憂「なあに?」

唯「テテテテン♪まほうのふろしき~」

憂「な~に~?手品?」

唯「見てなさいって!」

唯「ここにアイスがありま~す」

唯「これを~…はっ」


サッ

どん


唯「増えました~」

憂「えっ…すっすごい!!お姉ちゃん!!!」

唯「でしょお~」エヘヘ

憂「どうやってるのー!?」

唯「これで覆って……わん、つ、すりー!」


サッ

どん


憂「わぁ…すご~い!!」

憂「どこにアイス隠してるの!?」

唯「隠してないよ、ほんとに増えてるんだよ~」

憂「教えてよ~お姉ちゃん」

唯「教えてほしい!?」

憂「うん!!」

唯「ほんとにぃ!?」

憂「ほんとに!!」
憂(はぁ~かわいいなぁお姉ちゃん)

唯「実は、本当に増えているのです!」

憂「お姉ちゃん!」

唯「ほんとだって」

憂「もう…」

唯「ほんとのほんとだよ?」

唯「じゃあ裏側から見てみて」

憂「うん」

唯「いくよ」


サッ

どん


唯「ほら」

憂「…」

憂「お姉ちゃん…」

憂「…」ゴシゴシ

憂「夢?」

唯「夢じゃないよ!!じゃ、ういやってみ!!」

憂「こう?」

唯「うん、それで覆ってサッとひく」

憂「よし」


サッ

どん


憂「ほんとだぁ…」

唯「でしょお~」

憂「これ…なんなのかな?」

唯「?ふろしきだよ」

憂「う、うん、でも」

憂「なんでも増やせちゃうのかな?」

唯「う~ん…何でも、ねぇ」

憂「この食器も増やせちゃうかな」

唯「やってみて~」

憂「う、うん」


サッ

どん


憂「増えた…使った状態で」

唯「すごいね~」

憂「……お姉ちゃん…」

唯「なぁに?」

憂「お金も…増やせちゃうのかな…」

唯「え!?」

憂「い、いや、そこの貯金箱が目についただけだから……」

唯「……憂…てんさいかも」

唯「貸して貸して!」

憂「うん」

唯「貯金箱を覆って~」


サッ

どん


唯憂「増えた…」

唯「ふおおおおおおおおおおお!!!!!!」

唯「憂!!やったよ!!!大金持ちだよ!!!!」

憂「うん!!!」

憂「……でも、なんかバチが当たりそうかも…」

唯「あ、そうそう、たしかね、世のため人のために使えって言ってた」

憂「誰?」

唯「おばあさん」

憂「おばあさん!?」

憂「このふろしきはおばあさんから…?」

唯「そうそう、くれるって~」

憂「こんなものもらっていいのかな…」

唯「頑張ってるご褒美だって」

憂「ちょっと怖いね…」

唯「悪いことに使わなければ大丈夫だよ!」

憂「そ、そうだよね」


唯「うひょおお!!じゃあ貯金箱コピーしまくろ~~!!」

憂「…」

唯「それっそれっ」

ササッ ササッ

どん どん

唯「おほほほほ~~」

憂「…お姉ちゃん///」

唯「ふぇ?」

憂「その中…5円玉とか10円玉しか入ってないから///」

唯「おおお!!確かに!!」

ガサゴソ

唯「じゃあこの1万円札をコピーしよう!!!」

憂「うん///」

唯「さすが憂!!私の妹!!」


ササッ ササッ

  •  ・ ・ ・


唯「……うい…」

憂「お姉ちゃん…」

唯「これが…100万円…!!」

憂「うん…!」

唯「うい…叩いて」

憂「へっ?」

憂「これがええのんか~」ペチペチ

唯「ああん…もっとぉ~」

憂「ええのんか~」ペチペチ

唯「ああん…」

憂「お姉ちゃん」

唯「もっとぉ」

憂「もういいよお…」

唯「憂のいじわる!」

憂「そ、そんな」

憂「ええのんか~」ペチペチ

唯「あはん…」


  •  ・ ・ ・ ・


唯「あ」

憂「ん…」



唯「憂、起きて!!もう朝だよぉ」

憂「はっ」

唯「寝ちゃってたね~」

憂「いけないっ!早くお弁当作らないと」

唯「いいよぉ~」

憂「え?」

唯「ほら」チラチラ

憂「あ…あ~」

唯「買っていくよ」

憂「ごめんね…」

唯「ううん、全然いいよ」

憂「パンでいい?」

唯「うん!」


唯「今日から大金持ち♪」


―――――――

―がっこう


憂「~♪」

純「おっおはよ、憂」

憂「純ちゃんおはよ~♪」

純「なんか超機嫌よさそうだね、憂」

憂「そうかな~」

純「そんなことよりさあ、知ってる?今朝のニュース

憂「え?」

純「ラーメン屋に、『子どもたちに食べさせて~』って100万円おいてったおっさんが来たんだって!」

憂「へ~…すごいねぇ」

純「すごいよね~」

純「でもさ、そんなこと普通すると思う?その100万円実は偽札なんじゃないかって私は踏んでる」

憂「…へ、は、ははは、ありえるかも…」

純「でしょ!」

憂(すっごいヤバいかも…)

憂(そういえばお札って…)

憂「…偽札かあ~」

純「なんか怪しい中国人がいっぱい作ってるっていうじゃん!」

憂「あはは…」ガサゴソ

『1万円』

純「あっ憂なんで1万円なんて持って」

憂「純ちゃんしっ!」

純「…う、うん、どしたの?」

憂「…お姉ちゃんのお誕生日プレゼント買いに行くんだぁ…」

純「唯先輩もうすぐなの?」

憂「え?…いや、まだだけど早めにね」

純「憂は優しいな~」

憂「あはは…」

憂(番号が…あるんだ)

憂「純ちゃんごめん、ちょっとトイレ行ってくるね」

純「えっじゃあ私も~」

憂「いや!!大丈夫だよぉ~!絶対だいじょうぶ!!全然!!」

純「?…私は大丈夫じゃ」

憂「大丈夫!すぐ帰ってくるよっ!!」ダダッ

純「…?」


  •  ・ ・ ・ ・


憂(私は購買で買うつもりだったから大丈夫だけど)

憂(朝お姉ちゃんは買っていくって……)

憂(お姉ちゃんがもし買ってたらお姉ちゃんと外国に……)

憂(お姉ちゃん!!買ってないで!!!)

憂「はぁはぁ」

ガラッ

唯「あっうい!」

憂「お姉ちゃん!!」

唯「ちょうどよかった~~憂に言い忘れてたことがあるんだ」

憂「?」

唯「あのふろしきのことは、二人の秘密ね」コソコソ

憂「うん///わかった」

唯「じゃそーゆーことで」

律「お二人さ~ん仲好さそうだね~」

澪「はは、うらやましいな律」

律「え?聡とはそんな…」


憂「あ、お姉ちゃん!」コソ

唯「ん?」

憂「そのお札もう使った?」コソ

唯「そうそう、朝ね買うの忘れちゃったんだぁ~」

憂「良かったぁ………そ、それでね、そのお札、絶対使っちゃだめだよ!」コソ

唯「なんで?」コソ

憂「お札には番号が書いてあるから、何枚も使うとバレちゃうんだよ」コソ

唯「…ほう……じゃあ一枚だけなら大丈夫かな?」コソ

憂「あっ……そうだけど…念のためやめておかない?」コソ

唯「う~ん……でも…私今日これしか持ってない」コソ

憂「私の使って!」

唯「そしたら憂の分は」

憂「私は大丈夫だから!!」

唯「えっ」

憂「じゃ、また後でね!!」ダッ


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最終更新:2010年09月24日 00:04