憂『今ね、お姉ちゃんがご飯食べてるの』

梓「あ、う、うん」

憂『聞こえる?お姉ちゃんの声?』

『ふんっ……ふんがっ……むしゃむしゃ……』

梓「……ええと、どうなってるの?」

憂『鼻が梓ちゃんの体臭でね、馬鹿になっちゃったみたい』

憂『アレルギー性鼻炎みたいなものかな?』

憂『しばらく鼻は詰まったまんまだって……』

梓「あ、あ、ああ……」

憂『ねえ、梓ちゃん』

梓「う、うん」

憂『梓ちゃんはアレルギーなにかある?』

梓「い、いえなにもありません。非常に健康です」

憂『アレルギー鼻炎で鼻が詰まると本当に辛いんだよ?』

憂『鼻水ダラダラ、なのに鼻をかもうとしても詰まってるからかめない……』

梓「そ、そうなんですか」

憂『鼻が詰まったまんまでご飯食べてもご飯って美味しくないんだよ?』

梓「わ、わ、わかりますわかります」

憂『ほら、お姉ちゃんも……お姉ちゃん、今日のご飯おいしー?』

『うん、すごくおいしいよー。やっぱり憂はすごいよ。りょーさいけんぼー』

憂『だって……えへへ』

梓「は、は、ははは」

憂『うん、梓ちゃん。私なに言いたいのか忘れたけどダイエット頑張ってね』

梓「は、は、はい。必ずや成功させてみせます!」

憂『うん、じゃあね。夜分に失礼しました』

ピッ

梓「はあはあ……運動してないのに変な汗かいちゃったよ……あはは」プルルル

梓「は、はいもしもし」

憂『梓ちゃん、本当にダイエット頑張ってね……』

ピッ!

梓「……ははは」

紬「梓ちゃん、電話は終わった?」

梓「それはもう終わりましたよあはは」

紬(よかった。笑ってるってことは大丈夫みたいね)

紬(顔色がすごく悪いし、すごい汗かいてるけど……うっ!)

梓「……ムギ先輩なんでまた鼻詮を?」

紬「ひひにしないへ」

紬「梓ちゃん、唯ちゃんのことは不幸な事故だったの。それに唯ちゃんも元気そうだし」モグモグ

梓「あの……やっぱりデブは臭いんですか?」

紬「梓ちゃん、自分の食生活を思い出してみて」

梓「私の食生活?」

紬「一番食べたものはなに?」

梓「肉です。すき家のメニューは全部食べました。お気に入りは照り焼き……」

紬「そこまでは聞いてないわ」

梓「すみません」

紬「昔の日本人……まだ肉を食べる習慣のなかった日本人はそんなに体臭はキツクなかったそうよ」

梓「肉を食べだしてから臭うようになったってことですか?」

紬「おそらくね。梓ちゃんも以前に比べたら圧倒的に肉を食べてるでしょ?」

梓「言われてみれば」

梓「そういえば私、いつもなにかものを食べるときには肉を乗せてた気がします」

梓「名古屋に行ったときでした。私はミッドランドスクエアに行ってモンシュシュロールを買ったんです」

紬「聞いてないけど」

梓「聞いてください。私、そのモンシュシュロールを家に持ち帰り、鶏肉を乗せて食べました」

紬「聞きたくなかったわ」

梓「私も思い出したくありませんでした」

紬「それ、うまかったの?」

梓「最高でした」

紬「そう……」

梓「しかし、一つだけ言わせてください」

紬「なに?」

梓「私、すき焼きに関してだけ言えば肉よりクタクタに煮詰まった白菜のが好きでした」

紬「……そう」

梓「それでムギ先輩、私思いました」

梓「今回の一件で、唯先輩に迷惑をかけて私気づきました」

梓「デブは害でしかないと」

紬「私はそこまでは思わないけど……」

梓「いいえ、やっぱりこのままじゃダメなんです」

梓「私、ダイエットを成功させます!そして痩せてもとに戻ってみます!」

紬「梓ちゃん……」

梓「ムギ先輩よろしくお願いします!」

紬「わかったわ梓ちゃん、私とともに頑張りましょう!」


梓(それから一週間私、中野梓はとにかく死に物狂いで頑張りました)

紬「梓ちゃん。納豆ら私たち女の敵である便秘を解消してくれる魔法のご飯よ」

梓「私、納豆食べられません」

紬「いいから食べるの」

紬「韓国のキムチよりはるかに美味といわれている松前風キムチを納豆に混ぜて食べればおいしいから」

紬「これも痩せるためよ、梓ちゃん」

梓「は、はい!」

梓(また筋トレでも)

紬「足あげ腹筋を三分間耐えて」

梓「さ、三分!?」

紬「ちなみにこれはほとんどの男子高校生にはできないわ。運動部入っててもできない子が多いわ」

梓「うう、あああああ……!」

紬「足を床に付けたら浣腸だから」

梓「は、はいいい!」

梓(またこれ以外にも)

紬「今日から踏み台昇降で使う踏み台の高さを20センチにします」

梓「…………」

紬「どうしたの梓ちゃん。まさか怖じけづいたんじゃないわよね?」

梓「いえ、地味だなあと」

紬「いいからやる!きちんとやらないと浣腸するわよ!」

梓「は、はい!」



そんなこんなで一週間。

紬「それでは梓ちゃんの身体測定をします」

梓「……」ゴクリ


紬「身長……150.7」

梓「なんで身長測る必要が……って伸びてる!?」

紬「背筋や背筋を伸ばす運動とか、マッサージ師さんに色々やってもらったおかげかしら」

梓「えへへへ」


紬「ひょっとしたら足に肉がついた分だけ身長が伸びただけかもしれないけど」

梓「余計な注釈はいりません」

紬「では、続いて体重を……」

梓「ゴクリ……」

紬「体重は……[ピー]キロ……」

梓「ええと、つまり……」

紬「マイナス3.7キロね」

梓「もっと減ってると思ったけど……」ガックシ

紬「すごいじゃない、梓ちゃん。たった一週間で3キロ以上痩せたのよ!」

梓「そ、そうですね。一週間で3キロも痩せたんですよね」

紬「それにチェックするのは体重だけじゃないわ」

梓「……?」

紬「はい、腕出して」

梓「はい」

紬「ふむふむ、[ピー]センチ……マイナス4センチ」

梓「おお!」

紬「太もも……マイナス3センチ」

梓「けっこう減りましたね!」

紬「ヒップ……3、バスト……6。うんうん、順調に減ってるわね!」

梓「それはあまり嬉しくないですね」

紬「最後にお腹出して」

梓「もう出てます」プルン

紬「ウエスト……すごい、一番減りにくい場所だけど3センチ減ってるわ」
梓「おお!」

紬「この調子でやれば三ヶ月後くらいにはもとに戻れるかも」

梓「本当ですか!?」

紬「ええ。でもまあ、女の子には生理があるからそんな簡単にうまくいかないけどね」

梓「ああ……そうでした」

紬「どうしても痩せにくい時期があるし、食欲が急に増すこともあるから」

梓「そうですね」

紬「でも大丈夫よ。梓ちゃん、今の調子ならきっとうまくいくわ」

紬「それに……」

梓「?」

紬「梓ちゃん、最近お通じいいんじゃない?」

梓「な、な、なんでそれを?///」

紬「ふふふ」(実はトイレに監視カメラがあるとは思わないわよね)

紬(もとは梓ちゃんがトイレでお菓子を食べないように監視するためだったけど)

紬(思いのほか監視カメラって使い道があったわね)

梓「たしかに最近は一日に一回は出るようになってきました」

梓「前は三日出ないとかも珍しくなかったのに」

紬「踏み台昇降の成果ね」

梓「踏み台昇降?」

紬「あれはね、実は体重にはさほど影響を出さないの」

梓「と言うとなにに影響があるんですか?」

紬「まさに今言ったお通じに効果があるのよ」

梓「あれにそんな効果が/……」

紬「それだけじゃないの。さっきウエストとかヒップを測ったでしょ」

梓「はい。もしかして踏み台昇降がウエストとかヒップに影響があるんですか?」

紬「むしろそっちがメインなの。普通はもっと効果が出るのは遅いんだけど」

紬「踏み台昇降によってウエストにクビレができたり、お尻を引き締めることができるの」

梓「へー。じゃあこの調子でやっていけば……」

紬「ええ。もっと効果が出るはずよ」

紬「梓ちゃん、すごくいいわ。この調子よ」

梓「はい、ムギ先輩!」


私はダイエットによる成果を初めて実感し、より一層やる気を出しました。

踏み台昇降の台の高さをさらに上げたり、ランニング時間を増やしたり。

それから腹筋のさいはより負荷がかかるように重りをつけたり。

体重はだんだん、減っていきました。もちろん、途中問題もありましたが。


紬「そろそろ停滞期かしら」

梓「ええ。順調に落ちてた体重がここのところはあまり……」

紬「ガッカリしちゃダメ。このまま行ったら絶対痩せられるから」

梓「大丈夫ですよ、ムギ先輩。私頑張ります!」

憂「……梓ちゃん、お昼食べないの?」

梓「うん、今日はちょっとお腹がすいてないから……」

梓(お昼くらいなら抜いても平気だよね?)

純「あれだけ食べることに執着してた梓が、ね」

憂(よっぽどお姉ちゃんのアレが影響したのかな?)

純「でもたしかに最近は痩せた、ていうか引き締まってきたよね」

憂「うん、前まで首がなかったもんね」

梓「あはは……」

梓(よーし、もっと頑張ってみんなを見返すぞー)


律「なんか梓のやつ、最近すごい痩せてきたな」

紬「でしょ?梓ちゃん、すごく頑張ってるもの」

唯「あずにゃんこの調子で痩せてけるといいね」

澪「梓はやればできるタイプだからな。大丈夫だと思うよ」

律(まあ痩せてもらわなきゃ私がやなんだけどな)

唯「あずにゃんは今なにしてるの?やっぱり走ってるの?」

紬「うん、たぶん走ってると思うわ」

澪「昨日は走ってたけどな」

律「見たのか?」

澪「うん、ゆっくりと犬みたいな走り方してた」

唯「犬?あずにゃんは猫だよ?」

律「そういうこてではないと思うぞ」

紬「それはナンバ走りって言って上半身を前のめりにして走るものなの」

唯「変な走り方だね」

紬「で、手ばぶらんぶらんにして走るの。体力のない梓ちゃんにはオススメの走り方なの」

澪「ムギ、えらい詳しいな」

律「そういえばムギって梓のダイエットコーチもしてんだろ?」

紬「ええ……それがどうしたの?」

律「いや、なんでムギはダイエットにそんなに詳しいのかなって思っただけだよ」

紬「え、ええと……梓ちゃんのために色々覚えたのよ、あはは……」

唯「ムギちゃんはあずにゃん思いだねえ」

紬「それほどでもー」

紬(いけないわ、危うく私の歩く豚の貯金箱の思い出が……)

澪「?」

唯「あ、あずにゃんからメールだ」

紬「なんて?」

唯「『もう少し走っていたいから先練習しててください』だって」

律「ふうん、いいんじゃない?」

律(まあやる気のある今の梓は嫌いではないな。その調子でどんどん痩せろ~)

澪「そんなに走って大丈夫なのか、梓」

紬「…………」

唯「ムギちゃん?」

紬「最近、梓ちゃん寝ているときによく足をつってるみたいなの」

紬「だから少し心配で。針治療でもしたほうがいい?」

律「私らに聞かれても……」

澪「まあ梓も自分の身体のことは自分が一番よくわかってるだろ」

紬「そうよね」

紬(そうよ、ね?)

紬「ふう……よし、梓ちゃん今日走るのはこれぐらいにしておきましょ」

梓「……」ガリ、ガリ

紬「梓ちゃん?」

梓「その、もう少し走ってきていいですか?」

紬「まだ走るの?」

梓「ええ。たぶんあと3キロは走れると思います」

紬「……」(今日はすでに8キロ以上走ってる……これ以上走るのは……)

梓「いいですよね、ムギ先輩?」

紬「え、ええ」 (でもここで走るなと言ってやる気を削ぐのも……)

梓「懐中電灯借りてきますね……行ってきます」

紬「あ、梓ちゃん!」

紬(……大丈夫かしら?走ってる最中に足つって怪我しなければいいんだけど)

梓「すぅーはー、すぅーはー」タ、タ、タ

梓(うん、この調子なら行けそう。今日は横っ腹も痛くならないし)

梓(足の裏の痛みも靴変えてからは柔らいでるし)

みしっ……!

梓「……っ!」

梓「あ……痛いっ……!」

梓(危ない危ない、足つるのに気づいて止まれてよかった……)

梓「……痛あ~~~っ!」

「あ、あの大丈夫?」

梓「あ、あなたは……」

「えと、覚えてますか?」

梓(なんだろ、すごい見覚えあるけど……こんなに太った人知り合いにいたかな?)

梓「……どなた?」

「声優の、ほら……」

梓「ええ!?」

「やっぱりあなたもそういうリアクションするんだね……」

梓「え?え?え?ダイエット中でしたよね、声優さんって」

「うん、そのはずなんだけど……なぜか体重が減らないんだよね」

梓「いやいや、逆に太ってますから」

「うん、なんか三桁の大台を越えちゃったんだよね」

梓「あぜん」

「あはは、いやあ昔は尻軽そうとか言われてたけど、今じゃ重くて重くて持ち上げるのも精一杯……」

梓(自虐!?)

「この前トラックにはねられたんだけど、逆にトラックがふっとんでたよ、あはは」

梓「面白くない冗談です」

「私も笑えないよ。あなたは逆にすごい痩せてきたね」

梓「まだまだです」

「なにかコツでもあるのよかったら教えて」

梓「えーとですね……」

「……?」

梓「デブは甘え。私はそれに気づいたんです」

「デブは甘え……?」

梓「そうです。家畜のように餌を好きなだけ頬張るのはまさに甘えです」

「厳しいね」

梓「そうかもしれません。でも行き過ぎたデブへの世間の視線はもっと厳しいですよ」

「は、はは。でも私は無理してダイエットは……」

梓「その考えがもう甘えです」

「……そうかなあ?」

梓「そうです……ってこんな時間、私、まだ走ってる最中なんでサヨナラ」

「さよならー」

(足引きずってるけど大丈夫かな?)


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最終更新:2010年09月30日 02:35