梓「チョコ……」

梓「メイジの板チョコミルク味……」

梓「ふふ、別にいいよね。普段はオヤツの時間に四枚食べてるんだし」

梓「うふふふ……ひひ……チョコ……」

梓「いただきます」パクッ


『なにしてるのかしら、梓ちゃん?』

『梓ちゃん。私は梓ちゃんが痩せるためなら自分の時間も惜しまないつもりだったのよ』


梓「ど、どこにいるんですかムギ先輩!?」

『私がどこにいるかは問題じゃないの』

『今問題になっているのは梓ちゃんがダイエット中にも関わらず、板チョコ(約400カロリー)を食べようとしたことよ』

梓「沢庵一枚なんかで私が耐えられると思ってるんですか!?」

『梓ちゃん。なんならこのまま梓ちゃんをどこかの島に連れていって放置してもいいのよ?』

梓「そ、それは……」

紬『だいたい今の梓ちゃんなんて養豚場にいたってなんら問題のない体型しているんだから』

紬『これだけ優遇してるんだから感謝して』

梓「すみません」グスッ

紬『わかればいいの』

紬『今後またこのようなことがあったら梓ちゃんに強制的に浣腸ダイエットをさせるから』

梓「は、はい」

紬『じゃあ10分後にもう一度さっきの部屋に来て』

梓「え?」

紬『いいから』

梓「わかりました」

紬『じゃあまた後でね』



――10分後

梓「む、ムギ先輩」

紬「うん、きっかり10分ね。じゃあそこの席に座って」

梓「はい」

斎藤「紬お嬢様、では私はこれで」

紬「ご苦労様」

梓(もしかして、律先輩がいつかムギ先輩の家に電話かけたときに出た執事さんかな?)テクテク

斎藤「いえ。……おっとっと」ヨロヨロ

梓「だ、大丈夫ですか?」

斎藤「お気になさらず。ちょっと屋敷が揺れたみたいですな」

梓「え?」

紬「だって梓ちゃん」

梓(……私が歩いたからムギ先輩の屋敷が揺れたって言いたいの!?)

紬「とりあえず席着いて」

梓「あの、何するんですか?」

紬「ご飯よ」

梓「ご、ご飯を食べさせてもらえるんですか?」

紬「うん。さすがにちょっと目を離したぐらいで、すぐにチョコ食べるようだと心配だから」

梓「すみません」ショボン

紬「とりあえず今日はそのご飯を食べたら二時間は起きてるのよ?」

梓「は、はい。わかりました! それでご飯は!?」

紬(さっそくご飯に食いついたわね)

紬「とりあえずこんな感じね」

梓「ご飯、お味噌汁、野菜サラダ、冷シャブ……一つ一つが妙に少ないですね」

紬「女の子が食べる分には普通よ」

梓「…………はい」

梓(す、少ない。さっきの沢庵一枚に比べたらマシだけど全然足りないよ~)

紬「文句ある?あるなら全部下げてもらうわ」

梓「ないです!ないです!」パクパク

紬「きちんと噛んで食べる!」ドンッ

梓「はいです!」

梓「ご馳走様でした」ペコリ

紬「お口にはあった?」

梓「すごくおいしかったです」

梓(ただ少なすぎるよー。味はそんなに気合い入れなくていいから量がもっと欲しいよ~)

紬「じゃあ、梓ちゃん。腹ごなしにそこにある鏡を全部梓ちゃんの部屋にもってて」

梓「あの量全部ですか!?」

紬「ええ」

梓「いったいなんのために!?」

紬「その鏡を梓ちゃんの部屋に全部並べるの」

紬「醜い姿を常に見られるようにして、ダイエットの意識向上を目指すの」

梓(うわあ)

梓「はあはあ……ぅ……ぁあ………はあはあ……」

紬「梓ちゃん。少し汗かきすぎじゃない?」

梓「わ、私はムギ先輩と……ぅ……はあ……違って……怪力じゃ……はあはあ……ないんです」

紬「鏡運んだだけじゃない」

梓「部屋を往復しました!」

紬「ニケタにも達していないんだけど」

梓「はあはあ……もういいです。疲れたんで私は寝ます!」

紬「ダメよ! 食後すぐ眠ると太るから!」

梓「はあい」

紬(実際には食後にすぐ寝ても太らないけど)

紬「……?」クンクン

梓「なんで私の臭いを嗅ぐんですか?」

紬「その、言いづらいんだけど言っていいかしら?」

梓「どうぞ」

紬「牛乳を拭いてそのまま一ヶ月くらい放置して発酵した雑巾みたいな臭いがするわ」

梓「……私からですか?」

紬「梓ちゃん以外にいるわけないじゃない」

梓「お風呂貸してください」

紬「喜んで。それとお風呂ではきちんとお湯に浸かって柔軟運動してね。」

梓「ありがとうございます」

紬「明日も早いから。あと一時間したら寝てね」

梓「はい。おやすみなさい」

紬「おやすみなさい」

梓「ああ、やっぱりお風呂は落ち着くなあ」

梓「さて、柔軟運動もしよ」

梓「前屈するう……ぅうーうぅ……」ニクニク

梓「お、お腹のお肉がつっかえて身体が前に倒れない」

梓「ぅうーうぅー……うー!」ニクニク

梓「っはあ……ダメだ。今の私に前屈は無理だね」

梓「明日きちんとランニングできるように、今日はもうお風呂出よ」



次の日!

紬「じゃ、梓ちゃんランニング頑張って」

梓「先輩無理です」

紬「なにを言ってるの梓ちゃん。昨日から始めて今日でもうダメなんて」

梓「だって足がすでにガクガクするんですもん」

紬「どれどれ」

紬「……たしかに仕事疲れのOLみたいな足してるわね」

梓「だから無理です」

紬「じゃあ一時間しっかり歩いてきて」

梓「歩くだけでいいんですか?」

紬「いいえ。この鉄アレイを両手にもって歩きなさい」

梓「ええ!?」

紬「いいから歩く!」

梓「はあい」

梓「ういっちに、ういっちに」

梓「朝日が眩しいなあ」

梓「歩くのならなんとかやれそう」

梓「鉄アレがちょっと重いけど」

梓「ういっちに、ういっちに」

梓「……あれ? 誰か人が倒れてる!?」タタタタ

梓「だ、大丈夫ですか!?」


「ぅうーん」

梓「どうしたんですか!? しっかりしてください!」

「あ、あれ、ここは?」

梓「よかった」(……なんだろ、この人。私の声にすごく似てる……)

梓「あの、立てますか?」

「なんとか……」

梓「どうしてこんなとこで倒れてたんですか?」

「私、見てのとおり太ってますよね?」

梓「ええ」(いや、私も人のこと言えないけど)

「それで、仕事の関係で事務所から痩せろって言われたんです。だから朝から走ってたんです」

「でも途中で目眩がして気を失っちゃったみたい」

梓「事務所……」

「ああ、私声優やってるんです」

梓「へえ」(声優が痩せろなんて言われるんだ……)

「もしかしてあなたも?」

梓「まあ、はい。そうです」

梓「ちょっと最近あることがきっかけで暴飲暴食してたらこんな体型に」

「あらま。ご愁傷様」

梓「あ、でも私今はこんなんですがもとはスレンダーバディだったんですよ」

「羨ましいなあ。私は高校時代が一番太ってたから……って高校生だよね?」

梓「はい」(初めて初対面の人に制服姿じゃない状態で高校生扱いされた!)

「まあ、お互いがんばろ」

梓「はい」

「じゃあねー」

梓「さようならー」



梓(今の人、背は低かったのに胸は出かかったな……)

梓(私は…………)

梓「…………歩こう」

梓「はあはあ……なんとか歩き……きった」タプンタプン←※お腹の肉の音です

紬「おかえ……梓ちゃん」

梓「はい」

紬「すごく生臭いわ」

梓「お風呂入ります」

紬「身体洗ってから入ってね」



梓「今あがりました」

紬「じゃあ朝ご飯ね」

梓(いったいなにを食べさせてもらえるんだろ?)

紬「はい、ヨーグルトにフルーツを混ぜたものよ」

梓「おお! 意外と普通だ」

紬「……なにを想像してたの?」

梓「いえ特になにかを想像していたってわけじゃないんですけど」

紬「それと牛乳もね。ヨーグルトや納豆みたいに胃の動きを活発にするものを食べるの」

紬「そしてなるべく胃の中のものを出す」

梓「それっぽいですね」

紬「梓ちゃん。本気で痩せたいんなら徹底的にやらなきゃダメよ」

梓「は、はい」

紬「さあ、さっさと食べたら学校に行くわよ」

梓「ちょっと早くないですか?」

紬「汗をかかないようにゆっくり歩くためよ」

梓「……はぁ、そうですか」

紬(この娘。自分の体臭をわかってないみたいね)

紬(たぶん今の状態じゃ学校に行くまでにも大量の汗をかく可能性が高い)

梓「むしゃむしゃ。うん、うまい」

梓「おかわり!」

紬「ないわよ」

梓「ちぇー」ペロペロ

紬「食器をなめないの!」



登校中!

澪「知ってる?昨日から梓はムギの家でダイエットしてるんだって」

律「ふうん。ダイエットね」

律(あんなけデブってて痩せられるのか?痩せてもらわなきゃ困るけど)

澪「梓のダイエット、成功するといいよな」

律「まあデブは甘えだからな。ムギが梓を甘やかさなければ成功すんじゃない?」

梓「せんぱーい!」ドスドス

澪「噂をしたらなんとやらだな」

梓「はあはあ……澪先輩、律、先輩……はあはあ……おはよう、ございます……」コフコフー

律(なあ、澪)

澪(なんだよ?)

律(なんか梓から異様な臭いがするんだけど、気のせい?)

澪(い、言われてみればすごい臭い)

梓「どうしました?」

律「い、いや、養豚場から逃げ出した豚みたいな、ふがっ」

澪(バカ、なに言ってんだ!?)

律(だって実際すごい臭いじゃん!)

梓「どうしました?」

澪「な、なんでもない!なんでもないんだ、あはは」

律「気にしなくていいぞ」

紬「ちょっと梓ちゃん!」

梓「あ、ムギ先輩」

律「おっす、ムギ」

澪「おはよう」

紬「ああ、おはよう……じゃなくて梓ちゃん!」

梓「なんですか?」

紬「なんで私より先に家を出たの?」

梓「ちょっとランニングがしたくなって……」

紬「へえ。あれほど私が走るなって言ったのに?」

梓「し、思春期の女子高生には突然走りたくなるときがあるんです!」

紬「わかったわ。わかったから学校に着いたらすぐにこの制服に着替えて」

梓「なんでですか?」

紬「いいから!」

梓「は、はい」

澪(たぶん、臭いのことを言ってるんだろうな)

律(うん。つうかムギは梓のために梓用の制服を用意したのか)

澪(たぶん。ムギならそれくらいやるだろ)



お昼休み!


梓「やったー!ついにお昼休みだよ!」

純「嬉しそうだね梓」

梓「だって昨日までは朝から牛丼だったのに今日はヨーグルトだけだよ?」

憂「……そうだね」

純「それで梓のお昼ご飯はなに?」

梓「ムギ先輩が用意してくれたお弁当」

純「ちょっと小さい気もするけど中身はいたって普通だね。肉がないし、野菜が中心みたいだけど」

梓「……と、これら」

ドサドサドサ

憂「え?」

純「なにこの量!?」

梓「いやーだって足りないからさ」

純「牛肉弁当、冷し中華、から揚げ弁当、おにぎりシーチキンマヨ、昆布、しぐれ」

憂「それからスティック式のチーズケーキ、メロンパン、イチゴタルト、さらにとどめにポカリスエット」

梓「おいしそうでしょ?」

純「梓、ダイエット中だよね?」

梓「うん、そうだよ」モグモグ

憂「梓ちゃんこれは食べ過ぎなんじゃないの?」

梓「だって今日も朝から走りっぱなしだったんだよ!」

梓「一時間も走ったんだからこれくらいは当然」パクパク

純(これが噂に聞くデブループ!)

憂(運動する→安心する→食べる→もう動けない→運動する→食べる(以下ループ))

梓「だいたい食べなきゃ運動できないしね」

憂「それはそうだけど限度があるんじゃ……」

梓「これでも量は普段より少ないから大丈夫だよ」パクパク ゴクゴク

梓「ムギ先輩を撒いてコンビニに買いに行くの大変だったんだから」ゴクゴク

純「威張ることじゃないでしょ。ていうかポカリで流しこまないほうがいいよ」

梓「昼休みの間に食べちゃいたいからさ」モグモグ

憂(デブはやっぱりデブなんだね)


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最終更新:2010年09月30日 02:32