帰り道

梓「もう、高校三年生だね……」

純「うん。早いね」

憂「お姉ちゃんもいなくなっちゃったし、ね」

梓「寂しくない? 憂」

憂「ううん。大丈夫だよ」

梓「そっか」

純「ねぇ、憂。今度の休みどこか行かない?」

憂「あ、いいね! どこ行こうか?」

梓「遊園地、とか?」

純「遊園地かー、最近行ってないなー」

梓「じゃあ、そこでよくない?」

憂「いいかも! でも、どこの遊園地?」

純「ディズニーランド、とか?」

梓「えー、待ち時間だけで一日終わっちゃうよ」

憂「じゃあ、フレンズランドは?」

純「あー、隣街の?」

憂「うん」

梓「いいかもね、そこにしよっか」

憂「何曜日の何時に行く?」

純「今度の土曜日くらいでいいんじゃないかな」

梓「早く家出ない? そしたらたくさん遊べるし」

純「そうしよっか」

梓「じゃあ、土曜日の6:00ぐらいに、桜駅の前で待ち合わせね」


土曜日

梓「うーん、早く来すぎちゃったかな」

梓「まだ4:00だし」

梓「周りに誰もいないしなー」

梓「暇だー!」

梓「…………」

梓「何やってるんだろ。私」

梓(それにしても暇だなぁ)

梓(何かテンションあがってきたぞ)

梓「あ、梓ちゃん待った?」

梓「ううん。憂、早いね」

梓「梓ちゃんの方が早いよ~」

梓「純遅いね」

梓「そうだね」

梓「髪のセットに手間取ってるんだろうね」

梓「純ちゃん、クセ毛だからね」

梓「あぁー、なんか徹夜とかしてそう」

梓「もしかしたら、まだ寝てたりしてね」

憂「……梓ちゃん」

梓「ひぃぃぃぃっ! な、いたなら言ってよ!」

憂「話しかけようとしたらね、『あ、梓ちゃん待った?』とか言い出すから、びっくりしたんだ」

梓「言わないでね! 純には言わないでね!」

憂「うん……あと、全然似てなかったよ」

梓「そ、そう? 憂の口調はそっくりじゃなかった?」

憂「うーん、いまいち」

梓「がーん」

憂「それにしても、梓ちゃん早いね。いつ来たの?」

梓「今さっきだよ」

憂「一人で暇じゃなかった?」

梓「暇だから声まねやってたんだ。誰もいないから、テンションあがってね」

憂「そっかー」

梓「今何時?」

憂「4:30」

梓「まだ一時間半もあるんだー」

憂「うん。お弁当作りのために早く起きてたんだけどね。意外と早く作れちゃった」

梓「え? お弁当?」

憂「うん。おひるごはんにね」

梓「うわー、私、お昼ご飯持って来ちゃった」

憂「じゃあさ、それ朝ごはんにしたら?」

梓「あ、それいいかも」

憂「でしょ。私も朝ごはん用のを別に作ってるんだ」

梓「準備いいねー、憂」

憂「えへへ」

梓「あーあ、後は純か」

憂「何してるんだろうねー」


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ジリリリリリリリリリリリ!!!  純「うるさーーい!」  バン!  ……リン

純「ふぁ~あ、今何時………」

純「うぅん? まだ4:30じゃない。何でこんなに早く目覚ましなるのよ」

純「今日なんかあったっけ……」

純「…………………………」

純「……あ。そうだ、遊園地」

純「まだ4:30だしなぁ。もう少し寝れるなぁ」

純「うーん、でも髪のセットに時間かかるからなぁ」

純「おきた方がいいよね……」

純「はー、昨日ずっとゲームやってて、肩がこるよ」

純「ま、いいや。顔洗おう」

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梓「そう言えばさ、進路希望調査の紙だした?」

憂「うん。出したよ」

梓「どこにするの? 大学」

憂「うーんと、私はN女。梓ちゃんは?」

梓「私は音大かN女だね」

憂「へえ。音大って、ミュージシャンになりたいの?」

梓「うーん、なりたい職業ってのは、まだ決めてないんだけど」

梓「音楽に関係する職業につきたいなーって」

梓「憂は何かなりたいものある?」

憂「小学校のころは、お姉ちゃんのお嫁さんって書いてたんだけどね」

梓「憂らしい」クスッ

憂「今は……、うん。大学しか決まってないなぁ」

梓「高校三年生でこれって、やばいのかな?」

憂「さあ? でも、大学でなりたい職業決めればいいよ」

梓「かもね」

憂「それに、理想があったって、努力しなきゃ叶わないんだから。まずは、大学に入る努力をするよ」

梓「何か、お説教されてるみたい」

憂「え? ごめん」

梓「いいって。でも、理想かぁ……」

梓(実際のところ、HTTで音楽界デビューとか、してみたいけど)

梓(もう、無理だろうなぁ)

梓(先輩達、大学でサークル作ってるのかな?)

梓(……私も、N女行ってみようかな)

憂「うわー、朝日が出てきたよ!」

梓「本当だ!」

憂「うーん、明るくなると心も弾むね」

梓「そうだね。今何時?」

憂「えーと、5:00前」


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純「うー! 寝癖とれない!」

純「あああ! 遅れちゃう!」

純「もう! なんでこんなクセ毛なのよ!」

純「あー! もういい! このまま縛る!」

純「こうして、……よし。出来た!」

純「…………うわー」

純「なんでこんなに、ツインが膨らんでるの?」

純「笑われるなぁ、これじゃあ」

純「しゃーない。寝癖と格闘するか」

純「もう。寝癖取れなさいよ!」


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梓「そう言えばさ、唯先輩って今元気?」

憂「うん。三日に一回は電話して来るんだ」

梓「ふーん」

憂「向こうでも四人で仲良くやってるみたいだよ」

梓(……いいなぁ)

憂「あ、忘れてた。お姉ちゃんから『あずにゃんに言っといてー』って言われてたんだ!」

梓「え?」

憂「N女で待ってるから来てねって……」

梓「待ってる……」

憂「向こうでね、新放課後ティータイムって名乗って、バンド活動してるんだって」

梓「ふうん」

梓(待ってるか……)

梓(先輩達が、私を……)

梓(N女、本当に志望しようかな)

憂「梓ちゃん?」

梓「え?」

憂「いや、いきなり黙りこくっちゃって、どうしたのかなーって」

梓「ううん。ちょっと考え事してただけ」

憂「そっか」

梓「今何時?」

憂「えーと、5:30」

梓「あと30分しかないのに。純どうしたんだろ」

憂「まさか、寝坊とか?」

梓「まさか……ね」


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純「やっと髪直った……って、もう五時半!?」

純「朝ごはん食べてる暇ないよ! もう出なきゃ!」

純「もう! クセ毛に産んだお母さんの馬鹿ー!」

純(家から駅まで20分……途中でコンビニによる時間は、ある!)

純(コンビニでおにぎり買って、それを朝飯にすれば……)

純(よし、完璧!)


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梓「あー! もう、純のやつなにしてるのよ!」

憂「電話しようか?」

梓「そうした方がいい……かなぁ?」

憂「微妙だよね」

梓「うん。ぎりぎりに来そうだからね」

憂「それで、『6時には間に合ってるじゃん!』とか言うの」

梓「あ、似てる似てる」

憂「えへへ、そうかな」

梓「うん」

純「お、お待たせ~」ハアハア

梓「あ、純! 遅いよ!」

純「えー? い、今何時よ?」

憂「今は5:56だよ」

純「ろ、6:00には間に合ってるじゃん!」

梓(憂の言ったとおりだ……)

純「間に合っただけいいじゃん、ね。憂?」

憂「う、うん」

純「でしょ? で、駅に来たはいいけど、何時に電車出るの?」

梓「あと十分後よ」


十分後

電車内

純「いやー、必死で自転車漕いでここまで来たから、疲れたよ」

純「つーかさ、隣町なんだから、自転車で行けばよくなかった?」

梓「いまさら言っても遅いわよ。それに、自転車だったら帰りは疲れすぎて大変よ」

純「あ、そうかもね」

憂「それより皆、朝ごはん食べようよ」

梓「あ、うん」

純「へー、朝からそんな食べるの? 梓」

梓「あ、これ? お昼ご飯の代わりに作ってきたのよ」

純「え? お昼ごはんいるの?」

憂「私が三人分作ってきたから大丈夫だよ」

純「なんだ、よかった」

梓「純は何が朝ごはんなの?」

純「私? おにぎり」

梓「コンビニの?」

純「うん。寝坊しちゃってさ」

憂「大変だったねー」

純「うん。髪の毛のクセと一時間は格闘したね」


隣町

純「あー、やっときたね」

憂「うん。もう7:00だね」

梓「あ、フレンズランドも7:00開園じゃなかった?」

憂「うん。丁度いいね」

純「じゃ、行こうか」

憂「うん!」


フレンズランド

純「着いた着いたー! 何乗る?」

梓「何でも乗れるんじゃない? 時間もあるし、あまり客もいないし」

憂「そうだね。あ、じゃあさ、メリーゴーランドに乗らない? あれ、結構好きなんだよね」

梓(なんかファンシー……)

純「うん、メリーゴーランドに乗ろうか」

憂「じゃあ、私白いお馬さんね!」

梓「いや、みんな馬でしょ」

純「馬によっても違いがあるのよ。それよりさ、梓、一緒に乗らない?」

梓「へ?」

純「メリーゴーランドとかにさ、二人で乗ってみたかったの」

梓「いや、まぁいいけど」

純「じゃ、早く乗ろうよ!」

憂「乗ろう乗ろう!」

三人がメリーゴーランドに乗る。軽快な音楽と共に、作り物の馬達が動き出す。

憂「いやー! 楽しー!」

純「何か、憂の意外な一面が見えたって言うか……」

梓「うん。メリーゴーランドに乗って大ハシャギしてる高校生なんて、始めてみたよ」

純「でも、こうして久々に乗ると、楽しくなるかも」

梓「かもね。どこか懐かしいし」

純「ねえ、次何乗る?」

梓「フリーフォールは?」

純「何それ?」

梓「一気に上まで上って、そこから落下するの。ぐぅーん! って」

純「へえ、面白そう! 乗ってみようか!」


フリーフォール

純「高い高い高い高い!! やだー! やめてー!」

梓「純! 暴れると落ちるよ!」

憂「うわぁ……絶景」

梓「でしょ? 結構高さあるから、遊園地全体を見渡せるんだよねー」

純「たーーかーーいーーー!!」

梓「大丈夫だよ、もう少しで落ちるから」

純「え?」

ごうん、と音を立てて。

純「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

梓たちを乗せた長椅子が、落下する。

純「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いいいいいいいいいいい!!!!」


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最終更新:2011年10月18日 01:50