紬「これで全員揃ったね。じゃあ打ち合わせを始めましょうか」

梓「あ、はいです!」

純「よろしくおねがいしま~す」

憂「うふふっ」

紬「ええと、とりあえず澪ちゃんの心は掴みました。おそらく撮影にも協力してくれるわ」

純「はあ…すごいですね…」

梓「むぎ先輩、どうやって澪先輩を説得したんですか?」

紬「ふふっ、そう大したことはしてないわ。ただ誇張した事実の中に小さな嘘をきつめに縫い込んだだけよ」

梓「…よくわかりません」

紬「まあこればっかりは一朝一夕じゃ無理ね。あなたたちも精進すること」

純「…なんかかっこいいね」

梓「もっとちゃんとした目的ならよかったんだけどね」

憂「そんなことよりセックスは!?私の欲求解消はどうなったの!?」

紬「チッ…そうね、じゃあ本題に入りましょうか。とりあえず今の澪ちゃんの心理状態について軽く説明するね」

紬「澪ちゃんは今、自分の作詞能力に対して多いに疑問、というか無力感を持っています」

紬「そして、自分の作詞能力を向上させるために、経験値を上げようともがいている状態ね」

梓「昨日の話し合いでそんなことになっちゃったんですか?」

紬「ええ。苦労して作曲した甲斐があったというものよ~」

梓「やっぱりあの曲は一晩で書き上げたものなんですか?」

紬「人間いざって時にはチャクラが開くものよね~」

純「なになに、曲ってなんのこと?」

梓「まあ、それはまた後で話すよ…えっとそれで…」

紬「うん、澪ちゃんは短期間で飛躍的に経験値を上げるために、普通ではない経験をする、という手段をとることになりました」

梓「うーん、よくわからないけど、要するにその普通ではない経験というのが」

憂「私の粘膜との出会いなわけですね!」

紬「…ええ」


梓「それは…もう澪先輩は納得しているんですか?」

紬「ええ。腹はできているようよ。今後気持ちが変わらなければ、実行にまではもっていけるわ」

憂「ハラショー!」

純「で、でも、セックスなんてよく納得しましたね、澪先輩も…」

紬「まあそこは私ですもの、舌先三寸でどうとでもなるわよ」

梓「どうとでもなるものですか…」

紬「ええ、どうとでも。気になる?」

純「よろしければ手口の一片なりとご教授願います」

紬「う~ん、じゃあちょっとだけね」

憂「空気読んであげるからさっさとしてくださいね」

紬「…ええ」

紬「短期間で経験できる劇的な出来事って何だと思う?」

紬「宗教なら悟りなりヌミノーゼなりとあるけれど、一般の人には少し難しいわよね」

純「梓、ヌミノーゼって何?」

梓「…栄養素か何かじゃない?」

紬「まあ最も手っ取り早いのは『喪失』ね」

梓「喪失…ですか」

紬「そう。親しい人…たとえば親や恋人を亡くすとかね」

純「確かに否が応でも劇的にならざるを得ませんね」

紬「ええ。でもさすがにそれを手段に用いるのは不可能なので却下」

紬「あとは『挫折』なんかもいいわね。職を失うとか、受験に失敗するとか、友人に裏切られるとか」

純「なるほど」

紬「でも、それは今回は使えなかったわ。手段の段階で使ってしまったから」

紬「で、今回用いるのは、『喪失』や『挫折』とは別のベクトルを向いた劇的体験、すなわち『獲得』の中の『恋愛』ね」

梓「前の二つはマイナスだけど、恋愛はプラスですね。字面だけ見れば」

紬「ふふっ、そうね。それで、私は澪ちゃんにそういった旨を伝えたわ」

純「でも、急に恋愛しろったって難しいですよね…」

紬「ええ、その通りね。澪ちゃんもそう反論したわ。だから私はこう言ったわ」

紬「『形から入るのも悪くはないんじゃない?』ってね。そして、レズ・セックスを提案した」

梓「ううん…なんだか筋が通っているような、通っていないような…」

紬「通っていない筋を通すのがプロというものよ」

純「…紬先輩は何のプロなんだろう」

紬「もちろん澪ちゃんは拒否…いえ、むしろ拒絶したわね。顔が真っ赤でかわいかったわ~」

紬「で、こう説得したわ。『セックスというのはそれだけで人生における一大イベントでしょう?劇的な経験としては申し分がないわ』って」

梓「そう…なんですかね…」

純「ここのところの憂のせいでその辺の感覚が麻痺してきてるよね…」

憂「どういたしまして」

純「…また、口ふさごうか?」

紬「それで、澪ちゃんの気持ちは少し揺らぎ始めた。少し揺らげば十分、あとは力任せに倒してしまえばいいわ」

紬「私はそれから、レズ・セックスの素晴らしさを歴史的・文化的・民俗学的見地を絡めつつ諄々と説明したわ」

梓「諄々と説明するだけの知識があったんですね、むぎ先輩…」

紬「知識と情報は何よりも大切なものだから」

純「なるほど…」

紬「それから、こうも言ったわ。『常識から見れば特殊な行為であるレズ・セックスを経験すれば、普通の男性とのセックスとは比べられないほどの刺激を受けることができるはず』って。これが効いたわね」

紬「こうしてとうとう澪ちゃんはレズ・セックスをすることを決意しました。めでたしめでたし」

純「おー」パチパチパチ

梓「すごーい!(今後この人の言動は警戒しよう…)」パチパチパチ

紬「まあ、そんなわけでここまでの段取りは完了。後は…本番に移るのみね」

憂「二つの意味でですね!」

梓「あの、むぎ先輩。澪先輩は誰とセックスするかを知っているんですか?」

紬「ふふっ、まだよ。澪ちゃんは週末に私の家でレズ・セックスをするということしか知らないわ」

梓「それも…やっぱり策のうちなんですね?」

紬「さ~て、どうだと思う?」

梓「(恐ろしい人…!)」

紬「と、いうわけで…はいこれ、二人にも回してくれる?」

梓「あ、はい。…何ですかこれ」

純「…『台本及び設定資料』!?」

梓「こんなものまで作ったんですか!?」

紬「ええ。それぞれのモチベーションとか立ち位置とか、撮影の流れなんかを簡単にざっとまとめておいたの」

梓「……簡単にってレベルじゃないですよこれ…」

紬「とりあえず頭に入れておいてね?台本とは書いてあるけど、セリフを一字一句丸暗記する必要はないから」

純「はあ…」

紬「撮影機材その他の準備物は一切私のほうで用意するね。まあ大体のことはそれを読んでもらえれば把握できると思うから」

梓「わかりました」

紬「うん!じゃあ、とりあえずこれで私からは以上です。何か質問はある?」

純「あの、私たちのほうで何かすることはありますか?」

紬「いつもどおりに、普通に普通に過ごすこと。これが一番大切ね」

梓「やっぱり特にすることはない、と」

紬「澪ちゃんに対しては少し注意してね?精神的に不安定なときもあるだろうから」

純「だってさ」

梓「うん、わかった…」

紬「土曜日の20時に迎えの車を出すから、できれば一所に集まっておいてくれる?」

梓「じゃあ…ウチでいい?」

純「私は構わないよ」

梓「じゃあ、私の家でお願いします。あとで地図書きますね」

紬「大丈夫よ。知ってるから」

梓「(…むぎ先輩、うちに来たことないよね…)」

紬「うん!じゃあこれで打ち合わせは終了です!3人とも気をつけて帰ってね~」

梓「あ、はい、お疲れ様でした」

純「お疲れ様ですー」

憂「ごくろうちゃんでした~」

紬「はぁ~い、さよなら~」

ガチャッ、バタン

純「…この台本100ページくらいあるよね」

梓「あの人は夜ちゃんと寝てるのかな…?」

純「まあ、何にしても紬先輩がいてよかったね。スムーズかつ楽にことが運んでるよ~」

梓「このまま最後までスムーズかつ楽に進んでくれればいいんだけどね…」

憂「ねえ二人とも、ちょっとお買い物に付き合ってくれないかな~?澪先輩に使うオモチャが欲しいんだ~」

純「よし!帰ろう!」

梓「私も帰る!さよなら」

憂「え~!?」



土曜、夜

憂「こんばんはー」

梓「憂、いらっしゃい。とりあえず私の部屋に上がって」

憂「ありがとう。床濡らしちゃったらごめんね?」

梓「え?雨降ってる?」

憂「ううん、体液的な意味でだよ」

梓「…おむつ買ってこようか」

憂「いいよ、気にしないで」

梓「はぁ…まあ、今日明日で終わるしいいか」

ガチャッ

純「やっほーういー」

憂「純ちゃんは雑用なのに何もかも紬さんに任せきりだね!」

純「開口一番にそれ!?」

梓「唯先輩には何て言って出て来たの?」

憂「みんなでお泊まり会やるから、って」

純「あ、私とおんなじだ」

憂「そうなの?嫌だなー」

梓「…唯先輩は大丈夫?気取られたりしてない?」

憂「大丈夫だと思うよ。ごはんはおかず~とかいつもどおり訳のわかんないこと言ってたから」

梓「じゃあ心配ないか。…あと15分くらいで8時だね」

憂「あぁ~、楽しみだよぉ~!楽しみだよぉ~!」

純「ちょっと、興奮しすぎないでよ?」

憂「だって満願成就の夜だよ?今日まで何枚のショーツを愛液でびしょびしょにしてきたか…」

梓「…憂、座布団敷いて、お願いだから」

梓「さて、と8時か…」

ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ

梓「…むぎ先輩からだ」

純「時間通りだね。読んでよ」

梓「『ワルプルギスの夜は来たれり。車は其方の屋敷程近き場所に停めてありつ。準備は万端なりや。恙無くば車に乗りて当方へ参るべし。紬』」

梓「準備はいい、二人とも?」

純「私はいいよ」

憂「ちょっとショーツだけ履き替えさせてもらっていいかな?」

梓「…急いでね。ここで着替えるな!トイレ行って着替えて!」

憂「え~?細かいなあ、梓ちゃんは。いいお姑さんになるよ」

ガチャッ、バタン

梓「純…私、全てが終わったらあの子を思い切りぶん殴るんだ…」

純「…私も付き合うよ」

梓「むぎ先輩からのメールだと、車が待ってるはずなんだけど…」

黒服「お待ち致しておりました。紬様のご学友のかたで御座いますね」

純「わあっ!?は、はい。学友というか後輩ですけど…」

黒服「車を用意して御座います。さ、こちらへ…」

梓「あ、はい…ありがとうございます……長っ!?」

純「マンガだ!マンガのお金持ちだ!」

憂「二人とも早く乗らないか、子供でもあるまいに」

梓「あ、ごめんごめん…」

純「失礼します…うわ…中もすごいね…」

憂「よし。出したまえ、運転手君」

黒服「あ、はい。それでは…」

ブルルン

梓「(なぜ憂は急に重役風になったんだろう…)」


キィィツ

黒服「お待たせ致しました。到着で御座います」

憂「うむ、御苦労。ほら、君達も早く降りないか」

梓「あ、うん、わかった(まだ重役…)」

純「大きなお屋敷…豪邸って初めて見た…」

黒服「それではこちらへどうぞ。紬様がお待ち申し上げております」

梓「ほら純行くよ。口開きっぱなしだよ?」




黒服「こちらの離れにて紬様がお待ちで御座います」

純「何これ…うちよりずっと大きいんだけど…」

憂「うむ、御苦労。遠慮はいらない、これをとっておきなさい」

ぽすっ

黒服「は…これは…?」

憂「女子高生のショーツだ。つい20分ほど前に脱いだばかりのものだよ」

ガチャッ

梓「お邪魔しま~す…あ、むぎ先輩!こんばんは…」

紬「こんばんは、梓ちゃん。純ちゃん、憂ちゃん、こんばんは」

純「こんばんは…お、お邪魔します…」

憂「ん。今宵は楽しませていただくよ」

梓「あんたいつまで重役キャラのままなの?」

紬「さあ、こちらへどうぞ。9時には始めるから、しばらくゆっくりしていて。今お茶を持ってくるから」

梓「あ、すいません、ありがとうございます…この部屋もすごいね…」

純「…私、紬先輩と結婚しようかな…」

梓「やめときなよ、玉の輿なんか狙って結婚しても幸せになれないよ、きっと」

純「…冗談だからね?一応」

梓「ごめん、私どうかしてるね…」

憂「やっぱりおむつ履いておけばよかったよ~」

純「…この子よりは兆倍マシだから大丈夫だよ」

ガチャッ

紬「お待たせ~、さ、座って座って?」

梓「あ、はい…ありがとうございます」

純「いただきます」

紬「ふふっ。どうぞ~」

純「わ…美味しい…」

梓「このお茶、初めて飲みましたよ」

紬「ふふっ、裏琴吹特製のお茶だから」

純「特別なお茶なんですね…」

紬「今夜は長くなるから、しっかり飲んでおいてね?」

梓「(変な薬とか…入ってないよね…?)」

紬「どう、憂ちゃん?美味しい?」

憂「すごく美味しいです~!下から出っぱなしだから喉も渇いてるし…」

紬「出っぱなし…」

梓「…むぎ先輩、おむつありますか」

プルルルルル

紬「!ちょっとごめんね」

ガチャ

紬「もしもし…ええ、わかったわ。……そうね、そうしておいて。私も今から行くから。ご苦労様」

紬「少し出るわね。トイレとか今のうちに済ませておいて。場所は…この人に聞いて」

ガチャッ

黒服「…」ペコッ

梓「(ポケットが膨らんでる…)」

紬「じゃあね~」

バタン

純「…澪先輩のところに行ったのかな」

梓「多分ね…あ~何か緊張してきた!」

純「これから澪先輩のセックスを見るんだよね…」ゴクリ

憂「わははははは!わはははははは!」

ガチャッ

紬「お待たせ~。さてと、いよいよだけど台本はちゃんと頭に入ってる?」

梓「あ、はい。大丈夫…だと思います」

紬「ふふっ、まあそんなに堅くならないでいいわよ。流れさえわかってるなら、よほどでない限りおかしなことにはならないわ」

純「…憂、ちゃんとしてよね?あんたのためにやっt」

憂「わかってるよ!!何度も同じこと言わなくてもいいよ!!私を誰だと思ってるの!!?」

純「ひッ!…ごめんなさい」

憂「紬さん、それに梓ちゃん。私のために色々手を尽くしてくれてありがとう。私、二人の期待を裏切らないよう、がんばります!」

梓「憂…」

紬「うん!頑張りましょう!」

梓・憂・紬「応!!」

純「」


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最終更新:2010年09月29日 23:51