紬「さて…じゃあ行きましょうか。私についてきて頂戴」

梓「…はい」

ガチャッ




紬「さあ、この部屋よ」

純「離れにこんなに広い地下があるんですね…はぁー」

紬「この部屋に入ったら…余程のことがない限り自分の意志で出ることは許されないわ。覚悟はいい?」

梓「…はい」ゴクリ

純「…ちょっと怖いですね…いやっ、うん!大丈夫です!」

憂「お姉ちゃんおなか出して寝てないかな…」

紬「うん!じゃあ…開けるわよ…!」

ギィィッ

澪「むぎ?どこに行って…梓!?そ、それに憂ちゃん!?純ちゃんも!?いやあっ!?何でぇっ!?」

紬「…私が呼んだのよ」

梓「澪先輩…」

純「こ、こんばんは…」

憂「…こんばんは、澪さん」

澪「どういうことだよ!?みんなを呼ぶなんて、私、聞いてない…!」

紬「…前もって言っていたら…あなた…この場に来なかったんじゃないかしら」

澪「!!」

紬「…人はそう簡単には強くなれないものね」

紬「彼女達は、あなたの協力者よ。どうしようもないあなたのためにわざわざ来てもらったんだから」

澪「協…力…者…」

紬「澪ちゃん、あなたは今日、これから、一体何をするのかしら?」

澪「!?あ、あの…それは…その…」

紬「わからないわね。はっきり言って頂戴。彼女達の顔を見てね」

澪「こ、これから…お、女の人と…エッ、エッチを…する…」

紬「エッチ?エッチって何?そんな生ぬるいふわふわしたことでいいんだっけ?ねえ?」

澪「そんなぁ…む、むぎぃ…」

紬「そんな目で見つめてもだ~め。ほら、『セ』から始まることでしょ?何だっけ?」

澪「うぅ…わ、私はこれから…セ…セッ…セックスを!セックスをするんだ!!」

紬「は~い、よく言えました~」

梓「(怖い…)」

紬「そう。あなたは今からセックスをするのよね?しかも、女の人と…あれ?おかしいわ…?」

澪「え…」

紬「セックスって普通…男の人と女の人がすることよねえ…何で澪ちゃんは女の人とセックスをするのかしら~?」

澪「それは…その…私が駄目だから…」

紬「駄目?それじゃわからないよ?何がどう駄目なのかな~?」

梓「む、むぎ先輩!ちょっとやり過ぎ…」

紬「静かにしてね?」

梓「!!は…い…」

紬「さあ、教えて頂戴?澪ちゃんはどこがどう駄目なのでしょう~?」

澪「わ、私は…弱虫で…色んなことから…逃げてばっかりで、だから…まともな、その、人生経験をできていなくて…」

紬「それで?」

澪「だから…その、書く歌詞が…うっ、薄っぺらで…むぎの曲に釣り合わない…から…だから…」

紬「…もういいわ」

澪「え…?」

ぎゅっ

澪「わ…!ちょ、ちょっと…むぎ!?」

紬「ごめんなさい。少し、いじわるだったね…?」

澪「むぎ…」

紬「澪ちゃんは…澪ちゃんのことをちゃんとわかってるんだよね。ちゃんと、考えているんだよね…」ぎゅっ

澪「むぎ…」

紬「でも…澪ちゃんは…不器用さんだから…だからみんなの助けも必要でしょう?」

澪「…うん」

紬「だから…みんなが助けてくれるのよ?梓ちゃんも、憂ちゃんも、純ちゃんだって…澪ちゃんのことが大好きだから」

紬「澪ちゃんのことが大好きだから…心配して、力になろうとしてくれてるんだよ?だから、驚いたり、嫌がったりしちゃ…駄目だよね」ぎゅうっ

澪「うん…むぎ…ごめんなさい…」

梓「(飴と鞭…初めて目の当たりにした…)」

紬「だから、ほら。みんなにありがとうをしないと。梓ちゃんなんか、心配して私に相談してきたのよ?」

澪「そう…なのか…?」

梓「え!?あの…はい。その、この間から澪先輩の様子が…何となくおかしいような気がしたから…」

紬「それで、私に連絡をくれたの。私は本当は…梓ちゃんを巻き込みたくなかったんだけどね」

紬「でも、梓ちゃん、本当に気の毒なくらい澪ちゃんのことを心配して…私、秘密にしていられなくなっちゃって…ごめんね、梓ちゃん」

梓「いえ…私が望んだことですから。澪先輩は…ただの部活の先輩じゃないですから」

澪「梓…ぐすっ、ごめんな…ありがとう…お前が…仲間で良かったよ…うれしいよ…」

梓「澪先輩…(ああ、心が痛い)」

紬「それでね…梓ちゃんが協力してくれるのなら…ということで、私も方針を少し変えたの」

紬「そして、梓ちゃんを通じて、憂ちゃんと純ちゃんにも協力を仰いだのよ。二人とも…快く引き受けてくれたわ。本当にいい子たち」

純「いや~、私は尊敬する澪先輩のためならそれこそ滅私ですよ」

憂「澪さんにはお姉ちゃんが本当にお世話になっているし…私、ずっと澪さんには恩返しをしたいとおもっていたから…」

澪「純ちゃん…憂ちゃん…あっ、ありがとお…」ぐすっ

紬「だからね、澪ちゃん。ここには、あなたの味方しかいないの。安心していいのよ?」

澪「うん…わかったよ、むぎ。ごめんな、私…本当に駄目な子だ…」

紬「自分が駄目だという自覚があるなら大丈夫。そういう人は大きく成長できるというわ」

紬「だから、澪ちゃん。いつまでもそんな顔をしていちゃ駄目よ。あなたは強くなるんでしょう?さあ、立って」

澪「…うん。ごめん、ありがとう。…みんな、私に、を貸してくれ!頼む!」

梓「はいです!(すいませんほんとすいません)」

純「もちろんですよ!(やっぱ澪先輩かわいいな~)」

憂「がんばりましょうね!(バイブ突っ込んだら処女喪失になっちゃうのかな)」

紬「どうする澪ちゃん?まずはお茶にしようか?それとも始める?」

澪「むぎ…いや、すぐに始めよう。いつまでもぐずぐずしてちゃ駄目だもんな…!」

紬「…そうね。うん!じゃあ…澪ちゃん、あそこの部屋がシャワールームになっているから入ってきて」

澪「いいよ、そんな…すぐにでも…」

紬「駄目よ。しっかりと、手順は踏まないと。いたずらに既成事実だけ求めたって意味はないでしょ?」

澪「…そうだな。わかったよ、シャワー、浴びてくる」

紬「急がないでいいよ。リラックスして、緊張をほぐしてね。上がったらバスローブを羽織って来て頂戴」

澪「うん。じゃあ、みんな、ちょっとごめんな」

純「いえ、ごゆっくり」

ガチャッ、バタン

紬「さて、と。それじゃあ…憂ちゃん、あの隣の部屋もシャワールームだから、使ってらっしゃい」

憂「は~い!もう股がぬるぬるで痒くて痒くて…」

紬「…シャワー変なところに当てて変な声出して澪ちゃんに聞かれないようにね」

紬「さて、と。それじゃ純ちゃん、こっちに来てくれる?」

純「あ、はい」

紬「梓ちゃん、ちょっとそこのモニターで確認してくれる?」

梓「わかりました」

紬「純ちゃんはあのベッドの、ちょうど人が寝る辺りに顔を向けて頂戴」

純「はい…こんな感じかな」

紬「この辺りで…どう?梓ちゃん、しっかりベッド映ってるー?」

梓「えっと…少し下げてください!あ、下げすぎ!すこし上…もうちょい…あ、そこ!そこです!」

紬「よし、これでカメラはオッケーね。頼むわよ、純ちゃん?あくまで自然にね」

純「わかりました。うわー責任重大だ」

梓「(1台だけで大丈夫なのかな?)」

紬「さあて、そろそろ上がってくるころかしら…ゾクゾクしてきたわ~」

紬「あ、それから梓ちゃん…駄目よ~?」

梓「え?な、何がですか?」

紬「さっき私が澪ちゃん責めてるときに…」

梓「あっ!すみません、変な口出ししちゃって…つい…」

紬「まあ、あそこはいいのよ。むしろ自然だったから。私が言ってるのはその後よ」

梓「後…?」

紬「私が梓ちゃんに話を振った時、ちょっとうろたえたでしょう?」

梓「あ…そう…ですね…」

紬「すぐ持ち直してくれたからよかったけど、気をつけてね?」

梓「はい、すいませんでした」

紬「これから本番だけど、私に不自然な口答えとか、狼狽とかはしないようにね。自然に話すのは問題ないけど、不自然だと澪ちゃんに感づかれちゃうかもだから」

梓「はい…気をつけます(あぁ~怖いよぅ)」


ガチャッ

澪「お、お待たせ…」

紬「あ、澪ちゃん。どう?さっぱりしてリラックスできたかしら?」

澪「うん…思ったより汗かいてたから…シャワー浴びて正解だったよ」

梓「(わ…バスローブって生々しいんだ…すごいエッチな感じ…)」

純「(やっぱり今から私も参加できないかな…なんつって、な…)」

紬「それじゃ、そこのベッドに腰掛けて待っていて?今、澪ちゃんの相手を務めてくれる人もシャワーを浴びてるから」

澪「あ、ああ…わかった…」

梓「澪先輩、大丈夫ですか?膝が震えてる…」

澪「うん…やっぱり緊張する…怖いよ。初めてのライブの時より怖い…」

梓「澪先輩…」

澪「…あれ?憂ちゃんはどうしたんだ?」

梓「あ、それは…その…」

ガチャッ

澪「あ………!?ゆ、唯!?」

澪「なっ!何で唯がいるんだよ!?むぎ!!これは違うだろ!?むぎ!!」

紬「澪ちゃん、落着いて。よぉく見て頂戴」

澪「え…!?……憂…ちゃん…か?」

憂「…はい。私です」

澪「で、でも…えっ!?だって、さっき…!でも、シャワーを使って、あっ、むぎ!!何!?何で!?」

紬「紹介するね。澪ちゃんの相手役、平沢憂ちゃんよ」

憂「よ、よろしくお願いします…!」

澪「憂ちゃん…が…!?…むぎ!ふっ、ふざけるなよ!!?こんなの、おかしいよ!悪ふざけがすぎる!」

紬「…ふざけているのはどっちよ」

澪「!!」

紬「ねえ澪ちゃん…あなた、まだ自分のことを過大評価していないかしら?」

澪「過大…評価…。し、してないよ…私は…」

紬「…本当に?」

澪「ほ、本当だよ!私は…自分では何もできない…駄目な…」

紬「いい加減聞き飽きたわ、それ」

澪「あ…うぅ…」

紬「…あなたはね、あなたが思う以上に『出来ない』子なのよ」

澪「出来ない…子…」

紬「特に、こと対人スキルに関しては…絶望的ね」

澪「絶…望…」

紬「ふふっ、ショックなんだ?…やっぱり過大評価してたんじゃない!」

澪「で、でも…」

紬「でも?でも何よ?何か言い分があるのね?いいわ、言って御覧なさい?聞いてあげるから?」

澪「あぅ…あの…あ…」

紬「ほぉら、何も言えないじゃない。わかってるんでしょう?自分は本当にどうしようもないってことが」

澪「………」

紬「そんなあなたが…果たして初対面の女性とまともにレズ・セックスができるのでしょうか?」

澪「あ…」

紬「ただでさえ緊張しいの澪ちゃんが、女性とはいえ初対面の人と肌を見せ合い、唇を重ねあい、乳房を吸い合い、性器を重ねあうことが…できるのかしら?」

澪「それは…その…」

紬「無理よ。初めの段階で尻尾巻いて逃げ出すのが関の山。それどころか半狂乱になって暴れて、相手の女性に怪我をさせることだってない話とは言えないでしょうね」

紬「だから、憂ちゃんに一肌脱いでもらうことになったのよ」

紬「確かに、顔見知りの、親しい間柄でこんなことをするのは…おかしいことかもしれないわ」

紬「でもね、それを考慮に入れた上で、やはり私はこうしたほうがいいと判断した。こっちのほうが明らかにプラスの面が大きいのよ」

澪「で、でも…それなら!それならもっとふさわしい人選があるだろう!?」

紬「ふさわしい人選…?」

澪「た、たとえば律とか…」

紬「……あなたはまだ…りっちゃんに頼ることしか考えられないのね」

澪「あ…ち、違う!そういう意味じゃない!」

紬「どうしてあなたがこんな状況にあるのか…突き詰めればりっちゃんのせいでもあるのよね」

澪「違う!律は何も悪くない!」

紬「いいわ。あなたは死ぬまでりっちゃんに頼りなさい、何もかもね」

澪「むぎぃ…」

紬「今回の計画は澪ちゃんがりっちゃんから離れることも目標にしていたはずよ?忘れたの?」

澪「………」

紬「…澪ちゃんは、私が憂ちゃんを無理矢理に言いくるめてこんな役をさせているとでも思っていないかしら」

澪「え…」

紬「憂ちゃんが自分から進んで名乗り出てくれたのよ。澪さんの相手役は私にやらせてください、って」

澪「そう…なの…?」

憂「…はい」

澪「何でだ…?何で、私なんかにそこまでしてくれるんだ!?」

憂「さっきも言いましたよ?私はずっと澪さんに恩返しがしたかった、って」

澪「でも…私はそこまでのことはしていない…」

憂「少し…お姉ちゃんの話をしてもいいですか?」

憂「私、毎日お姉ちゃんを見ているからわかるんです。高校に入って、みなさんと出会ってから、お姉ちゃんはやっと人になれたんです」

澪「人…に?」

憂「おかしな言い方かもしれないけど…中学までのお姉ちゃんは、ただ生きているだけ、としか言えなかった」

憂「何かに一生懸命になることもなく、ただただ時間に流されていくだけ。目なんか常にうつろで…今みたいに生き生きした目をしたことなんか、一度もありませんでした」

憂「だから私はこんな性格になったんです。お姉ちゃんが心配で心配で、片時も目を離せない、そう思っていました」

憂「でも、皆さんと会って、ギターを始めてから、お姉ちゃんは生まれ変わった。人として、輝き始めた…」

憂「だから、私は皆さんに本当に感謝しているんです。皆さんが、お姉ちゃんを助けてくれたんです!だから…だから…」

紬「もういいわ、憂ちゃん。大丈夫よ。あなたの気持ちは…ここにいるみんなに伝わったから」

憂「紬さん…」

紬「澪ちゃん…憂ちゃんの思いを裏切らないであげて。お願いよ」

澪「むぎ…憂ちゃん…」

紬「憂ちゃんは望んでここにいる。梓ちゃんも、純ちゃんだってそう。もちろん私もね」

紬「だから澪ちゃん…勇気を出して。あなたが変わろうと思わなければ、何も変わらない」

紬「私たちがいくら手を貸そうとしても、澪ちゃんがその手を払いのけてしまっては何にもならないのよ」

憂「澪さん…」

澪「…そう、だよな。私が、私の気持ちに打ち勝たなきゃ…何も始まらないんだよな…」

澪「…憂ちゃん。本当にいいんだな?」

憂「…はい!」

澪「…よろしく頼むよ」

憂「…はいっ!私こそ、よろしくお願いします!」

紬「…うん!素敵よ、二人とも!」

梓「(何だかトリップしそうになってきた…)」

紬「それじゃあ憂ちゃん、澪ちゃんの横に座ってくれる?」

憂「はい、わかりました。…し、失礼します」

紬「あ、憂ちゃん、これ」

憂「あ、すいません、忘れてた…」ぱちっ

澪「えっ!?…なんで唯モードなんだ!?」

紬「唯モード、というか…この子は憂ちゃんではなく唯ちゃんよ」

澪「何言ってるんだよ!?」

紬「正を奇と成さんと欲すればすなわち奇を正と成すべし。孔子の言葉よ」

澪「わからないよ!」

紬「つまり、異常な状態を受け入れるためには異常の中に正常をちりばめろ、ということよ」

紬「憂ちゃんとセックスするよりも、唯ちゃんとセックスするほうが自然だし、やりやすいでしょ?」

紬「だから、ここにいるのは憂ちゃんではなくて唯ちゃんなの。そのつもりで澪ちゃんも接してね」

梓「(流石にこれは苦しいんじゃないかな…)」

澪「そうか…なるほど、わかった。…私は唯とセックスをするんだな」

梓「(納得した!?)」


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最終更新:2010年09月29日 23:52