梓「……」

梓「……結局一袋全部食べちゃった」

梓「で、でも明日の早朝ランニングで頑張ればチョコ一袋分なんてどうにかなるはず!」

梓「今日はもう寝て明日に備えよう……おやすみなさい」

パチン

梓「……すぅ……すぅ」

梓「……むにゃむにゃ……すぅ」

梓「……すぅ……すぅ」

紬「梓ちゃんおはよう、ランニングに行くわよ!」

梓「ん……ム、ムギ先輩……おはようございます」

紬「さあ、早くこのジャージに着替えて」

梓「……な、なんですか……これ?」

紬「昔、私が使ってたジャージよ……通常の三倍は汗をかくことが出来るわ」

梓「……すごいですね……ありがとうございます」

紬「ほら、早く着替えて顔を洗って来て?先に外に出てるから、5分後までには出て来てね」

梓「……はい」

梓(身体痛いしダルい……行きたくないって言ったらムギ先輩怒るだろうな……)

梓「……お待たせしました、ムギ先輩」

紬「うん!やっぱりその赤いジャージ、梓ちゃんに似合ってるわ」

梓「そ、そうですか……?」

紬「さて、最初は少しウォーキングしながらストレッチをして身体を慣らすわよ」

梓「はい……」

………………

…………

……

梓「はあ……はあ……」

梓(なんでだろう……歩いてるだけだし、昨日走った時よりも涼しいのにもうこんなに汗が……)

梓(それに……すごい疲れる……)

紬「身体は温まってきたみたいね?じゃあ、そろそろ走りだそうか」

梓「ま、待ってください……ムギ先ぱ……」

紬「ほら、元気良くいくわよ梓ちゃん!いっち、に!いっち、に!」

梓「いっち……にぃ……いっち……にぃ」


梓「……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ……はあ」

梓「……つ、着いた……」

紬「お疲れさま、梓ちゃん!朝食の準備してるから、先にシャワー浴びて来たらどう?」

梓「ちょ、朝食……」

ぎゅるるる~

梓「あ……」

紬「うふふ、お腹ペコペコみたいね……安心して、朝はしっかり食べてもらうから」

梓「ホ、ホントですか……!?」

紬「ええ、だから汗を流してサッパリしてらっしゃい」

梓「はい!」

梓(やった……!ご飯かパンかわからないけど、やっと食べれる!ビバ炭水化物!!)

梓「…………」

紬「おかえり、梓ちゃん」

梓「……ムギ先輩、これ……?」

紬「決まってるじゃない、梓ちゃんの朝食よ!キムチは発汗作用もあるから、たくさん食べてちょうだい」

梓「あ、あの……」

紬「どうしたの、梓ちゃん?」

梓「白米……ご飯はどこですか?」

紬「え?ないわよ」

梓「……え」

紬「言い忘れたみたいだけど、ダイエット中は炭水化物は一切取らせないわ」

紬「あ、あと飲み物は水だけしか飲めないわ」

梓「……」

梓(……やっとお米が食べれると思ったのに……あんまりだよ)

キーンコーンカーンコーン

梓「……」ゆらゆら

梓「……」すりすり

純「梓……その貧乏ゆすりやめなって」

梓「……」ゆらゆら

梓「……」すりすり

純「……ねえ、梓!」

梓「……え?なに?」

純「あのね……!さっきから言って……」

憂「純ちゃん!」くいくい

純「……憂?どうしたの?」

憂「……梓ちゃん、昨日から紬さんの家に泊まり込みでダイエットを始めたみたいなの」

憂「それで、昨日からお漬け物以外は何も食べてないみたいなんだって」

純「へぇ、そうだったんだ……それで空腹凌ぎにあの貧乏ゆすりをしてるってわけね」

憂「うん、多分そうだと思うんだけど……」

純「で、何でそれを憂が知ってるの?」

憂「それはね……紬さんにクラスでの監視を任されてるの」

純「おお……徹底してるね」

梓「……」ゆらゆら

梓(牛丼ラーメン焼き肉ピザお寿司ハンバーグ天ぷらギョーザ唐揚げスパゲッティ……)

キーンコーンカーンコーン

梓「お昼!!」

純「あ、いつもとお弁当箱違うんだね梓?」

梓「うん!」

梓「さあさあ、今日のお昼は……!」

梓「……」

梓「……ピクルス」

純「……お、おいしそうなピクルスだね!梓!」

純(うわっ……流石にこれは梓に同情するわ)

憂「……アハハハハ」

憂(……ちょっと梓ちゃんがかわいそうに思えてきた)

ダッ

純「あ、梓……?どうしたの?」

梓「……もう我慢出来ない!私購買行ってパン買ってくる!」

憂「あ、梓ちゃん!?……ものすごいスピードで行っちゃった」

梓「パン……パン……パン、パン、パンパンパンパン!」

梓「パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!」

紬「あら、どこに行くつもりなの……梓ちゃん?」

梓「ム、ムギ先輩!?」

紬「……まさかとは思うけど、購買でパンを買おうだなんて思ってるんじゃないよね?」

梓「……!」

梓(バレてる!?)

梓「そ、そんなまさか!私ダイエット中なんですよ!?購買でパンなんて買うわけが……」

紬「そうよね、それを聞いて安心したわ……疑ってゴメンね、梓ちゃん」

梓「い、いえ……全然平気です、全然」

梓(わ、私のパンが……)

ぎゅるるる~

梓「……はあ」

梓「……放課後か、お腹空き過ぎてもう立つ気にもならない」

梓(……ってか、なんでさっきあそこにムギ先輩が居たんだろう?)

梓(……最初から私が購買に来ると予想してあそこに張ってたのかな?それとも……)

梓「……内通者が」

憂「!……あ、梓ちゃん部活に行かなくていいの?」

梓「……お腹空き過ぎて動けない」

憂「で、でも軽音部に行けばいつも通りお茶してるんじゃ……」

梓「!」

梓(それだ!)

梓「憂!私部活行ってくるね!バイバイ!」

憂「バ、バイバイ……」

梓「……はあ、紬さんに梓ちゃんが部活に行ったってメールしないと」

ガラガラガラッ

梓「ハア……ハア……こ、こんにちは!」

澪「梓!」

律「……チッ」

唯「あ、あずにゃん!もう心配したよ~!昨日はゴメンね!」

梓「だ、大丈夫です!それより今日のお菓子は……」

律「……それだよ、それ」

梓「それって……まさか、このクラッカー1枚ですか?」

澪「悪いな、梓……昨日の今日だったし、来ないのかと思ってみんなで食べちゃったんだ」

梓「……そ、そんな……ムギ先輩は?」

唯「ムギちゃんはさわちゃんに呼ばれて職員室に行ってるよ~」

梓「……そうですか、ちょっと職員室行ってきますね!」

バタンッ

唯「うーん……やっぱしあずにゃんがかわいそうだよ~、ホントはみんなケーキ食べたのに」

澪「まあな……でも、ムギも梓のダイエットの為に心を鬼にしてるんだから私たちも少しは協力してやらないと」

唯「でも~……」

律「あんま梓のこと庇うなよ、唯」

唯「りっちゃん……?」

律「第一、勝手にブクブク太ったのは梓だろ?それなのにムギがダイエットの手伝いしてやってるんだからそれ位当然なんだよ」

律「ってか、食い意地張りすぎだろ梓の奴……あんだけ腹に肉付けてて、まだ物足りないのかよ」

澪「おい、律……言い過ぎだ」

律「なんだよ、澪まで梓の味方すんのかよ?大体澪は知ってるだろ?私はデブが大っ嫌いだってこと」

澪「それは知ってるけど……でも、梓は軽音部の一員だぞ?それなのにそんな言い種は……」

律「あー、はいはい!わかったよもう……私が悪うござんした!」

澪「律!なんだよ、その態度は……」

律「ああ!もううるさいな!……帰る!」

唯「あ……り、りっちゃん!澪ちゃん、りっちゃんが……」

澪「……ほっとけ、あんな奴」

唯「ねえ、澪ちゃん……なんでりっちゃんはあんなに太ってる人を嫌ってるの?」

澪「ああ、それはな……」

澪「私と律が小学生の時に、クラスの男子に私がからかわれたことがあって……」

澪「その男子が……まあ、縦も横も大きい男子だったんだよ」

澪「で、その時に律が私のことを庇ってくれて……その時に律がその男子を罵るようなことを言ったんだ」

澪「そしたら、その男子は怒って律に手を出して……まあ、その時は最終的には先生が仲裁に入ったんだけどな」

澪「でも、それ以来律は……その太ってる人に対して反射的に嫌悪感を抱くようになったみたいでさ」

唯「そうだったんだ……」

澪「もちろんその時のことに関しては、私は律に感謝してもしつくせないんだけど……」

澪「何も梓にまであんな態度取ることないだろ、って思うんだ……ましてや、梓は最初から太ってたわけじゃないし」

唯「うーん、そうだよね……どうにかして、いつも通りのりっちゃんとあずにゃんみたいに戻らないかな」


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最終更新:2010年09月30日 02:30